杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

近いはずの人

2023年02月26日 | 
小野寺史宣(著) 講談社(刊)

同い年の妻が事故で死んだ。それから3ヵ月、心が動かない。北野は亡き妻の鍵のかかった携帯電話に、4ケタの数字を順番に打ち込むだけの毎日を過ごしていた。ついにロックの解けた携帯には、妻の秘密が残されていた。4年間を一緒に過ごした女性のことを、僕は何も知らなかったのかもしれない―北野俊英、33歳。喪ってから始まる、妻の姿を追いかける旅。(「BOOK」データベースより)


ある日突然かかってきた電話は、妻・絵美の死を告げるものでした。
友だちと一泊旅行に行くと言った妻は、宿に向かう途中で乗っていたタクシーが転落して死亡したのです。

絵美の死を受け入れられない北野は、現実から目を逸らすように毎晩ビールのロング缶を4本空けながら、無事だった彼女の携帯電話のロックを外すために暗証番号を1万通りの組み合わせの0000から打ち込んでいきます。
 解除して中を見ることが重要なのではなく、その行為に没頭することで現実から逃避していたのかも。

ある日5963で突如として解除された電話のメールにはどう見ても男性からの5通のメールが残されていました。ショックを受けた北野は、「8」と登録されていたその相手を突き止めようとします。

ふとしたことからそれが絵美の姉・久美の婚約者の秋山栄人だと知った北野は、思わず栄人(エイト)を呼び出して問い詰めますが、彼は理由を作ったのは北野自身だと突き放します。
絵美は3年前に流産していましたが、北野はその後の妻への距離感を読み間違えていたのです。久美からも、北野が気付いていなかった絵美の別の顔を指摘され当惑します。

浮気をした妻ではなく自分に非があるのか?これはなかなか認めがたいことです。ただ、ここまで読むと、北野という男がこれまでの人生においてどこか投げやりだったのではないかと思わされます。相手に真っ直ぐ向き合おうとせずに全てにおいて逃げを打っているような印象なのです。

流産を夫と共に悲しみ苦しみ、共に乗り越えたかった絵美は、(夫にすれば「優しさ」であり「気遣い」だったのですが)夫から突き放されてしまったと感じ、夫以外の近くにいる「誰か」に救いを求めたのかもしれません。絵美は
栄人だけではなく北野の弟の優平にも声をかけていましたが、二人とも絵美に誘惑されたというのではなく、彼女の傷に寄り添ってあげただけという気もします。彼女が一番一緒にいたかったのはそれこそ夫だった筈なのです。

優平は名前の通りに優しく心の広い穏やかな人であり、栄人は北野が抱いた第一印象の「頭の切れる理系」ではあるけれど、実はやはり優しく人間のできた男だと示されます。

妻の死から3カ月が経つ9月から始まる物語は、一年が経つ6月で終わります。
北野が妻の死を受け入れ、前に進むための時間でもあったように感じました。

ところで、このストーリー展開をTVドラマで見た事があるような気がするのだけれど、思い出せない(^^;

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ビースト

2023年02月25日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2022年9月9日公開 アメリカ 94分 G

妻を亡くして間もない医師のネイト・ダニエルズ(イドリス・エルバ)は、ふたりの娘たちを連れ、妻と出会った思い出の地である南アフリカへ長期旅行へ出かける。現地で狩猟禁止保護区を管理する旧友の生物学者マーティン(シャルト・コプリー)と再会し、広大なサバンナに出かけたネイトたちだったが、そこには密猟者の魔の手から生き延び、人間に憎悪を抱くようになった凶暴なライオンが潜んでいた。ライオンに遭遇したネイトは、愛する娘たちを守るために牙をむく野獣に立ち向かっていく。(映画.comより)


アフリカの広大なサバンナを舞台に、凶暴なライオンに襲われた一家の父親が娘を守るために戦う姿を描いたサバイバルアクションです。密猟者により群れを失い生き残った雄ライオンが復讐に燃えて人間を襲う話だけど、たった一匹で村を全滅させるとかありえないっしょ(^^;

ネイトは妻を癌で亡くしますが、長女のメア(イヤナ・ハリー)は、一番辛いときに仕事を言い訳に逃げていた父に反発しています。次女のノア(リア・ジェフリーズ)は父と姉の間に立って心を閉ざしがちです。

娘たちとの関係を修復しようと妻との思い出の地を訪れ、旧友のマーティンと再会した彼らは、マーティンが世話しているライオンたちを見学します。その中の一頭の怪我に気付いたマーティンは、ガイドがてらパトロールをします。

立ち寄った集落で皆殺しにされた村人たちを発見したマーティンは、巨大なライオンが食うためではなく殺すために襲ったと判断します。
戻って報告しようとする途中で、瀕死の男性に遭遇し、ネイトが応急処置を施しますが亡くなります。周囲を警戒しライオンを追跡したマーティンが襲われ、更にライオンは車を襲撃してきます。慌てて車を走らせたものの木に激突して動けなくなる一家。

怪我を負い動けなくなったマーティンを助けるために麻酔銃で立ち向かうネイトですが、危ないところをノラに助けられます。何とかマーティンを車に連れ戻して手当をします。

マーティンはライオンが密猟者に仲間を殺され、復讐しようとしていると推測します。そこに密猟者の一行が通りかかりますが、マーティンが保護管だと気付いて協力を拒否。一発触発となった時、再びライオンが襲い掛かってきます。密猟者たちがライオンを追って行く中、彼らの車を奪おうと動くネイト。
次々と密猟者たちは殺され、死体から鍵を奪ったネイトですが、マーティンたちの乗った車がライオンの襲撃を受け、娘たちを逃がしたマーティンは車とともに転落し、襲い掛かって来るライオンを漏れたガソリンに自ら火をつけて自爆します。

密猟者のトラックに乗り、深手を負ったメアの手当てをするために立ち寄った荒廃した学校に再びライオンが現れます。
最後の手段とばかり、ネイトはマーティンが世話するライオンたちの群れの前に行きます。縄張り意識を利用したのね。
壮絶なライオンとの戦いが繰り広げられ、あわやというところで、群れのライオンたちが登場。出来過ぎ~~!実はライオンたちは全てCGだというのだから驚きです。

気絶したネイトが意識を取り戻したのは病室で、娘たちと無事を喜び合い、もう一度ここを訪れようと話します。ラストは再訪した地で記念写真に収まる親子の姿です。

見せ場はライオンとネイトの死闘場面ですが、あれほど狂暴なライオンなら一噛みで動けなくなる致命傷を与えそうなものですが・・。
密猟者や狂暴なライオンの存在を知りながら危険に曝したマーティンも軽率だしな~~結果その報いを自ら受けた形になりましたが。
車の窓開けっぱなしも論外だし、父親の言う事聞かないで行動するのも何だかな~で、アクション重視とはいえ、色々突っ込み処がある作品ですね。

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後宮の烏2 アニメ

2023年02月24日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
第三話「花笛」
鴛鴦宮に住まう後宮最上位の妃、花娘(かじょう)が夜明宮にやってきた。花娘は、花笛がなぜ鳴らなかったのか知りたいという。花笛とは冬の終わり、その年に亡くなった者を弔うため、軒先に吊るしておくものである。春の訪れを告げる風とともに死者が還ってきて、笛を鳴らすと言われている。花娘は恋人だった欧玄有(おうげんゆう)を亡くした時、笛が鳴らなかったことを気にかけていた。寿雪は求めに応じて欧玄有の魂を呼び出し、話を訊こうとする。

第四話 「雲雀公主(ひばりひめ)」
夜明宮に雲雀の幽鬼がやってきた。未練があり、楽土へと渡れないらしい。不憫に思った九九は寿雪に雲雀を救ってほしいとお願いした。寿雪は雲雀を飼っていた雲雀公主(ひばりひめ)のことを調べる。宮女に話を訊いて回っていると、とある世間話を耳にする。それは、下げ渡される反物などがない宮は侍女にとってはずれであるということだ。寿雪は九九に何もあげたことがなかった。

本で読むのとは別に視覚的に入って来るストーリーもまた新鮮で楽しい。
原作の第二話と第三話を収録です。
感想は2022年1月13日ブログ公開
https://blog.goo.ne.jp/anzu0609/e/053ecc0ab6c01ecf71d7b342cd66ad2a


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湯道

2023年02月24日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2023年2月23日公開 126分 G

亡き父が遺した銭湯「まるきん温泉」に突然戻ってきた建築家の三浦史朗(生田斗真)。帰省の理由は店を切り盛りする弟の悟朗(濱田岳)に、古びた銭湯を畳んでマンションに建て替えることを伝えるためだった。実家を飛び出し都会で自由気ままに生きる史郎に反発し、冷たい態度を取る吾郎。
一方、「入浴、お風呂について深く顧みる」という「湯道」の世界に魅せられた定年間近の郵便局員・横山(小日向文世)は、日々、湯道会館で家元から入浴の所作を学び、定年後は退職金で「家のお風呂を檜風呂にする」とう夢を抱いているが、家族には言い出せずにいた。
そんなある日、ボイラー室でボヤ騒ぎが起き、巻き込まれた悟朗が入院することに。銭湯で働いている看板娘・いづみ(橋本環奈)の助言もあり、史朗は弟の代わりに仕方なく「まるきん温泉」の店主として数日間を過ごす。
いつもと変わらず暖簾をくぐる常連客、夫婦や親子、分け隔てなく一人一人に訪れる笑いと幸せのドラマ。そこには自宅のお風呂が工事中の横山の姿も。
不慣れながらも湯を沸かし、そこで様々な人間模様を目の当たりにした史郎の中で凝り固まった何かが徐々に解かされていくのであった・・・。(公式HPより)


「おくりびと」の脚本家で放送作家の小山薫堂が、自身の提唱する「湯道」をもとにオリジナル脚本を手がけ、お風呂を通じて交差する人間模様を描いた群像ドラマです。
独立して仕事が減り、自分の実力のほどを知った史郎が、父親の遺産を得ようと考えて実家に帰ってくるところから始まる物語は、銭湯を続けようとする吾郎との対立から始まり、やがて常連客たちや亡き父の思いを知り、自らも風呂の良さを再認識して兄弟の和解という結末を迎えます。

「三丁目の夕日」にも通じる古き良き昭和の香り漂う人情話にもなっていて、観終わると「あ~~!銭湯行きたいな~~風呂入りたいな~」という気持ちになります。

映画のセットも実際に薪で湯を沸かしていて、銭湯の湯舟は関西風の中央に置かれ、蛇口からは本当に水も湯も出ると言う本格的なもの。関東以北の銭湯は湯舟が奥にあるので、中央というのが何だか新鮮です。でもその方が「みんなで入る」感が強くて楽しそうに見えました。

常連客たちを演じる役者も豪華な顔ぶれです。
一番風呂で思い切り歌うのが趣味の良子(天童よしみ)と息子の竜太(クリス・ハート)母を捨てた父を刺して刑に服した彼が出所して最初に訪れるのがまるきん温泉。珈琲牛乳を飲んでから湯舟で歌う彼に気付いた母とのデュエット「上を向いて歩こう」が最高です。

堀井(笹野高史)と妻の貴子(吉行和子)は仲良し夫婦。妻が亡くなり独りでまるきんにやってきた堀井と史郎の会話が泣かせます。妻との思い出の温泉で猿を妻と見間違えるシーンも可笑しくてやがて泣けるエピソードでした。

近所で「寿々屋」を」営む高橋夫婦(寺島進、戸田恵子)も喧嘩しながらも仲良し。痛風持ちでビールを妻から禁止されている夫が何とか隠れて飲もうとしては怒られる姿が笑えます。彼らが考案した男湯と女湯での桶を使ったコミュニケーションが常連客のみならず「湯道」にも広まるオチも。

アドリアン(厚切りジェイソン)は婚約者の父(浅野和之)に認めてもらおうと「ハダカノツキアイ」に挑みますが、脱衣室で身体を洗うシーンは爆笑ものでした。

横山が通う「湯道」の家元・二之湯薫明(角野卓造)のしょうもない英語ダジャレがエンドロールでの「ユアマイサンシャイン」に繋がっていくのはお見事。登場キャラが総出で口ずさむのですが、どなたも実に上手いし味がありました。

内弟子・梶斎秋役は窪田正孝。彼の芸術的な筋肉美を堪能できたのはまさに眼福です。ちなみにこの映画の公開前に観た『アナザーストーリー湯道への道』 では、彼と斗真君が主役で、晩年の斎秋の語る、若き日の彼が廃れつつある「湯道」を何とか広めようと奮闘する話になっていました。

源泉掛け流し至上主義者の太田(吉田鋼太郎)は権威を鼻にかける嫌なキャラ。沸かし湯の銭湯を馬鹿にして横柄な態度を取る彼が常連客たちにやりこめられる場面はスカッとします。風呂好きDJフロウ(ウエンツ瑛士)がカツラなのは笑いを狙ったのでしょうけど、あのシーン要る?

史郎は常連客達を通して風呂の良さを見直すようになってきますが、入院をきっかけに吾郎は廃業を決意します。それを知らされて姿を消したいづみを追って「茶屋」を訪れた兄弟が五右衛門風呂に入るシーンが予告でも流れていました。川から水を汲み、枯れ枝を拾って焚く数時間に及ぶ作業の末に入る風呂は本当に格別な味わいだと思います。いずみが茶屋の孫というのは出来過ぎな気もしますが(笑)

まるきん温泉にただで薪を運んでくる「風呂仙人」(柄本明)は只者ではないと思ったらやっぱり!なじーさんでした。

内風呂がない時代、銭湯は町の社交場でもありました。広い湯舟に浸かり、身体を洗う作法も大人から教わった古き良き昭和が懐かしく思い出される作品でもあります。


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オフィサー・アンド・スパイ

2023年02月23日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2022年6月3日公開 フランス=イタリア 131分 G

1894年、ユダヤ系のフランス陸軍大尉ドレフュス(ルイ・ガレル)が、ドイツに軍事機密を漏洩したスパイ容疑で終身刑を言い渡された。対敵情報活動を率いるピカール中佐(ジャン・デュジャルダン)はドレフュスの無実を示す証拠を発見し上官に対処を迫るが、隠蔽を図ろうとする上層部から左遷を命じられてしまう。ピカールは作家ゾラらに支援を求め、腐敗した権力や反ユダヤ勢力との過酷な闘いに身を投じていく。(映画.comより)


ロマン・ポランスキー 監督によるフランスで実際に起きた冤罪事件“ドレフュス事件”を映画化した歴史サスペンスで、ロバート・ハリスの同名小説を原作に、権力に立ち向かった男の不屈の闘いと逆転劇が描かれます。

パリの広場で民衆の侮蔑の中、官位を剝奪され剣を折られ、除隊を宣告されながらも身の潔白を叫ぶアルフレド・ドレフュス大尉でしたが、終身刑となり悪魔島(監獄島)に流されます。その1年前に、陸軍内部に情報漏洩者がいる疑惑が浮上し、筆跡が似ていたことと、ユダヤ人であることから彼が逮捕されたのです。

かつてドレフュスを教えたジョルジュ・ピカール大佐は採点について意見を求めてきたドレフュスに、ユダヤ人は好きではないが成績を不当に下げるようなことはしないと言ったことを思い出していました。

上司の退任に伴い防諜局長に抜擢されたピカールは、ふとしたきっかけから機密情報を漏洩したのが陸軍少佐のフェルディナン・バルザン・エステルアジだと気付きます。そのことを将軍に報告しますが、軍の信用問題に関わるからとそれ以上の調査を禁じられ、更にチュニジアの奥地に左遷されます。それでも諦めずに調査を続けるピカールでしたが、上官はドレフュスが犯人だという証拠を捏造し、更にピカールと愛人のポーリーヌ(エマニュエル・セニエ )の不倫をネタに脅します。

エステルアジは軍法会議にかけられますが無罪となり、ピカールはユダヤ人を擁護したと世間から叩かれますが、一方でドレフュスの兄や作家のエミール・ゾラらピカールに賛同し協力を名乗り出る者も現れます。

ピカールは逮捕され刑務所に入ります。
ゾラは『私は告発する』と題した公開状で軍の不正を弾劾してドレフュスを犯人に仕立て上げた軍の高官たちを名指しで告発したことで有罪になりますが、ドレフュスの再審を求める動きが活発になり、政府も無視できなくなります。

しかしドレフュスの弁護人のラボリ(メルヴィル・プポー )が何者かに射殺されてしまい、裁判でドレフュスの潔白を証明できないまま再び有罪判決が下ります。

1899年。大統領の特赦でドレフュスは悪魔島から釈放され、その後に無罪が確定します。昇格して政府高官となっていたピカールに面会したドレフュスは、自分の昇格を要求しましたが拒否されます。当時はまだユダヤ人への反発が根強く残っていたため、ピカールの力が及ばなかったからです。ピカールとドレフュスが会ったのはこの日が最後でした。

将軍たち軍の上層部も政府も過ちを認めようとせず、隠蔽を重ねる構図はいつの世も同じです。彼らは決まって軍や政府の信頼を守るためと言い訳しますが、結局のところ自分たちの経歴に汚点が憑くのが嫌なのです。ピカールにもユダヤ人への差別意識がありますが、公平であろうとし、間違ったことを正そうと動きます。それはドレフュス個人への同情などではなく、ただひたすら自分の正義に突き動かされているように見えました。もし彼が日和見や出世を願う男だったら、たやすく上司たちの言いなりになっていたでしょう。例えば防諜局の部下アンリのように。(アンリは局長の座をピカールに奪われた上にそれまでの仕事にケチを付けられたことでピカールに敵愾心を抱いたとも言えますが)
ただし、ピカール自身は清廉潔白な人物とも言えないところが引っかかるところではありますが、人間味があるともいえるのかな。

もしドレフュスとピカールの間に友情が介在していたらもっと違った描き方になっていたかもですが、敢えて彼らの関係を希薄にすることで、不正と隠蔽に焦点を当てているように感じました。

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夕映え天使

2023年02月23日 | 
浅田次郎(著) 新潮文庫

東京の片隅で、中年店主が老いた父親を抱えながらほそぼそとやっている中華料理屋「昭和軒」。そこへ、住み込みで働きたいと、わけありげな女性があらわれ…「夕映え天使」。定年を目前に控え、三陸へひとり旅に出た警官。漁師町で寒さしのぎと喫茶店へ入るが、目の前で珈琲を淹れている男は、交番の手配書で見慣れたあの…「琥珀」。人生の喜怒哀楽が、心に沁みいる六篇。(「BOOK」データベースより)

1.夕映え天使
一浪が父親と営む中華屋に住み込みで働かせて欲しいと現れた純子は、半年過ぎた頃にまた突然消えてしまった。それから一年以上経った正月明けにかかってきた一本の電話は軽井沢の警察からだった。身元不明の遺体が持っていた唯一の品が一郎の店のマッチ箱と、関西のうどん屋の名刺だったことから連絡がきたのだった。純子が突然いなくなったのは父親が息子の再婚相手にと匂わせたからだと察していた一郎は、彼女が関西でも同じようにうどん屋の前から消えたことを知る。幸せに背を向け続けた彼女を想い改めて自分が純子に惚れていたことに気付く一郎。天使みたいな人だったと語り合う一郎とうどん屋だった。
彼女の過去が一切書かれていないことで、より一層薄幸な人生を浮き上がらせていました。

2.切符
オリンピックが日本で開催された年の話。両親が離婚して父方の祖父に引き取られた広志。ある日祖父の家に間借りしている八千代と女湯に入った彼は同級生の千香子に会って慌てる。口止めしようと千香子と友達になった広志は、同居していた男と別れ祖父の家を出ていく八千代に「さよなら」を何度も繰り返すことで別れを告げる。

戦地からただ一人復員した祖父は「シマツヤ」(戦友の家を訪ね歩いて焼香と香典をあげる)をすることが生き残った自分の務めと思っています。「最早戦後ではない」ことを示したオリンピックですが、祖父の中でまだ戦争の後始末は終わっていないのです。千香子は自分の本当の(朝鮮人)を隠すように親から言われています。八千代の相手は妻のある男でした。広志の両親とも再婚しており、祖父は広志のことを考えて母の引き取りたいという願いを拒絶していました。
母に会った時に渡された切符の裏に口紅で書かれた電話番号と、母が暮らしているであろう駅名、八千代にサヨナラを言った広志はその切符を捨てることで母とも決別する覚悟を決めたのね。

3.特別な一日
定年を迎えたマサヤは、最後の日を淡々といつものように過ごそうと決意している。
元カノの雅子の誘いをすげなく断り、社長となった同期入社の若月に本音をぶつけ、行きつけのガード下の飲み屋でいつものように酒を飲み、電車で同じように定年を迎えた独り身の男の誘いを拒否して帰宅する。祝いの食卓を囲んだあと、妻が丹精込めて今夜を迎えた庭の花たちを眺めながら・・・

何の変哲もない平凡なサラリーマンの述懐と思って読んで行くと、実はこの日が地球最後の日なのだとわかるSFめいた結末に驚きます。ちょっと星新一ワールドだな。

4.琥珀
定年間際の警察・米田が、有休消化のために出た旅先で入った喫茶店で、まもなく時効を迎える指名手配の犯人・川俣と遭遇します。
雪の舞う三陸の寂れた町の描写が寒々しく、店のドアの脇の琥珀色のステンドグラスから差し込む光が、米田と川俣の心に思いがけない変化をもたらします。
惚れていたが故に浮気が許せず妻を殺した川俣は、毎日妻の写真に彼女が好きだった珈琲を供え念仏を唱えてひたすら時効を待っていました。仕事にかまけて妻子に逃げられ、かといって功を成すこともないまま定年を迎える米田にとって、千載一遇の大手柄のチャンスでしたが、会話を交わすうちに気が変わります。二人の会話こそがこの話の焦点でもあります。

5.丘の上の白い家
貧しい環境に育った「僕」は子供の頃に出会った丘の上に建つ白い洋館に住む少女と高校生になって再会する機会を得ます。不良となっていた僕は、彼女との交際の先が見えて、代わりに同じ貧しい境遇だが自分と違って真っすぐな優等生の清田を紹介します。ところが二人が心中事件を起こし、清田だけが亡くなります。大人になり功を遂げた僕は没落したあの白い家を通りかかり老女に声をかけますがすげなく追い払われます。

「僕」が世俗の垢にまみれた不良だったのとは逆に、清田はどこまでも清く正しい心を持つ男でした。しかし、身分違いの悲しい恋の結末かとみせて、少女の身勝手な願望の道連れにされたという衝撃の事実が手紙という形で綴られます。何だかとても不条理な結末に心が重くなります。

6.樹海の人
作家が自衛隊員時代に遭遇した不思議な出来事が語られます。
憧れていた作家の自殺に触発されて衝動的に自衛隊に入隊した「私」は、通信兵の演習で樹海の奥深くに分け入ります。独り風雨に耐える過酷な訓練中、自殺願望者と思しき男と遭遇した私は、彼が奥に消えていくのを漫然と見送ります。その男は時空を超えて彷徨い出た未来の自分だと思ったから悔恨はないと言いつつ、その男の年齢を超えた今、別の理由を思いつく辺りは、心の奥底にもしやという疑念がくすぶっているからではと考えてしまいました。

鵜飼哲夫氏の解説を読んで、作者の生い立ちが短編の内容とリンクする部分があることに気付きました。人情話の作品しか知らなかったのでちょっと意外。

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鉄くずの騎士ラスティの物語

2023年02月23日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2012年製作 ドイツ 84分

すべてが鉄くずで出来た魔法の王国「スクラップランド」のお城で、ドラゴンのコール、少女ボーと暮らす鉄くずの騎士ラスティ。"騎士の競技会"でなんとしても優勝して、自分の勇敢さを証明したいラスティは、最新のエンジンを手に入れ、馬のチョッパーに搭載する。おかげで見事1位の座を勝ち取るが、そのエンジンは対戦相手のノベル王子から盗まれたものだった。ラスティは盗みの濡れ衣を着せられた上に、騎士の地位も取り上げられてしまう。一方、ノベル王子はスクラップランドを乗っ取るための計画を密かに進めていた。邪悪なノベル王子のたくらみを知ったラスティは、王国を守るために仲間と共に勇気を出して立ち上がる!(アマゾンあらすじ紹介より)


ドイツで愛され、ミュージカルにもなった絵本が原作です。

主人公のラスティは、レジの姿をしたスクラップランド王国の騎士です。この王国はお城も動物も雲すら鉄くずで出来ています。
ラスティはちょっとドン・キホーテを思わせるキャラで、我が道を突き進むタイプ。お調子者で、親友の女の子ボーの大切なミシンを勝手に馬のエンジンと交換したり、友だちであるドラゴンの首を刎ねようとするなど自分勝手なところもあります。それに本当は弱虫のびびり屋だったりもします。でも何だか憎めないところがあって、彼のピンチには大勢の仲間が集まって助けてくれるのでした。

騎士の身分を剥奪され住む城も追われたのに愛想をつかして出て行ったポーは彼女に一目惚れしたノベル王子の城に招かれ暮らすようになります。反省したラスティがミシンを持って王子の城にやってきますが、トラブルでそのミシンを壊してしまい、ボーと喧嘩別れになるんですね。
ミシンを修理しようとするボーが、「道具」を探し、スパナに協力してもらう中で、新品だけの王国にしようとしている王子の企みに気付きます。
惚れっぽいのに飽き性な王子は、飽きてしまった女性を次々閉じ込めていました。ボーは女性たちと城を逃げ出します。

一方、騎士の身分回復のためにはドラゴンと戦いその首を持って来なければならないラスティは、友だちであるドラゴンの首を刎ねようとします。おぃおぃ!代わりに別のドラゴン退治に出かけた二人は「インディジョーンズ」さながらのトロッコでの冒険を経て、何とか首を持ち帰ります。

ところが王様との謁見の最中に王子が乗り込んできて、王を拘束し王国を乗っ取り、ボーも再び捕まってしまいます。王子に戦いを挑んで捕まったラスティを助けるため、ボーは王子の要求を受け入れ后になると言います。

失意のラスティに力を貸したのは道具たちや大勢の仲間たちです。意外に人気者だったのね。
形勢不利と見て、気絶したボーを攫って逃げる王子の飛行船を自分の身体で止めようとするラスティはまさに騎士然としていました。
飛行船から落ちたボーを抱きとめるラスティ。絶体絶命の二人を双頭のドラゴンが助けます。ラスティに言い争いばかりしていた兄の首を持っていかれた弟でしたが、やっぱり寂しいと奪い返しにきたのね。

王子をやっつけ、騎士の身分を回復したラスティでしたが、城に落ち着こうとせず新たな冒険に出かけようとします。ボーもドラゴンも一緒にね。

双頭のドラゴンのキャラもとぼけた味わいがあり、子供に受けそう。



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ウェイクアップ!ルースター

2023年02月20日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2014年製作 カナダ 80分

早起きは“希望"の始まり―
ここはとある田舎の小さな村セント・ヴィクター。この村の住民は誰もがオンドリの鳴き声で目覚めて一日を始める。
毎朝1日も休まず朝の4時に大声を出すオンドリのおかげで村人は規則正しい生活を送れ、村には秩序が保たれているのだが、同時にたまには朝寝坊したい住民にとってはこのオンドリが悩みの種でもあるのだ。
ある日の村の会議で、オンドリを何とかしようという議論になるが、そこに現れた隣村の村長が、「そのオンドリをうちの村の幸運のロバと交換しよう」と持ちかける。大賛成の村人は、喜んで隣村にオンドリを渡すが、さっそく次の日からみんなは朝寝坊のし放題に仕事をさぼって遊び放題、その結果、村はどんどん荒れていき…(あらすじ紹介より)


これは子供向けの教育アニメの分類でしょうか?
村長さんが飼っている生真面目なオンドリが毎朝4時に鳴くその声は村中に響き渡って村人を起こします。強制的に早起きさせられる村人たちは仕事ははかどっても、慢性の寝不足に悩まされていました。
何とかならないかと会議が開かれますが、そこに隣村の村長が現れ、オンドリと「幸運のロバ」の交換を持ち掛けます。喜んで応じた村人たちでしたが、朝寝坊のし放題で仕事は二の次のだらけた生活が続いて村はすっかり寂れてしまいました。

小麦は刈り取られず、製粉されず、パン屋に小麦粉の配達もされず、パンは焼けずと言った具合です。挙句、隣村からやってくるパンの移動販売に客を取られてしまいます。他にも八百屋や大工仕事まで・・・。ようやく困った事態に気付いたパン屋と大工と粉屋の三人が、隣村に出かけてオンドリを取りかえそうとしますが、隣村の村長に見つかって失敗します。代替案を渡されて村に戻ってきた3人は、自分の村の村長が家を売って去ろうとしていることを知ります。急いで追いかけて駅で村長を引き留めた彼らは、彼にオンドリの「息子」を渡します。オンドリは隣村で大切にされ多くのメンドリと暮らしていて子どもも大勢生まれていたのです。

失ったものは帰って来ませんでしたが、未来への希望を渡されたのです。
そして一年後。この村は再び活気を取り戻していましたとさ。

早起きは三文の得とはいえ、毎朝4時起きはキツイでしょ。
村人たちの不満に気付かなかった村長にも責任あるけど、村人に責められ不眠症になるオンドリが何とも人間臭かったな。隣村では、早起きして仕事したら昼寝して夜も楽しく過ごしていましたが、そういう発想の転換が大切ですよね。

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メタモルフォーゼの縁側

2023年02月18日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2022年6月17日公開 118分 G

毎晩こっそりBL漫画を楽しんでいる17歳の女子高生・うらら(芦田愛菜)と、夫に先立たれ孤独に暮らす75歳の老婦人・雪(宮本信子)。ある日、うららがアルバイトする本屋に雪がやって来る。美しい表紙にひかれてBL漫画を手に取った雪は、初めてのぞく世界に驚きつつも、男の子たちが繰り広げる恋物語に魅了される。BL漫画の話題で意気投合したうららと雪は、雪の家の縁側で一緒に漫画を読んでは語り合うようになり、立場も年齢も超えて友情を育んでいく。(映画.comより)


鶴谷香央理の漫画「メタモルフォーゼの縁側」の実写映画化で、ボーイズラブ漫画を通してつながる女子高生と老婦人の交流を描いた人間ドラマです。

年齢も立場も肩書も全く異なる二人ですが、好きな漫画を一緒に読んで一緒に笑って一緒に泣いて、時には議論を交わします。夫に先立たれ独りで暮らす雪と、シングルマザーの忙しい母を持つうらら。共に寂しさを抱えた二人の58歳差の友情が眩しいくらいです。

暑さを凌ごうと本屋に逃げ込んだ市野井雪は、表紙絵に惹かれた「君のことだけ見ていたい」 というマンガを手に取りレジに向かいます。アルバイトの高校生・佐山うららがビックリした顔をしたのは、それが男性同士の恋愛を扱ったBL作品だったから。実はうららもBLが好きで部屋の段ボール箱にたくさん隠してあるのです。

一方家でマンガを読み始めた雪は、主人公の咲良が親友の佑真を秘かに思っている内容と1巻の終わりのキスシーンに驚き、続きが気になります。翌日、2巻を買いカフェで読んだ雪は、更に続きを買いに本屋に戻りますが見当たらず、うららに聞きます。思わず「貸しましょうか?」と言いそうになったのを飲み込み、うららは注文を受けます。3巻を受け取りに来た雪が、うららもBLを読んでいると知って、仕事終わりにお話したいと誘います。近くのカフェで嬉しそうにBLの話をする雪に戸惑いあまり話せないまま店を出たうららに雪は謝りますが、誘われたことは嬉しかったと話して二人は連絡先を交換しました。

その帰りに、幼馴染の河村紡(高橋恭平)と彼女の英莉(汐谷友希)に出会った麗は、会話もそこそこに走り去ってしまいます。
BL好きを母に隠しているうららは、受験についてもまだ目標を見つけられずにいます。雪から他のお薦めを教えてとメールを貰ったうららは、たくさんの本を抱えて雪の家を訪れます。広い庭を持つ日本家屋の雪の家の縁側で、「君のこと~」の作者のコメダ優(古川琴音)の過去作や似たような学園もの、日常系にファンタジー作品など次々取り出し、最後に「君のこと~」が連載されている月刊誌を渡すと、次のコミック発売まで待たなければならないと思っていた雪は喜びます。「君のこと~」のキャラの佑真と咲良を見ていると応援したくなると熱く語る雪に賛同し大盛り上がりの二人は、雪が作っておいたカレーを縁側で並んで食べました。
それからも二人はカフェでお喋りしたり、書道教室を営む雪から書道を習ったりと急速に仲良くなっていきました。

ある日、紡がお裾分けを持ってうららの家にやってきます。二人は同じ団地に暮らす幼馴染です。うららの部屋で「君のこと~」を見つけた紡は「慎重な割に脇が甘いんだよ」と何食わぬ顔で他のマンガを読み始めます。彼に気付かれないようBLマンガの入った段ボール箱を机の下へ押し込むうらら。幼馴染の親しさ以上の雰囲気があるな~~。

本屋でうららの部屋で見た「君のこと~」を手に取った紡は英莉に「こういうの読む?」と聞きます。興味はあると答えてBLを読み始めた英莉が、学校でも話題にしている様子を恨めしそうに眺めたうららは「ずるい」とつぶやきます。うららはBLを読むことを恥ずかしいと思っているので、明るく話題にするのが羨ましいのね。BLマンガと留学の本をレジに持ってきた英莉に思わず「ずるいよ。留学とかBLとかいろいろ…」と口にしてしまい、英莉に怪訝な顔をされます。彼女にしてみればわけわかんないよね~。(^^;

雪の家を訪ねると、彼女の娘の花江がいました。ノルウェーに住む花江は雪を心配して一緒に暮らそうと誘っていました。
雪からマンガを描くことを勧められ、「人って思ってもみないことになるものよ」と言われたうららは、借りた傘の内側の一面の薔薇を見て世界が開けた気がします。

「君のこと~」の作者のコメダ優はスランプに陥っていて、アシスタントから出された質問に好きなキャラクターを描いていつも一緒にいたかったという原点を思い出します。

うららはコミケに雪を誘いますが、腰の具合が悪そうなのを見て受験勉強を理由にコミケの話を断ってしまいます。進路調査票の提出に悩むうららが描いたノートのマンガを覗いた紡が「熱くなれるものがあって良いな」と話しかけてきます。

雪の家で、昔の少女マンガを見つけたうららに、雪は子供の頃の思い出を話します。ファンレターを書いた自分の字が汚くて出せず、書道を習い始めて気付いたら先生になっていたこと・・・「大事なものは、大事にしなきゃだめね」との言葉に一念発起したうららは5月のコミティア(オリジナル同人誌即売会)に自分の作品を出そうと決意し、雪も一緒に出ると大賛成してくれます。

道具を揃え、Youtubeで描き方を勉強するうららは挫けそうになったり悩んだりしながらも描くことを続けます。ある日、雪の書道教室の生徒で懇意にしている沼田(光石研)の印刷会社に連れて行かれたうららは、作品をオフセット印刷して製本する話を聞いて固まります。お金は雪が出させて欲しいと言い、10日で原稿を仕上げて欲しいと言われ覚悟を決めて必死に描き続けるうららです。

雪の家の縁側で窓ガラスに紙を押し当ててトレースするシーンがありますが、雪同様「私も同じことしてた」のを思い出して懐かしくなりました。
表紙の絵に水彩で色をつけて完成した原稿を沼田に預けた帰り道、うららは笑顔で「楽しかった」と呟きます。

コミティア当日。前夜に腰痛を発症した雪が行けなくなり、独り会場に向かったうららでしたが、周囲の雰囲気にのまれてしまい何も出来ずベンチでぼーっとしていると紡が現れて一冊買ってくれます。
一方、沼田にお願いして車で会場に向かった雪でしたが、車が故障して道端に座り込んでいるところにサングラスをかけたコミティア帰りの女性が心配して声をかけてきます。雪は状況を説明し、うららとの出会いのきっかけとなったコメダ優の「君のこと~」を絶賛します。(実は彼女こそがコメダ優本人なんですね。)その女性は雪の持っていたうららの作品を買ってくれました。

夜、雪の家で、がんばって作品を完成させたことを褒め、2冊も売れたことを喜ぶ雪に、うららは号泣します。

夏が来て、雪は「君のこと~」最新話の掲載誌の表紙を飾る佑真の服の柄と自分の服の柄が同じことに気付いて歓び、その服で証明写真を撮りました。
うららは紡から英莉の留学が決まり別れたことを聞きます。後日、英莉に「あの…がんばって」と声をかけたうららに彼女も「うん、ありがとう」と答えました。

「君のこと~」最終回を読んだ二人は、佑真と咲良が幸せになってよかったと盛り上がり一ヶ月後のサイン会に一緒に行く約束をします。片付いている家に気付いたうららに雪は娘と一緒に暮らすことになったと話し、あの証明写真が貼られたパスポートを嬉しそうに見せます。

サイン会当日。紡から英莉の見送りに行くべきかどうか聞かれたうららは行くように答えます。行くなと言われることを期待?していた紡は動揺し、途中までついてきて欲しいと言い出します。急いで雪に連絡して先に行っていてと伝えたうららは紡の手をつかんで走り出します。

サイン会場で、雪の順番になると、コメダはコミティアの帰りに会った老婦人だと気付いて話しかけます。驚いた雪は、あのマンガはうららが描いたものであること、遅れてこの会場に来るので直接伝えて欲しいと頼みました。
無事にサインをもらったうららが待ち合わせたカフェにやってきて、二人はそれぞれのサイン(雪は佑真の、うららは咲良のイラスト)を見せ合います。雪がマンガを買ってくれたのがコメダ先生だったことを説明するとうららは驚きます。

雪の家に帰り雨の降る様子を縁側で眺めながら「完ぺきな一日でした」と締めくくる二人。これはマンガにちなんだセリフです。

数ヶ月後。うららが雪の家にやってきます。家に風を通しに来ていた沼田と孫のまさきもいます。ノルウェーの雪と電話で短い話をしたうららが縁側で風を感じているとどこからかカレーの匂いが漂ってきました。

メタモルフォーゼとは変身のことで、思いがけない出会いがくれた素敵な変化が描かれていてほっこりさせられました。
うららは引っ込み思案で自分に自信が持てずにいる女の子で、英莉のような明るくて自分の目標をしっかり持つ子に憧れと嫉妬のない交ぜになった感情がありましたが、マンガがきっかけで自分にも熱くなれるものがあることに気付いて英莉のことも応援する気持ちに変化していきます。どこにでもいる女子高生の揺れて悩む心にそっと寄り添うようなお話でした。年の離れた友だちに喜び若返ったような気持ちではしゃぐ雪も可愛かったです。自分もそんな出会いが欲しいなぁ💛

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本日は大安なり

2023年02月18日 | 
辻村深月(著) 角川書店(版)

一世一代のたくらみを胸に秘める美人双子姉妹、クレーマー新婦に振り回されっぱなしのウェディングプランナー、大好きな叔母の結婚にフクザツな心境の男子小学生、誰にも言えない重大な秘密を抱えたまま当日を迎えてしまった新郎。憧れの高級結婚式場で、同日に行われる4つの結婚式。それぞれの思惑と事情が臨界点に達した、そのとき―。世界一幸せな一日を舞台にした、パニック・エンターテインメント長編の大傑作。(「BOOK」データベースより)


大安の結婚式場で行われる四件の結婚式の当事者、参加者、そしてウェディングプランナーの視点で描かれる物語です。
開始時間が異なる中、同時進行していくそれぞれの心情が交互に書かれているため、人物の相関図が頭に入るまで少々混乱してしまいますが、後半に向けて徐々に全体図が見えてくるのが巧いなぁと思いました。

相馬家・加賀山家
新婦の加賀山妃美佳と姉の鞠香は一卵性双生児です。容姿も瓜二つの仲良し姉妹ですが、それぞれ相手に対して劣等感やジェラシーといった複雑な感情を抱いていて、裏返せば共依存している関係です。
新郎の相馬映一は、「ややこしい女性」が好みで妃美佳を好きになりました。ここ、重要ポイントですね!
ところが、鞠香が妃美佳の「映一が自分を妃美佳と間違えた」発言にショックを受けた妃美佳が、結婚式当日の入れ替わりを鞠香に持ち掛けます。もし映一が最後まで見抜けなければ別れるつもりなのです。
鞠香が妹の提案を受け入れた理由は自分のプライドを傷つけられたから。実は妃美佳と間違われたというのは嘘で、映一は一目で鞠香だと気が付いていたのです。入れ替わって映一を騙すことで妃美佳にマウントを取ろうという気持ちがあるのね。互いに意識するあまり対抗心を燃やす二人の行為は、相手にとても失礼だと思いますが、ここで、映一が「ややこしい子が好き」という伏線が生きてきます。火災が発生した時、映一は迷わず参列席の妃美佳のところへ行き『妃美佳』と呼びます。彼は新婦の入れ替わりも瞬時に見抜いていたのです。だから最初に「勘弁してくれよ」と言ったのね。彼の方が姉妹よりもっとややこしい性格をしているけれど、だからこそこのカップルは上手くやっていけそうだと思わせてくれます。

十倉家・大崎家
山井多香子は、七年前に自分がこの式場で結婚式を挙げる予定が、相手の浮気で破談になりましたが、式の準備の際のプランナーの仕事に惹かれて未経験だったこの業界に転職していました。
ところが、今回担当することになったカップルの新婦を見て驚きます。新婦は婚約者の浮気相手だった大崎玲奈でしたが、彼女は全く気付いていません。おまけに玲奈は感情の起伏が激しく思い通りにならないと気が済まない性格で、多香子は何度も担当を降りたいと思いながら、ここで交代しては恋人だけでなく、(プランナーの)プライドまでも奪われることになると歯を食いしばって耐えて、やっと結婚式当日を迎えます。しかし当日になって玲奈の友人の着付けの予約が入っていないことがわかり、対応に奔走します。非は玲奈にあると知りながら彼女に謝罪して問題を解決した多香子は、式が無事終わることを祈りつつ、別のカップルの式の打ち合わせに入ります。

同期入社の岬も協力しての玲奈から多香子へのサプライズのエピソードが良かったです。自分の我儘を自覚しそれに応えてくれた多香子への感謝の言葉とハンカチ(以前多香子が泣いている玲奈にハンカチをあげたお返しですね)を贈った玲奈の意外な一面が見られます。火災の際にスムーズに避難できたのも、玲奈が多香子たち従業員に従うよう呼び掛けてくれたから。火災の原因が厨房で、ホテルの不手際と知り、十倉が強く非難した時にも、玲奈が助け舟を出して収まります。この当日の一連の出来事を通して、多香子は心から玲奈を祝福することができたのでした。

チーフから今後の対応が値引きの方向になると聞いた多香子は、式場側の不手際だからこそ誠意を見せ無料にするべきと反論し、岬や他のプランナーも賛同してくれます。岬が賛同してくれたこと、火災の時に多香子を気遣って彼が二階に行こうとしてくれたことに礼を言う多香子と岬の距離がぐっと近づきます。

東家・白須家
叔母のりえと東誠の結婚式に参加する白須真空は小2の男の子。
白雪姫が好きなりえが披露宴で使用するカチューシャが紛失して騒ぎになり険悪な空気が流れます。原因はカチューシャだけでなく、りえより年下でアルバイトの東との結婚は初めから家族に反対されていたのです。彼の食事のマナーやろくに会話も弾まないこともあり、りえの母や姉は恋愛経験の乏しいりえが、白馬の王子様だと勘違いしていると決めつけていました。

東に『こないだのこと、誰にも言っていないよね?』と聞かれた真空は身を固くします。何やらとんでもない秘密を抱えているような展開ですが、蓋を開ければそれは真空の思い違いで、そう思い込んだのも母や祖母が東を悪く言い続けていたからなんですね。東の友人の狐塚 と石澤恭司 の登場で、東が浮気していてりえを毒殺しようとしているという真空の誤解は解けます。白雪姫の毒リンゴの中には、りえへの婚約指輪が隠されていたという素敵な結末です。カチューシャを隠したり、リングボーイをしている時にわざと転ぼうとしたりする真空の健気さが可愛かったな。

鈴木家・三田家
新郎の鈴木陸雄は、既婚者であることを言わずに三田あすかと浮気していました。流されるまま彼女の親に挨拶に行き、結婚話しが進み、本当のことを話せないまま式当日を迎えたのです。昔から女性に事欠かなかった彼は特に好きでなくても綺麗な女性に手を出さずにいられない性分でした。妻の貴和子にゴルフに行くと嘘をついて家を出てきた彼は、放火して結婚式を中止させようとしていました。昔からピンチに陥るとストッパーが現れて難を逃れてきた彼にとって、妻の貴和子こそが運命の人で、別れる気はありません。今回もストッパーが現れないか願いつつ、覚悟を決めて披露宴会場に火をつけようとした時、火災報知器のベルが鳴り響きます。自分が放火しなくて済んだことに安堵して避難した陸雄の前に、彼のゴルフクラブを手にした恭司が現れます。恭司は、ボランティア活動に参加していた貴和子から陸雄の浮気について相談されていて、陸雄に筋を通せと迫ります。更に恭司は貴和子が妊娠していることを伝え、彼女が離婚して一人で子供を育てる覚悟をしていると言いました。それを聞いて、陸雄は過去を清算する覚悟をします。常に自分の行為を正当化し、悪いのは周囲だと考える最低な男で、読んでいてむかつくのですが、最後の最後で目が醒めるんですね。

結局、この日の4組の式費用が無料となったことや、取材インタヴューに応じた玲奈の好意的な発言に救われ、失火の不祥事による風評被害も少なく終わります。
2年後。チーフになった多香子は、別の部署に異動した岬と結婚式を挙げる予定です。映一と妃美香は結婚式を挙げ直し、その後も鞠香と三人で食事に来ていました。
懲りない姉妹は入れ替わって再び映一を試そうとしますが、一目で気が付いた彼は『勘弁してよ』とため息をつきました。

ややこしい姉妹も、最低男の陸雄すら最後はなんとなくハッピーエンドです。
多香子が独身最後に担当するのは、簡単な食事会とドレスの写真撮影を希望してい る陸雄と喜和子の夫婦です。何とか許してもらったようで、生まれた子供と一緒にやってきた彼からは、もう昔の身勝手さは消えているように見えました。

たった一日の結婚式に莫大な費用をかけるのは、それだけの決意を参列者に示すためとも言えます。どちらかというと女性主体ではあるけれど、この日に臨む色んな思いが溢れ出るような4組とプランナーの一日に徐々に引き込まれ、後半一気に読んでしまいました。

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シャイロックの子供たち ネタバレあり

2023年02月17日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2023年2月17日公開 122分 G

東京第一銀行・長原支店で現金紛失事件が発生した。ベテランお客様係の西木雅博(阿部サダヲ)は、同じ支店に勤務する北川愛理(上戸彩)、田端洋司(玉森裕太)とともに、事件の裏側を探っていく。西木たちは事件に隠されたある事実にたどりつくが、それはメガバンクを揺るがす不祥事の始まりにすぎなかった。
(映画.comより)


井戸潤の同名ー小説の映画化で、監督は「空飛ぶタイヤ」を手がけた本木克英。小説版、ドラマ版にはない映画独自のキャラクターが登場する完全オリジナルストーリーだそうな。ドラマ見てないな~と思ったらWOWOW放送だったのね。

冒頭で登場するのは佐々木蔵之介演じる黒田。妻と舞台「ベニスの商人」(劇団四季協力)を観劇しながら何やら苦い過去を抱えている様子。妻が「シャイロックは悪役だけど、そもそも金を返さない方が悪いのでは」との感想に「金は返せば良いというものでもない」と心の中で呟いています。
そして場面は銀行のATMの裏側へ転換。黒田と九条の出会いのシーンが伏線になっていました。

東京第一銀行長原支店は業績に伸び悩んでいて、支店長の九条(柳葉敏郎)や副支店長の古川(杉本哲太)の部下への圧力も増していきます。
お客様一課の滝野(佐藤隆太)がかろうじて業績を上げる中、課長代理の遠藤(忍成修吾)は追い詰められていき、遂には心の病を発症してしまいます。巨額の融資を取り付けたと課長の鹿島(渡辺いっけい)を連れて行った先が神社の狛犬という切ないエピソードも盛り込まれ、絶句し頭を下げる課長の姿に同情を禁じ得ませんでした。

一方、滝野は、赤坂支店時代の顧客の石本(橋爪功)から10億の融資話を持ち掛けられます。虚偽と知りつつ加担したのは、石本に弱みを握られていたことと、融資がうまくいけば出世ができるという欲があったから。ところが融資が下りてわずか三か月で石本から資金繰りが苦しくなったと一方的に支払いの肩代わりを頼まれます。困った滝野は、田端が融資先に持っていくお金から1束(100万円)抜いてしまいます。行内とはいえ、田端はお金を置いたまま机を離れていて、普段から札束を扱っていることの慣れと、まさか身内が盗むなんて思わない油断から起こった出来事ですね。

紛失が判明して行員総出で探しますが、当然見つかる筈もなく・・・ここで重要なポイントとなるのは、札束の帯封です。休憩室に落ちていたそれを北川を快く思っていない半田(木南晴夏)が拾って、嫌がらせで北川のBAGに入れたことから北川が疑われます。彼女が否定し、西木が警察に届けて帯封の指紋を調べれば犯人がわかると進言したことで、事件はうやむやにされます。九条や古川ら上役4人がポケットマネーで補填し表向きは「見つかった」とされたのです。これは、銀行に限らないけれど絶対やってはならない掟破りです。

西木はこの紛失騒ぎの際に、ゴミ袋の中から振り込み用紙を見つけていました。それが滝野の筆跡と気付き、彼が犯人だと推測します。半田の行為にも気付いた西木は彼女から帯封を拾った場所を聞いて確信を深めます。

石本の融資がこげついたことから検査が入ります。検査部次長の黒田(佐々木蔵之介)は、行員たちの聞き取りから100万円紛失の件を知って問い質しますが、九条から、過去の件で脅されてそれについては不問とします。穏やかな支店長の顔から一転、ずる賢さが顔を出す瞬間でした。

西木は、この融資自体にきな臭さを感じて調べ始め、九条と石本の関係に気付きます。西木は滝野に、彼が初めから九条たちの計画の駒にされていたことを告げ、この先どうすればよいのかは自分で判断するしかないと言います。

西木は、飲み仲間の沢崎(柄本明)を抱き込んで、北川や田端の協力も得て、石本と九条をはめる計画を立てます。沢崎は西木に所有している不良動産の相談を持ち掛けていましたが、それを利用した大博打です。ギャンブルが嵩じて出世コースから外れた九条にとって、銀行に損失を与えることより、石本と組んで得られる報酬の方が魅力だったわけですが、欲の皮が突っ張った人間は脇が甘くなるものなんだな~~と思わされます。
この騙しの場面は観ていてドキドキしてスリルがありました。

西木は沢崎から報酬を受け取り債務(兄の連帯保証人となって負債を抱えていました)を返済すると銀行を辞めて姿を消します。黒田も銀行を辞めて別の職に就いていました。競馬場での九条とのやりとりで、黒田も過去の自分の罪と向き合ったのだと伝わってきました。
罪に問われ刑に服していた滝野の出所当日、妻子が待っていました。彼もきちんと罪を償い、家族と再び前を向いて生きていくのだとわかるシーンです。

黒田も滝野も罪と向き合いましたが、西木はどうなんだろ?沢崎と組んで石本たちを嵌めたのは「倍返し」のリベンジとはいえ、やはり詐欺には違いない。
自分の落ち度ではない借金を返すためとはいえ沢崎から報酬を受け取るのも「まっとうな銀行員」とは言えない。だから銀行を辞めたのでしょうけど・・・。ちょっともやもやが残りますね。

芸達者な役者揃いの中でもやはり橋爪さんと柄本さんが素晴らしかったです。

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ベイビー・ブローカー

2023年02月15日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2022年6月24日公開 韓国 130分 G

古びたクリーニング店を営みながらも借金に追われるサンヒョン(ソン・ガンホ)と、〈赤ちゃんポスト〉がある施設で働く児童養護施設出身のドンス(カン・ドンウォン)。ある土砂降りの雨の晩、彼らは若い女ソヨン(イ・ジウン)が〈赤ちゃんポスト〉に預けた赤ん坊をこっそりと連れ去る。彼らの裏稼業は、ベイビー・ブローカーだ。しかし、翌日思い直して戻ってきたソヨンが、赤ん坊が居ないことに気づき警察に通報しようとしたため、2人は仕方なく白状する。「赤ちゃんを大切に育ててくれる家族を見つけようとした」という言い訳にあきれるソヨンだが、成り行きから彼らと共に養父母探しの旅に出ることに。一方、彼らを検挙するためずっと尾行していた刑事スジン(ぺ・ドゥナ)と後輩のイ刑事(イ・ジュヨン)は、是が非でも現行犯で逮捕しようと、静かに後を追っていくが…。(公式HPより)


「万引き家族」の是枝裕和監督が、「パラサイト 半地下の家族」のソン・ガンホを主演に初めて手がけた韓国映画で、子どもを育てられない人が匿名で赤ちゃんを置いていく「赤ちゃんポスト(ベイビー・ボックス)」を介して出会った人々が織り成す物語が描かれます。(映画.comより)

土砂降りの雨の晩に赤ちゃんポストの前に置き去られた赤ん坊をスジンはポストの中に入れてやります。このシーンだけでスジンの人間性が印象付けられます。
捨てられた赤ん坊には「ウソン、必ず迎えにいくから」という手紙が添えられていましたが、施設で働くドンスは、子供を欲しがる夫婦に売ることを望みます。なぜなら手紙もなく捨てられたのであれば養子縁組のチャンスがあるけれど、手紙がある時は施設に残されて惨めな生活を送ることになるからです。本当に迎えに来ることなど殆どないことを施設出身の彼は知っていました。

ドンスに監視カメラの映像を削除させて赤ん坊を連れ出したサンヒョンは、クリーニング店を営んでおり、ウソンの面倒をみながら子供の欲しい夫婦とコンタクトをとります。

サンヒョンとドンスが人身売買をしているという情報を掴んでいたスジンは、現行犯で彼らを捕まえるために尾行を続けます。

一方、ウソンを捨てたソナは、思い直して施設に戻りますが、ウソンの姿はありません。警察に通報しようとした彼女に慌てたドンスはサンヒョンのところに連れて行きます。
二人はブローカーだと明かして子供に恵まれない夫婦に預ければ大切に育ててもらえると説得します。ソナは自分もついていくことを条件に応じます。

店に借金の取り立てにやってきた組員を何とか言いくるめて最初の取引先へ出発した一行は、港町で交渉相手の夫婦と会いますが、ウソンに難癖をつけ、値引きや分割を言い出す夫婦に怒ったソナはウソンを渡さないと言い、交渉は決裂します。

ドンスが育った児童養護施設へ立ち寄った際、激しい口論となったソナとドンス。彼も書き置きと共に施設の前に捨てられていたことをサンヒョンから聞いたソナは、ドンスに謝りました。

施設を出発して次の取引相手探しについて話す中、サンヒョンは荷台に施設の子ヘジンが隠れているのを見つけます。人身売買の話しを聞かれた以上同行させざるを得なくなってしまうのね。途中パトカーに止められますが、へジンの家族旅行だと言う嘘で切り抜けます。この際、サンヒョンが偽名なことがソナに知られますが、彼女も偽名で本名は“ソヨン”だと告白します。彼女が二人を信用し始めたことが伝わってきますね。

一方、スジンたちは最初の取引が失敗したため、囮捜査に踏み切り偽の夫婦を仕込みます。しかし、夫の不妊治療がうまくいかなかったという夫婦にドンスが治療について尋ねた際に誤った返答をしたため、彼らが赤ん坊を転売しようと騙したと思った二人は取引を中止、スジンの作戦は失敗に終わります。

次の街で、ソヨンはウソンの父親の妻から電話でウソンを売るよう持ち掛けられます。
釜山のホテルで暴力団幹部の刺殺体発見のニュースが流れます。殺したのは娼婦をしていたソヨンだとにらんだスジンは彼女を呼び出して、サンヒョンたちの情報を流すよう取引します。車にはGPSが仕掛けられ、会話も筒抜けとなるのですが、一行のまるで本当の家族のような雰囲気にスジンたちの方がブローカーになったような後ろめたさを覚えます。

破格の条件でウソンを欲しいという夫婦が現れ、サンヒョンたちが心からウソンの幸せを願っていることに心を動かされたソヨンは、ウソンの父親は殺された暴力団幹部で、殺したのは自分だと告白します。
ウソンにどんな言葉をかけたらいいのかわからないというソヨンにドンスは例えば「生まれてきてくれてありがとう」と言い、その夜、ソヨンは一人一人の名を呼びながらこの言葉をかけます。
その後ホテルを抜け出したソヨンに気付いたサンヒョンは車につけられていたGPSを見つけます。車を乗り捨てた一行は、高速鉄道でソウルへ行き、3番目の夫婦と面談します。ウソンを大切に扱ってくれる夫婦に安心しながらもソヨンの心は複雑です。
引き渡しの朝、ソヨンの姿がありません。暴力団員がやってきてウソンを渡せと迫る中、サンヒョンはドンスにウソンを託し、組員と取引するとみせて彼を人目のつかない場所に引きずり込みました。
ドンスがウソンを連れて夫婦に会いに行くと、現場に警官が突入して人身売買の現行犯で逮捕されてしまいます。
実はソヨンは養父母が出所したら引き渡すことを条件に、ウソンをスジンに託して情報を流し自首していたのです。

それから3年後。夫とウソンを育てているスジンから刑期を終えたソヨンやドンス、へジンに養父母に会う日が決まったと手紙が届きます。サンヒョンだけは行方不明です。でも・・・再会の場所で一行を見守るように、離れた場所に一台の車が止まっていました。

生まれてきて良かったのかと自問するドンスやへジンが一番かけて欲しかった「生まれてきてくれてありがとう」という言葉が、とても深い意味を持って迫ってきます。
我が子を捨てたソヨンに、迎えを待ち続けてきたドンスは自分を捨てた母に重ねるところがありましたが、ソヨンの事情を知り彼女を許すことで自分を捨てた母を許し恨むことを止めることができました。そしてドンスに許すと言われたことで、ソヨンもまた救われた気持ちになったのです。

スジンもまた子供が産めないことに苦しんできた女性です。彼女が我が子を捨てる母親に対して嫉妬と憎悪の感情を持っていたのは否めませんが、ブローカー一行を追跡する中で、気持ちに変化が生じます。ソヨンから託されたウソンを育てることで彼女の中の母性もまた満たされたと言えるのかも。

サンヒョンは借金を抱えて離婚し、娘とも会えずにいました。家族を失った彼が、金目当てのブローカーという仕事を通して新しい家族と出逢ったのは運命の皮肉というべきか?ウソンを我が子のように愛し世話してきたサンヒョンは、ウソンを守るために暴力団員を手にかけ逃亡生活をすることになりますが、それでも遠くからウソンたちを見守ることを止めないのでしょう。

不器用で愛しい登場人物たちです。

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後宮の烏 アニメ

2023年02月14日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
(ストーリー紹介より)
第一話 翡翠(ひすい)の耳飾り 前篇
烏妃(うひ)は、妃でありながら夜伽をしない特別な妃である。呪殺、祈祷、失せ物さがし、頼まれればなんでも請け負うが、会えば災いがあるとも言われている。後宮に住んでいるが詳しいことは誰も知らない謎めいた存在だ。夏王朝(かおうちょう)の皇帝・夏高峻(かこうしゅん)は、烏妃の住まう夜明宮へと足を踏み入れる。そこにいたのは漆黒の衣装をまとった美しい少女・柳寿雪(りゅうじゅせつ)であった。

第二話 翡翠(ひすい)の耳飾り 後篇
高峻に頼まれた寿雪は、翡翠の耳飾りに取り憑いた幽鬼のことを調べていた。耳飾りの持ち主は班鶯女(はんおうじょ)。十年ほど前、三の妃を毒殺した疑いをかけられ、首を吊って亡くなっていた。その死の真相を突き止めるため、侍女に迎えた九九(じうじう)とともに、班鶯女の側仕えをしていた蘇紅翹(そこうぎょう)がいる洗穢寮(せんえりょう)へと向かう。しかし話を訊くことはできなかった。紅翹は舌を切り落とされていたのである。


原作小説は読了していますが、アニメ化されて2022年10月から12月まで放送されていたと知り、DVDを観てみました。
小説の世界観をとても忠実に表現していて絵も綺麗。
ストーリーを思い出しながら楽しめました。
13話まであるようだけど、完結はしないのかな?

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リミットレス

2023年02月12日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2011年10月1日公開 アメリカ 105分 G
2023年2月6日 午後ロード放送

スランプに陥り、恋人リンディ(アビー・コーニッシュ)にも去られてしまった作家のエディ(ブラッドリー・クーパー)は、義弟バーノンから脳を100%活性化できるという薬「NZT48」を手に入れる。薬を服用し一夜で長編小説を書き上げるとたちまちベストセラーとなり、さらにはビジネス界にも進出して株取引や投資で成功を収めるが、やがて恐ろしい副作用に襲われる。(映画.comより)


アラン・グリンの小説「ブレイン・ドラッグ」が原作のサスペンスアクション。監督は「幻影師アイゼンハイム」のニール・バーガー

エディが高層マンションのベランダの際に立ち飛び降りようとしている場面から始まります。(手摺りがないのが気になるけど)
そして彼がこのような事態に陥った理由が語られていくという形で話しが進みます。

作家のエディは何か月も作品のアイディアが浮かばず追い詰められていました。更に恋人のリンディにも愛想を尽かされ振られます。そんな時、偶然に街で別れた妻メリッサ(アンナ・フリエル)の弟ヴァーノン(ジョニー・ウィトウォース)と再会し、薬の売人は辞めて製薬会社のコンサルタントを しているという彼に怪し気な薬を貰います。
一粒800ドルもするNZTという名のその薬は、脳を100%使うことができる効果があると聞き、これ以上失うものはないと思ったエディは試してみることにします。すると絶大な効果を発揮し、一気に本を作り上げた彼が出版社に持ち込むと編集者に大絶賛されます。

翌朝効果が切れ、ただの人に戻ったエディは、もっと欲しいと思いヴァーノンを訪ねます。交換条件で彼に頼まれた使いをして帰ると部屋は荒らされヴァーノンは殺されていました。警察に通報したものの、犯人の狙いがNZTと気付いたエディはヴァーノンの隠し場所から大量のNZTと金を見つけて自分のものにします。

NZTを常用し始めたエディは、本を書くだけでなく、外国語やピアノを習得し、株取引を勉強してヴァーノンの金を元手に資金を増やします。もっと大きな資金を手に入れるため、ゲナディ(アンドリュー・ハワード )から10万ドルを借りて短期投資で莫大な金額を稼いだエディは一躍時の人に。新しい友人のケヴィンから、大物投資家のカール・ヴァン・ルーン(ロバート・デ・ニーロ)を紹介してもらったエディは、最大規模の合併話を持ち掛けます。

リンディともよりが戻り、順風満帆に思えた矢先、コートを着た怪しい男に尾行され、さらに体に異変が起こり始めます。バーを飲み歩き、喧嘩をし、モデルの女性と肉体関係を持ちますが、その記憶は翌朝目が覚めると途切れ途切れではっきりしません。
カールとの面談中に、件の女性が殺されたニュースを見た彼は体調を崩して退出します。

薬について情報を得ようと、ヴァーノンの顧客リストに載った人物に電話したエディは、彼らが既に死亡しているか入院しているかだと知ります。メリッサと会ったエディは、彼女もNZTを飲んで体調を崩し、服薬を止めたのだと聞かされます。今も10分しか集中力が持たないなどの副作用に苦しんでいる彼女は、急に辞めると死に至るのでNZTを飲み続けながら減量するようエディに忠告します。

体調が悪化してリンディの職場に駆け込んだエディは、彼女に全てを告白し、薬を取りに行って欲しいと頼みます。薬は彼女の家に隠してあったのね。

NZTを持ってエディの元に戻ろうとするリンディをコートの男が追いかけてきます。助けを求めた男性たちを平然と殺して追ってくる男から逃れようと、エディに電話したリンディは、彼の助言でNZTを飲んで逃げ切りましたが、薬の凄すぎる効果を危惧します。エディが服用を止める気がないと知リ、リンディは彼に別れを告げます。

エディはゲナディに金の取り立てを受けた際、NZTを一粒奪われます。ゲナディのような男に目を付けられたらとことん搾り取られるのよね。それ以降ゲナディは金に加えてNZTを要求し始めます。エディはボディーガードを雇い、スーツに隠しポケットを作り、セキュリティ万全の高層マンションを買って身を守ろうとします。

カールに送った報告書が評価され、エディはアトウッドとの合併話の会合に出席を許されます。モデル女性の殺人容疑で警察に疑われているエディは、凄腕の弁護士・ブラントを雇い危機を脱することができました。

契約のサイン当日、アトウッドが倒れて病院に入院します。実は彼もNZTの常用者で、コートの男はアトウッドに雇われて薬を奪おうとしていたのでした。隠しポケットのNZTをブラントに盗まれ、ゲナディがマンションにで押し入るところで冒頭のシーンに。

残酷なゲナディにいたぶられながら殺される位ならと飛び降りようとしていたエディですが、まだNZTが残っている可能性を思いつき、必死に探し出します。そこへゲナディが押し入ってきて、目の前で溶かしたNZTを自分の腕に注射します。何とかゲナディを刺殺したエディは、流れ出た彼の血を飲んで復活すると手下を殺します。いきなり殺し合いになるし、血を飲むシーンはホラーのようです。

エディはブラントからNZTを盗み返します。
一年後。上院議員に立候補したエディをカールが訪ねてきます。製薬会社を傘下にしたカールはNZTを楯にエディを脅しますが、エディは拒否します。

エディは薬の欠陥部分を改良しNZTの服用を止めており、NZT無しでもその能力は喪われていなかったのです。再びリンディと復縁し、食事を楽しむ二人を映して終わります。

そんな都合よくいくんかいな?と突っ込みたくなる展開でしたが、元々のエディの能力が高かったのが勝因ということで😉 


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ベル&セバスチャン 新たな旅立ち

2023年02月11日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2015年製作 フランス 97分 G

1945年、夏。戦争はついに終わりを迎え、10歳の少年セバスチャン(フェリックス・ボシュエ)とベルが暮らすアルプス山麓の村にも平和が戻ってきた。一緒に暮らすセザール爺さん(チェッキー・カリョ)の姪で、イギリスでレジスタンスに身を投じていたアンジェリーナ(マルゴ・シャトリエ)が2年ぶりに帰ってくることになり、セバスチャンは再会を心待ちにしていた。ところが、アンジェリーナを乗せた飛行機がアルプス山中に墜落したとの報せが届く。アンジェリーナは絶対に生きていると信じるセバスチャンとベルは、村で唯一のパイロット、ピエール(ティエリー・ヌーヴィック)が操縦する小型機に忍び込んで事故現場へ向かう。(映画.comより)


アニメ「名犬ジョリィ」でも知られるセシル・オーブリー原作の児童文学の実写映画化「ベル&セバスチャン」の続編です。前作のニコラ・バニエ監督に代わり、「ココ・シャネル」のクリスチャン・デュゲイ監督がメガホンをとっています。前作で語られなかったセバスチャンの両親のことが明かされます。少し大きくなったセバスチャンが自分を捨てたと思っていた父と会い、反発しながらも絆を築いていくお話です。今作でもアルプスの美しい景色が描かれますが、山火事の生々しい恐怖も伝わってきました。

アンジェリーナの帰還を心待ちにするセバスチャンとセザールに届いたのは、アンジェリーナたちが乗った飛行機がイタリア国境近くで墜落し、機体は全焼したという知らせでした。墜落が原因で酷い山火事が起きて遺体の発見は困難と言われましたが、アンジェリーナの生存を信じるセザールは、セバスチャンを連れてある男を訪ねます。彼は飛行機の操縦士で、実はセバスチャンの父親のピエール・マッソーです。セザールはセバスチャンの母が身に着けていたピエールの名前が刻まれているペンダントを渡してそのことを告げます。
妊婦を雪山に放っておくような男が父親と知り、セザール同様彼を軽蔑するセバスチャンでしたが、アンジェリーナを救うには彼の力が必要です。

ピエールの飛行場に行き、金を握らせてアンジェリーナ捜索を依頼したセザールですが、セバスチャンが彼の息子であることは明かしませんでした。ピエールの態度を見て彼が真面目に捜索しないかもと疑ったセバスチャンは、こっそりベルと飛行機に乗り込みます。そのことにセザールが気付いた時、すでに飛行機は飛び立っていました。

山火事の現場近くに上がっていたオレンジ色の煙(SOS信号)に気付いたセバスチャンでしたが、ピエールは気付かず引き返そうとしていました。セバスチャンは操縦席に飛び出して戻るよう懇願しますが、驚いたピエールは聞き入れず、揉み合いになるうちベルがピエールに噛みついて操縦困難になり湖のほとりに不時着し車輪が破損してしまいます。いきなり子供と犬が現れたらパニくるよね~~(^^;しかも彼は戦中のトラウマから犬嫌い。

ちゃんと捜そうとしなかったことを責め、ベルと山に入るセバスチャン。腹を立てながらも後を追いかけたピエールは、セバスチャンの熱意に負けて煙の場所へ行くことを約束します。

険しい山道を進む中、徐々に距離を縮めて行く二人でしたが、愛する女性リザに贈ったペンダントをセバスチャンが着けていることに気付いて問い詰め、彼が息子だと知りますが、逆に二人の間に距離ができてしまいます。

一方、セザールはピエールの整備士とセバスチャンたちが不時着した湖目指して歩いて向かっていました。健脚なセザールと山歩きが不慣れで四苦八苦している整備士の対比が面白かったです。

ベルが助けた、木に登って熊から逃げていたイタリア人の少年と山火事の避難所に着いたセバスチャンたちは、「彼」がガブリエラ(ティラーヌ・ブロンドー)という女の子だと知ります。男だけの木こりの社会で生きるための男装だったのです。(戦時中、イタリアとドイツはフランスの敵だったことも微妙に反映されていますが最早戦後なので目立った対立は描かれていません。)

避難所にアンジェリーナの姿はなく、諦めて現実を受け入れるよう説くピエールに逆らい、ベルと山に入っていったセバスチャンでしたが、消防士に捕まり連れ戻されます。暴れるセバスチャンをピエールは消防車に閉じ込め、自分とセバスチャンの母のリザとの間に起こった事を話します。駆け落ちの約束をしていたけれど、約束の場所にリザは現れず探しても見つけられなかったことや、リザが妊娠していることも知らなかったことを伝え、決して見捨てたわけではないと話したピエールは、守れない約束もあると諭します。

しかし山から戻ってきたベルが手掛かりを見つけたと確信したセバスチャンは、真夜中に抜け出してガブリエラと山に入ります。朝には風向きが変わり二人は火に囲まれてしまいます。諦めかけた時、ピエールが現れて持参したダイナマイトで突破口を開きます。(途中までガブリエラの父も娘を案じて一緒に来ていたけれど足が悪い彼はついていけずピエールに託していました。)「石頭め」と言うピエールに、「父親に似た」と笑顔で返すセバスチャンのやりとりに仲の進展が窺えます。

遂に三人は、洞穴の入り口で発煙筒を見つけます。奥の地底の割れ目に倒れていたアンジェリーナを助け出しますが、火は洞穴の入り口まで迫っていました。退路を断たれ、煙の流れる方向を目指して必死に洞穴の奥に進む一行の様子は緊張感があります。挫けそうになるセバスチャンをピエールは必死に励まし、一行は間一髪脱出することができました。セバスチャンは思わず「パパ」と叫んでピエールに抱き着きます。

山火事から生還し、飛行機の修理をするピエールとアンジェリーナを見て、ガブリエラは「コルポ・ディ・フルミネ」(一目惚れのイタリア語)と言いました。飛行機の離陸と入れ替えにセザールたちが到着します。セバスチャンは飛行機の窓からアンジェリーナの無事をセザールに伝えます。・・・っておぃ!戻って乗せてけよ!! 当然のように歩いて戻るというセザールに唖然とする整備士が何とも可哀そうだけど可笑しいシーンです。

村に戻り、リザの墓前に立つセバスチャンとピエールに、セザールとアンジェリーナも合流します。仲良く話すアンジェリーナとピエールを見て、「コルポ・ディ・フルミネ」と呟くセバスチャン。目の前には雄大なアルプスの美しい景色が広がっていました。

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