杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

ザ・ピーナッツバター・ファルコン

2020年10月31日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2020年2月7日公開 アメリカ 97分 G

老人の養護施設で暮らすダウン症のザック(ザック・ゴッツァーゲン)は、子どもの頃から憧れていたプロレスラーの養成学校に入ることを夢見て、ある日施設を脱走する。同じく、しっかり者の兄を亡くし孤独な毎日を送っていた漁師・タイラー(シャイア・ラブーフ)は、他人の獲物を盗んでいたのがバレて、ボートに乗って逃げ出す。ノースカロライナ州郊外を舞台に、偶然にも出会った二人の旅の辿り着く先は……? やがて、ザックを探してやってきた施設の看護師エレノア(ダコタ・ジョンソン)も加わって、知らない世界との新たな出会いに導かれ、彼らの旅は想像をもしていなかった冒険へと変化していく。(公式HPより)

 

ツキに見放された漁師と施設から脱走したダウン症の青年、施設の看護師の3人による青年の夢をかなえるための冒険の旅を描いたヒューマンドラマです。

ザックが暮らすのは老人ホーム。ルームメートのカールは、ザックが憧れのレスラーのソルト・ウォーター・レッドネック(トーマス・ヘイデン・チャーチ)のビデオを繰り返し観るのを付き合ってくれる理解者で、エレノアもザックを温かく見守ってくれていますが、若い彼にとって決して居心地が良い場所ではありません。

仲が良かった兄を亡くしたタイラーは、他の漁師の獲物を横取りして日銭を稼いでいましたが、違法の魚はこれ以上受けとらないと通告され、地元の漁師と喧嘩になり、腹いせに彼らの網を燃やして逃げ出します。ところがボートには下着一枚でホームを逃げ出したザックが隠れていました。ザックを置いてフロリダを目指すタイラーでしたが、船着き場での放火が大騒ぎとなって漁師たちが待ち伏せしていると知り、来た道を戻ると、ザックが虐められている所に出くわし助けます。ここから二人の旅が始まるんですね

憧れのソルト・ウォーター・レッドネックについて夢中で話し、レスラー養成所で学びたいというザックに、タイラーはフロリダの途中にあるから一緒に連れて行ってやると言って、自分のTシャツやズボンを渡します。「僕はダウン症なんだ」と打ち明けるザックに「そんなことはどうでもいい」と答えるタイラー。密漁や放火をしても、本来曇りのない心を持つ人物なのだと示されるシーンです。

商店でお金が足りずにピーナッツバターと釣り針だけを購入するタイラー。そこにザックを探して連れ帰るよう命じられたエレノアが来ますが、報奨金が出ないと知ってタイラーは知らん振りを決め込み、ザックと旅を続けるんです。

タイラーの作ったルール「その1:足手まといにならない その2:重いものはお前が持て」で、ザックに長靴を履かせて自分の荷物を背負わせるのですが、なんだかんだいっても衣類と靴まで与えているんだから、やっぱり根は良い奴なんですよね ルールその1は?と確認するタイラーに「パーティ」と答えるザックが何とも微笑ましいです。

時間を短縮するため川を渡ることになりますが、泳げないザックをゴミ袋を浮き輪代わりに結んだロープを引っ張ってタイラーは泳ぎます。途中大きな船が近づくとタイラーは必至に紐を引き、ザックは間一髪のところで船を交わします。このあとタイラーはザックに泳ぎ方を教えてあげるの

自分は悪い人間だから親に捨てられたと話すザックに、タイラーはダウン症と彼の持つ心根の良さとは関係無いと諭し、腕力の強さは長所だと励まします。そしてショットガンの使い方を彼に教えます。

廃品置き場のボートを物色する二人が出会った老人との会話も愉快でした。盲目の老人は黒人嫌いのようで、彼らが白人だとわかると友好的になり、いかだを作る材料を提供してくれます。

いかだで旅を続ける二人は、焚火の前で酒を飲み、ピーナッツバターを食べながら顔に塗りつけてふざけ合い、タイラーにリング名を考えるべきだと言われたザックは「ピーナッツ・バター・ファルコン」と叫びます。ここ、タイトルに関わる重要なシーンですね

翌朝、追ってきたエレノアが二人を発見し、ホームに帰るよう説得しますが、ザックの気持ちを尊重するようタイラーに説き伏せられ同行することに。この時、タイラーがエレノアにザックを可哀そうな知恵遅れのように扱うなと言うのですが、同時にエレノアがザックのことを本気で心配していることも彼女の言動から伝わってくるんですね。

タイラーを追う漁師達とのいざこざ(ザックがショットガンで彼らを撃退)を切り抜け、やっとたどり着いたレスラー養成所は、とっくに閉校されていました。既に引退していたソルト・ウォーター・レッドネックに、タイラーはザックの思いを伝えます。ソルトはザックが自分の大ファンでヒーローとして憧れていると知り、レスリングを教えることにします。そして本物の試合がしたいというザックの希望で、レスリングの催しに参加することに。心配するエレノア、相手がソルトとの約束を破って手加減せずザックを倒そうとする中、タイラーの声援を受け立ち上がったザックが怪力でレスラーを持ち上げリング外へ放り投げた瞬間、タイラーの背後に漁師が襲い掛かり頭部を強打。病院に運ばれたタイラーに付き添うザックとエレノア。既に三人の間には強い絆が生まれていました。

上司からザックを麻薬依存患者や売春婦が暮らすシェルターに移動すると聞かされていたエレノアは、二人と一緒にフロリダを目指しENDとなります。

ザックの持つ障害は、三人にとっての障害ではありません。お互いをただ認め尊重し信頼する、それだけです。そんな当たり前のことが何と難しいことか。彼らはそんな躊躇いも軽やかに飛び越え絆を結んでいきました。

 

 


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アイネクライネナハトムジーク

2020年10月24日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年9月20日公開 119分

仙台駅前。大型ビジョンを望むペデストリアンデッキでは、日本人初の世界ヘビー級王座を賭けたタイトルマッチに人々が沸いていた。そんな中、訳あって街頭アンケートに立つ会社員・佐藤(三浦春馬)の耳に、ふとギターの弾き語りが響く。歌に聴き入るリクルートスーツ姿の本間紗季(多部未華子)と目が合い、思いきって声をかけると、快くアンケートに応えてくれた。紗季の手には手書きで「シャンプー」の文字。思わず「シャンプー」と声に出す佐藤に紗季は微笑む。
元々劇的な〈出会い〉を待つだけだった佐藤に、大学時代からの友人・織田一真(矢本悠馬)は上から目線で〈出会い〉の極意を説く。彼は同級生の由美(森絵梨佳)と結婚し、2人の子供たちと幸せな家庭を築いている。変わり者ながらも分不相応な美人妻と出会えた一真には不思議な説得力がある。佐藤は職場の上司・藤間(原田泰造)にも〈出会い〉について相談してみるが、藤間は愛する妻と娘に出て行かれたばかりで、途方にくれていた。一方、佐藤と同じく〈出会い〉のない毎日を送っていた由美の友人・美奈子(貫地谷しほり)は、美容室の常連客・香澄(MEGUMI)から紹介された、声しか知らない男に恋心を抱き始めていた。
10年後―。織田家の長女・美緒(恒松祐里)は高校生になり、同級生の和人(萩原利久)や亜美子(八木優希)と共にいつもの毎日を送っている。そして佐藤は、付き合い始めて10年になる紗季に、意を決してプロポーズをするが…。 果たして佐藤と紗季の〈出会い〉は幸せな結末にたどり着けるのか。美奈子の恋は、藤間の人生は―。思いがけない絆で佐藤とつながっていく人々が、愛と勇気と幸福感に満ちた奇跡を呼び起こす。(公式HPより)

 

多部ちゃん出演ということで前から気にはなっていた作品ですが、三浦春馬の件があって観ることに

伊坂幸太郎の小説が原作で、不器用でも愛すべき人々のめぐり合いの連鎖を10年の歳月にわたって描き出した恋愛群像劇です。題名の「アイネクライネマハトムジーク」はモーツァルトのセレナードで知られていますが、日本語では小さな夜の曲の意。

主題歌「小さな夜」と劇中音楽を、斉藤和義が担当しています。佐藤が10年の時を超えて気付く〈出会い〉よりも大切なこと。「あの時、あの場所で出会ったのが君で本当に良かった。」というフレーズがこの作品の核になっています。

一つ一つのエピソードは日常のあり触れた出来事ですが、10年という時を隔てることで、登場人物たちの変化を感じることができます。

上から目線の美男とは言い難い織田が佐藤に説く恋愛論には「なるほど!」と感嘆させられるものがありました。 高校時代のマドンナだった由美が織田に惹かれた理由が何となくわかる気がします

佐藤と紗季を繋いだのは、駅前のストリートミュージシャンの曲と大型ビジョンで中継されていたボクシングの試合。このボクサーと美奈子の出会いもまた一つの物語になっていました。

10年後の話では、高校生になった織田の娘の美緒のエピソードが加わります。駐輪場での一件が、後にファミレスで美緒を助けるセリフの伏線になっているあたりが面白かったです。美緒と佐藤のやりとりも微笑ましい まさに子は親の背中を見て育つ!だね。由美の夫に対する姿勢も、初めは従順過ぎないか?と思ったけれど、彼女なりにちゃんと考えがあってのことなんだと気付かされます。こんな夫婦関係も良いなあ

離婚に至った藤間にも、納得のいく結末が用意されていて、どのストーリーも心温まる展開になっていたのも気持ちがほっこりしました。

それにしても10年経っても同じ人(斉藤さん:こだまたいち)が歌ってるのは一種のファンタジーか


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ハスラーズ

2020年10月23日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2020年2月7日公開 アメリカ 110分 PG12

幼少の頃に母に捨てられ、祖母に育てられたデスティニー(コンスタンス・ウー)は、祖母を養うため、ストリップクラブで働き始める。そこでトップダンサーとして活躍するラモーナ(ジェニファー・ロペス)と出会い、協力し合うことで大金を稼ぐようになり、姉妹のように親しい関係になってゆく。ダンサー仲間のダイヤモンド(カーディー・B)からもストリップでの振る舞いをレクチャーされ、デスティニーは祖母とともに安定した生活ができるようになる。
しかし2008年、リーマン・ショックによる影響で世界経済は冷え込み、ストリップクラブで働くダンサーたちにも不況の打撃が押し寄せる。シングルマザーとしての生活費や、収監中の恋人の弁護士費用など、それぞれの差し迫った事情で“お金が必要”というストリッパーたちに、ラモーナは「真面目に働いても生活が苦しいのに、経済危機を引き起こした張本人であるウォール街の金融マンたちは、なぜ相変わらず豊かな暮らしをしているのか」と言い、ウォール街の裕福な男たちから金を騙し取る計画を企てる。(公式HPより)

 

リーマンショック後のニューヨークが舞台。ストリップクラブで働く女性たちがウォール街の裕福なサラリーマンたちから数年に渡って大金を巻き上げ2013年に摘発された事件の実話に基づき、当事者や警察など関係者に取材を重ねて2015年に「NewYork Magazine」誌に掲載されたジェシカ・プレスラーによる記事“ザ・ハスラーズ・アット・スコア(原題:The Hustlers at Scores)” から着想を得て、製作された作品で、ラッパーのアッシャーとGイージーもカメオ出演していて、ミュージックビデオさながらのスタイリッシュな映像、リアーナ、ジャネット・ジャクソン、リル・ウェイン、ブリトニー・スピアーズほか、2000年代前半のヒット曲やショークラブで定番のダンス・ナンバーがストーリーを彩っています。(公式HPより)

・・・とはいえ、全く縁のない世界のお話なんだよな~~。

なんで、これ観ようと思ったんだっけ?「ハスラー」つながりで、小粋な詐欺師の物語を期待してたんだった!でも期待外れ。

裕福な顧客を捕まえてお酒にクスリを入れて意識を朦朧とさせてカードで大金を引き出す手口は、まさに犯罪そのものだけど、だからといって被害者である男性たちに同情なんてこれっぽっちも覚えないし逆に騙した女性たちにも、いくらそれぞれの事情があったにせよ、共感はできなかったし。 

強いて挙げるなら、ポールダンスの華麗な動きや当時の音楽に別世界の煌めきを感じられること・・・かな。


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カツベン!

2020年10月18日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年12月13日公開 127分 G

当時の人気職業であった活動弁士を夢見る俊太郎(成田凌)が流れ着いた小さな町の閑古鳥の鳴く映画館・靑木館。隣町にあるライバル映画館に人材も取られ、客足もまばらな靑木館にいるのは、人使いの荒い館主夫婦(竹中直人、渡辺えり)、傲慢で自信過剰な弁士(高良健吾)、酔っぱらってばかりの弁士(永瀬正敏)、気難しい職人気質な映写技師とクセの強い人材ばかり。雑用ばかりを任される毎日を送る俊太郎の前に、幼なじみの初恋相手(黒島結菜)、大金を狙う泥棒、泥棒とニセ活動弁士を追う警察(竹野内豊)などが現れ、俊太郎はさまざまな騒動に巻き込まれていく。(映画.comより)

 

サイレント映画時代を舞台に一流活動弁士になることを夢見る青年が主人公のコメディで、監督は「Shall we ダンス?」の周防正行監督。

カツベン(活動弁士)とは映画にまだ音がなかった時代に、楽士の奏でる音楽に合わせて自らの語りで説明する人のこと。(日本ではカツベンが存在したためサイレント映画としての上映はなかったらしい)個性豊かなその語りに観客は魅了され、俳優より人気があったといいます。ということは、監督の意図とは異なる解釈もできたってこと?

劇中、フィルムが焼けてしまったため繋ぎ合わせた「端切れ」状態のフィルムに合わせて語るシーンが登場しますが、見事な話術は、まさにカツベンの独壇場でした このシーンでは映写技師の仕事ぶりも描かれていて興味深かったです。

ともあれ、そんなカツベンに憧れる主人公とその周りの人間が巻き起こすアクションあり笑いあり涙ありのエンタテインメント作品になっています。俊太郎が憧れていた、飲んだくれの酔っ払い弁士もやるときゃやるね

初恋相手とのキャラメルにまつわる淡い思い出がラストで生きていました。

ライバル映画館の社長(小日向文世)とその娘(井上真央)、偽活動弁士を追う熱血刑事(竹野内豊)など、演じる俳優さんも豪華でした。


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仮面病棟

2020年10月17日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2020年3月6日公開 114分 G

先輩医師・小堺(大谷亮平)から頼まれて一夜限りの当直をすることになった速水(坂口健太郎)だったが、その夜、ピエロの仮面をつけた凶悪犯が病院に立てこもり、速水らは病院に閉じ込められてしまう。犯人に銃で撃たれて傷を負った女子大生の瞳(永野芽郁)を治療した速水は、瞳とともに脱出を試みるが、かたくなに通報を拒む院長(高嶋政伸)や、院長とともに何かを隠している様子の看護師(江口のり子、内田理央)、さらには身元不明の入院患者や隠された最新鋭の手術室など、次々と不可解な事態に直面する。(映画.comより)

 

現役医師で作家の知念実希人の小説の映画化です。

ピエロの仮面をかぶる凶悪犯に占拠され、鉄格子で閉ざされた空間となった病院を舞台に、残された医師らによる決死の脱出劇が繰り広げられるというストーリですが、冒頭、「え?これってホラーだったっけ?」な怪しさ満点の病院の雰囲気に正直引いてしまいました。

凶悪犯に撃たれたという瞳の傷跡はどうみても銃創には見えなかったし、厚塗りの化粧が違和感マックス。まぁ、それにはちゃんと理由があったことが後でわかるのですけど

速水の恋人が小堺の妹だったことや、事故で重傷を負った彼女の受け入れを拒否したのが「田所病院」であることも、真相に繋がる伏線になっていたのは良かったけれど、病院が抱える「秘密」は割と簡単に推測できたので、「犯人」の狙いもわかっちゃうという ピエロは結局利用されただけかぁぁ

復讐はあと一歩で完遂というところで、一番の悪は結局生き延びちゃうのがこういうお話の定番ですね

それでも結果としては「良し」なんだろうか?ちょっともやっとしますなぁ。


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マスカレード・ナイト

2020年10月15日 | 

東野圭吾(著) 集英社(出版)

練馬のマンションの一室で若い女性の他殺体が発見された。ホテル・コルテシア東京のカウントダウン・パーティに犯人が現れるという密告状が警視庁に届く。新田浩介は潜入捜査のため、再びフロントに立つ。コンシェルジュに抜擢された山岸尚美はお客様への対応に追われていた。華麗なる仮面舞踏会が迫るなか、顔も分からない犯人を捕まえることができるのか!?ホテル最大の危機に名コンビが挑む。(「BOOK」データベースより)

 

「マスカレード・ホテル」の映画は観てそこそこ面白かったので、続編があると知って読んでみました。新田はついつい木村拓哉をイメージしてしまうのは、映画から入ったからではあるけれど、やっぱりイメージがハマっていたということかしらん。

前作でコンビを組んだ新田と尚美ですが、今回彼女はコンシェルジュになっているのでフロントで氏原から指導を受けることになります。といっても氏原は新田を信用せず、フロント業務をさせません。そのことが犯人逮捕に微妙に影響を与えることになるのですが

犯人逮捕のため張り込む新田たちと並行して尚美がコンシェルジュとして客の要望に応えていきます。

彼女に無理難題を吹っ掛けてくる男性客の正体は、割と早い段階で推測できちゃったんですけどね

そして、その中の客が事件と大きく関わってくるのですが・・・

う~~ん・・結局女の嫉妬は怖いっていうのと、警察の対応の不味さが事件を生んだってことですかね。

それにしても仕事熱心なあまり、今回も見事に巻き込まれてしまった尚美ですが、彼女を助けたのもまたその仕事愛だったという。

第三弾があるとしたら、今度の舞台はコルテシア・ロサンゼルスですかね


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15ミニッツ・ウォー

2020年10月11日 | ドラマ

2019年10月11日公開 フランス=ベルギー 98分 PG12

76年、フランス最後の植民地ジブチで、子どもたちを乗せたスクールバスが武装組織にジャックされる事件が発生。テロリストたちは同志である政治犯の解放と、フランスからの独立を要求する。仏政府は、事件解決のため極秘裏に編成した特殊制圧チームを派遣。指揮官のジェルヴァル大尉(アルバン・ルノワール)をはじめ、トップクラスのスナイパーで結成されたチームは、一斉射撃によるテロリストの同時排除という前代未聞の作戦を立案するが、現地駐留軍や事態を穏便に収束させようと動いている外交筋との連携がうまく行かず、膠着状態が続く。そんな中、生徒たちの身を案じた女性教師ジェーン(オルガ・キュリレンコ)は、軍関係者の静止を振り切り、単身乗っ取られたバスに乗り込んでいく。(公式サイトより)

 

1976年、当時フランスの植民地だったジブチで遂行された人質救出作戦にインスパイアされたサスペンスアクションで、フランスの対テロ特殊部隊「GIGN」の正式導入前の伝説的な作戦の一部始終を、緊迫感たっぷりに描き出しています。

まだ幼く行動が読めない子どもたちを無傷で取り戻すには、複数いる実行犯を“同時に”射殺しなければなりません。そんな離れ業をやってのけたスナイパーチームですが、待機中にヨタ話をしたり屁をこいたりするユルさはいかにもフランス人らしいというかしかし、いざ射撃となった時の緊張感は、まさに一瞬で空気が変わります。

上層部の判断の遅れが現場に混乱と危機感を生じさせるのは、どこの国でも同じですね 

最初に行動していれば、余計ないざこざを招くこともなく解決しただろうにと思わせる展開です。

ファヴァート将軍は上層部と現場の間に挟まれた中間管理職的立場ですが、保守的というより決断力がない(責任をとりたくない)感じだったな~~。 演じるヴァンサン・ペレーズは「花咲ける騎士道」のファンファン役の俳優さんですが・・・気付かなかった


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ウスタード・ホテル

2020年10月10日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2012年製作 インド 151分 G

裕福な家庭に生まれドバイで育ったファイジは、高級フランス料理のシェフになるのが夢だったが、お見合いの席で漏らした一言がきっかけで、料理人になることを絶対に認めない父から勘当される。やむなくカリカットの祖父の元に身を寄せた彼は、祖父の経営する大衆食堂を手伝うことになり、さまざまな人々と出会いながら成長していく。(公式サイトより)

 

「ウスタード」とは師匠、名匠、名人の意味で、「ホテル」はこの作品の中では大衆レストランのことを指しています。

ちなみに劇中に登場する「ネコ」は実際は殺されてないそう。

ファイジは姉4人の後に生まれた待望の跡継ぎの男の子で、早くに母を亡くしたこともあり、父や姉に溺愛されて育っています。そのためか、初めは自分勝手で我儘な印象があります。料理人という出自を恥じる父親は、ファイジを実業家として成功させたいという夢があるのですが、ファイジはシェフになりたくて父を騙してシェフの養成学校に海外留学してしまいます。帰国後それがばれて勘当され、パスポートも取り上げられたファイジは、祖父が営む海辺の大衆食堂で働き始めるのです。パスポートの再発行までの間のバイト感覚だったファイジですが、ここで様々な人間模様を垣間見ることになります。

舞台は南インド・ケーララ州カリカットで、祖父の店の名物料理はビリヤニ(イスラム圏のご馳走であるコメの料理)です。このビリヤニがご馳走以上の深い意味を持つことを彼は学んでいくんですね。活気に溢れた食堂の雰囲気とマラバール・ビリヤニ、パロタ、スレイマニ・ティなどのカラフルで鮮やかな名物料理の映像にお腹が鳴ります。

留学先でできた恋人に遠距離になった途端に裏切られたり、帰国直後のお見合い相手の女性との間に紆余曲折があったりと、仕事以外でも色々な出来事が起こりますが、何より祖父の生き方に学ぶところが多いファイジでした。

ある事件がきっかけで、長年疎遠だった祖父と父のわだかまりが融け、ビリヤニの腕も認められ、人間的にもファイジの成長が見られるラストでした。


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免許がない

2020年10月04日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

1994年2月11日公開 102分

映画界の大スター・南条弘(舘ひろし)には運転免許がないという唯一のコンプレックスがあった。それを共演女優の夕顔ルリ子(五十嵐淳子)に知られてしまい、彼は遂に映画の撮影をほったらかしにして「免許を取りにいく」と宣言。マネージャーやスタッフ達はあわてふためくが、南条の固い決意は揺るがず、撮影は中断する羽目に。単身南条は自動車学校の合宿生活に入るが、そこは40歳を過ぎた中年の悲しみ、少しも思うようにいかず、おまけにセクシーな教官・宇貝京子(墨田ユキ)やキョクタンな教官・暴田(片岡鶴太郎)、カタブツな教官・照屋(西岡徳馬)らひとくせもふたくせもある難敵が勢揃いしていた。だが何とか南条に免許を取らせて撮影を再開させようとするスタッフ達の涙ぐましい努力もあり、遂に南条は免許を取得。撮影も無事進められるのだった。(映画.comより)

 

地上波放送を録画していたのを見返してみました。多分数回は観てる筈だけど感想UPしてなかったようで

バブルが弾けた後の公開とはいえ、ボディコンギャルも登場し、当時の華やかな賑わいの尻尾がまだ残っていて、懐かしさのある作品です。

映画スターの免許取得にスタッフ総出で協力するあたりは、「蒲田行進曲」のような昭和の匂いも色濃く出ているような気がします。制作は平成ですけどね

我儘で世間知らずだけど根は正直で優しい南条(舘さん、はまり役です)の人柄だからこそ、スタッフ皆に愛されているのだということが、徐々に観ている側にも伝わってきました。40過ぎての免許取得に四苦八苦する様を、ダンディな舘さんがコミカルに演じています。

教官たちがまた一癖も二癖もある個性派揃いなのもコメディとして楽しめます。お色気担当もいるけれど、やはり堅物の照屋教官の姿勢に好感が持てました。特別扱いされるのも教習所や撮影所の中だけのことであり、実際に路上に出てしまえばスターであることは運転に全く無関係なのですからね。

教習所所長(秋野太作)、映画会社社長(中条静夫)、マネージャー大政(江守徹)、銀行貸付担当(春風亭昇太)等、共演陣も豪華な顔ぶれでした。


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レナードの朝

2020年10月04日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

1991年4月5日公開 アメリカ 121分

1969年。ニューヨーク、ブロンクスにある慢性神経病患者専門の病院に赴任したセイヤー医師(ロビン・ウィリアムズ)は、話すことも動くこともできない患者たちに反射神経が残っていることに気づき、訓練によって彼らの生気を取り戻すことに成功する。ある日彼は、30年前にこの病院に入院して以来ずっと眠り続けている嗜眠性脳炎の患者レナード(ロバート・デ・ニーロ)に、まだ認可されていないパーキンソン病の新薬を投与する。そしてある朝、レナードはついに目を覚ます。(映画.comより)

 

神経科医オリバー・サックスが実体験をつづった著作をもとに、30年にわたる昏睡から目覚めた患者と彼を救おうとする医師の交流を描いたヒューマンドラマです。名作という評価は確かに当たっていると思える良質の作品です。今まで鑑賞しなかったのが不思議なくらい

個人的には病院側の登場人物の中に薬学士(ぴーたー・ストーメア)が出てくるのもツボです。当時は天秤使って秤量してたのね~~

セイヤー医師は人付き合いが極端に苦手。研究が専門の彼にとって臨床経験の全くない患者専門の病院への赴任は気が重いことです。患者との接し方にも苦労する彼でしたが、誠実な人柄が次第に周りに受け入れられていきます。ある日、患者たちに反射神経が残っていることに気付いた彼は、ボールや音楽を使って患者たちの生気を取り戻すことに成功します。臨床が専門ではなかった彼だからこその発見なんですね。

更なる回復のため、パーキンソン病の新薬L-ドパを使うことを思いついたセイヤ―ですが、まだ公式に認められていない薬のため、認められません。セイヤ―は諦めず、上司のカウフマン医師に掛け合い、まずは重症患者のレナードに使用する許可を得ます。冒頭で少年が徐々に病に侵されていく様子が映し出されますが、ここであの少年こそがレナードだったのだと気付かされます。 レナードは子供の頃に患った脳炎からパーキンソン病を発症したと考えられます。パーキンソン病の特徴である安静時振戦、歩行障害、無動の状態が少年レナードのパートで描かれていました。

徐々に服用量を増やしていったある夜、奇跡が起こります。レナードが自力でベッドから起き上がり、セイヤーと言葉を交わしたのです。

レナードの回復は目覚ましく、30年ぶりの外の世界は全てが新鮮で、セイヤ―との間にも患者と医師を超えた友情が芽生えていきます。

この成功に、病院スタッフの協力の下、他の患者たちにも薬の投与が始まり、ほぼ全ての患者が機能を回復し生きる喜びを噛み締めるのです。

ここでめでたし!となれば良かったのですが・・・レナードは、父親の見舞いにやって来たポーラに恋をして、一人で外出したいと願い出ますが、まだ早いと反対されたことで怒って暴れ出します。この件がきっかけとなり病状が悪化し狂暴になっていくレナードに、彼の母親はショックを受けます。だってレナードは子供の頃から大人しい性格だったのですから当然ですね。

薬の増量も効果が出ず、病状が悪化の一途をたどるなか、レナードは自らの状態を記録して後に役立てるようセイヤーに頼むのです。自分の無力を感じながらセイヤ―は記録を続けますが、レナードも同じ薬を使った他の患者たちも全て元の状態に戻ってしまいます。これは薬に対する耐性によるものですね 

セイヤ―は自分のしたことは患者たちを余計に苦しめたのではないかと自責の念を感じますが、エレノアはそんな彼を優しく慰めます。患者たちとの交流が、セイヤー自身の考え方にも影響を与えていきます。生きていることの素晴らしさや家族の大切さに気付いた彼は、エレノアに対しても気持ちの距離を縮めていったのでした。

その後も治療を続けるセイヤ―たちでしたが、この夏に起きたような目覚ましい回復が見られることはなかったとのこと。

患者たちは一度は希望の溢れた未来を目の前に提示されながら、また元の絶望の中に堕とされたと感じたのでしょうか?否!彼らは今まで諦めていた「普通の日常」を束の間とはいえ味わうことができたそのことに感謝していたと思いました。

今日、パーキンソン病の治療薬も多種あり、早期に発見・治療が可能となっていますから、レナードのような状態にまで進行してしまう心配はまずないそうです。それでも半世紀前にはこのような患者が多数存在していたという事実に少し驚いてしまいました。


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花宵道中

2020年10月03日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2014年11月8日公開 102分 R15+

幼少より吉原で生まれ育った朝霧(安達祐実)は、体が火照ると赤い花びらのような痣が浮かび上がることから、「花が咲く」女郎として人気を集めていた。ある日、妹女郎の八津(小篠恵奈)に誘われ縁日へ出かけた朝霧は半次郎(淵上泰史)と出会い、互いの素性も知らず恋に落ちる。後日、馴染み客の吉田屋藤衛門(津田寛治)の宴席で再会するが、二人の関係に気付いた藤衛門が朝霧を身請けしようとする。その目的が朝霧を商売の利益のために利用することだと知った半次郎は、成り行きで藤衛門を殺してしまい・・・。

 

宮木あや子の同名小説を原作に、江戸時代末期の新吉原を舞台に花魁として生きる朝霧が半次郎と出会ったことから大きく運命を変えていく姿が描かれています。

妹分の八津から「姐さん」と慕われる朝霧ですが、童顔の安達祐実が演じると年上には見えないですね でも、横暴な客に五文銭を投げつけて啖呵を切るシーンでは納得の姐さんぶりです 濡れ場など体当たりの演技にはまさに女優魂を見る思いで脱帽でした。

男に捨てられては娘を折檻して八つ当たりする母親を見て育った朝霧(体に浮かぶ「花」は折檻の跡ということでしょう)は、男を信じないことを信条に吉原で生き抜いてきました。母を亡くして行き場のない朝霧を拾ってくれた霧里(高岡早紀)を姉とも慕っていた朝霧は、吉田屋に身請けされた後に亡くなった霧里の最期を気にかけていました。

実は霧里は生き別れ子供の頃に生き別れた半次郎の姉だったということが明かされます。京の染物屋の職人である半次郎が江戸に出てきたのは、姉の消息を知りたいためでもあったのね。

そんな二人は縁日で運命の出会いをします。遊郭で出会う男たちとは一線を画す青年に心乱され想いが募る朝霧の様子は、初恋に胸ときめかせる乙女のようです。ところが、宴席で再会した二人の様子を鋭く察した藤衛門が残酷な仕打ちをします。いくら遊女でもあのように扱われるのはあまりにも酷い!!

藤衛門は半次郎に縁談を持ち掛け、自分は朝霧を身請けしようとします。半次郎は言葉巧みに藤衛門の本音を探り出すのですが、逆上した藤衛門から朝霧を守ろうとして彼を殺めてしまいます。朝霧は彼を逃がしますが、ある夜、朝霧が以前に語っていた「花魁道中」をしたいという夢を叶えるために、自分で染めて誂えた着物と履物を持って戻ってくるの。この時点で二人は死を覚悟しているのだと察せられます。

2人だけの花魁道中と、その後で燃え上がる刹那の逢瀬のシーンがとても美しかったです

冒頭に登場する切れ切れのシーンが、終盤に回収されていきました。

自ら身を投げた朝霧に、もうすぐ年季があけるのに何故?と不思議がる仲間たちでしたが、八津だけは、朝霧がその一生分の情熱を賭けて恋を成就させたことを理解していました。


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