杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢

2020年02月29日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年7月12日公開 フランス 122分

2年前からうつ病を患い、会社を退職して引きこもりがちな生活を送っているベルトラン(マチュー・アマルリック)。子供たちからは軽蔑され、義姉夫婦からも嫌味を言われる日々をどうにかしたいと思っていたある日、地元の公営プールで「男子シンクロナイズド・スイミング※」のメンバー募集を目にする。途端に惹きつけられたベルトランはチーム入りを決意するが、そのメンバーは、妻と母親に捨てられた怒りっぽいロラン(ギョーム・カネ)、事業に失敗し自己嫌悪に陥るマルキュス(ブノワ・ポールヴールド)、内気で女性経験のないティエリー(フィリップ・カトリーヌ)、ミュージシャンになる夢を捨てられないシモン(ジャン=ユーグ・アングラード)など皆、家庭・仕事・将来になにかしらの不安を抱え、ミッドライフ・クライシス真っただ中の悩めるおじさん集団だった!
元シンクロ選手のコーチ、デルフィーヌ(ヴィルジニー・エフィラ)のもと、あらゆるトラブルに見舞われながらもトレーニングに励むおじさんたち。そして無謀にも、世界選手権で金メダルを目指すことになるのだが・・・!?(公式HPより)

 

冴えない中年男性たちがシンクロナイズドスイミングで人生を再スタートさせるスウェーデンで実際にあった実話をもとに描いたヒューマンドラマです。

夢を捨てられないシモンに才能の限界という現実を突きつけるのは娘なんですが、後味は悪くはないのは、互いを思う愛情があるからなんだね。 ベルトランの妻が、金持ち然としてさも親切そうな顔で忠告をする嫌味な自分の姉に、長年の鬱憤を皮肉で吐き出すシーンはちょっと痛快でした

初めはそれぞれの家庭事情を描く方に重点が置かれていて、メタボなおじさんたちの練習風景が出てこないので、「これって本当にシンクロの話?」と疑ってしまったけれど、後半はデルフィーヌの親友のアマンダ(レイラ・ベクティ)のモラハラ&スパルタな指導で、滅茶苦茶ハードな特訓となり、スポ根話か?でも相変わらずシンクロの練習風景は断片的でしたが

こんなんで本当に大丈夫?という不安は、大会当日の演技を観て覆ります。とにかく演技内容が凄い!!照明の演出効果もあって、プロのショーみたいでした 

終了後のスタンディングオベーションで結果も当然予想できますね。

おじさんだって、目的があれば頑張れるし結果も出せるんだよ!というお話です


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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

2020年02月24日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年8月30日公開 アメリカ 161分 PG12

テレビ俳優として人気のピークを過ぎ、映画スターへの転身を目指すリック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)と、リックを支える付き人でスタントマンのクリフ・ブース(ブラッド・ピット)。目まぐるしく変化するエンタテインメント業界で生き抜くことに神経をすり減らすリックと、いつも自分らしさを失わないクリフは対照的だったが、2人は固い友情で結ばれていた。最近、リックの暮らす家の隣には、「ローズマリーの赤ちゃん」などを手がけて一躍時代の寵児となった気鋭の映画監督ロマン・ポランスキーと、その妻で新進女優のシャロン・テート(マーゴット・ロビー)が引っ越してきていた。今まさに光り輝いているポランスキー夫妻を目の当たりにしたリックは、自分も俳優として再び輝くため、イタリアでマカロニ・ウエスタン映画に出演することを決意する。そして1969年8月9日、彼らの人生を巻き込み、ある事件が発生する。(映画.comより)

 

クエンティン・タランティーノ監督の長編作で、レオとブラピの初共演でも話題になりました。落ち目の俳優と彼のスタントマンの友情と絆を軸に、1969年ハリウッド黄金時代の光と闇を描いていて、第92回アカデミー賞の助演男優賞と美術賞を受賞しています。

プロデューサーのマーヴィン(アル・パチーノ)から新しい作品のオファーを受けたものの、役の内容が気に入らないリックは、自分のキャリアが終わりそうなことに落ち込みます。一方、クリフは撮影現場でブルース・リー(マイク・モー)に売られた喧嘩を買いますが、結果マーヴィンの妻の車を傷つけてしまいスタントをクビに。

リックは、飲酒のせいでセリフを忘れたことに更に落ち込み物に当たり散らしますが、翌日、上手く演技ができたことを監督や共演した8歳の少女にも褒められ気をよくするんですね。彼の素直な性格が出るエピソードです。

クリフはというと、クビになっても気にする様子はなくて、ヒッピーの女の子を(リックの)車で送ってあげるのですが、そこは古い友人ジョージ(ブルース・ダーン)の所有地で、他にも沢山のヒッピーたちが暮らしている様子。ジョージが利用されているのではと心配するクリフにジョージは放っておいてくれと言い放ちます。(確かに利用されてはいるんだけど、彼もオイシイ思いをしているのだから他人がとやかく言うことじゃないってのもわかります。)

半年後、ローマでの撮影に臨んだ二人でしたが、リックがイタリア人女優のフランチェスカ(ロレンツァ・イッツォ)と恋に落ちます。ロスへ戻った彼らはお互い別の道を進む決意をし、別れの酒を酌み交わしますが、この夜事件が起こるんですね~~。身勝手な理由でポランスキー夫妻を襲おうとやってきたヒッピーたちが、泥酔状態のリックに追い返されたことに腹を立て、標的に彼を加えてリックの家に侵入し襲ってきたのです。

ここからはタランティーノ監督の本領発揮の反撃・暴力シーンです 最初に襲われたクリフは怪我を負いますが、彼の愛犬とともに侵入者を撃退、プールにいたリックも反撃。映画の初めの方で登場した火炎放射器がこんなところで再登場するとは!

この事件により、リックはタランティーノ夫妻の家に招かれ、知遇を得るのでしたとさ

多少は盛っているのでしょうが、実在の俳優や事件を題材にしているので、「へぇぇ~~そうだったんだ」的好奇心をくすぐられました。


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ザ・ファブル

2020年02月23日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年6月21日公開 123分

超人的な戦闘能力を持つ伝説の殺し屋ファブル(岡田准一)は、育ての親であるボス(佐藤浩市)から、1年間殺し屋を休業して普通の人間として生活するよう命じられる。もし誰かを殺したらボスによって処分されてしまうという厳しい条件の中、「佐藤アキラ」という偽名と、相棒ヨウコ(木村文乃)と兄妹という設定を与えられ、大阪で暮らしはじめたファブルは、生まれて初めての日常生活に悪戦苦闘。そんな中、偶然知り合った女性ミサキ(山本美月)がある事件に巻き込まれたことから、ファブルは再び裏社会に乗り込んでいく。

 

2017年度講談社漫画賞を受賞した南勝久のコミックの実写映画化です。無表情で常識はずれな行動を連発する岡田君演じるファブルは観ているだけで笑えてきます。殺し屋のスキルを封じられているので、相手を殺さず致命傷を負わさずの手加減がギャグタッチで描かれていて楽しめました。

子供の頃のファブル(南出凌嘉)は、田舎で極貧生活をしていた時にボス(佐藤浩市)に拾われ、サバイバル生活をしながら育った過去があります。ヤクザの世界しかしらない彼を案じたボスが、一年間一般人として生活するよう命じるのだけれど、それって何だか矛盾してるような

佐藤明「アキラ」と名乗り、相棒のヨウコ(木村文乃)を妹と偽って大阪で暮らし始めた二人は、ボスのツテで真黒カンパニー(名前が既にギャグ)の海老原(安田顕)の世話になります。ミサキ(山本美月)と出会い彼女の紹介で面接を受け、田高田社長(佐藤二朗)に時給800円、雑用係として採用されて、「普通」の生活を始めたファブルですが、海老原の部下の小島(柳楽優弥)が出所してきたことでトラブルに巻き込まれていきます。

ミサキの窮地を救うため、殺しを封印しながら、伝説のファブルを倒して名を上げようとするフード(福士蒼汰)や海老原を裏切った砂川(向井理)と戦うファブル。格闘技に通じた岡田君ならではの激しいアクションを楽しめます。

結局ボスの狙い通り、普通の生活を通して成長したってオチですかね


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ジョーカー

2020年02月16日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年10月4日公開 アメリカ 122分 R15+

アーサー・フレック(ホアキン・フェニックス)はコメディアンを夢見る心優しい男。母親から「どんな時も笑顔で人々を楽しませなさい」と教わった彼は、大都会で大道芸人として暮らしながら、いつの日か世界中に笑顔を届けようと心に誓う。しかし、周囲から冷たい反応や暴力を受け、しだいに精神を病んでいった彼は、自ら施したピエロメイクの悪“ジョーカー”へ変貌を遂げる。(MovieWalkerより)

 

「バットマン」の悪役・ジョーカー。道化師のメイクを施し、恐るべき狂気で人々を恐怖に陥れる悪のカリスマが、いかにして誕生したのかを、原作にはないオリジナルストーリーで描いています。

ヒース・レジャーがジョーカーを演じた『ダーク・ナイト』が強烈なインパクトがありましたが、今作では、悪役としての姿より、彼をそのようにした背景・状況の方に焦点が当てられていて、恐さより哀しさを強く感じました。

心優しく繊細なことが仇となって、自分を追い込み精神的に破綻し壊れていく様が何ともやりきれません。

持病としてストレス状態になると笑いが止まらなくなるという症状を抱えていることで、より困難な状況に追い込まれていくアーサーー。彼の母親はトーマス・ウェインの屋敷で働いていたことがあり、何故かアーサーは彼の子供だと思い込んでいます。彼の精神破綻の原因の一因に母親の妄想気質を引き継いでいる?母の言葉を信じたジョーカーでしたが、やがて「真実」に辿り着いた時、彼の中で守るべきものも失うものも何一つなくなったのですね。

人を形作るのは、遺伝子ではなく環境だということに異論はありませんが、なんとも残酷で切ない結末です。


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町田くんの世界

2020年02月16日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年6月7日公開 120分

運動も勉強も苦手で、見た目も地味で、何も取り柄がなさそうに見える町田くん(細田佳央太)には、人を愛することにかけてズバ抜けた才能があった。困った人のことは絶対に見逃さず、接した人々の心を癒し、世界を変えてしまう不思議な力をもつ町田くん。しかし、そんな彼の前に現れた女の子・猪原さん(関水渚)は、これまでの人々とは違っていた。初めてのことに戸惑い、自分でも「わからない感情」が胸に渦巻く町田くんだったが、「わからないことから目を背けてはいけない」という父親の言葉を胸に、「わからない」の答えを求めていく。(映画.comより)

 

「別冊マーガレット」に連載され、第20回手塚治虫文化賞で新生賞を受賞した安藤ゆきの同名コミックを実写映画化した作品です。

人間不信気味の猪原さんにとって、誰にでも全力で善意を示そうとする町田くんは理解の範疇を超えた存在です。同時に興味も引かれます。自分にないものが気になるのはごく自然なこと。お互いの距離が徐々に縮まっていきます

モデルもしている氷室(岩田剛典)のチャラさに悩み別れを切り出したさくら(高畑充希)は、傷心を町田くんに全力で慰められたことで彼に好意を示します。猪原さんは彼女の出現に心揺れ、思わぬ事態に戸惑う町田くんは、初めて恋愛について考えることになります。う~~ん、青春だ!

町田くんの両親(北村有起哉、松嶋菜々子)は大らかな人たちで、こんな両親だから彼のような素直で優しい子になったのだと素直に思わせてくれますね。

猪原さんへの感情が恋であることを自覚し、留学を決めた彼女を追う町田くんを、これまで彼から善意を受け取ってきた学校中の人間が背中を押してくれます。

週刊誌記者の吉高(池松壮亮)は仕事に意欲が持てず妻(戸田恵梨香)ともすれ違いが生じていましたが、町田くんとの出会いにより気持ちに変化が生じていきます。彼は『町田くんの世界』という題の原稿を猪原さんに渡し、それを読んだ彼女は町田君に会いたくなり・・

町田くんとの出会いが、周囲の人間を変えていき、逆に彼の初恋を皆が応援する・・・一種のファンタジーですね。

他に、クラスメイト役で前田敦子、吉高の上司役で佐藤浩市も出演していて、なかなか豪華な脇役が揃っていました。


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ニューヨーク 最高の訳あり物件

2020年02月09日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年6月29日公開 ドイツ 110分

マンハッタンの超高級アパートメントで暮らすモデルのジェイド(イングリッド・ボルゾ・ベルダル)は、デザイナーとしての華々しいデビューを企画していた。ところが、スポンサーでもある夫のニックから一方的に離婚を告げられる。傷心の中、さらに夫の前妻のマリア(カッチャ・リーマン)が転がり込み、部屋の所有権の半分は自分の物だと主張する、あり得ない事態に。同じ男と結婚したこと以外は、ファッションもライフスタイルも性格も、すべてが正反対のジェイドとマリアのプライドとこの先の人生をかけた闘いが幕を上げた! そんな折ジェイドのブランド経営が暗礁に乗り上げる。部屋を売って資金に充てたいが、マリアの返事はもちろんノー。争いはますますヒートアップしていく。だが、積年の想いをぶつけ合う二人は、自分たちの特殊だけれど特別な絆に気付き始めるのだった―。果たして<訳あり>な二人の人生と物件の行方は?(公式HPより)

 

ひょんなことから共同生活を送ることになった対照的な2人の女性が巻き起こす騒動を描いたドイツのコメディドラマです・・え??ドイツ製作だったのねと今頃気付いた私。イマイチ盛り上がらないと言うか、コメディとして消化不良だったわけがわかりました

ジェイドはマリアからニックを略奪して結婚しています。40歳を迎え、デザイナーとしてもうひと花咲かせようとしますが、ニックから突然離婚を突きつけられるの。相手は若いモデルです。ニックのような男は何度も同じことを繰り返すんですよね~~これはもう一生治らない病気みたいなもの。昔自分がしたことを棚に上げて怒鳴り込むジェイドに正直共感は持てません。

一方、マリアは40歳の時にニックに捨てられて故郷のドイツに戻り、二人の子供を育て上げて第2の人生を模索中です。どういういきさつでマリアがやってくることになったのか、部屋の所有権をなぜ「今」主張するのか全く意味不明なんですけど・・・

二人は趣味やこだわりも全く違います。その象徴としてジェイドの絵が行ったり来たり少々しつこい 

マリアがジェイドに向かって毒舌を吐くのがちょっと小気味よいと思う時点で、どうやらマリアに肩入れしているらしい自分。

ジェイドの冷凍食品やダイエット食品を捨てて、代わりに新鮮な野菜を詰め込むマリア。料理を盛りつけた皿はジェイドが「アート」として飾っていたもので、ここでも一悶着。

ドイツで取得した博士号を武器に職探しを始めたマリアでしたが、子育てでキャリアを築けなかったことを同情されながらも「アメリカの女性は早くから自立を学ぶ」と嫌味を言われてしまいます。(ん?養育費をたっぷり貰っていたから仕事しないでこれたの?)一方ジェイドも「働く女性が気楽に着られる服」というコンセプトをスタッフに理解してもらえず苛々が募ります。

ニックとの仲がもう元には戻らないと悟ったジェイドはアパートを売ろうとしますがマリアは何故か大反対し娘を呼び寄せます。後でわかるのですが、この部屋はマリアにとっても結婚生活を送った懐かしい思い出が詰まっていたのですね。

ジェイドがマリアの娘のアントニアが着ている洋服にヒントを得てデザインしたものがスタッフに好評となり、さらにアントニアが趣味で香水を作っていると知ると自分のブランドの香水開発に誘います。仕事を通して娘とジェイドの仲が急接近し、孫(これが自由というか手に負えないというかなかなかのキャラ)の世話で仕事探しも出来ないマリアの心中のもやもやは理解できるなぁ。香水が絶賛され、正式にアントニアと契約しようとするジェイドでしたが、アントニアは「お金と成功が全てのこの国で息子を育てたくはない」と言い、母が翻意(アパートを売ることを承諾)したのは自分のためだと告げます。

アパートの売却で一致した二人は、協力して部屋の模様替えをして買い手を探しますが、ニックが若いモデルと別れたと聞いて、彼に未練が残るジェイドが渋り出します。おぃおぃ!!

突然家に現れたニックがよりを戻そうと提案するあたりからの展開もちょっと置いてけぼり感が出てしまいました。

さしもの浮気亭主も、そろそろ若い子に翻弄されることに疲れて安らぎを求めるという何とも自分勝手な。そんな最低男なのに、二人とも心底愛想尽かし出来ない、心のどこかでまだ愛しているんですね~~。経済力はともかくとして、そんなに魅力的な男には見えないんだけど ジェイドが出した答えがまたぶっ飛んでる。二人一緒ならってどういう意味ですかぁぁぁ

ラストはジェイドのコレクション発表の場。これってハッピーエンドなの?? 


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アマンダと僕

2020年02月05日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年6月22日公開 フランス 107分 PG12

夏の日差し溢れるパリ。便利屋業として働く青年ダヴィッド(バンサン・ラコスト)は、パリにやってきた美しい女性レナ(ステイシー・マーティン)と出会い、恋に落ちる。穏やかで幸せな生活を送っていたが      突然の悲劇で大切な姉のサンドリーヌ(オフェリア・コルブ)が亡くなり、ダヴィッドは悲しみに暮れる。そして彼は、身寄りがなくひとりぼっちになってしまった姪アマンダ(イゾール・ミュルトリエ)の世話を引き受けることになる…。親代わりのように接しようとするが、まだ若いダヴィッドには荷が重く、戸惑いを隠せない。アマンダも、母親を失ったことをなかなか受け入れられずにいる。互いに不器用で、その姿は見ていてもどかしく、しかし愛おしい。悲しみは消えないが、それでも必死に逞しく生きようとするアマンダと共に過ごすことで、ダヴィッドは次第に自分を取り戻していく      。(公式HPより)

 

突然の悲劇で肉親を失った青年と少女の絆を描いたフランス製ヒューマンドラマです。

公園での銃撃による無差別テロで最愛の姉を奪われ、遺された彼女の幼い娘の面倒を見ることになったダヴィッドの悲しみと戸惑いが等身大に描かれていて、胸に迫ってきます。

姉弟は幼い時に母アリソン(グレタ・スカッキ)が家を出ていき、男手で育てられたこともあり、特別に仲が良かったようです。ダヴィッドが姉の死を悲しんで泣く姿が頻繁に映し出されるのもそういう事情を踏まえると納得かな。遺されたアマンダを誰が面倒を見るか・・・その最有力候補はダヴィッドです。でも仲良しだった姉の死だけでも背負いきれないほどの悲しみなのに、まだ若い身で幼い少女の人生まで責任を持つことに果たして耐えられるのか?迷う気持ちは充分理解できます。それは決して綺麗ごとじゃない現実を生きるということなのですもの。

レナと付き合い始めた矢先でもあったのに、彼女もこの事件で右腕を負傷して、ピアノが弾けなくなってしまいます。心に大きな傷を負った彼女は実家に帰るという選択をして、二人は別れることに。

仕事(公園の植栽の手入れやアパートの管理)で面倒を見れない時は、叔母のモード(マリアンヌ・バスレー)に世話を頼みますが、行ったり来たりの生活はアマンダにとっても負担が大きいの。小さな女の子ではありますが、彼女だって自分がどうなるのか不安なんです。

それでも徐々に二人の間には確かな絆がゆっくりゆっくり芽生えていくのが伝わってきました。

最終的に彼はアマンダの「親」になることを決め、レナともやり直そうとします。

映画の初めの方で、サンドリーヌがウィンブルドンの試合のチケットを取ってダヴィッドを誘うシーンがあるのですが、これは家を出て行ったイギリス人の母が暮らすロンドンを訪れること=母との再会を意味するんですね。これまで母を許せずにいたダヴィッドでしたが、アマンダを祖母に会わせる決心をします。それは彼にとっても記憶に残っていない母を受け入れるということでもありました。

ラストはウィンブルドンで、応援していた選手が0-40と追い込まれて「エルヴィスは建物を出ました」と諦めるアマンダに「まだこれからだよ」とダヴィッドが言い、実際巻き返す展開にアマンダが笑顔を取り戻すシーンでした。これは、アマンダに英語の本の題名『エルヴィスは建物を出ました』の意味を聞かれたサンドリーヌが「もうおしまい」という意味だと教えたことが伏線になっています。

母(姉)がいて幸せだったあの頃にはもう二度と戻れないけれど、悲しみはいつかはきっと乗り越えられると思えるような、希望の光が差し込むラストでした。


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