杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

エリジウム

2013年09月30日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2013年9月20日公開 アメリカ 109分

2154年、人類はスペースコロニー「エリジウム」に住む富裕層と、荒廃した地球に住む貧困層とに二分されていた。エリジウムにはどんな病でも一瞬で完治する特殊な医療装置があり、住人は死の恐怖と無縁の人生を謳歌していた。エリジウム防衛長官デラコート(ジョディ・フォスター)はその完璧なまでに美しい生活を維持するため地球からの移民を禁じ、密入国者を排除していた。地球に住むマックス(マット・デイモン)は、過酷な工場労働に従事していたが、事故で大量の照射線を浴び余命5日と宣告され解雇される。生きるためエリジウム行きを決断した彼は、レジスタンスのスパイダー(ヴァグネル・モーラ)と取引をして、ある任務の遂行と引き換えにエリジウムに潜入することを決意するが・・・。


最近の近未来映画作品では、富裕層と貧困層の二極化された世界が良く描かれるけれど、今回も例外ではありません。地球が汚染されてしまったのはその富裕層の欲望の追求の結果で、なのに負債は貧困層に押し付けられ荒廃した地球に見棄てられるというのは、まさに現在の世界情勢を写しているようで、何だか哀しい気持ちになってしまうなぁ

劣悪な環境下で貧困層は子沢山となり人口過密が生じる→犯罪が増加するという図式です。マックスも子供の頃から生きるために犯罪に手を染めて、留置所送りも何度か経験しています。幼馴染のフレイ(アリシー・ブラガ)といつかエリジウムに移住することを夢見ていましたが、大人になった今、しがない工場労働者として日々を過ごしていました。
そんな生活が一変したのは、工場で事故に遭い余命5日の身となったからです。用済みとばかりに工場を解雇されたマックスは生き延びるためにエリジウムに何としても潜り込まねばならなくなったのです。

マックスは過去の犯罪で貸しのあるスパイダー(ヴァグネル・モーラ)にエリジウム行きの切符を要求しますが、エリジウム市民が脳内に保管している莫大な預金や資産などのパスワードを手に入れるように要求され、工場の経営者カーライル(ウィリアム・フィクナー)を襲うの。そりゃ恨みがあるもんねぇ

ところがカーライルはデラコートと裏取引の陰謀に加担していたことから、マックスは陰謀の鍵を握る重要人物となってしまうのね
彼を捕えるべくデラコートは傭兵クルーガー(シャールト・コプリー)を差し向けます。手下を連れた彼らとの立ち回りも見所の一つでしょうけれど、戦いシーン苦手なので脳がスルーしちゃった

負傷した自分を手当し匿ってくれたフレイと彼女の娘マチルダがクルーガー一味に捕まったことを知ったマックスは、自分からわざと捕まりエリジウムに潜入することに成功します。
彼の後を追ってやってきたスパイダーたちと合流しフレイ母子を助け出したマックスは、既に余命が尽きかけていました。脳のデータをアップロードすることはそのまま彼の死を意味すると知り、マックスは決断します。彼の自己犠牲により、地球に住む人々もエリジウムの市民権を得て医療の恩恵を受けられることになるのでしためでたしめでたし

マックスの心の変化は、マチルダとの会話(カバの寓話)がきっかけとなっています。
デラコート長官の死に方は無様 野心ギラギラな人間は猜疑心も強いんじゃないの?と思うけど、慢心した人間の油断ってことになるのかしらん?結局人はどんな未来でもどんな世界でも愚かしいことをしでかす生き物なのかと思うとやりきれない気もします。 でも一方でマックスのように、他者のために自己を犠牲にすることも出来るのが人なのですね。

マックスの親友フリオ役がディエゴ・ルナで、掃溜めにツルのような美形にうっとりなんですが、割と早くにマックスを庇って殺されちゃうのがちょっと残念


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パラノーマン ブライス・ホローの謎

2013年09月30日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2013年3月29日公開 アメリカ 92分

300年前に魔女狩りの現場となったと言われているブライス・ホローの町に暮らす少年ノーマンは、死者と話せるという特殊な能力があった。しかし、そのせいで周りからは変人扱いされ、学校ではイジメに遭っていた。そんなある日、疎遠になっていた叔父がノーマンにある使命を託して急死してしまう。その使命とは、封印された魔女の魂が悪霊を呼び覚まして町を滅ぼそうとするのを阻止すること。死者と話す能力をもった者たちが何代にもわたり町を守ってきたことを知り、叔父からその役割を受け継いだノーマンは、封印された魔女の正体を解き明かし、町を守るために立ち上がる。


3Dストップモーションアニメなのですが、レンタルなので2D鑑賞
苛められっ子が主人公でゾンビが出てきたりと画面も暗めですが、主題はまっすぐです。

ノーマンは、ホラー映画や悪霊伝説が大好きだということを除けば、どこにでもいる普通の11歳の少年です。ただ、死者と会話できるという、通常では誰にも理解されない能力を持っていたため、周囲から甚だしく浮いた存在となっています。そりゃ、普通の人には死者は見えないのですから、気味悪い子と思われるよねぇ
お父さんやお姉さんですら、彼を理解できない中、唯一お母さんだけは受け入れているようですが、ノーマンの目にはなくなったおばあちゃんだけが味方と映っているようです。

そのおばあちゃんの助言で叔父さんとの約束を果たそうとするノーマンですが、間違えて墓場から7人の死者を蘇らせてしまい町は大混乱にこの騒動に巻き込まれたのが姉のコートニーと友達のニールとその兄のミッチ。初めは信じなかったコートニーやミッチですが、一緒に行動しているうちにノーマンの言うことを信じ、彼を助けるようになるのが良いね

実は死者たちは、無実の少女を魔女裁判にかけ死刑にしたため、彼女の呪いを受けていたのでした。ノーマンは呪いを解き町を救うために少女と話をしようとします。それは前任者たちが誰もしなかったことでした。いじめや偏見を身を以て経験し、辛い思いをしたけれど、同時に守ってくれる、助けてくれる人がいることにも気付いたノーマンだからこそ、彼女の心に届く言葉を持っていたのですね。

人は自分と違う者を受け入れるのが苦手で、時には恐れ排除しようとします。
でもそれじゃダメなんだよ、違いを認めて、仲良くしていこうよというメッセージを感じました。

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三匹のおっさん ふたたび

2013年09月29日 | 
有川 浩(著) 文藝春秋(刊)

剣道の達人・キヨ、柔道の達人・シゲ、機械をいじらせたら右に出る者なしのノリ。「還暦ぐらいでジジイの箱に蹴り込まれてたまるか!」と、ご近所の悪を斬るあの三人が帰ってきた! 書店万引き、不法投棄、お祭りの資金繰りなど、日本中に転がっている、身近だからこそ厄介な問題に、今回も三匹が立ち上がります。ノリのお見合い話や、息子世代の活躍、キヨの孫・祐希とノリの娘・早苗の初々しいラブ要素も見逃せません。漫画家・須藤真澄さんとの最強タッグももちろん健在。カバーからおまけカットまでお楽しみ満載の一冊です。 (公式HPより)


「図書館戦争」シリーズで有川さんの作品に興味を持ち借りてみました。
すっかり忘れた頃に順番が回ってきて、手に取ったところ「ふたたび」の文字
ありゃ~~シリーズ続編の方を借りちゃったかと焦るも、読み進めるうちに人物相関図も頭に入ってきて、さほど混乱もなく読了

どうやら、主人公はアラ還の三人組のじ~さん、失礼おっさんたちなのね。
現役は引退したものの、何か世の中の役に立ちたいという思いで始めた夜回りで遭遇する事件をおっさんならではの視点で解決に導く様子が小気味良かったです。

ただ、事件そのものは現代の世相を反映していて、やるせない気持ちにもさせられます。
例えば万引き事件では、現実に起こった加害少年の事故死で世間の非難が書店に集まり閉店に追い込まれたケースや、書店の台所事情などが挿入されていて、書籍事情に詳しい筆者ならではの視点があります。ゲーム感覚で万引きを繰り返す少年たちをただ捕まえて怒るだけでは解決にならないのね。本を盗んだ彼らを自分の書店で働かせ、バイト代まで払ってあげる店主の真意を正しく理解できた子がいたことが救いに感じられました。

中坊が犯人のゴミ捨て事件も、注意されたことに逆切れしての仕返し。学校側の対応はおざなりの反省文を書かせるだけって・・・大人(教育者)の対応がこんな不誠実なものだから、子供たちだって事の善悪が麻痺してくるんだよなぁと思ってしまったわ
しかし、ゴミの不法投棄に関してはイイ年のじーさんだってやってしまう。自分さえよければという空気が蔓延してる世の中に明るい未来なんてないよねぇと自戒を込めて思います。

キヨの息子のお嫁さんである世間知らずの貴子さんの初めてのパート話は、職場の人間関係の難しさが身につまされます。彼女の息子の祐希の方がバイト経験者なだけに鋭い人間観察眼を持っていて、まさに「子に教えられ」状態なのがちょっと微笑ましいです結局肌に合うかどうかも仕事選びには大切なことなのよね~

神社の神輿祭りを復活させようというシゲの息子たち世代の奮闘は、町の活性化につながる明るい題材。神社のお膝元の町会の会長が信仰の自由を盾に非協力という設定は当世風というか多少の当て擦りを含んでいるのかな金も人も出さないのに祭り当日に孫連れて縁日には出てくるというのが、逆に人間らしくて笑える点です。

祐希と早苗の交際は今時の高校生には珍しいほどの純情路線ですし、ノリの再婚話に動揺する早苗の話も一世代前の路線に思えてしまうけれど、決してつまらないというわけではありません

キヨの妻の芳江に惚れてたというニセ三匹の松木のエピソードは、アラ還世代が何を思春期のガキのような負けん気起してるんじゃいという気がしますが、彼らのような高圧的な態度で正論をぶつ輩が多くなるのもこの世代の特徴かも。危機を招かぬ注意といざという時の護身術くらいは学んでからおやりなさいって思いますが、それでも見て見ぬ振りをするより人間的かも。

やっぱり最初のお話を読まなくちゃ

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生きる悪知恵

2013年09月28日 | 
西原理恵子/著  文藝春秋/刊

『ぼくんち』『毎日かあさん』で知られる人気漫画家・西原理恵子さんが、波瀾万丈な人生経験をふまえて、恋愛、家族関係から仕事、おカネの問題まで、あらゆる悩みに答える「人生相談」エッセイです。主な項目は以下の通りです。「70社受けてもダメ。出口の見えない就活に疲れ果てました」「苦手な上司に毎日のように飲みに誘われます」「結婚して5年。妻がブクブク太っています」「夫が浮気しているようです。追及すべきでしょうか」「息子の部屋からロリコン漫画が出てきました」「60代の父が30代の女性を同棲。妙にやつれてきました」「頼まれるとイヤと言えない性格を何とかしたい」「夫が痴漢で逮捕されました。無実を信じたいのですが」「小銭を借りて返さない同僚に困っています」など。表紙カバーに西原さんのイラストが使われるほか、重松清、角田光代、しりあがり寿といった著名人からの相談に漫画で答えるコーナーもあるなど、文章でも絵でも楽しめます。 (アマゾン内容紹介より)


相談に対する回答が、まさに著者ならではの大胆な発想です。
例えば「出口の見えない就活に疲れ果てた」悩みには、横入りを勧める
上ばかり狙ってもダメならまず手の届きそうなところからいってみるとか、アルバイトから初めてみるとか、例えに出してるのが自分の地元の不良の多い高校出身者に社長が多いのはどこも雇ってくれないので自分で起業するしかないからだとか。

「夫の浮気を疑う妻」には夫の携帯メールを見たあんたが悪い!と断じ、「妻が太った」悩みには太らせたあんたが悪い!という感じ

回答の内容に思わず噴き出したり、そうだ!そうだ!と手を叩いたりの楽しい読書となりました。何より、酒乱の夫と付き合い看取った経験を持つ彼女の肝の据わり方が小気味良いのです。お気楽な悩みから深刻に思える悩みと程度も様々なのですが、一つ一つの悩みをきちんと読み取った上での豪胆な回答だから、嫌味なく受け入れられます。

人生前向きで行こう!と勇気を貰えるメッセージ集に思えました

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そして父になる

2013年09月25日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2013年9月28日公開(9月24日~27日先行上映) 120分

大手建設会社に勤務し、都心の高級マンションで妻みどり(尾野真千子)と息子慶多(二宮慶多)と暮らす野々宮良多(福山雅治)は、誰もがうらやむエリート街道を歩んできた。ある日、病院からの電話で、6歳になる息子が出生時に取り違えられた他人の子どもだと判明する。血縁か、これまで過ごしてきた時間かという葛藤の中、どうせなら早い方がいいという良多の意見で、妻のみどりや取り違えの起こった相手方の斎木夫妻(リリー・フランキー、真木よう子)は、それぞれ育てた子どもを手放すことに苦しみながらも、互いの子どもを“交換”することになるが……。


第66回カンヌ国際映画祭 審査員賞を受賞作品。福山雅治が初めて父親役を演じています。
息子が出生時に病院で取り違えられた別の子どもだったことを知らされた父親が抱く苦悩や葛藤を描いたドラマということで、福山さん演じる野々宮目線で描かれていました。

野々宮良多は典型的な勝ち組人生で、従順で家庭的な妻と温和で優しい息子との生活にも順調な仕事にも満足していました。息子にも自分と同じような勝ち組人生を歩ませようと、私立のお受験をさせピアノも習わせています。それが突然、慶多は自分と血が繋がっていないと知らされるのですが、妻への第一声に彼の本音が曝け出されています。あの一言は母として妻として考える時、やっぱり「一生忘れられない」衝撃を与えますね

取り違えられた先は群馬(みどりは里帰り出産でした)で小さな電気店を営む斉木夫妻です。粗野な言葉遣いや、お金への執着態度などに違和感を覚える野々宮は、いっそ両方引き取ってしまえばと冗談めかした上司の言葉を実行に移そうとします。それも最悪のタイミングでいや、そりゃ無理ですって!相手の気持ちを慮ることのできない良多に斉木夫妻だけでなくみどりも彼の態度をなじります。しかし実父(夏八木勲)に「いずれ向こうの子はお前に似てくる、逆に慶多は向こうに似てくる。血の繋がりには勝てない」と言われたことが頭から離れない良多は、結局交換を提案するのです。

ファーストフードを食べながら互いの子供を遊ばせることから始めて、週末のお泊りを繰り返し、交換前には記念の河原遊びをして写真を撮ったり・・無邪気に遊ぶ子供たちを見つめながら親たちの胸中は複雑です。斉木夫妻はいわゆる勝ち組ではないけれど、子供への愛情に溢れています。野々宮夫妻と逆で妻の方がポンポン物を言う彼らの会話がちょっとコミカルです。斉木は子供たちと良く遊んでくれるし、玩具も直してくれます(電気屋さんですもんね)社会的ステータスなんて子供からしたら大して意味のないものだと思わされます。父親たちが殆ど私的交流をしないのと対照的に、母親たちは互いの子供の情報交換を頻繁にしています。尾野&真木の組み合わせは今春のドラマの記憶が新しくて、配役逆の方がなんて思ったりもしながら観ていましたが、観終わってやはりこの配役で正解なんだと思いました。

そもそも昭和の時代ならともかく、今取り違え事件なんて起こるのか?という疑問が湧きますが、裁判で故意に起こされたものだと判明します。はからずも事件発覚時にみどりの母(樹木希林)が「あんたたちの恵まれた生活を誰かに恨まれてなんてことじゃないんだから」と言いましたが・・・その動機は身勝手なものでした。それなのに時効が5年だなんて短すぎじゃないの?
視点が野々宮にあるので病院側の対応が事務的過ぎるのは進行上の都合と解釈しておきますこういうケースの場合100%交換することになると言う・・自分に置き換えた時、結論が出せるかなぁ?と考えながら観ました。

しかし、本当の苦悩は子供を交換してから始まったのかもしれません。相変わらず多忙で家で子供と接する時間の少ない良多。実の息子の琉晴(黄升)が見せる寂しい横顔に胸が痛くなります。
だって今までは弟妹と、家にいて遊んでくれる父や気風の良い母に囲まれて賑やかに育ったんだものね。一方、慶多は良多にミッションと言われ、素直に斉木家で暮らし始めますが、彼の心も父母の諍いを聞いた夜から傷ついていたんだねいや、二人ともこの奇妙な交流が始まった時点からきっと小さな胸を痛めていたんだと思います。

琉晴が黙って斉木家に戻った日、この小さな家出で良多の心に変化の兆しが見えます。良多は子供の頃、父が再婚したことで義母に馴染めず本当の母に会うため家出した過去を思い出します。他者の痛みを自分に重ねることが出来たことで、彼の息子への接し方が変わっていきます。父が変われば息子も変わる。琉晴が初めて「お父さん」という言葉を口にした時の良多の表情がです。

交換後は斉木家と会わないと決めていた良多が、それを翻したのも当然の帰結ですね。
慶多に詫びて二人の間の6年間の絆を取り戻した時、両家族にとっても新たな関係が始まったのかもしれません。ラストの彼らの温かな笑い声がそれを伝えているかのようでした。

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シェフ! 三ツ星レストランの舞台裏へようこそ

2013年09月23日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2012年12月22日公開 フランス 85分

“カルゴ・ラガルド”はパリ有数の超高級三ツ星フレンチレストランだったが、20年間三ツ星を守り抜いてきたベテラン・シェフのアレクサンドル(ジャン・レノ)のスランプで大ピンチを迎えていた。次の品評会で星を1つでも失えば店の運命は終わるというのに、新しいメニューが思いつかない。そんな折、アレクサンドルは老人ホームのペンキ塗りをしていたジャッキー・ボノ(ミカエル・ユーン)と出会う。ボノは、天才的な舌を持つ若いシェフだったにも関わらず、生意気な性格のせいで数多のレストランをクビになっていた。そんなボノのほか、老人ホームの厨房で働いていた素人シェフたちも加わり結成された、問題だらけの寄せ集めシェフ軍団は、由緒あるレストランを守るために立ち上がるが……。(Movie Walkerより)


秋は美味しいものに目が吸い寄せられてしまう季節・・・というわけで、映画に出てくる美味しそうなお料理を楽しみました偉大なシェフと料理を愛する素人のコンビのコメディです。

ジャッキーは料理人に憧れて素人からプロになったばかりですが、自分の料理への拘りが過ぎるあまり、客と揉めて職場を次々と首になります。妊娠中の恋人ベアトリス(ラファエル・アゴゲ)はそんな彼に職を探してきますが、それは料理とは無関係のペンキ職人でした。ところが老人ホームの建物でペンキ塗りをする彼は、ホームのシェフたちの仕事にちゃっかり口を出し、手を出し・・それがアレクサンドルの目に留まり、彼の助手をすることになるのです。
憧れの偉大なシェフの下で働けるのですもん、ジャッキーに異存がある筈もなく・・ただ、ペンキ塗りの仕事を続けていると信じている恋人に嘘を付いていることが唯一の気がかり。

一方アレクサンドルは、レストランの評価に縛られる生活に疑問を持ち始めています。家族を犠牲にしてまで評価に拘ることに疲れてしまったのです。ジャッキーと関わったことで、料理を純粋に楽しむことを思い出した彼は、娘のアマンディーヌ(サロメ・ステヴナン)の論文の試験日には久々に腕をふるった朝食を用意し、ある決意を固めるのでした

ともあれ、店の評判を落とさぬため、二人はアイディアを練ります。審査員たちが「新しい」料理を欲していると聞き、ライバルの店に敵情視察に行ったりもするのですが、変装が殿様と芸者なのは、日本贔屓のジャンのアイディアなのかしらん?コントさながらの変装には引いてしまいましたが彼らの変装を手伝ったのは老人ホームのシェフの一人チャン(ヴァン・ヘイ・シーン)です。彼は元メーキャップ師なの 他の二人、ティティ(セルジュ・ラリヴィエール)は元タイル職人でムッサ(イサ・ドゥンビア)は元トラック運転手という経歴のユニークなメンバーたちです。流行りだという「分子料理」の描写もまるで化学実験のようです。これは現代フランス料理界への風刺の意味合いもあるのかしら?

撮影にあたり、ジャンとミカエルはアラン・デュカス料理学校で特訓を受けたようです。「アラン・デュカス」は確か、日本にも出店してるよね

二人の開発した新作料理は審査員の舌を満足させ、店は星を存続させることになりますが、アレクサンドルはジャッキーにシェフの座を譲り、自分は新しい恋と自由な職場を得ることを選択します

映画の中で、アレクサンドルの料理番組(生放送という設定)が何度か登場するのですが、レストランの厨房では真剣勝負の殺気立った場所故コメディタッチの撮影が難しい分、この場面で遊んでます。ラストもジャッキーの過剰なまでの味の拘りをドタバタ喜劇調に誇張して笑いに変えていました

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アンナ・カレーニナ

2013年09月20日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2013年3月29日公開 イギリス 130分


19世紀末、帝政末期を迎えているロシア。サンクト・ペテルブルクで社交界の華と謳われる美貌の持ち主アンナ・カレーニナ(キーラ・ナイトレイ)は、政府高官を務める夫カレーニン(ジュード・ロウ)に愛情を持てずにいた。兄夫婦(オブロンスキー:マシュー・マクファディン、ドリー:ケリー・マクドナルド)の諍いを仲裁するためモスクワへ向かう中、騎兵将校のヴロンスキー(アーロン・テイラー=ジョンソン)と出会ったアンナ。二人は一目見たときから恋に落ちてしまう。自制心を働かせようとするも、舞踏会で再会したときには燃えさかる情熱を止めることができなくなっていた。アンナは社交界も夫も捨てヴロンスキーとの愛に身を投じるが、それは同時に破滅へと向かうことになっていく……。


己の欲のために道を踏み外す者には破滅の道が待っているという怖~いお話
現代においてもアンナのような生き方は許されるものではないと思いますが、自分の欲望に忠実に生きた彼女は女性としてはちょっと羨ましいかも。個人的には好きにはなれないですがキーラはやはりコスチュームものにはうってつけの女優さんですね

舞台は帝政ロシア末期の農奴解放による新しい時代の幕が開こうとする頃。社交界という狭いしがらみの中で生きるにはアンナはあまりにも自由奔放です。愛情の激しさはやがて彼女自身をも滅ぼしていきます。

アンナの夫は表向きは妻を政治活動に利用する道具としてお飾りの美しい人形のように扱いますが、心の底では彼女を深く愛していました。それを素直にアンナに見せていたら、彼女の寂しさを埋める努力をしていたら違った結果になっていたかもとも思いますが・・いえ、やはり一度燃え上がった恋の炎は誰にも消せなかったのかもねヴロンスキーの子供を身籠ったアンナを許し、彼との仲を認めさえするその姿には深い同情を禁じ得ません。

ヴロンスキーのアンナへの愛もまた本物であったようですが、若い恋人のまっすぐな愛は時に周囲を振り回してしまうもの。アンナに出会う前にはドリーの妹のキティ(アリシア・ヴィキャンデル)に執心だったのに、アンナに夢中になって捨ててしまいます。善悪は別として、二人が再会した舞踏会のシーンとダンスが素晴らしかったです

キティに求婚して断られた地方の純朴な地主リョーヴィン(ドーナル・グリーソン)は、その噂を聞いて再度彼女に会いに出かけます。夢の王子様を待つだけの少女から、真の愛情に目覚めたキティはリョーヴィンの誠実さに気付き自分の過去の浅はかさを詫びます。二人がサイコロパズルを使って互いの気持ちを尋ねるシーンがとても感動的ですやがて二人は結婚し、共に手を携えて大地に根差した生活を営むのです。

彼らと対照的に、アンナたちは社交界からつまはじきの冷たい視線にさらされます。それは当然の成り行きです。やがてアンナは夫との進まぬ離婚に苛立ち、ヴロンスキーが浮気をしているのではと疑うようになり、列車に身を投げてしまいます。末路はまさに破滅の道でした。

救いは、残された彼女の子供たちがカレーニンの下で共に暮らしていることを窺わせるラストシーンです。まさに恩讐の彼方ということかしらん。

映画はまるで舞台劇のような作りで、セットが次々変わっていく様が斬新でした。衣装や宝飾品も豪華で、内容はともかくスクリーンで観たかったかも

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劇場版 ATARU-THE FIRST LOVE & THE LAST KILL-

2013年09月18日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2013年9月14日公開 120分

警視庁の管轄で、コンピューターウィルスによる鉄道の送電線破裂事件が発生し、沢(北村一輝)ら捜査一課の面々が捜査に乗り出す。同じ頃、アタル(中居正広)やラリー(村上弘明)が所属するニューヨークのFBI組織でも、同じ手口の爆破事件が起きていた。やがて事件は出所したばかりの犯罪者を狙った殺人未遂事件と判明し、警視庁では、車椅子の女性管理官・星(松雪泰子)を中心に捜査が開始され、”ウィザード”と呼ばれるコンピューターウィルスを生み出したマドカ(堀北真希)に疑惑が向けられ、ラリー率いるFBI捜査チームも合流することに。その中にはアタルの姿もあった。沢や舞子(栗山千明)はアタルとの再会を喜ぶが、相変わらずのマイペースのため、アタルは星ら捜査陣から煙たがられる。新たに元犯罪者をターゲットにした公開処刑ともいえる事件が起き、警察はマドカに翻弄されるが、アタルの能力や舞子たちの懸命な捜査により、少しずつ事態は進展を見せ始める。しかし、アタルがもたらす手掛かりは犯行に直結するような情報ばかりで、周囲はアタルこそが全ての犯罪を仕組んでいるのではないかと疑い始め、ある出来事をきっかけにアタルは容疑者として身柄を拘束されてしまう。果たしてマドカの狙いは何なのか?アタルとの関係は?アタルは本当に悪に染まってしまったのか・・・?物語は、日本からラスベガスへと飛び、やがて思いもよらない結末へと転がり始める!


TVドラマ、スペシャルに続く劇場版です。
レディースデーの初回ですが、ほぼ満席状態で女性率高かったかな

ドラマのファンにとっては小ネタが散りばめられた楽しい作品と言えますが、映画で初めて観た人には少しわかりにくい面もあるかも 警視庁の垂れ幕に「ノーモア映画泥棒」と書かれていたりとドラマに関係ない遊び心もあるようです。

ドラマでお馴染のコロコロコロッケがパンになって登場(セブイレとのタイアップ企画)していますが、スクリーンで観るとつい食べたくなってしまう。商業主義に乗せられる単純な我が身がちと悔しい

松雪泰子が脚に障害を持つ車椅子の管理官で登場しますが、「踊る大捜査線」の冷徹な女性管理官を連想させて何だか二番煎じな感が。体と頭の機能障害という意味での対称を狙ったのならこれも少しあざといし、アタルを排除し被疑者扱いまでした彼女が次第に彼を受け入れるようになるのもセオリー通りで単純。それが悪いということではないのですが。

マドカのターゲットが元犯罪者であることにも引っかかりを感じました。犯人が反省しているかは別として一応は服役を終えているわけだし、彼女が改めて罰する必然性に乏しい気がしたのでマドカの生い立ちから彼女が愛情に飢えていたこと、ラリーがそれを奪ってしまった形になったことが窺えるけれど、そもそもの動機を与えたのは修道院(孤児院?)のシスターじゃないかしらん

共演陣は相変わらず楽しい顔ぶれが揃っています。「・・のね」が口癖の鑑識の渥見(田中哲司)や照会センターの犬飼(中村靖日)といった脇役たちの個性も健在ですアタルの弟役は岡田将生父に市村正規、母は原日出子ですから美形家族ね

オープニングはベラージオホテルの噴水、ルート66の砂漠地帯でのクライマックスシーンやラスベガスのメインストリートなど、ロケーション自体はお金かけてるな~という印象です。

アタルの純粋さに周囲の人間が感化されていくという流れですが、舞子と沢を初め、登場人物たちのコミカルでテンポのよい会話に和みます。今回はアタルとマドカの淡い恋心も描かれていますが、このくらいのじれったさが彼(中居)には丁度良いのね

「罪を犯した者は罰せられなければならない」がキーワードになっていることは最初から読めるので結末も推察できますが、それでもあのシーンはなかなか切ないものがありました。
アタルがユリの花を一抱えずつ置いて行くラストも、彼の心を代弁しているようで良かったです。
ただ、最後のあの1シーンは映画作品としては入れる必要があったのかしら?単なるファンサービスになってしまった気がしてちょっと残念。

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すーちゃん まいちゃん さわ子さん

2013年09月16日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2013年3月2日公開 106分

いくつもの選択と向き合う瞬間。その先にきっと笑顔がある。まだ見ぬ明日の私たちへ贈る物語。
すーちゃん34歳(柴咲コウ)、まいちゃん34歳(真木よう子)、さわ子さん39歳(寺島しのぶ)は、かつてのバイト仲間。それから十数年、今でも友情は続いている。料理好きでカフェ勤務歴十数年のすーちゃんの最近の関心事は、もっぱら職場の中田マネージャー(井浦新)。 OA機器メーカー勤務のまいちゃんは、現在不毛な恋愛中。そして、WEBデザイナーとして働くさわ子さんは、母と二人で祖母の介護の日々。仕事、年齢、貯金、結婚、妊娠、介護……それぞれの道を歩いてきた彼女たちの悩みはつきない。ふと、立ち止まり、よぎる不安―《あたしが選んできたことは、ぜんぶ間違っていたの?》それでも彼女たちは"ちょこっと"の幸せを見つけて、今を生きていく―。(公式HPより)


原作は、益田ミリの人気四コマ漫画「すーちゃん」シリーズですが、未読です
映画は原作と少し設定が異なるところもあるようです。さわ子さんは漫画では少し後に登場するからか、映画でも出番は二人に比べてやや少なめでした。同い年のすーちゃん、まいちゃんのシーンが多いかな。それぞれの迷いや悩みや不安や決意が日常を通してさり気なく描かれているので、気に入ったキャラに感情移入して観るのもいいかも。

好きな料理を仕事に生かし、職場にちょっと気になる男性もいるすーちゃんはいかにも女の子らしいキャラ。でも芯は三人の中で誰よりも強い女性に見えました。彼女の片恋は同僚に先を越されて散ってしまうけれどこの中田氏ってば何だか煮えきらない男なんだよね~だからこそ相手の女性に押しきられちゃったという印象。

営業職のまいちゃんは一見強そうに見えるけれど、色んなことを頑張り過ぎて疲れちゃってます。お肌トラブルがきっかけで不倫恋愛を解消した彼女が偶然すーちゃんと会って自転車の二人乗りで共に泣くシーンがちょっと切ない。まいちゃんが、これまでの生き方を方向転換して結婚相談所に登録し結婚、妊娠の運びになるのはある意味一番普通な女性のパターンかも。出産前にナーバスになって捨ててしまった未来を悔やんだこともありましたが、それは一瞬だけ。出産後の穏やかな笑顔に答えはとうに出ていたんですね。

家での仕事と祖母の介護で出会いのなかったさわ子さんは、学校時代の友人と再会し良い感じになりますが、彼の親が「妊娠出来る体である」証明を求めていると聞かされ醒めてしまいます。後継ぎを欲しがる親の願望は理解できるとしてもそれを女性だけに押し付けて平気な男性の反応が許せないという彼女の気持ちは当然のことよね

私が一番じんときたのは、寝たきりで痴呆が進んだ祖母に挨拶したいと申し出たすーちゃんのエピソード。「どうせ何もわからないから」と挨拶もせずに帰っていったさわ子さんの弟のエピと対照的です。弟のことは身内だからこその甘えとわかっていても、普段介護している側からすれば、こういうささやかな心遣いが凄く嬉しく胸を熱くするものなのよね

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負け犬の街

2013年09月16日 | 
ダニエル・デップ著 小学館文庫

元スタントマンの探偵デイビッド・スパンドウにひとつの仕事が舞込む。依頼人は新進スター俳優のボビー・ダイ。映画『ワイルドファイヤー』撮影中の彼のもとに、数日前、「お前に死(ダイ)んでもらう」という脅迫状が届いていた。
真犯人を追ううち、スパンドウは複雑に絡みあったハリウッドの黒い人間関係に行き着く。虚栄に彩られた倒錯の世界と対峙するスパンドウが最後に見たものとは……。
不動の人気を誇る俳優ジョニー・デップの実兄ダニエル・デップが、ハリウッドで映画製作に携わった経験をもとに、虚飾の街をあざやかに描き切った渾身のデビュー小説。


ジョニーのお兄さんが小説家デビューしていたのを初めて知りました
既にシリーズ第二弾の「バビロン・ナイツ」も出てるんですね
(ちなみに1954年生まれ。俳優ジョニー・デップの異父兄。ケンタッキー大学で古典や欧州史を学び、図書館等で働いた後、カリフォルニアで中学校教師を十年務める。その後、弟に誘われ、映画製作会社「スカラマンガ」を設立、ジョニーの主演・初監督作品『ブレイブ』(1997年)の脚本を共同執筆。という経歴です

内容はミステリーというよりハードボイルド小説の類かな
身内がハリウッドスターで、自らも映画製作に関わったことがあるという経験が作品に生かされているので、赤裸々なハリウッド業界事情を覗き見している気分が味わえるのが醍醐味かも。

脅迫状が自作自演である根拠が単純過ぎなのはご愛敬。冒頭に出てきた少女の死がボビーと関係がありそうなのは簡単に推察できるので、謎解きの面白さを期待したら肩透かしです。
汚い業界事情には辟易しますが、スパンドウと元妻のディー、彼の仕事仲間で友人のテリーとシングルマザーのアリソン、「片付け屋」のポッツとオールドミスのイングリッドの三組のカップルは、純情とも呼べそうな人間味のある関係として描かれているのが救いかな。

ボビーを脅しているリッチーの店が、ヴァイパールームを連想させるブードゥールームというクラブだったり、登場人物たちが有名映画俳優に似たキャラだったりは、筆者ならではスーパーモデルのGFや業界に対する不信感と馴れなど、ボビーのキャラは若き日のジョニーにかぶっているのかといった下世話な興味も搔き立てられました

SEXや暴力の描写もあるけれど、過激さはギリギリのところで押さえているような気がしました。逆にクスリや飲酒については実際に目にしているようなリアルさがあって、さすが元業界人

主人公のスパンドウは古き良き時代のカウボーイ然とした人となりで、きっと作者の憧れや理想の込められたキャラなのでしょう。映画業界に挫折と失望を抱きながらもどこかで愛着がある人間として業界トラブルに首を突っ込んでいく姿に筆者が重なります。

続編も読もうかな

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フライト

2013年09月15日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2013年3月1日公開 アメリカ 138分

フロリダ州オークランド発アトランタ行きの旅客機に乗り込んだウィップ・ウィトカー機長(デンゼル・ワシントン)。一流の操縦テクニックを誇る彼は、この日も激しい乱気流を鮮やかに切り抜け、機体が安定すると副操縦士に任せて眠ってしまう。だが突然の急降下が、ウィトカーの眠りを破る。機体は制御不能、車輪を出し、燃料を捨て、あらゆる手段で速度を落とそうとするが、降下は止まらない。緊迫するコックピットでウィトカーは、機体を逆さまにする背面飛行を決行。高度は水平に保たれ、前方に草原が現れた。ウィトカーは機体を元に戻し、決死の不時着陸に挑む……。アトランタの病院で目覚めたウィトカーは、パイロット組合幹事のチャーリー(ブルース・グリーンウッド)から、102人中生存者は96人だと告げられる。高度3万フィートからのそれはまさに奇跡の着陸だった。しかし密かに付き合っていた客室乗務員のトリ―ナ(ナディーン・ヴェラスケス)が亡くなったと聞き、ウィトカーはショックを受ける。見舞いに来た友人のハーリン(ジョン・グッドマン)が、興奮して世の中の騒ぎをまくし立てる。マスコミがウィトカーの偉業を称え、彼は一夜にしてヒーローとなったのだ。翌朝、チャーリーに呼び出されたウィトカーは、弁護士のラング(ドン・チードル)を紹介される。フライト・レコーダーから、事故の真相は機体の故障だと解明されるはずなのに、なぜ弁護士が必要なのかと声を荒げるウィトカー。実は調査委員会で、ある重大な疑惑が浮上していた。事故後、乗務員全員に行われた検査の結果、ウィトカーの血液中からアルコールが検出されたのだ。それが事故の原因と特定されれば、ウィトカーは過失致死で終身刑となる。一方、10人のパイロットに挑戦させた事故のシミュレーションでは、全員が地面に激突、全乗客が死亡、ウィトカーの神の腕が証明される。だがマスコミが疑惑を嗅ぎつけ始める中、ある客室乗務員はウィトカーを命の恩人だと感謝しながらも、彼に有利な証言を断り、副操縦士はTVのインタビューで思わせぶりな発言をするのだった。心の拠り所だった一人息子にも罵られ、次第に追いつめられていくウィトカー。そして全てが白日の下にさらされる公聴会の日がやって来た……。


絶体絶命の飛行機トラブルを自らの経験と智慧と一瞬の決断力で救った機長が、一方で心の闇を抱えていたという設定です。
アルコール依存症の患者は自分が病気であることを認めたがらない、というのは定説ですが、彼もまた重大事故の後でさえ、自分がそうだとは認めようとはしません。それどころか、一度は断とうとした酒に、事故原因が飲酒にあるのではという疑惑が持ち上がってからは進んで溺れていきます。

そんな彼を守ろうとする人、突き放す人、見守る人・・周囲の関わり方も様々です。
しかし、最後に立ち直るチャンスが訪れます。それはまさに公聴会での一枚の写真、亡くなったトリーナの姿でした。そう、彼女は罪を着せられたとしても彼を許したでしょう。むしろそれを喜んだかもしれません。けれどウィトカーにとって、彼女を冒涜することは自らの心を葬ることにも等しかったのでしょう。それをしてしまったら、彼は彼でなくなってしまうのですから。

ウィトカーの決断は彼の自由を縛ることになりますが、家族や周囲の愛情を取り戻すことにもなるのでしたとさ

ちなみに事故原因は機体トラブルと証明されます。しかし飲酒運転は車でさえ重罪なんですから、やっぱ酔って飛行機の運転しちゃいけませんがな

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タイピスト!

2013年09月13日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2013年8月13日公開 フランス 111分

1950年代のフランスでは、社会進出しようとする女性たちの間で一番花形の職業は秘書だった。田舎から出てきたローズ(デボラ・フランソワ)もそんな一人で、保険会社を経営するルイ(ロマン・デュリス)の秘書となる。ドジで不器用すぎるため1週間でクビを宣告されるが、ローズにタイピングの才能を見出したルイは、彼女にある提案をする。当時秘書の中で、タイプライター早打ち大会で優勝することはステイタスとなっており、一大競技として人気を誇っていた。ルイはローズと組んで、タイプライター早打ちの世界大会で優勝を目論んでいた。地方予選に出場したローズは、初めて触れる試合の空気に飲み込まれあえなく敗退。ルイは1本指ではなく10本の指を使ったタイピングをするよう矯正し、難解な文学書のタイプやジョギングなどのハードなメニューを課して、ローズを特訓する。その甲斐あって地方予選を1位通過したローズだが、全仏大会には2連覇中の最強の女王が待ち構えていた……(Movie Walkerより)


秋めいてきたこの時期にはラブロマンスが観たくなる・・・というか、ハリウッド大作にちょっと疲れて軽い笑いを求めたくなったのかも
そして何よりタイプライターが脇役として輝いているのが気になったのでございます今やPCのキーボードが当たり前ですが、半世紀前はタイプライターこそが花形として脚光を浴びていたのですよそしてそのことを知る世代の一員としては懐かしさを感じずにはいられなかったのです。(もちろん作品の時代に同じ青春を過ごしていたわけではありません

まず惹かれたのがヒロインのローズのキュートさ
鼻っ柱が強くて、でも気が利かなくてKYなところもあるのですが、思ったことをストレートに口にしても相手を怒らせないおきゃんな娘なの。

初めは恋愛の対象として互いに視野にも入っていなかった二人が、やがて相手の存在を意識し、なくてはならない存在として認めていく過程はラブコメの定番のコースですが、そう思ってもやっぱり面白いんです。

厳格な父の下、一番こそが素晴らしいと思い込んでいるルイの、父親に認められたいという当人も気付いていなかった願望をすぐに見抜くローズは、決して頭の悪い田舎娘ではありませんよね

ルイは親友のボブの妻になっている幼馴染のマリーにまだ気持ちが残っていました。戦争(ノルマンディー上陸作戦の名前が出てくるあたりが時代背景を物語っているね)が二人の仲を裂いたとも言えますが、本当は自分に自身が持てずにいたルイの逃げ腰が彼女に別れを決意させたんだね。そしてマリーの力添えでルイはローズへの想いを自覚し行動を起こすのでした。やっぱ、女っていざという時の底力があるよね~

フランス大会で優勝したローズが世界大会に出るにあたって、彼女のためにと大手タイプライター会社へ行かせたルイの気持ちを知ってか知らずか、どんどん有名になっていく彼女が、みるみる洗練された美しい女性に変身していく過程は、女の子の夢の実現を衣装や髪形などで表現していて観ているだけで楽しいです

決戦の相手は宿敵アメリカの女性。スーツに身を包んだいかにも!なオールドミスタイプなので、対するローズのピンクのスイートなドレスと可憐さが引き立つことったら
最後の決戦でローズの古いタイプのアームが絡んでしまう場面では「あるある~!」と実体験が浮かんできました。タイピングが早すぎたり一度に複数のキーを叩いてしまうとよく起こる現象でしたもんね
もちろん最後はハッピーエンドですから、楽しい気分で劇場を後に出来ます

劇中で、従来のタイプアームからタイプボール(ゴルフボールのような形状の表面に活字が並ぶ)へと変わる兆しがルイの発明として登場するのも歴史的な面白さがあります。それをアメリカの企業に売り込んだという設定にユーモアを感じてしまいました。

さすがに観客はほぼ女性のみ。年齢はけっこう幅広かったな
タイプライターを知ってる世代も知らない世代もそれぞれに楽しめる要素のある作品です

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珈琲店タレーランの事件簿 2 ちょっとネタバレ

2013年09月08日 | 
岡崎 琢磨 (著) 宝島社(出版)

京都の街にひっそりと佇む珈琲店“タレーラン”に、頭脳明晰な女性バリスタ・切間美星の妹、美空が夏季休暇を利用してやってきた。外見も性格も正反対の美星と美空は、常連客のアオヤマとともに、タレーランに持ち込まれる“日常の謎”を解決していく。人に会いに来たと言っていた美空だったが、様子がおかしい、と美星が言い出して…。姉妹の幼い頃の秘密が、大事件を引き起こす。 (BOOK」データベースより)


前作と一緒に予約してたので、比較的短期間で二冊読破ということになりました。
前作より進歩してる気はするのだけど、相変わらず大切なポイントを読者に提示せず土壇場でオセロの駒をひっくり返すように矢継ぎ早に「真実」を繰り出してくる手法は変わらないのね。見事な伏線、というには少々強引で粗さも目立つので、「お見事」と騙された満足感より「何それ!」と軽く憤慨しちゃうという・・惜しいな

姉妹が小さい頃生き別れた「筈」の父親がポイント。
美空が父ではないかと探し当てた男と姉に隠れて会っていて、アオヤマ君は妹に協力しているんですが、男の正体は違っていて、大騒動に発展。
「本当のこと」がわかってしまえば、確かにおかしな点がいくつも伏線で登場してるのよね。
アブナイ借金取りに追われているらしい男の素性や、タレーランで主要登場人物が顔を合わせた場面での男の行動や、オーナーが現金を手元に置いてる話などなど

美空を救いだす場面はアオヤマ君も活躍して面目躍如というところですが、美星との仲はまたまた進展せず・・今時の若者の恋愛にしては奥手過ぎませんか
「ビブリア古書堂~」を意識してるような展開なんですけど、二番煎じはどうもね

美星と美空は姉妹といっても「双子の」というオチそりゃないぜ

京都観光の写真の謎や、女子高生の恋愛沙汰、美空の後輩の疾走事件なども間に入ってきますが、容易に謎解き出来ちゃうので、本筋の方がまだ読み応えはあるかも

続編が出る頃にはもう少しこなれてくるかしらん

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クラウド・アトラス

2013年09月08日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2013年3月15日公開 アメリカ 172分

初老の男ザックリー(トム・ハンクス)には、時空を超えたいくつもの“自分”の物語があった。1849年の太平洋諸島。“彼”は医師ヘンリー・グースとして弁護士ユーイング(ジム・スタージェス)と出会う。ユーイングはホロックス牧師(ヒュー・グラント)と奴隷売買の契約を交わす。島で罹患したユーイングに、グースは無料の治療を買って出る。1936年、ユーイングの航海日誌を読む音楽家フロビシャー(ベン・ウィショー)は父親に勘当され、恋人シックススミス(ジェイムズ・ダーシー)のもとを離れて、スコットランドの作曲家エアズ(ジム・ブロードベント)の家へ押し掛ける。フロビシャーはエアズの採譜者を務めながら、後に幻の名曲となる「クラウド アトラス六重奏」を作曲する。フロビシャーからの最後の手紙をシックススミスが受け取った37年後の1973年、サンフランシスコ。物理学者となったシックススミスは、人命に関わる原発の報告書をジャーナリストのルイサ(ハル・ベリー)に託そうとして殺される。原発の従業員アイザック・スミスである“彼”はルイサと恋におち、会社を裏切る決意をする。2012年のロンドンで“彼”は作家ダーモット・ホギンズとして著書を酷評した書評家を殺し、カルト的英雄となる。大儲けした出版元のカベンディッシュ(ジム・ブロードベント)はダーモットの弟たちに脅迫される。2144年、遺伝子操作で作った複製種を純血種が支配する全体主義国家ネオ・ソウル。複製種ソンミ451(ペ・ドゥナ)は密かにカベンディッシュ原作の映画を観て自我に目覚める。革命軍チャン(ジム・スタージェス)と恋におちた彼女は、自ら反乱を率いる。ソンミが女神として崇められる地球崩壊後106度目の冬の地で、進化した人間コミュニティーからの使者メロニム(ハル・ベリー)が若き日のザックリーの村を訪れる。ザックリーがガイド役となり悪魔の地と呼ばれる険しい山の山頂にたどり着くと、メロニムの驚くべき使命が明かされる……。( Movie Walkerより)


デイヴィッド・ミッチェルの小説『クラウド・アトラス』が原作。19世紀から文明崩壊後までの異なる時代に舞台を置いた6つの物語が並行して進んでいきます。

う~~ん・・・一度観ただけじゃ本当に理解したとは言えない、深い作品
ブルーレイの特典の解説を見て「あぁそうだったのか」と。
そもそも6つの物語に登場する俳優は基本的には主要メンバーが姿や性別まで変えて繰り返し登場してくるのだからややこしい。
ハル・ベリーくらいは見分けられても他は解説観るまで気付かなかった人も多数
6つのお話をとっかえひっかえ読んでいるような進行は正直疲れます。ただ、それぞれの物語の時間的な流れはいじってないので、それぞれの結末もほぼ同時にわかるのはイイネ

一人の人間が時の流れの中で何度も生まれ変わっていくのですが、時に悪者であり時に英雄でもあるという複雑さゆえ、公開時の評価はあまり高くなかったような気がします。それで劇場鑑賞を見送ったような
逆に興味を持ったら記録媒体で何度も繰り返し見て、その度に新たな発見を楽しむということができる作品ともいえるでしょう

ユーイングは太平洋諸島での体験を通して奴隷解放運動に目覚めます。この時はまだ運命に対して受け身ですが、後にチャンに生まれ変わりソンミを守って死んでいく革命戦線の闘士という能動的な男として成長しているの

音楽家のフロビシャーは、恋人や成功の成就半ばで自殺します。彼がユーイングの書いた航海日誌の半分しか手に入れられなかったというのが生き方の暗示のようです。彼が恋人であるシックススミスに宛てた手紙は、物理学者となったシックスセンスの原発報告書に絡む事件でルイサの手に渡り、彼女の真実追究への発奮材料となるのです。

更に、ルイサの物語は後にカベンディッシュに勇気を与えます。このエピソードはノークス看護師(ヒューゴ・アーヴィングが女装で演じています)の描写を含めてドタバタ喜劇の様相を呈しています。長い物語の中で息抜き的扱いかな

そしてカベンディッシュの物語は未来で映画として使われ、それをソンミが観て感銘を受けるという・・・この世界はスタイリッシュに描かれています。まさにSF

最後は200年後。ソンミが神格化された世界で、悪徳医師のグースから生まれ変わったザッカリーが登場します。遠い過去の罪の意識は悪魔に姿を変えてザッカリーを唆しています。

恋人たちが繰り返し生まれ変わり巡り合い愛し合うのですが、これがなかなか複雑。
チャンとソンミのカップルは実はアダムとその妻ティルダでもあるのね
彼ら若いカップルから、メロニムとザッカリーの中年カップル、カベンディッシュと若き日の恋人とのハッピーエンドなどなど生まれ変わっていく中で世界を良い方向に導いて行く流れがあって、科学の進歩の物語でもあるけれど、正しい行為が未来を導いて行くことを示唆してもいます。

三時間近い長さもこれだけの意味を含ませているなら当然なのだけど、ぼんやり観てたらきっと飽きちゃうんだろうなぁ。

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LOOPER ルーパー

2013年09月06日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2013年1月12日公開 アメリカ 118分

タイムマシンの使用が禁じられている近未来で、犯罪組織が消したい敵をタイムマシンで30年前に転送し、ルーパーと呼ばれる殺し屋に殺害させていた。ある日、腕利きのルーパー、ジョー(ジョゼフ・ゴードン=レヴィット)の元に、ある男(ブルース・ウィリス)が転送されてきたが、その男が30年後の自分自身であることに気付いてしまう。一瞬躊躇した隙をついて、未来のジョーは街へ逃走し、仕事を完遂しないと自分が殺されるため、現在のジョーは必死に追跡する。ようやく未来のジョーを追い詰めた現在のジョーは、彼が30年後の未来の犯罪王「レインメーカー」を殺しに来たことを知り・・・。


悪者は元から断たなきゃダメってことなんですが、30年前の世界ではまだ幼児ということになるわけで・・ジョーが密かに想っているサラ(エミリー・ブラント)の息子のシド(ピアース・ガノン)が未来の悪の親玉と言われても、そりゃ素直に協力なんて出来ないですよね。
しかしオールド・ジョーの方にも、愛する女性を組織に殺されたことで、何としても運命を変えたいという強い願いに突き動かされていて、彼らの間に妥協点はないのです。
どちらにしてもジョーという男は正義のヒーローじゃなくて悪の側の人間なので、主人公への感情移入はできかねる作品ではあります。

シドは特殊能力(念動力のような怒りの強力なパワー)を持っていますが、幼く未熟なのでその能力をコントロール出来ないの 子役の可愛さが、彼を殺そうとするオールド・ジョーの非道さを増してます。

あくまでシドを消そうとするオールド・ジョーに抵抗して彼とサラを守ろうとするジョーは、未来の自分を消すことも厭わない決意です。そして遂には自らを滅ぼすことで未来を変えるのです。
ジョーには自分の過去(親に売られ棄てられて悪の道に走った)をシドに重ねて彼の運命が見えたというわけです。あら、案外良い奴じゃん

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