杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

グリンゴ 最強の悪運男

2020年09月28日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2020年2月7日公開 アメリカ=メキシコ=オーストラリア 111分 PG12

製薬会社の管理部長としてシカゴ本社とメキシコ工場を行き来し、朝から晩までマジメに働いたのに、もうすぐクビに! 友達だったはずの経営者に騙された上に、最愛の妻にまで離婚される始末… パッとしない負け犬人生を歩んではきたけれど、さすがにこれほどのどん底は初めてのハロルド(デビッド・オイェロウォ)は、極悪モンスター上司のリチャード(ジョエル・エドガートン)と、彼の愛人で共同経営者のエレーン(シャーリーズ・セロン)へのリベンジを誓う。メキシコで〈偽装誘拐〉を演じ、身代金5億円を奪うという、生涯初の悪事を企てたのだ。ところが、ハロルドが死ねば、会社に保険金が入ることに気づいたリチャードは殺し屋を雇う。さらに、リチャードの会社の医療大麻の製造レシピを狙うメキシコの麻薬組織のボスが、ハロルドの〈本気の誘拐〉に参戦! 果たして、貯めに貯めた悪運を爆発させた、ハロルドの一発大逆転の切り札とは?(公式HPより)

グリンゴとはスペイン語で「よそ者」を意味するスラングで、メキシコ人などヒスパニックの人々が、アメリカ人を小バカにするニュアンスで使われるそうな。

シャーリーズ・セロンが製作・出演の2役の、スーパーリベンジ・エンターテインメント作品です

お人好しで温厚な正直者のハロルドは、これまで貧乏くじばかり引いてきましたが、親友や妻の裏切りを知って遂にリベンジに立ち上がります。友人を裏切り、保険金目当てでハロルドを殺すよう兄に依頼する冷血な上司のリチャードは最低だけど、彼の愛人のエレーンが輪をかけた悪女というこんな上司たちの下で良く我慢してきたものだと、これだけで同情ポイントですね。

リチャードの兄のミッチ(シャールト・コプリー)は元傭兵ですが、今は人道主義に目覚めているというキャラで、弟のリチャードに依頼されて行方不明になったハロルドを見つけますが、彼に同情して一旦は味方についたものの、リチャードから報酬UPを提示され、あっさり裏切るあたりは(人道的目的の資金という大義があるとはいえ)やっぱり最悪な兄弟だね~

これに、現地の麻薬組織のボスや運び屋(彼のGF役でアマンダ・サイフリッドも出演していました)、ハロルドが潜伏したホテルの経営者兄弟が絡んでのドタバタはまさにコメディです。

裏切って密告した経営者兄弟はあっさり始末され、麻薬組織に消されそうになって絶体絶命のハロルドを救ったのは、工場にドライバーとして潜伏していた覆面捜査官のエンジェル(ユル・ヴァスケス)。大金と(ミッチが作っていた)偽造の身分証をGETして第二の人生が拓けるあたりはハッピーエンドといっていいのかな


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

リチャード・ジュエル

2020年09月27日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2020年1月17日公開 アメリカ 131分

96年、五輪開催中のアトランタで、警備員のリチャード・ジュエル(ポール・ウォルター・ハウザー)が、公園で不審なバッグを発見する。その中身は、無数の釘が仕込まれたパイプ爆弾だった。多くの人々の命を救い一時は英雄視されるジュエルだったが、その裏でFBIはジュエルを第一容疑者として捜査を開始。それを現地の新聞社とテレビ局が実名報道したことで、ジュエルを取り巻く状況は一転。FBIは徹底的な捜査を行い、メディアによる連日の加熱報道で、ジュエルの人格は全国民の前で貶められていく。そんな状況に異を唱えるべく、ジュエルと旧知の弁護士ブライアント(サム・ロックウェル)が立ち上がる。ジュエルの母ボビ(キャシー・ベイツ)も息子の無実を訴え続けるが……。(映画.comより)

 

クリント・イーストウッド監督による、1996年のアトランタ爆破テロ事件の真実を描いたサスペンスドラマです。現代社会において庶民感情を煽って被害者や加害者のプライバシーを一方的に垂れ流すメディア・リンチが、個人を地獄に突き落とす構図が、リアルに描かれています。

ジュエルがFBIに目を付けられることになった発端は、彼がかつて警備員として働いていた大学の学長による通報でした。学内の問題点に過剰に反応する行動を取っていたジュエルを快く思っていなかった学長が、勝手な憶測でジュエルに爆弾設置の可能性があると指摘したのです。

オリンピック開催で湧いていた折で、一刻も早い犯人検挙に躍起になっていたFBIがこの情報に飛びつき、憶測を正統化するために強引なプロファイリングをします。でもそれは単なる統計学であって科学的根拠はありませんでした。ジュエルのデータ:法執行官への憧れからくる過剰な正義感、ヒーローになりたい願望と周囲から浮くことによる孤独、独身の白人&マザコン男であること、肥満体型等々・・が、犯人像に合致してしまいます。映画の中では、南カリフォルニアの山火事で、自ら火を放ち消火して英雄となった消防士のケースや、ロサンゼルス・オリンピック開催中にバスに爆弾を設置し、直後に発見してヒーローとなった警備員のケースなどを挙げて、だからジュエルも犯人に違いないと示唆します。

ブライアントが自分の足で確かめた物理的な潔白証拠すら、FBIは確認しようともせず、彼がそれを指摘しても共犯者説を持ち出し反論します。初めにジュエル=犯人ありきの捜査なのです。しかも、捜査官(ジョン・ハム)自らが新聞記者のキャシー(オリヴィア・ワイルド)に情報をリークしたことで、メディアはジュエルを容疑者として過熱報道します。こうなると、世間は一転、彼をクロと決めつけメディアと一緒になって攻撃します。

ジュエルは、銃の愛好家で沢山の銃を所持し、過去には問題も起こしていて、決して清廉潔白な人物ではありませんが、それでも純粋な愛国心を持った普通の人間です。それを寄ってたかってテロリストに仕立て上げようとする図は気持ちの良いものではないし、翻って自分の身に起こらないわけではないかもしれない恐怖も抱きました。

ブライアントは偏屈な弁護士ですが、正義感の強い人物として描かれています。ジュエルがシロだと直感した彼は、無実を勝ち取るべく戦いを始めます。目には目をと母親のボビをマスコミに登場させて大統領に訴えたり、キャシーに彼が無実である証拠を突きつけたりします。

証拠を見つけようとジュエルの家に二度も捜索に入り、母親のタッパまで持ち去りますが、それでも確実な物証は出ません。

最終尋問で、ジュエルは捜査官に訴えます。今回の事で、次に誰かが爆弾を見つけたとしても自分が犯人にされてしまうならと通報を躊躇い惨事が起きてしまうかもしれない。それをあなた方はどう思うのかと。このセリフが一番心に響いてきました。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

おいしい家族

2020年09月20日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年9月20日公開 95分

銀座で働く橙花(松本穂香)は、夫と別居中。仕事もうまくいかず都会での生活に疲れ気味。ちょうど母の三回忌を迎え、船にゆられて故郷の離島へ帰ってきた。すると、実家では父(板尾創路)が亡き妻の服を着ておいしいごはんを作ってまっていた!唖然とする橙花に追い打ちをかけるように、見知らぬ居候が登場。それはお調子者の中年男・和生(浜野謙太)と生意気な女子高生・ダリア(モトーラ世里奈)。「父さん、みんなで家族になろうと思う」突然の父の報告に動揺する橙花とは裏腹に、一切気にも留めない様子の弟・翠(笠松将)が加わり、みんなで食卓を囲む羽目に…。みんなちがってそれでいい。のびのびと過ごす島の人々と、橙花の暮らしがはじまった。(公式HPより)

 

小説家でもあるふくだももこ監督が、かつて手がけた短編映画「父の結婚」を長編化した作品です。原作短編映画では、妻を亡くした父親が再婚するまでの親子の日々を描いていますが、長編化にあたり舞台を離島に移して、エピソードやキャラクターを追加しているそうです。

妻亡きあと、料理をするようになったときに、どうしても妻の味が出せずに悩んだ父親が、妻の洋服を着ることでその味を再現できたことから始まった「お母さん化」という設定なのですが、それってLGBTとは少し違うのかな?島の学校の校長先生でもある父親が、突然女性の服を着て来るようになったら、大騒ぎになりそうなものですが、島の人たちはごく普通に受け入れているようで、そこに違和感を覚えるのは自分の意識がまだまだ古いからかしらん (離島=閉鎖的なイメージなんだよなぁ)

弟の嫁サムザナ(イシャーニ)はスリランカ人。どうやって知り合ったの? 

夫と別居中で、離婚の話し合いが進んでいる橙花にとって、久しぶりに帰ってきた実家は自分が暮らしていた頃(母が存命だった頃)とあまりにも状況が変わっていて、でも他の家族はごく普通に受け入れて暮らしていて、自分だけが浮いているような居心地の悪さを感じ苛立ちます。

彼女が飲みに出かけるバー(都会にあるような洒落たお店です)では、幼馴染のエビオ(柳俊太郎)がやたら積極的にモーションかけてきます。

父の生徒で、ダリアの同級生の瀧(三河悠冴)も問題児。狭い島での生活が息苦しくてたまらない彼は学校をさぼりがちで、島を脱出しようとしています。でも彼の本音は自分も女の子の恰好をしたいの・・それって性同一性障害ってこと?

母の三回忌の日、島をビニールボートで出ようとした瀧とダリアを見つけた橙花が、二人の話を聞いて、お化粧を施したことで、事態が解決に向かう展開。この頃には橙花もありのままの父親や家族を受け入れる心の整理ができています。

結局、人はありのままで生きるのが良いってお話かしらん?


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

前田建設ファンタジー営業部

2020年09月19日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2020年1月31日公開 115分

2003年.前田建設工業のオフィスの片隅にある広報グループ。
社会人になったら粛々と生きていく、と働くことに情熱を見いだせないでいたドイ(高杉真宙)が憂鬱そうにパソコンに向かっている。満面の笑みをたたえたグループリーダーのアサガワ(小木博明)の「マジンガーZの格納庫を作れるか」という問いに、適当に答えるドイ。そんな二人のやりとりに、同グループのベッショ(上地雄輔)、エモト(岸井ゆきの)、チカダ(本多力)も入ってきて口々に持論を展開する。部下たちが話に乗ってきたタイミングを見計らい、アサガワの声が轟いた。「うちの技術で、マジンガーの格納庫作っちゃおう!」

しかし、昨今では、新規事明らかに縮小、民間営業は厳しいコスト合戦を強いられている。そんな中でも、どこかにブルーオーシャンがあるんじゃないか・・・。あったんだよ!それが、マンガやアニメの世界、つまり空想世界からの受注だったんだよ!空想世界では、毎週のように、さまざまな建造物が、作っては壊され、作っては壊され!そんな奇跡のようなニューフロンティアに、わが社がいち早く、乗り込もうじゃないか!

かくして、アサガワに巻き込まれる形で広報グループは、マジンガーZの地下格納庫を作る依頼をファンタジーの世界から受けたという体裁で、検討に向け始動する。アサガワが上層部やマジンガーZの権利元に次々と根回しをし、部員たちも創意工夫を凝らしていくが、前途多難な問題が次々と襲い掛かる。

最初は、冷ややかだったドイも、渋々ながらも巻き込まれた部員たちと共に、掘削オタクで土質担当のヤマダ(町田啓太)、クセの強いベテラン機械グループ担当部長のフワ(六角精児)、さらに社内だけでなく社外からも協力を得て、前代未聞のミッションに立ち向かっていく。(公式HPより)

 

ダム、トンネルなど数々の大プロジェクトに携わってきた前田建設工業株式会社が、「アニメやゲームに登場する建造物を実際に作ったらどうなるか?」を本格的に検証するWEBコンテンツ「前田建設ファンタジー営業部」を実写映画化した作品です。

マジンガーZ、懐かしい!!子供の頃にリアルタイムで見てましたもの ストーリーはあまり覚えていないのですが、マジンガーZ出動の時の格納庫が開いて上がってくるシーンはしっかり記憶に残っていたので、それを実際に作ったら!という設定に興味を惹かれ劇場鑑賞予定でしたが、都合がつかずにいるうちにコロナ騒動で見逃してしまいました。

「意味のないこと」に本気で取り組んだサラリーマンたちの熱き戦いが描かれていきます。何しろ本当に存在する会社の話ですから、リアリティ100%の筈なのに、どこか非現実めいていて、そのギャップが面白かったです。

ドイはドライな今時の若手社員。適当に相槌打っていたら巻き込まれたとんでもミッションからできるだけ距離を置きたいのに、熱血巻き込み型の上司アサガワの熱弁に、まずアニオタのチカダがあっさり懐柔され、優柔不断な先輩ベッショも、突如推進派に回ってしまいます。紅一点でやる気のないエモトも、掘削オタクのヤマダ(彼が掘削の世界を熱く語るシーンは専門用語のオンパレードですが、「宇宙」に行っちゃう=意味わからないと現実逃避するエモト用に、お菓子に例えて説明するのが凄いツボです)に感化され俄然やる気を出しあちら側に。逃げ場を失った彼ですが、フワが出すダムの構造や技術的な問題の解決の宿題に意地を引き出され、意味のないことだと思っていた業務に本気で取り組むようになっていくのです。フワに連れられて行った長島ダムの見学がドイの心に火を点けたようです。頭の中で考えた事より、その目で見た現実の方が絶対的インパクトがありますもんね。

現実世界の常識なんて関係ないアニメ世界のとんでも設定や、あいまいで辻褄の合わない設定に翻弄されながらも、ファンタジー営業部の社員たちだけではなく、そのプロジェクトに賛同した社内外の技術者たち(鈴木拓、鶴見辰吾、濱田マリ、高橋努)も加わり、架空のものに対してどこまでも真剣に向き合いながら試行錯誤と七転八倒を繰り返す姿に、次第に観ている自分も感情移入していき、応援したくなってしまいました。

遂に夢と誇りが詰まった「地下格納庫」の設計図と積算(工事などの費用を見積もること)が完成します。全く反応が薄かったwebでの評価も急上昇し、早くも次のプロジェクト?というところでend。

実際の彼らの仕事をwebで覗いてみたくなりました。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

プレーム兄貴、王になる

2020年09月13日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2020年2月21日公開 インド 164分 G

面倒見が良くて、曲がった事が大嫌い、周囲からアニキと慕われる下町の貧乏役者のプレーム(サルマン・カーン)の願いは、憧れのマイティリー王女(ソーナム・カプール)に一目でいいから出会う事。王女が、婚約者のプリータムプル王国のヴィジャイ王子(サルマン・カーン:二役)の王位継承式にやってくることを聞きつけたプレームは、相棒のカンハイヤ(ディーパク・ドブリヤル)と出かけたプリータムプルの街中で、王子の家来にスカウトされる。なんと、王子のヴィジャイは、継承者争いの暗殺事件に巻き込まれ意識不明。 そしてプレームと王子は瓜二つだったのだ!4日後に迫る王位継承に向けて王子の替え玉に仕立てあげられたプレーム。しかし、尊大で頑固な王子の性格が災いして、フィアンセのマイティリー王女はすっかり王子に心を閉ざしていた。さらに、異母兄弟だらけで複雑な王家の弟妹との関係も最悪で、二人の妹たち(チャンドリカとラディカ)からは、話をすることも拒絶される始末。しかも、弟のアジャイ(二―ル・二ティン・ムケ―シュ)は、配下のチラグ(アーマーン・コーリ)と共謀して密かに王子の命を狙う暗殺事件の張本人だった。はじめは大人しく王子を演じていたプレームだったが、問題だらけの王室の内情を知り、次第に下町育ちの本領を発揮。真っすぐな心で、頑なな人々の心を溶かしていくが、そんな中、王位を狙うアジャイたちの魔の手が迫っていた…(公式HPより)

 

イギリスの古典小説「ゼンダ城の虜」をもとに、ひょんなことから王子の替え玉になった貧乏役者の奮闘を描いたハートウォーミング・マサラムービーです。インド映画ならではの3時間近い長さも、豪華絢爛な城の内装や王族の美しい衣装に、お得意の歌とダンスが盛り込まれ、気が付けば時間が経っていました。特に「鏡の城」が素晴らしい

王子と貧乏役者の二役を演じるサルマン・カーンは、絶大な人気を誇るだけあって、孤独を抱える尊大な王子と下町のアニキをしっかりと演じ分けています。

宰相(アヌパム・カー)とサンジャイ警護長(ディープラージ・ラーナー)により身代わりに仕立てられたプレームは、「王女のため」と言われ、国のために尽くせることは誇りだと快く引き受け、憧れの王女にも会えて喜びますが、王族の内情を知るにつれ、ついつい世話焼きの本領を発揮します。彼の真っ直ぐな気持ちと行動が、頑なな王女たちの心も融かしていきます。特にサッカーでラディカ王女を誘い出すシーンが楽しかったな~~。つい、本物のサッカーの試合を連想してしまったのですが、「そうきたか!」なダンスと歌による楽しくて和める演出でした。

アジャイ王子を唆して兄を暗殺させようとしたのは王室資産管理人のチラーグ(アルマーン・コーリ)で、彼こそが悪人です。でも王子や王女の争いの発端は子供時代の些細な喧嘩に亡き王が彼らを隔離して育てたことにあるようでしたが。

長年の誤解やわだかまりを、プレーム兄貴の真っ直ぐで広く優しい心が融かしていく、まさにハートウォーミングな展開でした。初めは心を閉ざしていたマイティリー王女も、プルームの誠実な態度に徐々に惹かれていきます。もちろんプルームの方もなのですが、同時に身代わりである自分の立場を自覚し、もどかしい思いを抱えることになります。二人だけの夜、誘いかける王女を静かな自制心で見つめるプルームの視線が切ないです。

王子が回復し、兄弟姉妹の仲も修復され、マイティリー王女もプルームが影武者であることを知ります。当然身分が違う二人は結ばれることなく・・・・と思ったら、最後はそうきましたか!! 王子、変わり過ぎ!! でもこれってハッピーエンドよね


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

マッドマックス 怒りのデス・ロード

2020年09月13日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2015年6月20日公開 アメリカ 120分 R15+

2020年9月12日 「金曜ロードSHOW!」放送

愛する者を失ったマックスと2人の反逆者。自由と生き残りを賭け、3人のMADな戦いが、いま始まるー。石油も、そして水も尽きかけた世界。主人公は、愛する家族を奪われ、本能だけで生きながらえている元・警官マックス(トム・ハーディ)。資源を独占し、恐怖と暴力で民衆を支配するジョー(ヒュー・キース=バーン)の軍団に捕われたマックスは、反逆を企てるジョーの右腕フュリオサ(シャーリーズ・セロン)、配下の全身白塗りの男ニュークス(ニコラス・ホルト)と共に、奴隷として捕われた美女たちを引き連れ、自由への逃走を開始する。凄まじい追跡、炸裂するバトル……。絶体絶命のピンチを迎えた時、彼らの決死の反撃が始まる!(公式HPより)

 

これは好き嫌いがはっきり分かれる作品ですね。過去にメル・ギブソンが演じたシリーズも一作も観ていないのに、去年流れた「ホットペッパー」のアフレコCMがインパクトあって記憶に残っていたので、地上波放送に思わず録画して観てしまいました・・・が、荒廃した世界での逃走&闘争劇がこれでもかというほど繰り広げられるばかりで、観ているだけでも口の中がじゃりじゃりしてきそうな映像に閉口です。こういうジャンルが好きな人にはたまらん迫力の映像美だとは思いますが

核戦争で文明が崩壊し荒廃した世界が舞台です。マックスは元警官で、妻子を殺された過去のフラッシュバックに悩まされながらV8インターセプターに乗って放浪を続けているんですね。(過去シリーズ知らないから、そもそも冒頭から意味不明だったけど)ところが、旅の途中でイモータン・ジョー(元軍人)の配下に襲われ砦に連行されて「血液袋」にされてしまいます。

何?血液袋??・・・核の影響が残る世界で、生まれながらに病気に冒されている者たちには新鮮な血液が必要で、それを提供するのが血液袋の役割らしい 最早人間じゃなく消耗品扱い ジョーは彼らを洗脳し、「ウォーボーイズ」を組織していて、彼のために戦いで死ぬことは名誉であり復活の手段であると信じ込ませているのです。太平洋戦争の神風特攻隊じゃあるまいし・・・いやいや、狂気的世界ではあり得る話かも 

砦の外側にも大勢の人間がいますが、ジョーは水源を独占して支配しています。健康で美しい女たちが攫われて連れて来られ「子産み女」としてハーレムの一員にされ、ジョーの健康な世継ぎを産むための道具にされているという。女性の権利も何もあったもんじゃない!まさにやりたい放題だぁね。 

そんな状況の中、フュリオサは女たちを連れて脱走を図ります。(彼女が女隊長としてジョーの片腕に上り詰めたのは何故か、どうして女たちを連れて脱走する気になったのかはすっぽり割愛されている)それに気づいたジョーは部隊総出で追跡を開始。ニュークス(ニコラス・ホルト)の血液袋となったマックスも車に括りつけられて、「武器将軍」や「人食い男爵」等も加わって、壮絶な追跡劇が始まります。巨大なタンク車や、途中に待ち構える別の敵の襲撃など、スクリーンで観たら血沸き肉躍るシーンの連続で、男性受け間違いなしです。

マックスは、逃げるためにフュリオサたちを利用するのですが、内心、安心して暮らせる楽園の<緑の地>が本当に存在するのか懐疑的です。女たちを奪い返すというミッションに失敗したニュークスも自分の身を守るために彼らの仲間に加わります。途中から女たちの一人と良い雰囲気二なり、最期は彼女たちを守るために犠牲になるという・・・なんだ~心優しい青年だったじゃん

やがて辿り着いたフュリオサたちの前に現れたのは、既に失われて久しい「楽園」。更なる楽園を求めて旅立とうとする彼女たちの前に、別れたマックスが戻り、砦を奪う提案をします。まさに逃走から闘争に変わる瞬間です。 勝利は与えられるものではなく自らつかみ取るものだということですね。

この物語の主役はフェリオサであり、マックスはその戦いのサポート役に徹していました。激闘の末、ジョーを破って砦に凱旋した女たちを見届けて去っていくマックス。これはまさに男の美学ですね。 でもやっぱり、こんな世界には生きたくない


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

海馬の尻尾

2020年09月12日 | 

荻原浩(著) 光文社(刊)

二度目の原発事故でどん底に落ちた社会――。3年前に懲役を終えたばかりの及川頼也は、若頭に「アル中を治せ」と命じられ、とある大学病院の精神科を訪れる。検査によると、及川の脳には「良心がない」のだという。医者らを拒絶する及川だが、ウィリアムズ症候群の少女が懐くようになり……。人間の脳は変われるのか。ハードボイルドの筆致で描く、脳科学サスペンス!

 

物語の舞台は、テロによる二度目(最初の事故はやっぱり震災によるメルトダウンを想像してしまいます)の原発事故で再び広範囲にわたる避難を余儀なくされ、不安が蔓延る近未来の設定です。

主人公の及川は、幼少時からの母親と義父によるネグレクトと暴力により、人格形成に問題ありの人物。他人への共感力や恐怖心、良心を持たない彼は、ヤクザ稼業にはうってつけ?いやいや、直情的で暴力的な彼は、現代ヤクザとしては時代遅れの厄介者になりつつあるんですね。

冒頭から続くバイオレンスでグロい描写はこれまでの作品とは毛色が違うらしい・・・が映画で「明日の記憶」と本では「愛しの座敷わらし」くらいしか知らない私にとってもたしかに異色 ただ、及川に普通の人間らしい心が育ってくるにつれて、この冷酷で粗暴な男も生まれた時から「ワル」でじゃないんだと、逆に彼に感情移入していく自分がいました。 桐嶋との会話の中には医学用語が沢山出てくるのでやや難解なところもありますが、次第に話に引き込まれていきました。

「反社会性パーソナリティ障害」と診断された及川は、反発しながらも、今のままではまずいと思う気持ちが芽生えます。組がらみの事件で追われる身になった及川は、隠れ場所として病院での8週間の治療プログラムに参加します。この精神科病棟の描写がリアルなのかどうかは別として、及川にとっては、二度務めた刑務所での生活と大差ないんですね 違うのは看護師の言葉遣いが丁寧なことと、食事の規律くらい?

初めに受けた「アルコール依存症」の離脱治療なぞは、読んでいてもなかなかに衝撃的でした。ここの描写を中高生の保健の授業で読ませたらアル中抑制になるんじゃないかと思うくらい

他者への共感なぞしたこともなかった及川ですが、受診するようになって知り合ったウィリアムズ症候群の少女・梨帆や、同室の患者たち(堂上や辻野)との交流により彼の心に少しずつ変化が生じてきます。それは投与されている薬の効果もあったのかもしれませんが、個人的には、入院時の担当医になった女医の見解「愛の効果」を支持したいです。(彼女がLGBTであることは蛇足にも思えましたが

プログラムが進むにつれ、彼同様症状が好転する者も現れますが、逆に悪化して消えていく患者も続出します。

実は、彼らは「恐怖」を克服するための創薬に対する実験材料として集められていたんですね。それぞれが消したい記憶や事情があり、そのコントロールが暴発した者は更に精神異常をきたしてしまったのです。実験を主導している最初の主治医・桐嶋もまた及川と同じ反社会性パーソナリティ障害であること、裏でカシラと繋がっていて、この実験は国の依頼を受けた秘密裡のものであることなど、絵空事で片付けられない不気味さがありました。

真実を知った及川は、絶体絶命の窮地を抜け出して、仲間や梨帆を連れて病院を脱走しようとします。この時の看護師たちとの攻防もかなりバイオレンスなのですが このあたりから頁をめくる手がとまらなくなりました。

何とか逃げ出すことができて、さぁあとはハッピーエンドだ!と思ったのも束の間、前方を塞ぐ黒い車・・・あぁ、やっぱり!思い返せば、カシラとのやりとりや、舎弟の変化など、伏線はいくつも散らばっていたんですものね。元々頭が悪くはない及川は、この頃には他人の思惑を読み取れるようになっていましたから、「最後の花道」に敢えて挑んでいきます。自分のせいで妻子を事故死させてしまった堂上が助太刀する展開にも違和感はなかったかな~~及川も堂上も人を傷つけた償いという意味では仕方ない結末なのかなぁと

物語はここで幕を閉じてしまいます。このあと二人が助かったとは思い難く・・・でも及川の行動は人生の最期に梨帆と辻野を間違いなく救った筈ですから


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

グッドライアー 偽りのゲーム

2020年09月11日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2020年2月7日公開 アメリカ 109分 G

インターネットの出会い系サイトを通じて知り合った老紳士のロイ(イアン・マッケラン)と未亡人のベティ(ヘレン・ミレン)。実はベテラン詐欺師のロイは、夫を亡くしてまもない資産家ベティから全財産をだまし取ろうと策略をめぐらせていた。世間知らずのベティは徐々にロイのことを信頼するようになるのだが、単純な詐欺のはずだった計画は徐々に思いがけない方向へと進んでいき……。(映画.comより)

 

暴かれるのは、人間誰しもが抱えて生きていかねばならない秘密と嘘。偽りに満ちた人生の奥底にある真実とは――。(公式HPより)

ニコラス・サールの小説「老いたる詐欺師」を原作に、夫を亡くした資産家と冷酷な詐欺師が繰り広げるだまし合いを描いたクライムミステリーです。

初対面の時、二人は互いに偽名を使い嘘のプロフィールを載せていたことを告白し合い、逆に意気投合します。ベティは孫のスティーブン(ラッセル・トーヴィー)が唯一の家族だと語り、ロイも3年前に妻を亡くして一人息子のロバートはオーストラリアに住んでいると語りました。

しかしロイはベテラン詐欺師で、仲間のヴィンセント(ジム・カーター)と組んで投資家のブリン(マーク・ルイス・ジョーンズ)を騙そうと企んでいました。ロシア人投資家のヴラド(ヨハンネス・ハウクル・ヨハネッソン)との投資話をブリンに持ち掛け、彼の不注意からご破算になりかけたところをとりなして出資金を倍にさせて交渉成立したところへ警察官が突入してきます。ブリンは青くなって逃げ出しますが、それこそがロイたちの作戦で、彼らは大金をGETします。

ベティとデートを重ねるロイは彼女の信用を得ていきます。膝が悪いと言うロイをベティは自宅に滞在するよう誘います。

さりげなく彼女の資産状況を聞き出したロイはハイリターンな投資話を持ち掛けますが、彼女は回答を保留します。二人で旅行しようと提案するロイに、ベティは夫と行く筈だったパリやベネチアやベルリンを希望します。持病の発作を起こして倒れたベティに、駆けつけた主治医は、治療しなければ一年の命だと告げますが、彼女は療養を拒否、ロイは仕方なくベティの望み通りパリとベルリンに行くことにします。

その前にロイは、悪事の片棒を担いだヴラドに脅迫され、彼を駅のホームから突き落として殺害するんですね。何とも冷酷な奴!

ベルリンに着いた二人をスティーブンが出迎えます。ベティはロイを驚かせようと黙っていたと言いました。疲れたというロイをホテルに残しどこかへ出かけたベティは掌に怪我をして戻ってきます。二人を迎えにきたスティーブンは、とあるアパートの前で、ロイの過去を暴きます。第二次世界大戦終戦後の1948年。ロイ(フィル・ダンスター)はナチスの戦争犯罪を調査する諜報機関「Vセクション」の諜報員として相棒のハンス(ローリー・デヴィッドソン)と、ある人物の調査にあたっていて気付かれ銃撃を受け命を落としてしまいます。ロイに似ていたハンスは、チャンスとばかり彼にとって代わることを思いつき、イギリスに渡ってロイを演じてきたのでした。そう、ロイはハンスだったのです。更に彼には余罪があるというスティーブンをベティは遮ります。

ロンドンに戻ったベティは、共同口座を作ろうとハンスに持ちかけます。彼女から全てを奪おうと目論むハンスは、ベティの余命を知り躊躇うヴィンセントを立会人に仕立て、共同口座を開設して互いの全資産を入金し、二人だけがアクセスできるパスワードを設定します。取引が完了し、ハンスは息子と会うと嘘をついて立ち去ります。

ところが、ハンスがタブレットを使って金を引き出そうとカバンを開けると、タブレットがありません。慌ててベティの家に戻ったハンスの目に映ったのは、家財道具が持ち出された空っぽの部屋にタブレットを手に待ち構えているベティの姿でした。

ハンスは15歳の時、ベルリンの資産家の令嬢リリー・シュローダー(ネル・ウィリアムス)の英語の家庭教師をしていましたが、ある日リリーの3人の姉にからかわれ、その一人にキスしようとして拒否されて侮辱されたと感じた彼は、憤りに任せてリリーをレイプしたのです。姉たちの嘘を信じた父親がハンスをクビにしたことを逆恨みして、彼が戦時下で不正に金儲けをしたと密告したことで父は逮捕され、母は自殺、空襲で姉たちも亡くなっていました。そのリリーこそがベティその人だったのです。

当時、リリーはハンスに好意を持っていて彼の髪の毛をロケットに入れていました。彼女はベルリンの生家の床下に隠していたロケットを回収し、髪の毛を鑑定にかけてハンスが自分をレイプした本人であると突き止めた上で、彼への復讐を実行したのです。

持病も嘘で、医者も偽物、更にスティーブンも本当の孫ではなく、ハンスを調べさせていたことが明らかになります。リリーは、あの日から自分はあの部屋に閉じ込められたままだったと語り、ハンスに正面から向き合うことで解放されたかったのだと言います。ハンスは性懲りもなく彼女に襲い掛かりますが、そこへ過去にハンスが騙した投資家や痛めつけた詐欺仲間がやってきて、ハンスを拉致していきます。彼女の復讐は遂げられたのです。

後日談として、ヴィンセントが入院しているハンスの見舞いに訪れるシーンが登場します。耳は聴こえるけれど話すことはできない彼は、車椅子に乗っていてとても老け込んでいました。一方で、リリーは家族や友人を招いてホームパーティーを開いていました。

行いに対する当然の罰を受けたハンスに同情の余地はないけれど、最後の姿はやはり哀れに見えました。

いざ、心を決めたとなると女は強いのよ


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ジュディ 虹の彼方に

2020年09月06日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2020年3月6日公開 イギリス 118分

1968年。かつてミュージカル映画の大スターとしてハリウッドに君臨したジュディ(レニー・ゼルウィガー)は、度重なる遅刻や無断欠勤によって映画出演のオファーが途絶え、巡業ショーで生計を立てる日々を送っていた。住む家もなく借金も膨らむばかりの彼女は、幼い娘や息子との幸せな生活のため、起死回生をかけてロンドン公演へと旅立つ。(映画.comより)

 

「オズの魔法使」で知られるミュージカル女優ジュディ・ガーランドが、47歳で急逝する半年前の1968年冬に行ったロンドン公演の日々を描いた伝記ドラマです。ジュディを演じたレニー・ゼルウィガーが、第92回アカデミー賞、ゴールデングローブ賞など数多くの映画賞で主演女優賞を受賞しています。

映画『オズの魔法使い』でドロシーを演じたということは知っていましたが、幼い頃から食べたいものも我慢させられスレンダーな体型を維持し、眠らず働けるよう薬漬けにされていたなど、映画会社や母親から様々なハラスメントを受け続けていたことを、この作品で初めて知りました。 今なら児童虐待で間違いなく訴えられますね~~ ドロシー役で脚光を浴びてハリウッドのスターダムへと駆け上がった彼女ですが、次第に薬物依存や神経症に苦しめられるようになり、仕事にも影響が出ます。数度の結婚も彼女にとっての安らぎとはならなかったようです。

度重なる遅刻や無断欠勤で映画出演のオファーも途絶え、幼い娘や息子を連れての巡業ショーで生計を立てるも、ホテルの宿泊費も満足に払えず追い出されるほどの苦境に陥ったジュディは、やむなく別れた夫のシド(ルーファス・シーウェル)に子供たちを預けて、今なお人気が健在な英国・ロンドンでクラブに出演することにします。子供たちを深く愛していた彼女にとって、遠いロンドンに単身出かけるのは身を切られる辛さがありましたが、それも子供と暮らすための経済的条件をクリアするためだったのです。

初日、プレッシャーから「歌えない」と逃げ出そうとするジュディでしたが、いざ舞台に立つと圧巻のパフォーマンスで観客を魅了します。レネーは厳しいレッスンを受けて全曲自ら歌っているのだとか。レネーだとわかって観ても「え?本当にレネーなの??」と思ってしまうほど役そのものになりきってしまうから凄い!!

ショーは大評判となり、ミッキー(フィン・ウィットロック)という新しい恋人もできて、明るい未来が待っているかに見えましたが、離れている間に子供たちの気持ちは離れていき、舞台での失態がもとで、ミッキーとも破局を迎えてしまいます。ちょっとした言葉の掛け違いやすれ違いがどんどん望まぬ方向に彼女を追い詰めていきます。

ロンドンのファンのゲイ・カップルとの交流のエピソードが良い感じで挿入されていたり、最初は反発もあった世話係のロザリン・ワイルダー(ジェシー・バックリー)やバンマスと一種の友情のようなものが生まれたりと、感情的で我儘にも見えるジュディの別の一面もしっかり描かれていました。

結局、興行主のバーナード(マイケル・ガンボン)からも匙を投げられ、クビになってしまうのですが、最後に歌った「オーバー・ザ・レインボー」の途中で歌えなくなってしまったジュディを助けるかのように、ゲイ・カップルが立ち上がって続きを歌い始めるの。彼女に懐疑的で冷ややかな視線を向けていた人たちも一緒に歌い始めます。この瞬間、ジュディは自分と観客との間に生まれる「愛」を信じることができたのですね。そして、観客の方も彼女の類まれな才能をその目で耳で実感することになったのでした。 この公演の半年後、ジュディは薬の過剰摂取で亡くなるのですが、この夜だけは、確かに未来を信じていたのだと思いました。

 

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ファンシー

2020年09月04日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2020年2月7日公開 102分 R15+

とある地方の温泉街に、一日中サングラスをかけている鷹巣明(永瀬正敏)というニヒルな男が住んでいた。失踪した父親、竜男(宇崎竜童)の後を継いで彫師となり、昼は郵便配達屋もこなしている鷹巣の日課は、町外れの白い家に引きこもって暮らす若い詩人(窪田正孝)にファンレターを届けること。その詩人は“南十字星ペンギン”というペンネームで月刊ファンシーポエムという雑誌に寄稿し、女子学生の絶大な支持を得ている。見かけからしてペンギン似の詩人は、いつもレトロな空調で室内をキンキンに冷やし、氷風呂に身を浸すという生態までペンギンのよう。そんなペンギンの浮世離れした日常を不思議がる鷹巣だったが、はみ出し者同士のふたりは奇妙な友情で結ばれていた。

そもそもこの温泉街は風変わりな連中の溜まり場だった。鷹巣の勤務先の郵便局長で、風俗嬢を斡旋する射的屋でもある田中(田口トモロヲ)。鷹巣の後輩で、グチばかりこぼしているヤクザ組長二代目の国広(長谷川朝晴)。事あるごとにお墓を売りつけようとする住職の篠田(外波山文明)。鷹巣のもとに刺青を入れにやってくる裏社会の男、新田(深水元喜)。この時代の流れに取り残されたような寂れた町で、それぞれがあてどもない日々を生きていた。

ある日、いつものようにペンギンの家を訪ねた鷹巣は、人付き合いが極度に苦手なペンギンが月夜の星(小西桜子)と称するファンと文通を交わしていることを知る。しかし、今回届いた手紙の文面はいつもと違っていた。「私は先生の妻になりたいのです。どうか私をいっしょう先生のおそばにおいてください」。会ったこともない女子からの思いがけない熱烈な求愛にペンギンは驚き、鷹巣は「アブねえ女だな。おまけに絶対ブサイク」とつぶやく。

すると後日、月夜の星がペンギンのもとに押しかけてくる。ブサイクという鷹巣の見立てとは大違いで、清楚で可憐なメガネ女子である月夜の星は、強引にペンギン宅に住みつき、料理、風呂、洗濯などの身のまわりの世話を始める。すっかり奥様気取りの月夜の星をサングラスの下の冷めた目で見つめていた鷹巣は、彼女にずけずけ質問を投げかけ、ペンギンが性的不能である事実を告げるのだった。

やがてペンギンのもとに月刊ファンシーポエム編集部から懇親パーティーの招待状が届き、鷹巣は代理として出席する月夜の星のエスコートを頼まれる。ところがパーティーの最中、鷹巣の真意不明の言動に心かき乱されていた月夜の星は、ワインをがぶ飲みして泥酔してしまう。悪態をつかれた鷹巣がその場で突然唇を奪うと、我を見失ったように身を委ねる月夜の星。そのままホテルになだれ込んだふたりは、欲望に駆られるままに体を重ね合う。

その頃、温泉街にも不穏な変化が巻き起こっていた。ヤクザのドンを狙撃してこの町に潜伏していた新田が追っ手に殺害されるなど、血生臭い事件が続発。夢見る少女から妖艶な女へと変貌を遂げた月夜の星は、自ら鷹巣を誘惑するようになる。一方、月夜の星に惹かれながらも彼女を抱けないペンギンは、答えの見つからないジレンマにもがき苦しんでいた。

そして鷹巣と月夜の星が激しい情事に身を焦がしている最中、ふたりの関係を察したペンギンは、体質的に耐えがたい太陽光が照りつける外界へ飛び出していく。ロマンティックな夢と苦く切ない現実の狭間で、どうしようもなく狂おしく溺れ続ける3人はどこへ漂着するのか……。(公式HPより)

 

彫師の郵便配達員と詩人、1人の女性の奇妙な三角関係をエロスと暴力で描いた山本直樹の短編漫画の映画化です。

もちろん窪田君目当てで、コロナ騒動がなければ劇場鑑賞したところですが・・・そういえばこの半年以上劇場鑑賞してないなぁ

ニヒルで粗暴な男とロマンティストで性的不能な詩人、夢見がちで少女のような月夜の星。三人の間に流れるのは友情とも愛情ともつかない不思議な感情。まさに大人のファンタジーです。

ペンギンというペンネームの通り、どこか人間離れしたキャラですが、彼が演じると何だかとても自然 視線が泳いだり、口を尖らせたりの表情も、焦燥に駆られて下界へ出た時のふらついた足取りも本物のペンギンに寄せているように見えました。ペンギンですから冷房の効いた部屋で暮らし、氷風呂に入ります。人間と交わることも当然できない=性的不能者

温泉街の住民たちも一風変わって・・いや、かなり個性的な連中です。鷹巣が勤める郵便局の局長は風俗の斡旋をしていて、風俗嬢の一人は局員の妻。それがばれて局員から刺されるという、とんでもない設定だ 鷹巣の後輩?ヤクザの組長は、親に無理やり跡目を継がされたと愚痴ります。そういえば、行方不明の鷹巣の父もまた彫師でした。共に親の呪縛を受けていたという点で共通するのかな。

ペンギンは、月夜の星を受け入れようとします。一緒に(冷水ではない)お風呂に入ろうとするし、夏の太陽の照り付ける野外に踏み出してもいきます。月夜の星はといえば、自らの欲求に貪欲になり、鷹巣との逢瀬にのめり込んでいきます。鷹巣も彼女も本気で相手を愛したわけではなく、自分たちのもどかしさを互いで埋めているように見えました。

鷹巣の父親の失踪の真相も、最初から想像がついていた気がします。呪縛を解き放った筈が逆に囚われてしまったかのような鷹巣と、淡々と運命を受け入れながらも、希望を抱いているかのようなペンギン。対照的な二人の関係が面白かったかな


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

存在理由〜Raison d'être〜 さだまさし コンサートツアー2020  

2020年09月01日 | ライブ・コンサート他

2020年9月1日 ウェスタ川越

会場17:15 開演18:00

会場入り口で検温・手と靴裏の消毒・マスク着用確認を経て入場です。

前二列は空けられ、実質三列目が最前列となっていました。一席ずつ空けられていて、この日の観客数はキャパ1700人に対して700人。

会場も換気対策はばっちり施されていました。 開演中は観客もマスクを着けたままの鑑賞です。

定刻通りに開演、「さだまさしの名によるワルツ」が流れたあと、「銀河鉄道の夜」を歌いまっさん登場です。

コロナ感染予防のための説明の後、今夜は二時間で終わる宣言をしますが、リモート飲み会「生存か?!9人の会」の話などで早くもスタッフから「巻き」の指示。結局5分以上押して次の歌になったのでした。

・存在理由

・心かさねて~長崎の空から~

トーク:舞鶴でのコンサートの話、加山(雄三)さんのこと、8/17府中の森芸術劇場での配信コンサート話など ここまででも10分押し

・まんまる

・交響曲(シンフォニー)

・私の履歴書 新型コロナ編 21~25歳の頃のヒット曲集

  精霊流し~無縁坂~雨宿り(小臼歯→小休止ネタはさむ)~秋桜~案山子~ACジャパンCM にゃんぱく宣言からの関白宣言~関白失脚(バンドメンバーとの絡みもいつも通り楽しい)

そしてさだ工務店紹介メンバー紹介

倉田信雄(p) 平石カツミ(b) 田代耕一郎(g) 木村キムチ誠(per)庄司さとし(ob) 藤堂昌彦(vl) 徳澤青弦(vc) 島村英二(dr)

・主人公

・残したい花について

・漂流

・柊の花

・ひと粒の麦

Ac 夕凪

終演20:20

ペンギンの着ぐるみのスタッフが三階席から順に退場の指示を出し、10分たらずで観客は外へ出されました。

観客も演者もスタッフも互いに「命がけ」のコンサート。気合入りまくりの忘れられない川越の夜でした。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする