杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

イン・ザ・ハイツ

2021年12月31日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2021年7月30日公開 アメリカ 143分 G

“何度でも立ち上がる”――逆境に立ち向かう人々と、夢に踏み出す若者たち。
NY、片隅の街から今の世界に響き渡る魂の歌!感動のミュージカル

ニューヨーク・“ワシントン・ハイツ”は、いつも音楽が流れる、実在する移民の街。その街で育ったウスナビ(アンソニー・ラモス)、ヴァネッサ(メリッサ・バレラ)、ニーナ(レスリー・グレイス)、ベニー(コーリー・ホーキンズ)はつまずきながらも自分の夢に踏み出そうとしていた。ある時、街の住人たちに住む場所を追われる危機が訪れる。これまでも様々な困難に見舞われてきた彼らは今回も立ち上がるが―。突如起こった大停電の夜、街の住人達そしてウスナビたちの運命が大きく動き出す。(公式HPより)

 

ブロードウェイミュージカル「イン・ザ・ハイツ」の映画化です。

故郷ドミニカに帰る夢と恋に悩むウスナビ。名前の由来がお父さんが目にしたアメリカの軍艦「U.S.NAVY」からです彼が従兄弟のソニー(グレゴリー・ディアス4世)と営むコンビニには、街の母アブエラ(オルガ・メレディス)や、馴染みの客が次々とやってきます。ダニエラ(ダフネ・ルービン=ベガ)の美容室で働くヴァネッサ(メリッサ・バレラ)に恋心を抱きながら勇気の出ないウスナビは、なかなか彼女を誘えません。ヴァネッサにはいつか街を出てデザイナーとして成功したいという夢があります。

ロザリオの会社で働くベニー(コーリー・ホーキンズ)は彼の娘のニーナ(レスリー・グレイス)に思いを寄せていました。子供の頃から優秀だったニーナは、街の皆の期待を一身に受けて地区で初めてスタンフォード大学に進学しましたが、疎外感を味わい、経済的なこともあって退学しようとしていました。

ある日、ウスナビの店で販売した宝くじの中に96000ドルの当選が出ます。移民の彼らには途方もない大金で、もし自分に当たったらと想像しながらも現実味のない話にため息をつきます。でも彼らはそれぞれの夢に向かって日々努力していました。

ソニーの機転もあり、ヴァネッサをデートに誘うことに成功したウスナビですが、自分に自信がないため、ダンスを誘いに来た男にヴァネッサを取られてしまいます。すれ違う二人の想い。そんな中突然停電が起き、離れ離れになってしまいます。

帰宅したウスナビですが、停電の最中、アブエラが意識を失い帰らぬ人となります。アブエラはキューバからの移民で、様々な苦労を強いられてきた人生を自問自答しながら息を引き取るの。街の人々はキャンドルを手に彼女の死を悼みます。

停電と暑さで賑やかだった街も嘘のように静まり返る独立記念日の日。街を出るダニエラが皆を鼓舞し、ハイツの皆がそれぞれの国旗を振り踊り始めます。停電が解消され街に再び活気が戻ってきました。

ウスナビは店を畳んでドミニカに帰ることをヴァネッサに伝えます。父親やベニーの想いを知ったニーナも悩んだ末、大学に戻ることを決めます。引っ越しの日、アブエラの残した小物入れを見つけたウスナビは中に入っていた一枚の紙きれを見つけます。それは96000ドルの当選くじ!彼は当選金を不法移民であるソニーに使うことにします。さらにヴァネッサからのメッセージを受けて彼はもう一つの決断をします。彼女に連れて行かれた元コンビニの店内は、ヴァネッサがデザインした服が飾られ、カウンターの壁にはドミニカの海のイラストが本物そっくりに描かれていたのね。

さて、冒頭では子供たちを集めてウスナビがハイツの話を始めるのですが、ドミニカに帰ったと思わせておいて、実は彼はワシントンハイツに残っていたという結末です。途中で一人の少女が彼のことを「お父さん」と呼ぶことからヴァネッサと一緒にドミニカへ?と思わせられましたが、そうではなかったという 故郷に憧れ帰ろうとしていたウスナビでしたが、実は愛する人たちの暮らすハイツこそが彼の本当の故郷だと気付いたのですね

多くの移民が暮らすアメリカの事情はなかなか伝わりづらいですが、どんな場所でもそこが故郷となり、そこから夢を叶えて行こうとする若者の群像劇でもありました。


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HOKUSAI

2021年12月27日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2021年5月28日公開 129分 G

町人文化が華やぐ江戸の町の片隅で、食うこともままならない生活を送っていた貧乏絵師の勝川春朗(柳楽優弥)。後の葛飾北斎となるこの男の才能を見いだしたのが、喜多川歌麿(玉木宏)、東洲斎写楽(浦上晟周)を世に出した希代の版元・蔦屋重三郎(阿部寛)だった。重三郎の後押しにより、その才能を開花させた北斎は、彼独自の革新的な絵を次々と生み出し、一躍、当代随一の人気絵師となる。その奇想天外な世界観は江戸中を席巻し、町人文化を押し上げることとなるが、次第に幕府の反感を招くこととなってしまう。(映画.comより)

 

「富嶽三十六景」など生涯を通して3万点以上の作品を描き残したといわれる江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎の知られざる生涯を、青年期(柳楽優弥)と老年期(田中泯)の2部構成で映画化しています。監督は「探偵はBARにいる」シリーズ、「相棒」シリーズの橋本一。

独自の町人文化が花開く江戸。その自由さを危険視した幕府は、堕落させる害悪として、絵師や戯作者、版元に厳しい弾圧をかけます。

勝川春章に師事しながら、狩野派や唐絵にまで興味を示し破門された春朗(後の北斎)は、画の腕は確かだけれど鼻っ柱が強く人の言いなりになるのが嫌いでした。そんな彼の才能を使用人の瑣吉経由で“蔦屋耕書堂”店主蔦屋重三郎が見出し、歌麿や写楽に引き合わせ、「お前の絵は目に映るものをそのまま似せて写してるだけで、色気が無い」と指摘します。

創作に悩み放浪の旅に出た春朗は、白波が打ち寄せる海岸で雄大な富士山を見てインスピレーションが湧き、描き上げた絵を持って重三郎を訪ねます。彼に認められ『江島春望』を仕上げた彼は、名を北斎宗理と改めるのね。重三郎は彼に世界地図を見せ、世界に目を向けるよう諭して逝きます。

壮年となった北斎は絵師をして身を立て弟子を取り、コトと所帯を持っていました。彼女は北斎の勝手気ままな仕事を献身的に支えています。

瑣吉改め滝沢馬琴と名乗り戯曲師となった彼の読み物に北斎は挿絵を描いていますが、筋書きと異なる内容の絵を描く彼に馬琴も振り回されていました。また、版元から柳亭種彦(永山瑛太)という戯作者の挿絵を依頼され二人の親交が始まります。

歌麿が禁制されている絵を描いた咎で捕えられたと聞いた日にも彼は絵を描きます。

月日は流れ・・・

江戸の外れに居を移した北斎はコトを亡くし塞ぎこんでいました。彼の世話は弟子たちや娘のお栄が焼いています。

戯作者の柳亭種彦は本名を高屋彦四郎といい、御用改めとして永井五右衛門の下で働く武士でした。

永井から一層厳しい取り締まりをと檄を飛ばされた種彦は北斎に愚痴をこぼします。北斎は言いたい奴には言わせておけばよいと言います。

卒中を起こし倒れた北斎は、命はとりとめますが、利き手に震えが残ります。70歳となり病を得たからこそ見える世界があるはずだと再び旅に出た彼は、砂浜や山道の高台で見た富士山に創作意欲を掻き立てられ『富嶽三十六景』となりました。

種彦の書いた『偐紫田舎源氏』は、幕府を揶揄する内容で、もし彼の正体がバレたらとお栄は心配します。北斎は物書きになりたい人間が武家に生まれただけで、書く衝動は誰にも止められないと言います。

永井に探りを入れられ初めはやりすごしていた種彦ですが、遂に意を決し「私は書く事を辞めません。私が柳亭種彦です」と告げ、潔く刃に倒れます。遺体と対面した北斎は、無念の死を遂げた種彦の壮絶な形相が浮かび、『生首図』を描き上げます。この絵が御上に知れたら北斎の身が危ないと察したお栄は、一緒に江戸を出て弟子の鴻山のいる小布施に身を寄せます。

目に浮かぶ言葉を絵にしたいと願った北斎が描いた一対の絵、それは鮮やかな藍に渦巻く、怒涛図『男浪』と『女浪』でした。

映画は、北斎の人生を描くと言うより、彼の残した作品がいかにして生まれたかに重点を置いているように思えました。これをスクリーンで見たらその迫力に息を呑んだことでしょう。公開時、劇場で観たかったな


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検事の信義

2021年12月25日 | 

柚月裕子(著) 角川文庫

検事・佐方貞人は、亡くなった実業家の書斎から高級腕時計を盗んだ罪で起訴された男の裁判を担当していた。被告人は実業家の非嫡出子で腕時計は形見に貰ったと主張、それを裏付ける証拠も出てきて、佐方は異例の無罪論告をせざるを得なくなってしまう。なぜ被告人は決定的な証拠について黙っていたのか、佐方が辿り着いた驚愕の真相とは(「裁きを望む」)。
孤高の検事の気概と執念を描いた、心ふるわすリーガル・ミステリー!(本紹介より)

 

第一話 裁きを望む

被告人・芳賀渉の真の目的はこの裁判で無罪になることでした。そのため絶対的証拠を敢えて伏せたまま起訴されます。法学部出身の芳賀は、一事不再理を狙ったのです。彼が盗んだのは腕時計ではなく、遺言書でした。芳賀を認知すると書いた最初の遺言書を、死後認知のもたらす波紋を弁護士に諭され翻した父親が、せめてもと、腕時計と一緒に渡していたその遺言書を、彼は新しく書かれ金庫にしまわれていたものとすり替えていたのです。真相に気付いた佐方は、別の嫌疑で起訴しようとしますが、上司の筒井に止められます。芳賀の本当の願いは父親に認知されることにあったこと、刑事で裁けなくても民事ですり替えられた遺言書を無効にできることなどから、佐方は起訴を諦めます。

 

第二話 恨みを刻む

覚せい剤所持・使用で逮捕・起訴された室田公彦の有罪は明白でしたが、きっかけとなった幼馴染のスナック経営者の武宮美貴の証言に不審を抱いた佐方が調査をすると、彼女の証言の矛盾が見つかります。彼女の兄が暴力団幹部であることや、相談したという 鴻城巡査部長と暴力団の繋がりなど、関係者の様々な思惑が混ざり合う展開は権力争いの様相を呈します。鴻城は悪徳警官で、点数稼ぎのために美貴の証言を書き変えていましたが、それを利用して鴻城の不正を暴こうと告発したもの、それを示唆したものの存在がありました。室田の罪は罪として裁かれるわけですから結果として問題はないわけですが、良いように利用された体になった佐方たちです。

 

第三話 正義を正す

婚約者に振られた同期で広島地検にいる木浦に誘われ年末を宮島の老舗旅館で過ごすことになった佐方ですが、そこへ広島高検の上杉義徳次席が顔を出します。仲人を頼んでいたという上杉の訪問には、一見不自然な点内容に見えましたが、佐方が担当する事件の被告である暴力団幹部の保釈を巡っての思惑が隠されていることに佐方は気付きます。暴力団の抗争勃発を抑え、市民の安全を守るためという「大義」の前に佐方が下した結論は・・・「不許可」か「しかるべく」かという短い文言に込められた裁判所と検察の裏側が透けて見える話でもありました。ま、保釈自体に問題はないわけだし、保釈金が有効に使われるとあれば、そこに目くじら立てることもないわけだけど・・なんか引っかかるなぁ

 

第四話 信義を守る

認知症の母親を殺害して逮捕・起訴された息子・昌平の裁判を担当することになった佐方は、一見記録の中の遺体発見から逮捕までの2時間に疑問を持ちます。彼が三か月勤めていた会社や、母親を預けていたデイサービスで聞いた昌平の人となりを知るにつけ、彼が計画性を持って殺害したという供述が嘘であると確信した佐方は、何故彼が敢えて重い刑を望んだのか、その真実に迫っていきます。

昌平が敬虔なクリスチャンだったと言うのは意外でした。認知症が進んだ母親が息子に浴びせる罵詈雑言も哀し過ぎます。 献身的に世話を焼いてきた昌平が突発的に犯行に及んだその状況も理解できる気がします。我に返った彼が無意識に救いを求めて向かったのは教会で、神父に諭され、自殺を思いとどりますが、自身が病魔に侵されていると気付いているため、敢えて獄中での死を望んでの嘘の供述だったわけです。

昌平を起訴した検事は、罪は明白なのだからと佐方のやり方を検察の権威を失墜させるものだと非難します。でも、計画性を持っての殺しと、切羽詰まった挙句の突発的な犯行では、刑の重さ・長さも違ってくるのだから、佐方の「まっとうに裁く」という考え方は正しい!被告=人を見ているのか、上=組織を見ているのか、その違いはとても大きいと思いました。

今回の話はどれもスッキリ解決と言うより、何か引っかかるものがある終わり方です。正義は一つではなく、色々な側面を持つものだと言っている気がしました。それでもせめてフィクションの世界だけでも明快な「正義」が読みたいな


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いのちの停車場

2021年12月22日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2021年5月21日公開 119分 G

東京の救命救急センターで働いていた、医師・白石咲和子(吉永小百合)は、ある事件の責任をとって退職し、実家の金沢に帰郷する。これまでひたむきに仕事に取り組んできた咲和子にとっては人生の分岐点。久々に再会した父(田中泯)と暮らし、触れあいながら「まほろば診療所」で在宅医として再出発をする。「まほろば」で出会った院長の仙川徹(西田敏行)はいつも陽気な人柄で患者たちから慕われており、訪問看護師の星野麻世(広瀬すず)は、亡くなった姉の子を育てながら、自分を救ってくれた仙川の元下で働いている。ふたりは、近隣に住むたった5名の患者を中心に、患者の生き方を尊重する治療を行っており、これまで「命を救う」現場で戦ってきた咲和子は考え方の違いに困惑する。そこへ東京から咲和子を追いかけてきた医大卒業生の野呂聖二(松坂桃李)も加わり「まほろば」のメンバーに。野呂は医師になるか悩んでおり、そして麻世もまた、あるトラウマに苦しんでいた。
様々な事情から在宅医療を選択し、治療が困難な患者たちと出会っていく中で、咲和子は「まほろば」の一員として、その人らしい生き方を、患者やその家族とともに考えるようになってゆく。野呂や麻世も「まほろば」を通じて自分の夢や希望を見つけ、歩みはじめた。
生きる力を照らし出す「まほろば」で自分の居場所を見つけた咲和子。その時、父が病に倒れ・・・。父はどうすることもできない痛みに苦しみ、あることを咲和子に頼もうとしていた—。(公式HPより)

 

金沢の小さな診療所を舞台に、在宅医療を通して“生”に寄り添う医師と、死に向かう患者、その家族たちを描いた物語です。原作は現役医師・南杏子の同名小説で、監督は『八日目の蟬』の成島出。吉永小百合の医師役は初めてということです。

公開当時の評判は良かったと思うのですが、個人的には・・・イマイチでした。泣けなかったし

父親を演じる田中泯さんの病を得て痛みに苦しむ迫真の演技に圧倒されます。きっかけは転倒による骨折でしたが、その後ドミノ倒しのように病に侵されていくのもリアルです。その父親から元気な時に頼まれたのは、かつて妻が受けたような管や機器に囲まれての最期は嫌だという願いです。それが現実になろうとした時、父は娘に楽にしてくれ=殺してくれと懇願します。映画の結末はそれを選択したようでもあり、思いとどまったようでもあり・・観る側に委ねるような終わり方も何だかすっきりしなくて・・個人的には好みではなかったということです。

冒頭で、無資格の野呂が目の前で苦しんでいる女児に点滴を施したことが問題となり、その責任を取る形で咲和子は辞職しますが、そもそも、救命救急医だった咲和子が180度の転換ともいえる在宅医療を選んだ動機が映画では見えてこないんですね~

ともあれ、在宅を選んだ患者たちはそれぞれ事情を抱えています。

寺田智恵子(小池栄子)は末期の肺癌を患う芸者で、最後まで自分らしく生きることを主張します。

起業家の男性は事故で受けた損傷を先進医療で回復することを希望します。それに応えるべく、人脈を駆使して道をつける佐和子。ワンクール1500万の高度医療の提案を即座に受け入れられる人間も存在するんだね~~

並木シズ(松金よね子)は脳出血で入院後、自宅で治療をする胃瘻患者で寝たきり。介護は夫(泉谷しげる)がしていますが、老老介護で疲弊し部屋はゴミ屋敷状態でした。麻世は佐和子や野呂を巻き込んで部屋の大掃除を決行します。綺麗に片付いた部屋で安らかな最期を迎えるシズ。このエピソードが一番胸を打ちました。

中川朋子(石田ゆり子)はプロの女流囲碁棋士で癌の転移が見つかり再発し、幼馴染の咲和子を頼ってまほろばに来ます。数日一緒に過ごし、治療を再開することを決意して去った彼女ですが・・・現実の切なさを伝えるエピソードでもあります。

宮嶋一義(柳葉敏郎)は末期の膵臓癌を患う元高級官僚で、最期の時間を平穏に過ごすため在宅を選択していますが、長年会えていない息子が気がかりでした。意識が混濁する最期の時、連絡がつかない息子の代わりを野呂が務めます。心残りを無くして穏やかに逝ったその死に顔はとても穏やかでした。

若林萌(佐々木みゆ)は小児癌の8歳の少女。野呂に懐いていました。母親(南野陽子)は娘に迫る死が受け入れられずにいます。萌の「海に行く」という望みを叶えようと動く「まほろば」の面々。辛い治療ではなく楽しい思い出を胸に旅立つ萌でした。

「まほろば」の台所的存在は「BAR STATION」。マスター(みなみらんぼう)は世界中を旅して金沢に辿り着いた吟遊詩人です。良きにつけ悪しきにつけ、彼ら、時には患者もここに集い語り合い、美味しい料理を食べます。各エピソードの繋ぎ的役割も果たしているようです。

佐和子を慕って追いかけてきた野呂ですが、麻世に背中を押され、再び医師の道を目指すために「まほろば」を離れていきます。

仮に佐和子が嘱託殺人の罪を犯したとしても、「まほろば」は国家試験を通った野呂が引き継いでくれる?

う~~ん・・やっぱり納得できない!救命救急医だった彼女に命を奪う選択が本当にできたのか?娘に重荷を負わせてまで楽になりたいと願うことは親として間違っていると思うけれど・・でも死を望むほどの痛みを我が身に受けたならやっぱりそう願ってしまうのではないかとも思うし・・・難しい問いかけですね。


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ワイルド・スピード ジェットブレイク

2021年12月20日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2021年8月6日公開 アメリカ 143分 G

ドミニク(ヴィン・ディーゼル)はレティ(ミシェル・ロドリゲス)と幼い息子のブライアンの3人で静かに暮らしていたが、ある日仲間のピンチの知らせを聞く。ローマンら“ファミリー”と合流したドミニクは、現場で世界中のコンピュータ・システムを操る装置を見つけるが、突如襲撃者が現れ、装置を奪っていったのはなんと弟のジェイコブ(ジョン・シナ)だった。凄腕の殺し屋で一流ドライバーであるジェイコブは、実は某国の独裁者組織の一員で、ドミニクたちは世界を震撼させる陰謀を止めるため動き出す。対立する兄と弟…明かされるドミニクの過去…果たしてファミリーの運命は?!(公式HPより)

 

「ワイルド・スピード」シリーズの第9作。監督はシリーズ第3作から第6作を手がけたジャスティン・リン。

回を追うごとにスケールが大きくなっていきますが、遂に今作では宇宙に飛び出した!!

冒頭に登場するのは1989年のレースシーン。父親のジャック・トレット(J・D・パルド)がドミニク(ヴィニー・ベネット)やジェイコブ(フィン・コール)らをクルーにカーレースのシーズン最終戦に臨みますが、ライバルのケニー・リンダー(ジム・パラック)の車と接触しスピン、壁に激突して大破炎上して死亡します。レース後、ケニーの挑発に乗り掴みかかろうとしたジェイコブを制しドムがレンチで殴り倒して逮捕されます。刑務所でリコ・サントス(オズナ)とレオ(セレド)と知り合ったドムは、レース直前にジェイコブが車に細工していたことを思い出します。出所したドムは地元のストリートレースで名を轟かせていたジェイコブと再会し、父親を殺したのはお前だと決めつけレース(負けた方が街を追放される)で勝負をつけようと持ちかけ、彼に勝ちます。いやいや、妹はシリーズ最初から登場しますが、弟がいたとは

そして、現在のとある日。ドミニクの農場を“ファミリー”のローマン(タイリース・ギブソン)、テズ(クリス・“リュダクリス”・ブリッジス)、ラムジー(ナタリー・エマニュエル)が訪れ、ミスター・ノーバディ(カート・ラッセル)からのSOSを伝えます。“ある積荷”の輸送中に襲撃され中南米のモンテキントに墜落したというのです。襲撃には「ICE BREAK」でファミリーと敵対したサイバーテロリストのサイファー(シャーリーズ・セロン)が関与しているようでした。更にミスター・ノーバディの映像に映り込んでいたドミニク・ファミリーしか持っていない十字架のネックレスを見たドムは、レティと共にローマンたちに同行します。

墜落した輸送機の機内に残されていた正体不明の謎の電子機器を回収しますが、そこにモンテキントの軍隊が現れます。地雷地帯でのカーチェイスの最中、ジェイコブ(ジョン・シナ)が突然現れて電子機器を奪っていきます。後を追いかけたドミニクとレティでしたが、ジェイコブの車は断崖絶壁からジャンプし戦闘機に回収されて飛び去ります。ここまでも十分あり得ないスケールですが、ほんの序盤なんですね

ファミリーは何とか国境を突破しFBI捜査官のマイケル・スタジアック(シェー・ウィガム)に助けられて帰路につき、ドムはファミリーにジェイコブとのいきさつを話すのね。

ジェイコブは某国元首の息子のオットー(トゥエ・アーステッド・ラスムッセン)と、彼を裏で操るサイファーと手を組み、世界を掌中に収めようとしていました。彼が回収したのは「アリエス」というデバイスの半分で、人工衛星を経由して全世界のコンピューターや兵器を意のままに操ることのできるものですが、起動するには残りのパーツと“キー”が必要です。

スコットランド・エジンバラに保管されている残りのパーツを求めて、ミア(ジョーダナ・ブリュースター)も加わり、争奪戦が繰り広げられますが、その前に死んだ筈のハン(サン・カン)が生きているという情報の真偽を確かめるべく、レティとミアは東京へ、ローマンとテズはドイツ・ケルンでハンの仲間だったショーン(ルーカス・ブラック)、アール(ジェイソン・トビン)、トゥインキー(バウ・ワウ)の元を訪れます。彼らが開発中のロケットエンジンカーが後に宇宙への秘密兵器になるという この三人もなかなかコメディチックなキャラです。

ドムはショウ兄弟の母マグダレーン(ヘレン・ミレン)に接触し、彼女の協力を得てジェイコブの指紋採取に成功します。これにはドムがドミニカ共和国でガソリン強盗をしていた時の仲間カーラの妹レイサ(カーディ・B)とその仲間たちの協力がありました。

エジンバラでの超強力な電磁石が装備された車を使ったカーチェイスは、オットー一味に捕まったローマンとテズの乗ったトラックを運転免許を持っていないラムジーが運転するなど、派手なアクションの中にユーモラスな展開で楽しめます。

ジェイコブを捕まえ秘密基地に戻ったファミリーの前に、ハンと彼が匿っているエル(アンナ・サワイ)を連れて戻ったレティたち。ハンは自分の死の偽装の真実を語ります。そしてエルがアリエスのキーであることがわかります。そこへオットー一味が急襲し、ジェイコブと「アリエス」エルを確保して行きます。この時、ジェイコブは父ジャックが多額の借金を抱えていて、八百長を持ちかけられジェイコブに車の細工を依頼したというのが真相でした。ドムに頼めば絶対反対すると考えた父はジェイコブに頼んだのだと悟り弟への誤解が解けるドムでした。

ファミリーは、「アリエス」の核となる人工衛星を止める方法を模索し、ショーン達のロケットエンジンカーで宇宙に行くことを思いつきます。

旧式の宇宙服でロケットエンジンカーに乗り宇宙へ発射されるローマンとテズ・・飛行機もダメだったローマンが宇宙って・・・ こんな状況でも二人の会話は笑える

一方「アリエス」とエルを乗せた装甲トラックを追うドム、レティ、ラムジー、ハン、ミアはカーチェイスを繰り広げます。用済みと見なしたオットーにより彼の部下に襲われたジェイコブを助けたドムとミア。兄弟の絆復活ですねサイファーは戦闘機でドムたちを襲いますが、この際オットーを爆殺、更にドムの機転で戦闘機も撃墜されます。彼女も死んだ?と思ったら遠隔操作していたのね。ということはまだまだ続く可能性大。

ローマンとテズは電磁石で衛星を止めようとしますが電源がダウン。戻れないのを覚悟でロケットエンジンを起動して直接衛星に体当たりして破壊します。悲劇のヒーロー??かと思いきや、ちゃっかり宇宙ステーションに助けられてるし

和解した兄弟、ドムは追われる身のジェイコブに愛車を与え逃亡の手助けをします。

リトルBを連れて父の最期の地のレース場跡を訪れたドムは、「人生に必要なことの全てはここで学んだ」と語ります。

ロスの家に集結したファミリーはBBQを。ショーン、アール、トゥインキーも招かれてハンとの再会を喜び合います。そしてブライアンの車が遅れて到着・・・ブライアン役のポールは亡くなっていますが、その存在は確かに感じられ、仲間の絆が伝わってきました。

これで終わりと思いきや、自分が殺した筈のハンが現れて驚くデッカード・ショウ(ジェイソン・ステイサム)の姿が!

シリーズ総集編のような今作ですが、更なる展開が待っていそう。ショウ一家も引き続き登場しそうね意外と好きなの、ショウ一家


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最後の証人

2021年12月17日 | 

柚月裕子(著) 角川文庫

検事を辞して弁護士に転身した佐方貞人のもとに殺人事件の弁護依頼が舞い込む。ホテルの密室で男女の痴情のもつれが引き起こした刺殺事件。現場の状況証拠などから被告人は有罪が濃厚とされていた。それにもかかわらず、佐方は弁護を引き受けた。「面白くなりそう」だから。佐方は法廷で若手敏腕検事・真生と対峙しながら事件の裏に隠された真相を手繰り寄せていく。やがて7年前に起きたある交通事故との関連が明らかになり……。(BOOKデータベースより)

 

佐方貞人シリーズのこれが第1作目ですが、個人的には「死命」「本懐」に続く三作目になります。

作者はまずヤメ検の弁護士・佐方を描いて、彼の若い頃=検事時代の佐方を続編として登場させたんですね ちなみに佐方が検事を辞めたのは、彼の後輩検事の不祥事を筒井も含めて上が揉み消したことに憤ってのこととなっていました。

12年ぶりに米崎地裁に戻ってきた佐方ですが、立場は検事ではなく無実を訴える被告の弁護士としてです。物語の中盤まで、事件の被害者・加害者双方の名前は明らかにされません。その一方で、今回の事件の発端となった7年前の交通事故で亡くなった男の子・卓の両親の高瀬光治・美津子が受けた苦しみ、加害者・島津邦明に対する憎悪が綴られていきます。

一見、今回の被告の有罪は疑いようもないと誰しもが考え、法廷に立つ証人たちの証言もそれを裏付けていきます。

しかし、7年前の事故の真実を知る読者には、全く別の真相が浮かび上がってくるのです。

被害者が美津子、加害者が島津と判明すると、光治の視点で語られてきた夫婦の「計画」が狂い彼女は殺されてしまったのか?という疑いに誘導されます。息子を轢き殺されたうえに、事故の原因は息子の過失とされた両親の無念、今回の被告である加害者が公安委員長という権力に物言わせて不起訴処分になったことを突き止めた時の憤怒は子を持つ親なら誰しも共感するでしょう。病に侵され余命を知った美津子の最後の願いは息子を殺した男への復讐です。しかし彼らは男の肉体を滅ぼすのではなく、彼を社会的に抹殺することだったのです。そのために、敢えて痴情のもつれという汚名を着てまで計画を実行したのです。

夫として妻の計画を止めるべきだったという疑問もわきますが、光治が内科医とはいえ医者であったことも影響していたのかな。復讐にかける執念に突き動かされ命を燃やしている妻の姿が、病室のベッドに縛り付けられて、ただ命の灯が消えていくのを待つより煌めいて見え、何もせずにただ死ぬのを待つことは、すでに心を殺すのと同じと感じた彼なりの、妻への深い愛なのです。罪は裁かれなければならないという思いが夫婦の支えでもありました。

一方、対決する側の女検事・庄司真生は、かつて佐方の上司だった筒井の「優秀な」部下です。つまり真生は佐方の後輩でもあるのね。明々白々な事件と確信していた彼女ですが、一抹の不安が沸き上がっていきます。それが、結審当日の予定になかった「最後の証人」により事件そのものの真相が明らかになると同時に、島津の過去の罪も白日の下に晒されるのです。

そういえば、事故の加害者が不起訴になった理由を知ろうと押しかけた警察で、夫はこの「証人」である元警官・丸山(事件の担当刑事)に詰め寄り、殴りかかっています。この時丸山が彼を咎めず署から追い出した(罪に問わなかった)のは、せめてもの彼に当時出来た罪滅ぼしだったのかもしれないなぁ。丸山が上司の命に逆らえなかったのは彼の家庭事情があったからですが、佐方の証人要請を拒んでいた彼が証言台に立つことを決意したのは、佐方の「誰でも過ちは犯す。しかし一度なら過ちだが二度は違う。二度目に過ちを犯したらそれがその人間の生き方になる。」という言葉でした。

本来、依頼人の不利益になる行為は弁護士の倫理に反する筈ですが、佐方は今回の事件に関して島津の無罪を勝ち取りながら、彼の過去に起こした事件について真相を暴くといった離れ業をやってのけます。丸山の証言がなければ実現しなかったとはいえ、佐方の「罪はまっとうに裁かれなければならない」という信念は検事時代から少しも変わっていないことが垣間見えます。

判決が下ったあと、佐方に声をかけた真生に彼は「法より人間を見ろ」と助言します。それは筒井が常に部下に言っていたのと同じ言葉であり、筒井を通して佐方と真生を繋ぐ姿勢でもあるんですね。きっと真生も良い検事になるだろうことが示唆される場面でした。

佐方の事務員の小坂が最後に良い働きをします。妻と共謀して島津を陥れたことで警察に連行される光治に彼女は「事件を誰よりも知っている佐方に弁護を依頼するよう」声を掛けます。光治にとって佐方こそが真相を引き出してくれた人物であり、それによって島津は正しく裁かれることになるでしょう。ついでに公権力を不当に行使した者も罰せられる筈です。フィクションではあるけれど、現実にもあり得るのではないかと思ってしまうところが恐いかも。 せめて小説の中だけでも正義がきちんと成立して欲しいですね。


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王妃さまのご衣裳係 路傍の花は後宮に咲く

2021年12月15日 | 

結城かおる(著) 角川文庫

何もない少女が服飾の才能ひとつで、後宮を変える。爽やかな中華青春物語!
涼国(りょうこく)の没落貴族の娘・鈴玉(りんぎょく)は女官として後宮に入り、家門再興に燃えていた。
だが見習いの稽古は失敗続き。真っすぐで理不尽を見逃せない性分も災いして、反抗的・落ちこぼれの烙印を押されてしまう。
こうなったからには主上の寵愛深い権門の側室づき女官となって一発逆転を目指すも、なぜか鈴玉を指名してきたのは、地味で権勢もない王妃さまだった。失望する鈴玉だったが、ある一冊の小説と友人たちとの出会いによって、次第に服飾の才能を開花させていく。
それは彼女自身の運命と、陰謀渦巻く後宮をも変えていくことにつながり……!?(作品紹介より)

 

どういうきっかけでこの本を知ったのかはもう思い出せないけれど、図書館で予約した時にはそれなりの順番待ちになっていて、やっと回ってきたもの。表紙を見て「あれ?これって少女漫画的な奴?」と嫌な予感がしましたが、全体としてはまぁまぁ面白かったかも。

舞台は中華だけど、もちろん架空の国の設定。しかし表紙は中華というより大正浪漫風でちぐはぐ感が否めないぞ

ヒロインの鈴玉は勝気というより世間知らずの生意気娘ですが、友達思いで真っ直ぐな気性が救いです。でもその直情傾向が災いして次々騒動を引き起こしてしまうのですが 宦官による艶本が登場しますが、婉曲でソフトな描写なのは読者層を意識してのことかしら

正妻である王妃を廃しようとする一派の陰謀に巻き込まれ、牢に入れられたり攫われて拷問を受けたりしながらも鈴玉は自分の信ずるままに突っ走ります。側室が超腹黒の嫌な奴で、逆に王妃は心優しく立派な女性です。地味で冴えなく見えた王妃が鈴玉の衣装センスで見違えるように美しくなり王の心をつかむ展開ですが元々この夫婦は心が通じ合っているので、外見は所詮二の次だったともいえるんですけどね 賢明な王なのに、側室の色気に彼女の本性を見抜けなかったのか疑問は残りますが、若さと政治的判断ってことで・・。

庭園に咲く花々や衣装の色合わせの描写は良いとして、登場人物たちの容姿については抽象的でイメージが浮かばなかったのはマイナス点。

後宮で生きることは王の寵愛を狙うことでもあるはずですが、鈴玉は王妃への忠誠を選択しています。武官の青年への淡いときめきも、この時点で終了って中途半端な気も。

このはねっ返り娘がどう成長していくのか、続編あるのかちょっと気になりましたが・・・たぶん・・ないね


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ザ・ファブル 殺さない殺し屋

2021年12月12日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2021年6月18日公開 131分 G

裏社会で誰もが恐れる伝説の殺し屋ファブル(岡田准一)。1年間誰も殺さず普通に暮らすようボス(佐藤浩市)から命じられた彼は、素性を隠して佐藤アキラという偽名を使い、相棒ヨウコ(木村文乃)と兄妹を装って一般人として暮らしている。一見平和に見えるこの街では、表向きはNPO団体「子供たちを危険から守る会」代表だが裏では緻密な計画で若者から金を巻き上げ殺害する危険な男・宇津帆(堤真一)が暗躍していた。かつてファブルに弟を殺された宇津帆は、凄腕の殺し屋・鈴木(安藤政信)とともに、復讐を果たすべく動き出す。一方アキラは、過去にファブルが救えなかった車椅子の少女ヒナコ(平手友梨奈)と再会するが……。(映画.comより)

 

南勝久のコミックを実写映画化した「ザ・ファブル」のシリーズ第2作です。前作に続き監督は江口カン。

どんな相手も6秒以内に仕留める伝説の殺し屋ですが、しょうもないギャグに受けまくり、超がつく猫舌で世間の常識に疎いファブルが、以前関わった殺しの現場に居合わせ助けたものの半身不随となっていた少女と再会したことで事件に巻き込まれていきます。

一般人として暮らしていても、わかる人にはわかっちゃうという

バイト先では前作で助けたミサキ(山本美月)と同僚として関わっていますが、彼女を盗撮していた別の同僚が宇津帆に目を付けられたことから事件が起こります。社長(佐藤二郎)はアキラがただものではないことに薄々気付いているようですが、スルーを決め込んだようです。

凄腕の殺し屋設定だけど、案外あっさりやられちゃう鈴木が何だか良い奴に見えてしまったぞ。ファブルはもちろんですが、意外にヨウコの戦闘能力の高さに痺れます

敵キャラの堤さんの悪辣ぶりも際立っていました。エログロシーンもありますが、本当に悪い奴が善人の仮面を被っている姿はものすごく醜く映りました

冒頭の駐車場や、団地?の足場を使ってのアクションシーンはただただその迫力に息をのみます。演じる岡田君の身体能力の半端なさに脱帽です。

ヒナコを騙してファブルに彼女の両親を殺害した濡れ衣を着せようとする宇津帆でしたが、犯人しか知らない事実をポロっと口にしたことでヒナコに見抜かれる展開はちょっと意外でした。地雷を踏んでしまった彼女を助けるために鈴木と協力するとか、宇津帆がわざと自分が殺されるよう仕向けるとか、少々甘さも感じましたが、結果オーライで それにしても平手ちゃんは屈折した少女役が多いなぁ

エンドロールの後、意味深なボスのシーンはまだシリーズ続きますよというアピールでしょうか


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地獄の花園

2021年12月11日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2021年5月21日公開 102分 G

ごく普通のOL生活を送っているかのように見える直子(永野芽郁)。しかしその裏では社内の派閥争いをかけ、OLたちが日々ケンカに明け暮れていた。ある日、中途採用されたOL・蘭(広瀬アリス)と直子は一緒にカフェめぐりをするなど友情を深めていくが、蘭の正体はスカジャンがトレードマークのカリスマヤンキーOLだった。蘭の入社をきっかけに、直子の会社が全国のOLたちのターゲットになってしまい……。(映画.comより)

 

OLたちの華やかな職場の裏で、拳を戦わせる壮絶な派閥争いがおこなわれていたというバカリズムの奇想天外なオリジナル脚本を、関和亮監督のメガホンで映画化しています。個人的にOLを経験したことがないので実態はわかりませんが、ある程度の人数がいれば自ずと派閥はできるのかもですが、これはありえね~~でしょだからこそフィクションとして笑って観ていられるわけですが。

社内の三大派閥のTOPの悪魔OL安藤朱里(菜々緒)、狂犬OL佐竹紫織(川栄李奈)、大怪獣OL神田悦子(大島美幸(森三中))を倒し頂点に立った蘭に助けられたことから仲良くなった直子は「かたぎ=普通」OLです。彼女たちの壮絶な(でも笑える)バトルを横目に同僚の普通OLたちと何事もなかったように振舞う日常でしたが、いつのまにか「そっちの世界」のメンバーともお友達になっているという こいつただものじゃないな!!という伏線ありです。

ヤンキーの世界同様、強さが評判になれば、他社のヤンキーOLたちから目を付けられます。魔王OL赤城(遠藤憲一)率いる一派に捕らえられた直子を助けるために単身乗り込んだ蘭ですが、七色の拳を持つOL工藤早苗(丸山智己)、下関の虎河豚OL藤崎麻理(松尾諭)、青い稲妻OL冴木妙子(勝村政信)の前に倒れ、絶体絶命かと思われたその時、直子がその実力を発揮します!!

ごく普通のOLが最強OLという筋書きもよくある話 直子はヤンキー男兄弟に囲まれた末っ子ですが、その潜在能力は誰よりもあると父親からお墨付きが出ている最強ガールだったらしい 祖母の元祖ヤンキーOL(室井滋)の血を引いているのだから当然よねってネタバレ。可愛い芽郁ちゃんが演じることでよりギャップが強調されています。

ラスボスの地上最強OL鬼丸麗奈(小池栄子)をも倒した直子に、助ける筈が助けられたことで自分の価値を見失った蘭が、直子の祖母に指南を受け対決を挑むなどは、まんまヤンキー王道ストーリーですね

戦いには勝っても、密かに憧れていた社内イケメンが実は蘭と恋仲だったと知り「完全敗北」する直子のオチでした

非現実的&バカバカしさの極致ではありますが、俳優陣が全力で演じていて楽しめます。特に男性陣・・・外見も語り口もぜって~女に見えないし でもエンケンさんの脚線美には惚れそう そういえば「ラジハ」でアリス・エンケン・丸山の3人が共演中で、ついキャラ重ねて見てしまいそうでコワイ!!

バトっている時と普段の仕事ぶりのギャップも笑えます。バカリズムといえば架空OL日記を思い出しますが、そちらの延長線上にあるように思えました。


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検事の本懐

2021年12月08日 | 

柚月裕子(著)角川出版

ガレージや車が燃やされるなど17件続いた放火事件。険悪ムードが漂う捜査本部は、16件目の現場から走り去った人物に似た男を強引に別件逮捕する。取調を担当することになった新人検事の佐方貞人は「まだ事件は解決していない」と唯一被害者が出た13件目の放火の手口に不審を抱く(「樹を見る」)。権力と策略が交錯する司法を舞台に、追い込まれた人間たちの本性を描いた慟哭のミステリー、全5話。第15回大藪春彦賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

 

第一話 樹を見る

南場の視点で描かれています。先に「検事の死命」を読んだため、放火事件の犯人への冤罪を未然に防いだ顛末についてはある程度予想できていました 死人が出たその一件については実に覚えがないと主張する犯人の言葉に警察は耳を貸さず送検します。権力争いと功名心に逸り冤罪を造りだすところだった南場にとって、佐方の冷静で客観的な観察眼が救いの神となったこともよくわかる話になっていました。

第二話 罪を押す

こちらは筒井の視点ですね。微罪を重ね刑務所と娑婆を行ったり来たりしている男が、出所当日に犯した万引き事件。罪を認めている簡単な案件に見えますが、佐方は、男の行動に疑問を持ち、独自に調べて真相を突き止めるのです。真犯人である少年を庇い敢えて濡れ衣を着ようとした男に、佐方は「あんたは間違っている」と指摘します。男が別れた息子から受け取った手紙の内容に強く心を揺さぶられました。 真面目だけが取り柄で平凡な人生を送っていた男が、パチンコのビギナーズラックの快感に嵌り依存症に陥り家庭を崩壊させ転落していったことや、少年が万引きした理由(親に贈られた腕時計をカツアゲされたことを言えず、同じものを盗もうとした)も明かされ、罪を犯す側の事情にも深く切り込んでいるのが印象的です。この事件をきっかけに筒井の佐方に対する信頼と共感が深まったようです。

第三話 恩を返す

こちらに登場する悪徳刑事の描写は読んでいるだけでも嫌悪感を覚えるキャラです。高校時代の同級生の弥生から、刑事に恐喝されているという相談を受けた佐方は、自分に任せてと言います。過去の回想という形で、弥生が脅迫されたネタや佐方との関係性が語られますが、これも読んでいて楽しい話でもありません。しかし、悪徳刑事と対決した佐方の毅然とした態度は友人として、男として、検事としても立派で堂々としていました。高校時代の事件が起こらなければ、おそらくは友人以上の気持ちを抱いていた二人だっただろうと伺わせます。婚約者に自分の過去(彼女は全くの被害者です)を知られたくない弥生のために、最善の解決策をした佐方の男気を感じる一編でした。

個人的に、文中に登場する「最近売り出し中のSMAPの曲」に反応してしまいました。この小説の初版が2011年ですが、SMAPは既にCDデビュー20年を経ていて、物語の時代は一体いつ頃だったんだろ??

 

第四話 拳を握る

こちらは山口地検の事務官である加東の目線で語られる佐方像です。東京地検特捜部での応援に駆り出され、佐方と世間を騒がす贈賄疑惑の重要参考人・葛巻の縁者である伯父の岩舘の聴取を行うことになるのですが、相手は本人に罪はない一般人です。上層部が、姿をくらました葛巻の行方を突き止め身柄を確保しようと躍起になり無理やりにでも所在を吐かせるよう佐方たちに圧力をかけてきます。岩舘は明日をも知れない高齢の母親の病床に行くことさえ許されずに長時間の聴取を受けるのですが、事情を知った佐方が詐病を示唆して岩舘を帰すのね。結果母親の臨終に間に合った岩舘が葛巻に出頭を促してくれます。彼の聴取をした佐方は、彼の無実を証明して上層部に不起訴を申し出たことで外されてしまいます。大義のために小を殺すやり方を是としない加東は、佐方にシンパシーを感じて彼の処遇に怒りを禁じることができませんでした。


第五話 本懐を知る
既に「検事の死命」を読んでいたので、佐方の父親が有罪を受けた真意も知ってはいますが、これはニュース週刊誌の記者である兼崎が、佐方陽世の事件に興味を持ってその真実を探ろうとする話です。示談か起訴猶予に持ち込めた筈の事件なのに敢えて有罪判決を受け控訴もせずに死んでいったことへの素朴な疑問が彼を突き動かします。陽世の親友や幼馴染の女性、息子である佐方検事を取材しても真実に辿り着けずにいましたが、横領された側への取材で彼の中にある真実が浮かび上がります。それは正しかったのですが、結局相手の女性が最後まで認めなかったため、彼は記事にすることを諦めるんですね。この話は後に「死命」の方で明らかになりますが、事件に関わる当事者たちが没したことで初めて語ることのできた真相でもありました。


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あのこは貴族

2021年12月04日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2021年2月26日公開 124分 G

東京に生まれ、箱入り娘として何不自由なく成長し、「結婚=幸せ」と信じて疑わない華子(門脇麦)。20代後半になり、結婚を考えていた恋人に振られ、初めて人生の岐路に立たされる。あらゆる手立てを使い、お相手探しに奔走した結果、ハンサムで良家の生まれである弁護士・幸一郎(高良健吾)と出会う。幸一郎との結婚が決まり、順風満帆に思えたのだが…。一方、東京で働く美紀(水原希子)は富山生まれ。猛勉強の末に名門大学に入学し上京したが、学費が続かず、夜の世界で働くも中退。仕事にやりがいを感じているわけでもなく、都会にしがみつく意味を見いだせずにいた。幸一郎との大学の同期生であったことで、同じ東京で暮らしながら、別世界に生きる華子と出会うことになる。2人の人生が交錯した時、それぞれに思いもよらない世界が拓けていく―。(公式HPより)

 

都会の異なる環境を生きる2人の女性が、恋愛や結婚だけではない人生を切り拓く姿を描いた作品で、山内マリコの同名小説が原作。監督は岨手由貴子。

「20代後半から30代にかけての息苦しさを抱える女性たちが、軽やかに変化していく姿を、最後の青春譚として静かに紡いでゆく」とありますが、二人の女性がある時点で交差し、変化が生じていきます。

今時、結婚すれば全てめでたし!という感覚の女性は希少だと思いますが、世間知らずの箱入り娘ならありそうな話かも

恋人に振られたら次の相手というのも、じゃあ初めから大して好きでもなかったのかよ!と突っ込んでみたくなるけど、この時の華子には主体性が感じられないのよね。 幸一郎という「釣り合う」相手の登場で舞い上がり、他の女性の影を感じながらもプロポーズを受けて結婚した華子ですが、幸せのゴールではないことに気付いていくんですね。

幸一郎の祖父から身元調査をして合格だから認める!的発言をされた時から感じた違和感は、夫が自分に妻としての役割しか求めていないことや本心を見せてくれていないことも感じ取るようになっていくに従い増幅していきます。

一方、美紀も、田舎で埋もれたくないとあがいたものの、必死に勉強して入った大学も経済的事情で中退せざるを得なくなり、それでも東京にしがみついてはいるけれど、当初の夢や希望も消えていました。幸一郎とは大学で知り合っていますが、二人の関係はセフレみたいな感じなのね。

幸一郎にとって、美紀は居心地の良い存在ですが、結婚の対象には初めからならない女性で、所謂「都合の良い女」なんですね。話の中では子供の頃から政治家の家の跡取りとして重責を感じていたことも匂わせてはいるのですが、それでもかなり傲慢な奴だ

華子は友人を通じて美紀と会い、夫の素顔を尋ねます。大学時代、内部生たちとの女子会で4200円のアフタヌーンティーに驚愕した経験のある美紀にとって、華子の優雅な振る舞いや会話に登場するクリスマスツリーや雛人形の行事のに、住む世界(階層)の違いをまざまざと自覚させられることになります。

もう会うこともない筈の二人でしたが、子供が出来ないことを姑に責められ気落ちしていた華子が偶然美紀を見かけて声をかけ再会します。

美紀の部屋から眺める東京タワーは華子がこれまで見ていた景色とは全く異なります。この時、華子の中である決意が生まれたのでしょうね。

時間は過ぎて・・・

美紀は友人と起業し、東京で逞しく生きています。華子は幸一郎と離婚し、友人のマネージャーになっています。

美紀は友人と自転車の「ニケツ」をする場面が何度か登場しますが、政治家として歩み始めている幸一郎が偶然通りかかって華子に声をかける場面で華子が友人の乗る台車?を押す場面が出てきます。「君がマネージャー?」と驚く幸一郎に明るく笑って答える華子は、彼女なりの自由を手に入れたのかしらね 

正直、どちらにも感情移入はできなかったかな。


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