杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

ドリーム

2017年09月29日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)

2017年9月29日公開 アメリカ 127分

東西冷戦下、アメリカとソ連が熾烈な宇宙開発競争を繰り広げている1961年。ヴァージニア州ハンプトンのNASAラングレー研究所では、優秀な頭脳を持つ黒人女性たちが“西計算グループ”に集い、計算手として働いていた。リーダー格のドロシー(オクタヴィア・スペンサー)は管理職への昇進を希望しているが、上司ミッチェル(キルスティン・ダンスト)に「黒人グループには管理職を置かない」とすげなく却下されてしまう。技術部への転属が決まったメアリー(ジャネール・モネイ)はエンジニアを志しているが、黒人である自分には叶わぬ夢だと半ば諦めている。幼い頃から数学の天才少女と見なされてきたキャサリン(タラジ・P・ヘンソン)は、黒人女性として初めてハリソン(ケビン・コスナー)率いる宇宙特別研究本部に配属されるが、オール白人男性である職場の雰囲気はとげとげしく、そのビルには有色人種用のトイレすらない。それでも、それぞれ家庭を持つ3人は公私共に毎日をひたむきに生き、国家の威信をかけたNASAのマーキュリー計画に貢献しようと奮闘していた。

 1961年4月12日、ユーリ・ガガーリンを乗せたソ連のボストーク1号が、史上初めて有人で地球を一周する宇宙飛行を成功させた。ソ連に先を越されたNASAへの猛烈なプレッシャーが高まるなか、劣悪なオフィス環境にじっと耐え、ロケットの打ち上げに欠かせない複雑な計算や解析に取り組んでいたキャサリンは、その類い希な実力をハリソンに認められ、宇宙特別研究本部で中心的な役割を担うようになる。ドロシーは新たに導入されたIBMのコンピュータによるデータ処理の担当に指名された。メアリーも裁判所への誓願が実り、これまで白人専用だった学校で技術者養成プログラムを受けるチャンスを掴む。さらに夫に先立たれ、女手ひとつで3人の子を育ててきたキャサリンは、教会で出会ったジム・ジョンソン中佐(マハーシャラ・アリ)からの誠実なプロポーズを受け入れるのだった。

 そして1962年2月20日、宇宙飛行士ジョン・グレンがアメリカ初の地球周回軌道飛行に挑む日がやってきた。ところがその歴史的偉業に全米の注目が集まるなか、打ち上げ直前に想定外のトラブルが発生。コンピュータには任せられないある重大な“計算”を託されたのは、すでに職務を終えて宇宙特別研究本部を離れていたキャサリンだった……。(公式HPより)


1962年に米国人として初めて地球周回軌道を飛行した宇宙飛行士ジョン・グレンの功績を影で支えた、NASAの3人の黒人系女性スタッフの知られざる物語を描いた実話に基づくドラマです。

人間が宇宙空間に行く時代なのに、厳然としてある人種差別に溜息がでます。NASAという先進施設でさえ、当たり前のように差別がまかり通っていて、さらに女性というだけで二重に差別されている彼女たちですが、いじけず諦めず、着実に一歩ずつその道を切り拓いていく姿に内心で拍手を送りました。 冒頭のシーンで、パトカーを先導させて疾走する彼女たちの姿がまさにその生きざまを象徴するかのようでした。

飲み物のポットも別にされ、トイレさえ白人専用で使用させてもらえず、800m離れた西棟(黒人専用棟)にダッシュしなければならない劣悪な環境の中で、黙々と与えらえた仕事をこなしながら、自分なりの数式を考え提案するキャサリン、昇進の道を断たれながらも、IBMのプログラミングを独学で学び、同僚の黒人女性たちに教え、見事データ処理の室長(管理職)の地位を獲得したドロシー、技術者になるための資格を得るため白人専用高校での受講を求め判事の心情に訴えて見事勝ち取ったメアリー。黒人というだけで理不尽な境遇に立たされながらも、ひたむきに夢を追い続けた彼女たちのサクセスストーリーは観ていて気持ちよいです。

キャサリンの上司のハリソンは、キャサリンの置かれている劣悪な環境に全く気付いていなかった仕事バカですが、彼女の能力は高く評価していました。彼女の進言を受けて会議の席に加えるという英断もしてみせます。ある雨の日、いつものようにトイレからびしょぬれで帰ったキャサリンは、ハリソンに、席にいつもいないと非難されます。たまらずトイレさえない自分の状況について感情を爆発させたキャサリンの姿をみて、男性たちは自分たちの偏見をほんの少し改めるの。これも小さな一歩です。 ハリソンはトイレの人種専用プレートを叩き外し「これからは誰でも自由に使用して良い」と宣言します。「過ちては改まるに憚ること勿」です コンピュータの運用が開始されたことで用済みとされたキャサリンへの餞別(業績への謝意)に真珠のネックレス(服飾規定にアクセサリーはコレのみ許可とあるのですが、黒人女性にはそんな高価なものを買うゆとりはないこともトイレ事件の際にキャサリンは口走っていたのをちゃんと聞いていたのね)を贈ったり、人間味のある上司でした。

ドロシーの上司のミッチェルは白人女性。態度や口ぶりがしっかり差別してるのよね NASAで生き残っていくためにプログラミングを学んだドロシーとは後に立場が同等もしくは逆転していくのですが、ドロシーに指摘されるまで自分自身の差別意識にすら気付いていなかったのです。でも気付いてからの彼女はドロシーにも敬称をつけて呼ぶなど態度を改めます。

メアリーの判事への訴えかけも見事でした。前例のないことをするのはそれなりの正当な理由があるのだと理詰めと感情論の両面から攻めて見事に権利を勝ち取るのです。

おそらく、現実にはもっと酷い差別を受けたり恐い、悔しい思いもたくさんしたのだと想像できます。でも彼女たちは笑顔で困難に立ち向かい、ユーモアに溢れています。それぞれ家庭を持っていますが、その夫や子供たちも母の仕事に理解と誇りを持っていることが伝わってきます。それは人種に変わりなくまさに古き良きアメリカの家庭の光景でした。 彼女たちの住む家の内装や調度品がポップでカラフル、品もあってとても素敵でした(こんな家に住めるならそこそこお給料良いんじゃないの?とちょっと思ってしまったぞ

この作品が今年アメリカで公開されて広く受け入れられたという事実は、黒人差別に限らず今なお残る狭量な意識へのアンチテーゼなのかもしれませんね。

 


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スクランブル

2017年09月25日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)

2017年9月22日公開 フランス 94分

「アル・カポネが銃撃用に改造した車だ」などと、ひと目でその車の伝説を語る膨大な知識を持ち、兄のアンドリュー(スコット・イーストウッド)は頭脳、弟のギャレット(フレディ・ソープ)はメカニックを担当──
それが高級クラシックカー専門の世界一の強盗団、フォスター兄弟だ。彼らにとって、どんな盗みも成功させるのは当たり前。大事なのは、誰も思いつかない〈驚愕の手口〉で、いかに美しく完璧に盗むかだ。今回もオークション会場から搬出された世界に2台の37年型ブガッティを奪うはずだった。しかし、落札したのが残忍なマフィアのモリエールだったために、兄弟は囚われの身に。命が助かる条件は、敵対するマフィアのクレンプが所有する62年型フェラーリ 250GTOを1週間で盗むこと。アンドリューの恋人で一流ハッカーのステファニー(アナ・デ・アルマス)、指名手配中の天才スリの美女(ガイア・ワイス)、火薬を自在に操る爆弾オタクら寄せ集めチームで、犯罪史上最大の強奪作戦に挑むはずが、インターポールに追われ、ステファニーを人質に取られ、挙句の果てにはクレンプに計画を知られてしまう。だが、実はピンチさえも兄弟の〈計画〉だった──!?(公式HPより)

 

『ワイルド・スピード』シリーズ製作陣による最新作で、南仏マルセイユが舞台(そうか!フランス映画だったんですね )

ブガッティや、BMW327、ポルシェ356スピードスター、アストンマーティンV8といった名立たるクラシックカーがずら~~っと並ぶ光景は、車に詳しくなくても目を見張ってしまいました。

モリエールのコレクションも凄いけれど、色彩的にはクレンプのフェラーリが並んだ車庫の景色も圧巻。赤、赤、赤~~ ちなみにブガッティはラルフ・ローレンの博物館所蔵の本物から鋳型を借りてたレプリカで、それ以外は南仏の個人コレクター所蔵の実物を借りたんだそうな

そんな高級車専門の盗みのプロたちが繰り広げる二重三重の罠に思わず時間を忘れて見入ってしまいました。

アンドリュー役のスコット君、お父さん(クリント・イーストウッド)も皮ジャンが似合う男でしたが、さすが息子も決まってます お調子者の弟を演じたのは英国俳優のフレディ君。口達者で軽薄そうだけどドライブテクニックはピカイチです。異母兄弟という設定なので性格の違いもある意味納得

アンドリューはステフとの結婚を意識していて、危ない仕事から引退を考えていますが、当のステフはこの「仕事」をしているアンドリューが好きで自身も手を引くつもりは毛頭ないってのが現代的モリエールに捕まり監禁されても隙を見て逃げ出し「仕事」はきっちりする「デキル女」です

敵の敵は味方!な図式でどんでん返しの後半は名車を連ねたカーチェイス。とはいえ高級車に傷をつけたら一大事。激しくぶつけたり潰したりはご法度なのでそこはスピード勝負となります。カーブの多い山道を走り抜け、橋を爆破し、たどり着いた港で最後の勝負は・・ありゃ?兄弟じゃなくスリの美女が決めちゃった

クラシックカーを眺めるだけでも目の保養ですが、ストーリーも軽快で適度にフランスらしい下ネタもあり楽しめました


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CYBORG 009 CALL OF JUSTICE 第3章

2017年09月25日 | ドラマ

2016年12月9日公開 95分

009 進化のパラドックス

0010 星に願いを

0011 誰が為に

0012 光の彼方へ

 

「サイボーグ009」を、完全オリジナルストーリー&フル3DCGでアニメーション化した「CYBORG009 CALL OF JUSTICE」全3章の第3章です。

 カタリーナ中尉のブレスドとしての能力は思考や動作の同期(リンク)です。彼女が読み取ったエンペラーの「人類強制進化計画」とは、宇宙ステーションからマイクロドローンを装填したロケットを地球に向けて発射し地表にばら撒くというもので、実行されたら世界人口の95%が死滅します。でも彼女自身はこの計画に疑問を持っているのね。話を聞いたサイボーグ戦士たちは計画を阻止すべく、ジェット,ハインリヒ,ジョーの三人が宇宙ステーションに向かいます。ジェットが宇宙空間で戦い時間を稼ぐ中、ハインリヒが捨て身の策でステーションの制御系統をコントロールし、ジョーはプロフェッサーの本体である「脳」を破壊します。このシーンは原作の場面を想起させますね。ハインリヒの犠牲を無駄にすまいと、皆イワンのいるNYに向かいます。

エンペラーの能力はコピー。その人間に触れることで彼(彼女)の持つ能力をコピーできるのです。イワンはエンペラーと戦いを始めますが、逆にATフィールド(ここはエヴァみたいだね)に閉じ込められてしまいます。既にイワンの能力もコピーされていたのねイワンに転送されたジョーが到着しエンペラーと対峙しますが加速しても歯が立ちませんそこへカタリーナも現れ、ジョーとエンペラーの動きをリンクしますが、怒ったエンペラーに記憶を消され殺されてしまいます。エンペラーの次の計画は人々の記憶を消してリセットすることだったのです。

ジョーとエンペラーの動きはスピードを増し、やがて光をも超えてしまいます。事象の地平線を超えたと表現されるそこは、誰も見たことのない、戻ることもない異次元の世界です。

地球に平和が戻り、ジェットとともにピョートル局長を倒した五十嵐が新たな局長に。でも地球の平和と正義を守ったゼロゼロサイボーグ達の活躍を知る者は彼と以外誰もいないのです。

う~ん、そうきたか!な結末。ハインリヒ、ジェット、ジョー…三人の犠牲の上の平和ですか

主要な戦士たちが軒並みいなくなっては物語はもう「先」がないのね。

ちょっと違和感を覚えたのは、ジョーのカタリーナに対する感情が恋愛なのか同志としての一種の友情なのか?

ジョーはフランソワとであって欲しいと勝手に思ってしまうのだけど・・あれ?そもそもこの二人の関係も微妙といえば微妙なのよね。それこそ同志としての意識の方がジョーは強い気がするし 

完全オリジナルストーリーだし、そこはまあ置いとくか

それにしても3000年も生きてきた割りには自分が一番な俺様キャラでしたね~エンペラーは


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SCOOP!

2017年09月24日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2016年10月1日公開 120分

数々の伝説的スクープをモノにしてきたカメラマンの都城静(福山雅治)は、輝かしい業績も過去のものとなり、今は芸能スキャンダル専門の中年パパラッチとして、借金や酒にまみれた自堕落な生活を送っていた。そんなある時、ひょんなことから写真週刊誌「SCOOP!」の新人記者・行川野火(二階堂ふみ)とコンビを組むことになり、日本中が注目する大事件に巻き込まれていく。

 

1985年製作の映画「盗写 1/250秒」を原作に、芸能スキャンダルから社会事件まで様々なネタを追いかける写真週刊誌カメラマンや記者たちの姿を描いた作品です。特典映像の中の舞台挨拶を見て、監督と福山さんが同い年って知ってそっちに驚いちゃったのは私だけではないはず。

無精ヒゲにもじゃもじゃ頭で、アロハシャツと革ジャンのワイルド(過ぎる)恰好の静は福山さんが演じるからまだ許せる 着用している皮ジャンはクランクインの1カ月前から普段も着て馴染ませていたとか
普段と逆の立場を演じていることも注目されてましたっけね。
静は借金まみれで下ネタ大好きなゲス野郎キャラですが、下ネタ好きなのは似てるかも(昔深夜ラジオ番組でそんな話をしてましたね
 
元妻の定子(吉田羊)にギャラと引き換えに新人の教育を押し付けられて渋々連れまわすことになるのですが、四六時中一緒にいて、互いに惹かれあうのは自然な流れかも それにしても演じているのが二階堂ふみちゃんだと気付かなかった私はほんと女優に疎い・・いやいや、役によって全く違う顔になれる彼女が凄いのか
 
前半はしょうもない芸能人や政治家の色恋を追っかけている軽いノリですが、連続殺人犯の現在の顔を撮ろうと奮闘するあたりから、徐々にシリアスモードになってきます。とはいえ、馬場(滝藤賢一)に昔の秘策を再現させるところはコメディタッチでしたが (いくら元ラガーマンという設定とはいえ、あの格好をわざわざさせる意味あるのかしらん?
 
チャラ源(リリー・フランキー)と静の関係は昔多大な恩義があるということでしたが、詳しいことは語られていません。でもおそらくそのことが原因でクスリに溺れるようになったのだろうチャラを静は最後まで見捨てず庇います。そのために命を落としてまでもね。この時のチャラ源を演じるリリーさんの狂気はすさまじく、目が離せませんでした。 あの場面で野火が出てこなかったら、あの結末は避けられたのではとも思うのだけど、ジャーナリスト魂ということで片付けられるのかな? 
野火に託した1万円の意味は定子との賭けに起因するものですが、野火自身が知ったら怒りそうですね
 
あの手この手のパパラッチの裏技を知ることができたのは面白かったです。芸能人がお忍びで来る深夜のバーに張り込んだり、ホテルの部屋の密会現場のカーテンを開けるために正面のビルから花火を打ち上げたり・・・他人事だから愉快なのであって、被写体の本人たちは腹立たしいでしょうね~

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パッセンジャー

2017年09月19日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2017年3月24日公開 アメリカ 116分

20XX年、乗客5000人を乗せた豪華宇宙船アヴァロン号が、新たなる居住地を目指して地球を旅立ち、目的地の惑星に到着するまでの120年の間、乗客たちは冬眠装置で眠り続けていた。しかし、エンジニアのジム(クリス・プラット)と作家のオーロラ(ジェニファー・ローレンス)だけが予定よりも90年近く早く目覚めてしまう。絶望的で孤独な状況下で生き残る方法を模索するうちに、2人は惹かれ合っていくのだが……。

 
 
宇宙船内で極限状態に置かれた男女の愛と運命を描いたSF作品です。
たいていのあらすじ紹介は上記のようになっていますが、映画の中では機械のトラブルで目覚めてしまったのはジムだけです。他の乗客は眠り続ける中でアンドロイドであるバーテンダーのアーサー(マイケル・シーン)だけが話し相手。何とか冬眠状態に戻ろうとカプセルのトリセツを読んだり乗組員を起こそうとしたりするも甲斐なく一年が過ぎるころ、ジムは乗客の中にオーロラを見つけ、彼女に惹かれて話をしたい誘惑と葛藤することになります。90年早く彼女を目覚めさせるということは彼女の人生を変えてしまうことに等しいからです。散々迷った末、孤独に耐えきれなくなったジムは行動を起こします。何も知らずジムと同じようなトラブルに見舞われたのだと思っているオーロラは、はじめはパニックになったものの、次第にジムとも打ち解けていきます。さらに一年が過ぎる頃、ジムは彼女にプロポーズを決意し指輪を用意しますが、「僕たちの間に隠し事はない」といったジムの言葉を真に受けたアーサーがオーロラに真実を告げてしまうの。 当然彼女は激しい怒りをぶつけます。そんな時、新たに船長のガス(ローレンス・フィッシュバーン)が目覚めます。実はジムが目覚めた原因となった隕石の衝突で宇宙船には重大なトラブルが起こっていたのです。ガスとジムはその原因が船の動力源の核融合炉の破損にあると突き止めます。しかしポッドの破損の影響でガスは病に倒れ亡くなってしまします。残された二人は力を合わせて事態の解決に向かうのでした・・・。
 
一般乗員には手の届かないVIP乗員の部屋で眠ったり、ゲームやスポーツを楽しんだりして暫くは気が紛れても、逆に一層孤独が募ってたまらずオーロラを目覚めさせてしまったジムの気持ち理解できます。無理やり人生を変えられてしまったオーロラの行き場のない怒りもね 二人の仲直りのきっかけはガスの死と宇宙船に起こった絶体絶命の危機ですが、これもつり橋効果の一つでしょう。 核エネルギーを放出させて爆発を回避するのに、宇宙服と楯代わりの扉だけで防御するとかありえなさ感大だし、宇宙空間に投げ出されたジムをオーロラが助け出して蘇生装置に入れて救うのもかなりご都合主義ではあります。この蘇生装置を冬眠ポッド代わりに使用することを思いついたジムはオーロラを入れようとしますが、彼女は断りジムとともに船内で人生を終える選択をします。
 
88年後に目覚めた乗客たちは、ジムの植えた木々を眺め、オーロラの書いた手紙を読んで何が起きていたのかを知ります。二人は幸せな人生を送ったのです。(子孫がいなかったのは敢えてなんだろうなぁとか想像しちゃいました。)
 
宇宙を旅する時代が来ても、行って帰ってきたら浦島太郎どころじゃない時が流れているし、そもそも宇宙船の運行会社が存続している保証もない気がしますが、そういうことは考えない方がよろしいようで

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暗黒女子

2017年09月18日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2017年4月1日公開 105分

聖母マリア女子高等学院で、経営者の娘にして全校生徒の憧れの存在である白石いつみ(飯豊まりえ)が、校舎の屋上から謎の転落死を遂げた。彼女の手には、なぜかすずらんの花が握られていた。真相が謎に包まれる中、いつみが主宰していた文学サークルの誰かが彼女を殺したという噂が流れる。いつみから文学サークルの会長を引き継いだ親友の澄川小百合(清水富美加)は、「白石いつみの死」をテーマに部員たちが書いた物語を朗読する定例会を開催。部員たちはそれぞれ「犯人」を告発する作品を発表していくが……。


秋吉理香子の同名ミステリー小説の映画化です。乙女の園=女子高で起きた事件の真相が描かれるのですが、一見善良そうな少女たちの本質がえぐ過ぎ でもリアリティあるなぁ

前半部はいつみの死にサークルの誰かが関わっていて、それを暴こうとしているかのように進みます。一人ひとりがいつみの死をテーマに書いてきた物語を朗読していくのですが、美礼(平祐奈)→あかね(小島梨里杏)→ディアナ(玉城ティナ)→ 志夜(清野菜名)の順にいかにも犯人が次の朗読者であるかのような内容になっていて、二人目の時点で変だな?と違和感が出てきます。最後にいつみ自身が書いた物語を小百合が代読する形で読み上げたその内容でまさに事態がひっくり返るのです。

いつみは教師の北条(千葉雄大)と恋仲でしたが妊娠が父親にばれて関係を断ち切られ子供も喪います。その原因がサークルのメンバー4人にあったことから、彼女は復讐を計画したのでした。いつみの死が他殺であるかのような噂を流し、4人に遺書ともとれる小説を書かせ、定例会の闇鍋の具材にすずらんの毒を入れて命を奪うつもりだったのです。(怖っ!)実は身投げは狂言でいつみは生きていて、北条先生と駆け落ちしていました。この計画は直前までうまく運んでいましたが、平凡な女に成り下がりカリスマ性を失ったいつみにがっかりした小百合が突発的に彼女を殺してしまうの。恐ろしいことに、小百合は闇鍋の材料にいつみを入れ4人に食べさせたのでした。 こうしていつみに代わって新たなヒロインが誕生します。

思春期ならではの独占欲や友人への嫉妬、勝手な相手への思い込み、一つ一つは「あるある~」なエピソードですが、それが合わさるととんでもない所までいっちゃうんですねぇ 

ラスト、何事もなかったかのように綴られる女子高の日常の光景。でもその中央でサークルのメンバーに囲まれ輝いているのは小百合です。いやぁ・・・・女って恐い生き物だよ

この映画も例の事件の余波で公開が危ぶまれた作品の一つです。清水富美加、良い女優なのに・・残念!


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三度目の殺人

2017年09月11日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)

2017年9月9日公開 124分

真実なんていらない。弁護士は、そう信じていた。それは、ありふれた裁判のはずだった。殺人の前科がある三隅(役所広司)が解雇された工場の社長を殺し、火をつけた容疑で起訴された。犯行も自供し、死刑はほぼ確実だった。その弁護を担当することになった、重盛(福山雅治)。裁判をビジネスと割り切る彼は、どうにか無期懲役に持ちこむために調査を始める。何かがおかしい。調査を進めるにつれ、重盛の中で違和感が生まれていく。三隅の供述は会うたびに変わる。動機さえも。なぜ殺したのか?本当に彼が殺したのか?得体のしれない三隅に呑みこまれているのか?弁護に真実は必要ない。そう信じていた弁護士が、初めて心の底から真実を知りたいと願う。やがて、三隅と被害者の娘・咲江(広瀬すず)の接点が明らかになり、新たな事実が浮かび上がる。(チラシより)

 

是枝監督のオリジナル脚本で描いた法廷心理ドラマです。

「真実」は二の次で判決の勝敗にこだわる弁護士の重盛は、事件の真相より依頼人の利益の追求が大事です。真実は誰にもわからないと割り切っているのです。だから前科があり、今回が“二度目の殺人”で死刑が確実とされている三隅の弁護を引き受けた彼の目標は無期懲役にして減刑を勝ち取ることでした。

ところが面会に行く度、三隅の供述は変わります。初めは金銭目的と言っていたのに週刊誌に社長の妻・美津江(斉藤由貴)に保険金目的で依頼されたと独占告白。証拠のメールや50万が振り込まれた通帳を提示します。確認のために三隅のアパートを訪ねた重盛は大家から足の悪い女の子が頻繁に訪れていたことを聞きます。それは被害者の娘・咲江でした。さらに捕まることを想定していたかのような三隅の様子になぜという疑問が重盛の中に湧きあがります。

実は、30年前の三隅の裁判で裁判長を務めたのは重盛の父で、三隅を「獣みたいな人間」と評しています。当時彼を逮捕した刑事も「感情のない空の器」と述懐していました。

やがて、咲江が父親から性的暴力を受けていたと衝撃の告白があり、三隅は彼女を守るために殺人を犯した、もしくは咲江の罪を被った、二人で犯行を行い三隅が罪を引き受けたという可能性を重盛は考えます。三隅が保険金殺人だと週刊誌に告白したのは、夫の行為を知りながら見ぬふりを続けていた母親を裁く意図があったのですね。振り込まれた50万も食品偽造していることを漏らさないようにというお金だったという。あの夫にしてこの妻というか、身勝手さはどっちもどっちだな。プライベートで騒がれている斉藤由貴がこの母親役というのがまたなんとも・・これで減刑の道筋が見えたと思った矢先、三隅は犯行自体を否認に転じるのです。彼の真意は咲江が法廷で辛い事実を告白し傷つくことを恐れ、証言させまいとしたのだということは十分理解できます。もちろん重盛だって承知していたでしょう。それでも彼は三隅の意思を尊重し、結果判決は・・・。

ここで、映画の題名の意味が浮かんできます。劇中、裁判官・検察官・弁護人の三者の阿吽の呼吸で裁判のスケジュールが決まる場面がありますが、彼らはただ滞りなく裁判を消化するために真実を追求せずに蓋をすることを了解しているかのようでした。これを指摘した新人弁護士の川島( 満島真之介)に最初に「やっていない」と訴えた三隅に取り合わず認めれば死刑を免れることができると誘導した摂津(吉田鋼太郎)がしたり顔で法曹界の事情を説明するというのも皮肉が利いています。三隅は二度殺人を犯したかもしれない。でも三度目の殺人の被害者はもしかしたら三隅自身なのかもしれません。そして不条理と理不尽に満ちたシャバで生きることは三隅には苦痛だったのでしょう。自分の娘と同じ足の悪い咲江に同情し父親のような気持ちで守ってやりたいと思ったという重盛の推理はしかし、三隅にはぐらかされて終わります。真実は観客の側にその判断を委ねているのです。

三隅の実の娘は父親を拒絶しているように描かれますが劇中ではその存在を示しただけで本人の登場はありません。二度目の殺人で逮捕されたことで、娘は住んでいた土地を離れざるを得なくなりますし、死刑になったら父親のことで一生負い目を背負うことになるのに、劇中では娘についてそれ以上は触れられていないのが気になります。それは三隅が「空っぽの器」だから?いやいや、三隅が咲江を守ったのだと思いたいし、彼には人間らしい感情が多分人並み以上に隠れているのだと思いたいです。


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素晴らしきかな、人生

2017年09月10日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2017年2月25日公開 アメリカ 94分

ニューヨークにある広告代理店の代表を務めるハワード(ウィル・スミス)は、最愛の娘を亡くしたことで深い喪失感から立ち直れずにいた。完全に人生を見失い、自分の殻に閉じこもって仕事も手につかないハワードを心配した同僚たちはある計画を思いつく。そしてある日、ハワードの前に年代も性別も異なる3人の奇妙な人が現れる。彼らとの出会いにより、ハワードの人生に徐々に変化が起こり始め・・。 

 

クリスマスシーズンのNYが舞台となれば、ハートウォーミングストーリーが定番ですが、この作品も、最愛の娘を喪い人生のどん底で苦しむ男が、奇妙な舞台俳優たちとの出会いを通して悲しみを受け入れ、もう一度心を立て直していく筋書となっています。

娘の死という現実を受け入れられないハワードは、「時間」「愛」「死」に宛てた手紙を書いて投函します。受け取る相手のいないこの手紙を書くこと自体が彼なりの悲しみを癒す手段の一つのようです。

彼が仕事から背を向けているせいで、会社の経営状態は悪化。共同経営者のホイット(エドワード・ノートン)は会社の買収を受け入れさせようと部下のクレア(ケイト・ウィンスレット)やサイモン(マイケル・ペーニャ)とある計画を立てます。それは彼が偶然出会った舞台俳優たちに「時間」「愛」「死」を演じてもらい、ハワードが悲しみを受け入れ、会社のことをちゃんと考えてもらえるようにすることでした。彼らは「死」ブリジッド(ヘレン・ミレン)「時間」ラフィ(ジェイコブ・ラティモア)「愛」エイミー(キーラ・ナイトレイ)を受け持つことにします。

ハワードと会社を心配する三人にもそれぞれ抱えている事情があります。ホイットは、不倫がばれて妻と離婚し、ママを傷つけたと娘に嫌われています。サイモンは持病が再発したことを仲間にも愛する妻にも打ち明けられずにいます。クレアは仕事一筋で婚期を逃し、せめて子供が欲しいと思って精子バンクを検索しますがそろそろ時間切れの状態で迷っています。そんな彼らの背中を俳優たちのアドバイスが押します。サイモンにはブリジットが妻に打ち明けなさいと言い、ホイットにはエイミーが娘と向き合いなさいと言い、クレアにはラフィが子供を持つ方法は一つじゃない(実子だけが選択肢じゃない)と言います。

舞台俳優たちが演じるのは人間ではない(死と時間と愛ですからね)ので、当然周囲の人間にも彼らが見えないという設定です。彼らとハワードが会話する時の様子も最初は周囲に誰もいないか計画を知っている三人の誰かだけがいる状態ですが、後半になって電車内や街の雑踏での会話はちょっと不自然だなぁと思い、ビデオの再生に至ってはこんな風に編集できるなんて凄すぎる!!と感心していたら、最後に驚きの真実が!!わかってみると納得なんですよね

でも、ハワードの立ち直りのきっかけは彼らだけではありませんでした。最初は家の外で、後に中に入っていくカウンセリング・グループの集会のホスト役の女性マデリン (ナオミ・ハリス)との交流も少なからぬ影響を与えています。しかしここでもアッと驚く事実が最後に明かされます。わかってしまえば、彼がなぜ夜ごと彼女の家まで自転車を走らせたのか、どうしてマデリンに娘の名を言えなかったのかすごく腑に落ちてしまうのです。そして娘の名前を言えた時、ハワードの時計はやっとその針を進めることができたのですね。病院で娘の死を受け入れたマデリンに言葉をかけた隣に座った女性の正体がわかり、全てが繋がっていたと思えたラストもでした。


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破門 ふたりのヤクビョーガミ

2017年09月09日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2017年1月28日公開 120分

建設現場での暴力団対策の仕事を通じてヤクザの桑原保彦(佐々木蔵之介)と知り合った建設コンサルタントの二宮啓之(横山裕)は、ある日桑原のいる二蝶会の若頭・嶋田(國村隼)に映画製作企画を仲介する。しかし企画を持ち込んだ映画プロデューサーの小清水(橋爪功)は、二蝶会が用意した出資金を持ったまま姿をくらます。桑原は二宮を巻き込んで資金回収のために奔走し、邪魔をするゴロツキ2人を病院送りにする。しかし相手が本家筋の構成員だったことから組同士の揉め事へと発展し、追う立場だった桑原と二宮がいつしか追われる側になってしまい・・・。

 

黒川博行のハードボイルド小説「破門」の映画化。口だけは達者なぐーたらビンボーの二宮とすぐにキレるイケイケやくざの桑原を演じる二人はともに関西出身とあってリアルな関西弁の掛け合いはなかなか面白かったです。

小清水がなかなかの曲者で演じている橋爪さんの飄々としたとぼけぶりが見事で、何度も騙される二人より役者が一枚も二枚も上手な感がありました。

嫌いだ、腐れ縁の疫病神だと口では言いながらもけっこう気が合っているような桑原と二宮は傍から見たら、いとこの悠紀(北川景子)言うところの「なんだかんだ言って好きでしょ」な良いコンビです。

嶋田は二宮の父親が昔世話をしたという関係らしく(ということは父親も極道さんだったのね)、でも二宮の実家で交わされる三人の会話はごくごく普通なんですね 自分のために資金を出してくれた嶋田に悪いという気持ちや、飛行機のチケット代を母に借りる時の心苦しさといった二宮の心情は理解できますし、息子に夕食を作り食べている様子を嬉しそうに見ている母の姿も「うんうん、そうなんだよね~」と思ってしまいます。このあたりはものすごく「堅気」なエピソードです。

一方、小清水に追い込みをかける時や、本家筋との揉めて凄みを効かせる桑原の行動はまさに極道。巻き込まれながら冷めた目で見ている二宮とのギャップがあります。逃げろと言われれば素直に桑原を置いて逃げ出してしまう二宮君ですが、二度目には自問し彼なりに筋を通そうとします。流されるような生き方をしてきた二宮ですが、今回の事件でちょっとは成長したのかなあ?

それにしても極道な蔵之介さんも素敵ってそっちかいって話ですがだってぐーたらな二宮は・・ねぇ


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海賊とよばれた男

2017年09月04日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2016年12月10日公開 145分

主要燃料が石炭だった当時から、石油の将来性を見抜いていた国岡鐡造(岡田准一)は、北九州・門司で石油業に乗り出すが、その前には国内の販売業者や欧米の石油メジャーなど、常に様々な壁が立ち塞がり行く手を阻んだ。しかし鐡造は、どんなに絶望的な状況でも決して諦めず、それまでの常識を覆す奇想天外な発想と型破りの行動力、何よりも自らの店員(=部下)を大切にするその愛情で、新たな道を切り拓いていった。その鐡造の姿は、敗戦後の日本において、さらなる逆風にさらされても変わることはなかった。そしてついに、敗戦の悲嘆にくれる日本人に大きな衝撃を与える事件が発生する。石油メジャーから敵視され、圧倒的な包囲網により全ての石油輸入ルートを封鎖された鐡造が、唯一保有する巨大タンカー「日承丸」を、極秘裏にイランに派遣するという狂気の行動に打って出たのだった。イランの石油を直接輸入することは、イランを牛耳るイギリスを完全に敵に回すこと。しかし、イギリスの圧力により貧困にあえぐイランの現状と自らを重ね合わせた鐡造は、店員の反対を押し切り、石油メジャーとの最大の戦いに臨む。果たして、日承丸は英国艦隊の目をかいくぐり、無事に日本に帰還することができるのか?そして鐡造は、なぜ海賊とよばれたのか?その答えが明らかになる・・。(チラシより)


百田尚樹の同名小説の映画化です。国岡鐵造のモデルは出光興産創業者の出光佐三氏です。

店を存続させ、店員を養うために、漁師相手に船で燃料を売りにいくような無茶な商売をしたことから「海賊」と呼ばれるようになった国岡は、当然組合からも嫌われています。それが尾を引いて、戦後に組合から石油を回してもらえず窮地に陥るのですが、アメリカから突き付けられた難題を引き受けることで脱します。それは海軍燃料タンクの底に残った油の回収という過酷な作業でした。暗く悪臭のするタンク内で、泥混じりの大量の油を前に怖気づく店員たちでしたが、「戦争に比べたらなんのこれくらい」と作業に臨む店員たち・・いや、それってかなり危険だから!現場を訪れた国岡も率先して作業に臨んだりして士気は嫌でも高揚します。スポ根ものと勘違いしそうだぞ。

後半では、拿捕される危険を承知でタンカーをイランに派遣しますが、事前に知っていたのは船長(堤真一)だけで、船員たちは航海中に行先がイランであることを告げられるのです。そこで「嫌」って言えないでしょ、フツー危険な状況での連帯感や高揚感で一丸となる図は極めて危険な臭いがします。もちろん、国のためにという行為自体を非難するつもりはありませんが、それでも個人を犠牲にする姿勢に危うさを感じてしまいました。

彼らの団結を象徴するような音楽と歌が効果的に挿入されますが、これにも少し怖さを感じました。一種の軍歌みたいでね

国岡の人柄に惹きつけられて、冷静沈着な補佐役の柏井(野間口徹)、東雲(吉岡秀隆:後の出光興産三代目社長の石田正賓がモデル)、元漁師の長谷部(染谷将太)、元GHQの通訳・手島(鈴木亮平)などが集まります。

その一方で、国岡の妻・ユキ(綾瀬はるか)は子供が出来ないことや国岡が仕事一筋で家庭に目を向けない孤独から彼の元を去ります。

国岡は、日本の復興のために突き進んだ人のようですが、その行動は犠牲や危険を伴うものに見えます。カリスマには違いないけれど、熱に浮かされた狂気を孕んだ怖さも感じました。壮年の鐡造を演じる岡田君は上手かったけれど、国岡自身は好きになれなかったな~~


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2017年09月04日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)

2017年9月1日公開 アメリカ=中国=香港 107分

香港警察の刑事ベニー・チャン(ジャッキー・チェン)は、香港犯罪界のドンと疑うヴィクター・ウォン(ウィンストン・チャオ)を捜査中、同僚のヤン(エリック・ツァン)を失った。一人娘のサマンサ(ファン・ビンビン)を託されたベニーはその後見人として面倒をみることに。9年後。引き続きヴィクターを追っていたベニーは、潜入捜査の失敗から住宅街に甚大な被害を与えたことで停職処分を受ける。 その頃、マカオのカジノで働くサマンサのもとに現れたアメリカ人詐欺師コナー・ワッツ(ジョニー・ノックスヴィル)はサマンサを巻き込んだイカサマにより大金をせしめて姿をくらます。サマンサの上司ウィリーは何としてでもコナーを探し出すようサマンサに命令、彼女はベニーに助けを求める。コナーが既にロシアまで高飛びしているとわかったベニーは、単身ロシアに乗り込んで彼を逮捕した。が、なぜか二人まとめて追われることになってしまう。実はコナーはロシアン・マフィア、香港マフィアなどありとあらゆる組織に狙われている厄介者だったのだ。とんだ疫病神に出会ってしまったベニーだったが、何と、よりによってこの男が、ベニーが9年も追っているヴィクターの事件のカギを握っている人物だということがわかる。二人は衝突しながらも世界を逃げ回ることに。
逃亡先でさらに敵を作るコナー。怒り心頭のベニー。これ以上ないほど相性最悪なコンビは、巨大な犯罪に立ち向かうため、いや目の前の敵からとりあえず逃げるため、ありとあらゆる手段を使って目的地マカオを目指す。果たして、大逃亡の行方は!?(公式HPより)


監督は「ダイ・ハード2」「クリフハンガー」のレニー・ハーリンで、演じるのがジャッキーとくれば、これはもう娯楽作として合格点間違いなしでしょ バディものですが、今回の相棒はコテコテのアメリカ人(今時カウボーイハットのこんなテキサス野郎がいるのか??)しかも手癖・女癖の悪い詐欺師とあって、熱血正義の人なベニーと相性最悪コンビです。『ラッシュアワー』『シャンハイ・ヌーン』シリーズ以来の “EAST MEETS WEST”な作品で、「クリス・タッカーとオーウェン・ウィルソンを足したような」(ジャッキー評)ジョニーのとぼけた演技と早口のセリフ回しが絶妙な笑いを生み出します。

香港からロシア、ゴビ砂漠を横断してモンゴル、中国と二人の珍道中はコミカルな味付けがたっぷりされていて楽しめます。もちろん雄大な自然も目の保養です。隙あらばベニーの裏をかいて逃げ出すコナーですが、どこか抜けてて結局は追いつかれて捕まる繰り返しはお笑いの「てんどん」みたいな笑いを作り出していました。そしていつしか互いの過去や境遇を知って、友情が芽生えていくのね。

アクションシーンは激しさのなかにもユーモアがあり、「うわぁ、痛そう」と思いながらもついつい笑ってしまいます。予告やCMに登場していたマトリョーシカを使った工場でのアクションが特に面白かったです。

ロシアン・マフィアのダーシャ(イヴ・トーレス)とウィリー(ヨン・ジョンフン)一味の女性の一騎打ちもありました。このロシアン・マフィアとコナーの関係も彼がボスの娘に手を出し結婚を迫られたという・・・最終的にはなかなか脱力系のオチが待っていました だよね~~最初にちゃんと否定してたもんねぇ 彼が好意を持ったのはサマンサで、ベニーと彼の部下のレスリー(シ・シー)共々、最後は二組のカップル成立か

黒幕の正体は、わかってみれば「そういえば」な演出がありました サマンサが閉じ込められた部屋に飾られたたくさんの「写真」が「彼」の愛情を示していますが・・・そもそも「相棒」の性格を熟知しているのに何故後見を頼むかな~~ あ、警察内部の協力者は簡単にわかっちゃったんですけどね

エンドロールのメイキングシーンもジャッキー映画の定番。今回も楽しめました

作品の中でも実年齢に近い役柄ですが、いまだ現役のアクションスターって素晴らしいです


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心が叫びたがっているんだ、アニメ

2017年09月03日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2015年9月19日公開 119分

2017年7月29日放送 フジテレビ 土曜プレミアム

 

幼い頃、何気なく発した言葉によって、家族がバラバラになってしまった少女・成瀬順

そして突然現れた“玉子の妖精”に、二度と人を傷つけないようお喋りを封印され、言葉を発するとお腹が痛くなるという呪いをかけられる。それ以来トラウマを抱え、心も閉ざし、唯一のコミュニケーション手段は、携帯メールのみとなってしまった。高校2年生になった順はある日、担任から「地域ふれあい交流会」の実行委員に任命される。一緒に任命されたのは、全く接点のない3人のクラスメイト。本音を言わない、やる気のない少年・坂上拓実、甲子園を期待されながらヒジの故障で挫折した元エース・田崎大樹、恋に悩むチアリーダー部の優等生・仁藤菜月。彼らもそれぞれ心に傷を持っていた。担任の思惑によって、交流会の出し物はミュージカルに決定するが、クラスの誰も乗り気ではない様子。しかし拓実だけは、「もしかして歌いたかったりする?」と順の気持ちに気づいていたが、順は言い出せずにいた。そして、だんまり女にミュージカルなんて出来るはずがないと、揉める仲間たち。自分のせいで揉めてしまう姿を見て順は思わず「わたしは歌うよ!」と声に出していた。そして、発表会当日、心に閉じ込めた“伝えたかった本当の気持ち”を歌うと決めたはずの順だったが…。(公式HPより)

 

実写映画公開ということで地上波で放送されたアニメバージョンですが・・・せいぜい中学生にしか見えない幼い外見と舌足らずなヒロイン ミュージカルの内容が王子様っていうのも今時の ませた高校生に受け入れられるのかという疑問も持ってしまったぞ

順はもともとはお喋りな女の子だったけれど、山の上のお城(と思い込んでいたが実はラブホ)から出てきた父親と知らない女性の話を母にしたことで両親の関係が破綻してしまった過去を持ち、それが全て自分の責任だと思い込み、自分の殻に閉じこもってしまっています。それが言葉を発するとお腹が痛くなるという身体症状に如実に現れているんですね。そもそも、父親が自分の不倫を棚に上げて娘を非難するなんて言語道断だし、母親も夫の不倫を知ってしまったことの重荷を娘にぶつけてしまうという失敗を犯しているんです。でも小学生の順に大人の事情がわかる筈もなく(わかってたら口にしなかったしね)消えないトラウマを抱えて高校生になっているという・・けっこう重いテーマを含んでいるんですね。

担任がなぜこの4人を選んだのかについては描かれていないのですが、この先生、案外人間観察の達人かも

口に出せない想いを抱えた4人が、ミュージカル発表という目的を与えられてその中でもがきながらも自らの本当の気持ちに気付いていくという成長物語ですが、恋愛を絡めたのはやはりこの手の青春ものには欠かせない要素ということでしょうか

拓実と順が相思相愛という定番パターンにならなかったのはですが、だからといって田崎が惹かれていたのが「そっち」ってのは少し強引な気がしました 

実写化にあたってはこのミュージカルがメインに据えられるのかなぁと思いましたが、アニメでもけっこう良い感じだったので、ここだけは観てみたいかも。でも劇場に行ってまで観たいというジャンルじゃないのでいつか暇なときにDVDでかな


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メン・イン・キャット

2017年09月02日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2016年11月25日公開 フランス=中国 87分

北半球一高いビルを建てるというバカげた目標のために、家族との時間や社員の意見を犠牲にしている仕事一筋で傲慢な社長トム・ブランド(ケヴィン・スペイシー)。跡継ぎの息子のデヴィッド(ロビー・アメル)は頼りなく、まだまだ自分が会社を引っ張っていく必要があると考えている。そんなある日、妻ララ(ジェニファー・ガーナー)から娘のレベッカ(マリーナ・ワイズマン)の誕生日が明日であることを知らされ、長年欲しがっていたネコをプレゼントすることに。怪しげな店主パーキンス(クリストファー・ウォーケン)のペットショップで“Mr.もこもこパンツ”と名付けられたネコを購入する。しかし、その帰り道、社員のイアン(マーク・コンスエロス)に呼び出され、会社の屋上に行く。雨の中呼び出されたことにいら立ったトムがイアンをクビにしようとしたところ、雷が落ちる。吹き飛ばされたトムはイアンに助けを求めるが、逆恨みから見捨てられ、ネコとともに転落する。意識が戻ると、トムは病院にいた。しかし目の前で担架に持ち上げられたのは自分だった。近くにいるララに話しかけようすると、「ニャーオ、ニャーオ……」。そこにパーキンスが現れ、これは夢ではないと告げる。家族はネコがトムだと気づかず、ペットとして受け入れる。人間に戻るにはいい夫、いい父親にならなければならないと悟ったトムは、ネコの姿のまま奮闘する。そうしている間に、イアンが会社を乗っ取ろうと株式公開の準備を始める。(Movie Walkerより)

 

「メン・イン・ブラック」シリーズのバリー・ソネンフェルド監督によるコメディです。出演している俳優さんたちからてっきりアメリカ映画だと思っていたら、フランスと中国の合作なんですね

仕事一筋のワンマン社長トム。北半球一高いビルを建てるという彼以外の人間にすればおバカな夢のため会社の利益をつぎ込み、家庭も社員も顧みないトムですが、妻のララ(ジェニファー・ガーナー)と娘への愛情はちゃんとあります

会社で娘への誕生祝について会議を開いたトムが、社員から宮城県の田代島旅行を提案される場面があり、いきなりの日本ネタに驚きました。 良いアイディアも出ず時間切れで、彼女が前々から欲しがっていた猫を渋々購入するのですが、このペットショップの経営者パーキンス氏(クリストファー・ウォーケン)がめっちゃ怪しいの 案の定、トムに反発し会社乗っ取りを企む社員イアン(マーク・コンスエロス)の罠で事故に遭ったトムは猫と意識が入れ替わってしまいます。

この猫の名前が「Mr.もこもこパンツ」ってのが笑えます 猫になったトムが何とか自分の存在に気付いてもらおうと奮闘する様子が笑えます。いつしか家族の愛情や本音を知り、これまでの自分を反省するトム特に前妻マディソン(シェリル・ハインズ)との間の息子デヴィッド(ロビー・アメル)が(あんなワンマンな父親なのに)心から父を尊敬し慕っているのがいじらしかったです。(前妻はけっこうな悪妻なのにね

レベッカも幼い少女の割りに鋭い観察眼があって、この猫がトムだと見破るの。劇中、パーキンスの忠告をトムは二度無視しますが、二度目のそれは、自分を犠牲にしても愛する息子を救おうとしたからそして、この選択がハッピーエンドに繋がる結果をもたらすのでした。

因果応報、乗っ取りを企んだイアンの末路は推して知るべしなオチでした。

Mr.もこもこパンツは6匹の猫が演じているんだそうな。決して美猫じゃないけど、どこか愛嬌のある容姿も猫好きにはたまらんですね


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