
中山七里(著)朝日新聞出版
新任教諭として、埼玉県秩父郡の神室幼稚園に赴任した喜多嶋凛。モンスターペアレンツたちの要求を果敢に退け、自らの理想とする教育を実践するのだが……。どんでん返しの帝王が仕掛ける物語は、いったいどこへ向かうのか?読者の予想を裏切る著者の真骨頂!
【目次】
一. 闘いの出場通知を抱きしめて
二. こぶしの中 爪が突き刺さる
三. 勝つか負けるか それはわからない
四. 私の敵は私です
五. 冷たい水の中をふるえながらのぼってゆけ
【目次】
一. 闘いの出場通知を抱きしめて
二. こぶしの中 爪が突き刺さる
三. 勝つか負けるか それはわからない
四. 私の敵は私です
五. 冷たい水の中をふるえながらのぼってゆけ
タイトルに惹かれて手にしましたが、あとがきに中島みゆきさんの「ファイト!」から構想を得たとありました。だよね~😀
冒頭の電車内で泣き叫ぶ赤ちゃんをよそにスマホをいじっている母親に注意する凛の描写は、続編のヒロインにも踏襲されていたと気付きました。😁 そっちを先に読んじゃったので事件の真犯人もわかっちゃってるんだけど💦
凛が勤めることになった幼稚園は埼玉県秩父郡の神室駅からバスで20分程の神室幼稚園です。 実はこの幼稚園では、15年前に3人の園児が殺害される事件が起き、職員の中で当時を知るのは園長の京塚正彦だけです。逮捕された送迎バスの運転手・上条卓也は死刑確定後に獄死していたと後に明かされます。
凜は年少の星組の担任になります。指導役は年中組の高梨まりかで、年少月組の担任は神尾舞子、年長組は池波智樹です。(舞子と池波は続編に登場しますが、本作の舞子先生は終始冷静沈着で人間味に欠けるキャラながら、凛が四面楚歌となった時にただ一人「普通」に接していました。)
理想に燃える凛でしたが、この園では15年前の事件以来、保護者会の力が強く園長も言いなりの現実に直面します。
凜は保護者の会長・見城真城らと何度も衝突をしながらも、牧場で牛と触れ合いながら命の尊さを教えたり、保護者会から押し付けられた劇の演目は変えずに大胆な脚本で園児や保護者が楽しめる内容を考えたりといった慣例を覆す授業や型破りな指導で少しずつ周りの信頼を得ていきます。
ところが、埼玉県警捜査一課の渡瀬刑事の出現により、再び15年前の事件が人々の記憶に呼び起こされます。
更に新入園児の保護者説明会に来ていた凛の小学校の同級生だった横山美穂により、凛が15年前の事件の犯人・上条卓也の娘だと暴露され、保護者や同僚から糾弾され
園長からは自主退職を迫られます。
辞めないと申し出た凛に、園長は副担任として仕事を続けさせますが、園児との会話も禁じられ精神的・肉体的に追い詰められていきます。
3月に入り、雨で午前中に全ての園児を退園させたある日、凛のクラスの菅沼大河が帰宅していないと連絡が入ります。
以前、大河ら数人の園児たちが自宅マンションの裏山でツキノワグマの子供にエサをあげていたことを思い出した凛は、豪雨の中を探し回ります。山の中の掘っ立て小屋を見つけ中を覗いた凛はそこに渡瀬刑事がいて驚愕します。ヤクザと見紛う面相の渡瀬がいきなり現れたらそりゃ驚くよな~~😁 凛の読み通り大河もそこにいました。
小屋の地下収納庫には血液が付着した鎌とロープがありました。渡瀬は15年前の事件の真犯人の証拠を探していたのです。鑑識により血痕が15年前に殺害された園児のものと一致します。小屋と土地の所有者は園長で、身柄は駆け付けた秩父署の刑事たちに引き渡されます。
凛が幼稚園教諭になろうと思ったのは、亡くなった3人の園児のためであり、父親の犯した罪への贖罪の気持ちがあったからでもあります。神室幼稚園に決まったのは偶然でしたが、彼女にとっては必然でもあったのです。
渡瀬は、再審請求までの道のりの険しさに言及し、凛が置かれている厳しい状況も変わらないことから転職や離職をアドバイスしますが、凛はもう逃げないと答えます。
受け持ちクラスの園児たちが一斉に見つめるその顔に希望と勇気をもらう凛です。
凛の父親は過って轢き殺してしまった園児の遺体を隠そうとして現行犯で捕まっています。保身の行為が身に覚えのない2件の殺人の犯人にされる悲運に繋がりました。
幼児性愛者の園長がこれ幸いと自分の罪をなすりつけ、平然としていたその鉄面皮には呆れを通り越してうすら寒い気がします。
それにもまして、世間というバッシングの描写の過酷さに辟易させられます。被害者遺族も加害者遺族も永遠に癒えることのない傷を受け続けなければならないどんな理由があるというのか。😡