ピーター・S・ビーグル著 鏡 明訳
出版 : 早川書房
発行年月 : 1979.10
タンポポの毛のようなたてがみと貝殻色に光る角を持つ、この世で最も美しい生き物ユニコーン。なぜ彼らは姿を消してしまったのか? ユニコーン最後の生き残りは、仲間を求めて旅に出る……。
間違いなくファンタジーの分類に属するのに、何とも不思議な味わいの物語である。ふわふわした子供向けの甘さはなく、難解さが全編に溢れているのだが、それでいて惹きつけられて、本を閉じることが出来ない。
ユニコーンは後悔や涙を持つことのない存在として描かれている。そこには人間との感情の共有は見られない。然し赤い牡牛から逃げる(これは自己の死を意味するのか?)ために魔法使いによって人間の娘に変えられた後の彼女には迷いと愛の心が芽生える。伝説のハガード王の城での暮らしは彼女にとって何を意味したのか?最終的に、仲間を解放し去ってゆく彼女は旅に出る前の彼女には戻れないのである。
一方旅の連れとなる魔法使いシュメンドリック。彼は出来損ないの魔法使いとして自分の潜在能力に気付きながらも、真の魔法を操れず小手先の手品使いとして見世物小屋で働いていたのだが、捕らわれたユニコーンを逃がし、彼女との旅を通して本当の自分を見つけることになる。
もう一人、旅の連れ、モリーは森の強盗団の仲間であったが、これもユニコーンとの出逢いにより、自分探しを始めるのだ。
王や王子、破滅の赤い牡牛、魔法にユニコーンとファンタジーにお馴染みのキャラクターが勢揃いしているというのに、甘やかな夢の世界は微塵も出て来ず、其々の内面描写が続く。初めはユニコーン、それからシュメンドリック、モリー、そしてハガード王やリーア王子、城の老兵たち・・・
楽しい御伽話を所望ならこれは避けた方が良い
個の模索と哲学の旅の道連れには
かも
出版 : 早川書房
発行年月 : 1979.10
タンポポの毛のようなたてがみと貝殻色に光る角を持つ、この世で最も美しい生き物ユニコーン。なぜ彼らは姿を消してしまったのか? ユニコーン最後の生き残りは、仲間を求めて旅に出る……。
間違いなくファンタジーの分類に属するのに、何とも不思議な味わいの物語である。ふわふわした子供向けの甘さはなく、難解さが全編に溢れているのだが、それでいて惹きつけられて、本を閉じることが出来ない。
ユニコーンは後悔や涙を持つことのない存在として描かれている。そこには人間との感情の共有は見られない。然し赤い牡牛から逃げる(これは自己の死を意味するのか?)ために魔法使いによって人間の娘に変えられた後の彼女には迷いと愛の心が芽生える。伝説のハガード王の城での暮らしは彼女にとって何を意味したのか?最終的に、仲間を解放し去ってゆく彼女は旅に出る前の彼女には戻れないのである。
一方旅の連れとなる魔法使いシュメンドリック。彼は出来損ないの魔法使いとして自分の潜在能力に気付きながらも、真の魔法を操れず小手先の手品使いとして見世物小屋で働いていたのだが、捕らわれたユニコーンを逃がし、彼女との旅を通して本当の自分を見つけることになる。
もう一人、旅の連れ、モリーは森の強盗団の仲間であったが、これもユニコーンとの出逢いにより、自分探しを始めるのだ。
王や王子、破滅の赤い牡牛、魔法にユニコーンとファンタジーにお馴染みのキャラクターが勢揃いしているというのに、甘やかな夢の世界は微塵も出て来ず、其々の内面描写が続く。初めはユニコーン、それからシュメンドリック、モリー、そしてハガード王やリーア王子、城の老兵たち・・・
楽しい御伽話を所望ならこれは避けた方が良い


