杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

やすらぎの森

2022年04月30日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2021年5月21日公開 カナダ 126分 G

カナダ・ケベック州、人里離れた深い森。湖のほとりにたたずむ小屋で、年老いた3人の男性が愛犬たちと一緒に静かな暮らしを営んでいた。それぞれの理由で社会に背を向け、世捨て人となった彼らの前に、思いがけない来訪者が現れる。その80歳の女性ジェルトルード(アンドレ・ラシャペル)は、少女時代に不当な措置によって精神科療養所に入れられ、60年以上も外界と隔絶した生活を強いられていたのだった。世捨て人たちに受け入れられたジェルトルードは、マリー・デネージュという新たな名前で新たな人生を踏み出し、澄みきった空気を吸い込みながら、日に日に活力を取り戻していく。しかし、その穏やかで温かな森の日常を揺るがす緊急事態が巻き起こり、彼らは重大な決断を迫られていくのだった……。新しい出逢いと湖畔での穏やかな共同生活。80代の男女を主人公に迎え、人生の晩年をいかに生きるかというテーマを詩情豊かに綴る、愛と再生の物語が誕生した。(公式HPより)

 

ジェルトルード/マリー・デネージュを演じたアンドレ・ラシャペルは2019年11月に他界し、本作が遺作。監督は、ケベック出身のルイーズ・アルシャンボー。本作の舞台・ケベック州アビティビ在住の作家、ジョスリーヌ・ソシエの原作小説の映画化です。

淡々と進む物語の設定を呑み込むまで少し時間がかかりました。

冒頭に登場する世捨て人の老人たち、チャーリー(ジルベール・スィコット)、トム(レミー・ジラール)、テッド・ボイチョク(ケネス・ウェルシュ)の森の暮らしの描写と並行して、写真家のラフ=ラファエル(エヴ・ランドリー)が森林火災の生存者の証言を聞き取っていく姿が出てきます。その一人、ボイチョクを訪ねてラフはスティーヴ(エリック・ロビドゥー)が管理人をしているホテルにやってきます。

ジェルトルードはスティーブの伯母で、夫が亡くなって初めて彼女の存在を知った母ジュヌヴィエーヴ(ルイーズ・ポルタル)が、施設から一時帰宅させ葬儀に参列させました。この時点ではジェルトルードがどんな施設に入っていたのか不明ですが、彼女を送り届けようとしたスティーブにジェルトルードは戻りたくないと訴えるんですね。そこで彼は自分が任されているホテルに連れてきますが、いつまでも置いておくわけにいかず、懇意にしている老人たちの所へ連れていきます。どうやら彼らは森で大麻を栽培していて、スティーブはその恩恵に預かる代わりに日用品や食料を届けているようです。

老人たちは元いた場所から自由を求めて逃れてきている様子。ジェルトルードがやってきた時点でテッドは既に心臓発作で亡くなっていたため、彼の小屋を提供することになります。彼女は新しい暮らしを始めるにあたってマリー・テネージュと言う名前に変えます。トムは女性が加わることに懐疑的ですが、チャーリーは親切に面倒をみます。湖での行水や焚火を囲む夕食、トムの弾き語りなど、穏やかな森の暮らしの中で、彼女は次第に明るさを取り戻していきます。

眠れない夜をチャーリーの小屋で過ごすようになったマリーは問わず語りに生い立ち(多感な彼女を誤解した父親に精神障害者施設に監禁され60年が過ぎたこと、施設で望まぬ妊娠・出産をしたが子供は取り上げられ強制避妊手術をされたこと。)を話し、チャーリーもまた森で暮らすようになった理由を話します。二人の仲が深まっていき、遂にある夜結ばれるのですが、老人同士のその描写は決して不快ではありません。

一方ラフはテッドが遺した膨大な絵画を見つけ世間に公表したいと考えます。彼のアトリエの鍵を壊して勝手に入ったラフをトムとチャーリーは非難しますが、ラフはテッドが絵で自分の想いを訴えていたのだと主張します。 

遠くの森の火災が延焼してきて、彼らの森にも避難命令が出されます。施設や森林警備隊の捜索の手が伸びてくることを恐れた彼らはそれぞれ決意を固めます。チャーリーたちは青酸カリを手元に置いていて、死期は自ら決めると約束していました。癌を患っているチャーリーとアル中のトム、テッドは急死しましたがおそらくは心臓の病でしょう。トムが歌うシーンが何度も出てきますが、彼は歌詞に自らの思いを重ねているように感じました。トムは愛犬と一緒の死を選びます。地面に穴を掘って愛犬と共に横たわり服毒死する様は、かなり壮絶です。 冒頭でウサギの皮を剥ぐシーンも登場しますが、死や性を真正面から捉えて描かれている作品です。

チャーリーは病気が見つかったことで家族と別れ森に隠遁する道を選んでいますが、すでに15年が経過しているらしい。しかもマリーと恋愛してるし、最後は二人で森を出て暮らしてるし・・・なんか釈然としない思いが残りますが、マリーの立場から見たらまさに自由で新しい人生が拓けたわけです。

ラフの個展の会場には、彼女が撮った写真とテッドの絵画が飾られていました。そもそもラフがどうして彼らの写真を撮ろうと思ったのか、その動機が明らかにされていないし、老人たちと若者の対比なのかもイマイチわからなかったなぁ。ケベックから出たことがなく独身を通し大麻を吸うスティーブも人生を逃げているように見えました。ラフやマリーとの出会いが彼を一歩前に進めるきっかけになったのかしら? 


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そして、バトンは渡された

2022年04月29日 | 

瀬尾まいこ(著) 文春文庫

幼い頃に母親を亡くし、父とも海外赴任を機に別れ、継母を選んだ優子。 その後も大人の都合に振り回され、高校生の今は二十歳しか離れていない“父”と暮らす。 血の繋がらない親の間をリレーされながらも、 出逢う家族皆に愛情をいっぱい注がれてきた彼女自身が伴侶を持つとき——。 (あらすじ紹介より)

 

つい先日、映画の方をDVDで観ましたが、こちらは原作小説の方です。なので映画との相違点のみ書いておきます。

映画では優子が森宮さんと家族になるまでと、その後が一見別々の話のように描かれていきますが、原作では優子の一人称で語られていました。(結婚式当日のみ、森宮さん視点ですが)映画で「みぃたん」と呼ばれた子供時代の優子より年齢も上で、多感な思春期に泉ヶ原さんの娘になっています。そのせいか、優子の性格や考え方も大人びているというか、どこか醒めて割り切っているように感じました。次々と親子関係が変わっていく中で、彼女なりに自分の心を守ろうとしていたように思えます。

担任の先生の存在が本の方が大きかったかな。通り一遍の同情ではない、優子と本気で向き合っている感じです。それは優子以外の生徒にも同様で、厳しさの中にある教師としての愛情が伝わってくるようでした。

友人関係のこじれと修復の形や森宮さんとぎくしゃくした時のエピソードは多少の違いはありましたが本筋は変わらなかったかな。

実父の水戸さんの外見描写は失礼ながら小説の方がイケメン 逆に森宮さんは凡庸な外見のようでした。 泉ヶ原さんのイメージは同じだったな。

映画は、梨花さんのことをママと呼ばせていますが、こちらでは出てきません。また、梨花さんも事情は本人の口から語られていますし、結婚式にも出席しています。より劇的に感動させようという意図が映画には感じられますが、決して嫌味ではなかったので、個人的には映画の方が入り込みやすかったかな。


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うちの子が結婚しないので

2022年04月27日 | 

垣谷美雨(著) 新潮文庫

老後の準備を考え始めた千賀子は、ふと一人娘の将来が心配になる。 28歳独身、彼氏の気配なし。自分たち親の死後、娘こそ孤独な老後を送るんじゃ……? 不安を抱えた千賀子は、親同士が子供の代わりに見合いをする「親婚活」を知り参加することに。しかし嫁を家政婦扱いする年配の親、家の格の差で見下すセレブ親など、現実は厳しい。果たして娘の良縁は見つかるか。親婚活サバイバル小説!(あらすじ紹介より)

 

57歳の千賀子は派遣のプログラマー。友達のモリコと「老後の経済」という講演を聞きに出かけますが、話を聞いているうち、自分の老後より一人娘の友美の将来が心配になります。互いに独身の娘を案じて別れますが、半年後に届いた年賀状に「里奈が結婚することになりました」と書かれた年賀状を受け取ったことで焦りが加速します。そんな時、夫婦でTVで親の代理婚活の番組を目にしたことがきっかけで、友美に結婚の意志を改めて問う二人。初めは反発していた娘も両親の自分を思う気持ちを知って前向きに婚活を考えることに。

現実には、親子と言えどもここまで本音でちゃんと話し合える家族がどれだけいるのか?自分ならどうかと問われると自信がありません。

夫がネットで探した「良縁いずみ会」に申し込みをして三人で相談しながら身上書を書いていくのですが、「年齢は34歳以下、肥満はNG、転勤がない、親とは別居」という条件はごくごく普通の女性が求める範囲内に思えます。本人もお見合いパーティに参加を決め、まずは千賀子が親婚活デビュー。

会場で千賀子が抱いた感想は、まさに自分もそうだと思えるもので身につまされました。
参加者の身上書をチェックして予め候補を決めていましたが、申し込みをした4人のうち2人には門前払いされ、交換できた2人も乗り気ではない様子。断わられる屈辱に傷つきながらも、娘のためにと出来る限り情報収集しようと思い直します。会の後半、男性から女性への申し込みとなり、やってきたのは、相手を自分の好みで決めようとする父親や、巨漢の息子との三世代同居を迫る夫婦、嫁をお手伝いと考える高齢の夫婦です。自分たちの希望とは明らかに異なる相手にげんなりした千賀子でしたが、最後に候補予定だった男性の母親が現れたことで気持ちが救われます。本人同士のパーティーに出席した友美は、サクラらしき美人に独占され撃沈して帰宅します。

ある日、千賀子は真由美(独身のキャリアウーマン)からモリコと三人のランチの誘いを受けます。里奈の結婚を素直に喜べない自分にモヤモヤしながら参加した千賀子ですが、モリコから娘の結婚相手が寺婚で出会った役者志望の男で、夫の反対で入籍もしていないのだと聞きます。寺婚って初耳だ~~ 職業も年収も伏せたまま本人同士の相性第一の出会いは恋愛に似ているけれど、経済的なことのマイナス面も大きいようです

結局初回の親婚活は不成立に終わり諦めムードになる友美でしたが、「独身を通すのは一人で荒野に立つようなもの」と父に言われて再奮起します。元々素直な娘なのよね~~

2回目の親婚活は「結婚サポートたんぽぽの会」。写真を撮り直した効果か、前回と打って変わって千賀子の前には行列が出来ますが、同居は望まないと言いながら老後の面倒を見させようとする母親や、共働きはして欲しいが家事は息子にさせないつもりの母親など、希望に添うようなお相手はなかなか現れません。一応、候補者からは全員身上書の交換をしてもらえ、12件も申し込まれたこの日の親婚活は大成功。会によってこれほどまでに状況が変わることに驚く千賀子ですが、読んでいる方も「へぇぇ~~!」です。

家族会議で5人に絞り、お見合い申し込みの電話をかけたところ全員から快諾されデートにも漕ぎつけますが、友美が気に入った相手には断られ、先方が気に入っても本人がイマイチという状態が続きます。最初に夫婦揃っての見合いの席では、夫の思わぬ一面に驚く千賀子。相手ばかり批判していたけど、自分の夫もKYな点があると気付き以後は夫抜きでと決意するのが可笑しくもあり共感もありでした。

親婚活を進める中、モリコから里奈が妊娠して入籍したけれど、親の自覚も持たず夢を追いかけてヒモ状態の彼と離婚し赤ん坊を連れて実家に戻っているというメールが届きます。モリコは親婚活は良いことだと千賀子の選択を応援してくれます。

千賀子の姉は資産家の息子と結婚したものの、夫の浮気に苦しめられて離婚し、独りで娘を育てています。里奈や姉の姿を見て千賀子は改めて結婚について考え、妥協点を決めて親婚活を続けますが、7回目もうまくいきません。一方イタリア語の勉強を始めた友美は仕事の方が面白くなってきたようで、娘はこのまま独身を通すのかもしれないと思い始めます。

親婚活から一年が経つ頃、遂に友美は結婚相手に巡り合います。彼は中堅の建設会社に勤める31歳の落合奏太で、外見も性格も及第点。何より熱心にプロポーズされたことが決め手になったようです。

なんだろうな~~婚活に必死になっている時には相手を引き算でしか見られず、婚活以外に「楽しさ」を見出すようになって初めて「心の余裕」が持て、結果として良縁に巡り合えたのかも。親がかりでも、家族の心を一つにして、真剣に将来を見据えて人生設計をしようとする姿勢はすごく参考になり、勉強になりました。 親がそこまで面倒みるのかという思いがありましたが、子供の背中を押してあげるのも親としては有りだなぁと考えを改めます。でもやっぱり最後に決断するのは本人ですけどね。


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だれもが愛しいチャンピオン

2022年04月25日 | ドラマ

2019年12月27日公開 スペイン 118分 G

バスケットボールのプロリーグでコーチを務めるマルコ(ハビエル・グティエレス)は、短気な性格が災いして問題を起こし、チームを解雇されてしまう。知的障害者のバスケットボールチーム「アミーゴス」を指導することになった彼は、選手たちの自由すぎる言動に困惑しながらも、彼らの純粋さや情熱、豊かなユーモアに触れて一念発起。全国大会でまさかの快進撃を見せる。(映画.comより)

 

ハンディキャップを持つ選手たちによるバスケットボールチームと人生迷走中なコーチの出会いと絆を描いたドラマです。「アミーゴス」のメンバー10人は、実際に障害を持つ600人の中からオーディションで選ばれたそう。

マルコは“負ける”ことが大嫌い。試合中にコーチと喧嘩、その後で飲酒運転で事故を起こした彼は、コーチをクビになり、判事から社会奉仕活動を命じられます。妻のソニア(アテネア・マタ)とは、子供を欲しがる彼女と見解の相違から溝が出来て別居していて実家に転がり込んでいるんですね。40男が出戻ってきたら、そりゃ~母親としては鬱陶しいことこの上ない早くよりを戻して出て行って欲しい空気感をバンバン出してきます このドライ感がスペインっぽいなぁ~~ 

知的障がい者たちのバスケットボール・チーム“アミーゴス”を指導するはめになり渋々向かったマルコ。運営側のフリオ(フアン・マルガージョ)から説明を聞いた彼は、この奉仕活動をできるだけ短時間で済まそうとしますが、判事にバレて回数と時間を増やされてしまいます。アミーゴスの面々の自由過ぎる言動や行動にあっけにとられるマルコでしたが、彼らの純粋さや直向きな情熱、豊かなユーモアに触れて次第にやる気を出していくんですね。(冒頭、短気さをいかんなく発揮して駐車違反の切符を切ろうとした男に嫌味を浴びせたマルコでしたが、その彼もチームの一人でした。

初めはパスやランニングすら「普通」に出来なかった彼らがどんどんバスケの選手らしくなっていく姿がです。これはまさにマルコがコーチとして優秀な証拠ですね おそらく健常者相手だったらキレまくっていただろうマルコですが、アミーゴス相手にはまるで勝手が違っていて怒るに怒れない状態。それが双方に良い結果をもたらしたのでしょう。

アミーゴスのメンバーは以下の通り(公式HPより)

・セルヒオ(セルヒオ・オルモス)善人

・パキート(フラン・フエンテス)盛り上げ役

・ロマン(ロベルト・チンチージャ)アスリート

・フアンマ(ホセ・デ・ルナ)アーティスト

・マヌエル(ステファン・ロペス) 芸達者  

・ファビアン(フリオ・フェルナンデス)愛されキャラ

・マリン(ヘスス・ヴィダル)クリエィティブ

・ヘスス(ヘスス・ラゴ・ソリス)外見はハッピー中身は傷心

・ベニート(アルベルト・ニエト)吃音症

・ジャンティス(グロリア・ラモス)果てしない自信家

彼らはとても誠実で自然です。何にも誰にも偏見を抱かず、率直に思っていることをそのまま口に出すのは、いっそ清々しく羨ましいくらいです。ユーモアたっぷりに描かれる彼らとマルコの交流を見ているうちに、どちらが障がいを持っているのかわからなくなってくるほど。ベニートが職場で馬鹿にされ意地悪な仕打ちを受けている場面が何度も登場して嫌な気持ちになりますが、それを知ったマルコがソニアと一計を案じて警察官を装って反撃し、全国大会の決勝戦への旅費を出させるエピソードに思わず拍手でした。

決勝戦でアミーゴスは僅差で敗れてしまいます。でも彼らは試合終了直後、相手チームと健闘を称え合いハグしあってとても楽しそう!初めは負けて悔しそうな顔をしたマルコも、そんな彼らを見てハッピーになります。勝ち負けなんて彼らには二の次で、楽しむことこそが大事なのです。

実際に障がいを持った10人が演じていることも作品に真実味を与え、コメディという枠を飛び出して心に温かい余韻を残してくれます。障がいを負っている彼らの方が、実は生きることの熟練者であり哲学者なのです。

マルコは人の親になることを避けてきましたが、彼らと関わったことで変わっていきます。バスケを教えて彼らに感謝されたマルコですが、彼の方こそ人間として成長させてもらったわけですね

軽快な音楽もコミカルな内容をより明るく盛り上げてくれています。


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そして、バトンは渡された

2022年04月24日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2021年10月29日公開 137分 G

血の繋がらない親に育てられ、4回も苗字が変わった森宮優子(永野芽郁)は、わけあって料理上手な義理の父親、森宮さん(田中圭)と2人暮らし。今は卒業式に向けピアノを猛特訓中。将来のこと、恋のこと、友達のこと、うまくいかないことばかり…。
一方、梨花(石原さとみ)は、何度も夫を替えながら自由奔放に生きている魔性の女。泣き虫な娘のみぃたん(稲垣来泉)に目いっぱい愛情を注いで暮らしているようだったが、ある日突然、愛娘を残して姿を消してしまった。
そして、優子の元に届いた一通の手紙をきっかけに、まったく別々の物語が引き寄せられるように交差していく。「優子ちゃん、実はさ…。」森宮さんもまた優子に隠していた秘密があった。父が隠していたことは? 梨花はなぜ消えたのか? 親たちがついた〈命をかけた嘘〉〈知ってはいけない秘密〉とは一体何なのか。
2つの家族がつながり、やがて紐解かれる《命をかけた嘘と秘密》。物語がクライマックスを迎え、タイトルの本当の意味を知ったとき、極上の驚きと最大の感動がとめどなく押し寄せる─。(公式HPより)

 

第16回本屋大賞受賞の瀬尾まいこの同名小説の映画化です。監督は「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」の前田哲。

予約していた原作本の方が数日早く手元に届いたので、どちらを先にしようか迷ったけれど、映画を先にしました。

みぃたんと梨花、優子と森宮さん。前半、別々に進んでいく二つの物語は、やがて一つに合わさります。これがまず最初のサプライズ。

梨花という女性は自分の欲求に忠実といえば聞こえが良いけれど、次々相手を変える魔性の女として描かれます。最初の夫の水戸さん(大森南朋)が勝手に会社を辞めて自分の夢を叶えるためにブラジル行きを決めたことで結婚生活は破綻しますが、その際血の繋がらない娘であるみぃたんを引き取るんですね。本当に自分勝手な人なら、さっさと身軽に飛び出していきそうだけどという疑問が浮かびます。その前に、三高を目指していた彼女が平凡な男性(しかも子連れ)を伴侶に選んだのも不思議でしたが。 

みぃたんと2人の暮らしは経済的に豊かとはいえませんが、本当の母娘のように仲睦まじく楽し気です。お父さんに手紙を書いても返事がないこともあり、みぃたんはママが一番の存在です。でもみぃたんが「ピアノを習いたい」と言ったことで、梨花はお金持ちの泉が原さん(市村正親)と二度目の結婚をします。この時点では娘の願いを叶えるためなのか、自分が楽をしたいためなのか半信半疑で見ていました。ところが、裕福な環境に飽き足らず、彼女は再びみぃたんを連れて出て行き、今度は高校の同級生だった森宮さんと三度目の結婚をするのです。式場で初めてみぃたんを紹介するシーンで二つの物語が重なる仕掛けです。みぃたんとはみぃみぃと泣き虫だった彼女の愛称で、本名は優子なんですね

高校生になった優子は、何故か森宮さんと2人暮らし。梨花は彼女を置いて家を出て行っているようです。何だか托卵しているようで梨花の印象最悪! 義父とはいえ、森宮さんはとても素晴らしい娘思いの父親で、優子も森宮さんを慕っています。どこか本心を隠して常に笑顔でいる彼女は学校ではちょっと浮いていましたが、卒業イベントの合唱コンクールの伴奏者に選ばれたことがきっかけで、ピアノの上手な早瀬くん(岡田健史)を意識するようになったり、友人ができたりします。 卒業の日、伴奏をする優子とそれを見守る森宮さんの間に流れる親子の愛情がしみじみと伝わってきました。

やがて、大人になった優子は早瀬くんとの結婚を認めてもらおうとしますが、彼がピアノの道を捨て料理人になろうとしていると知った森宮さんに反対されます。もちろん息子をピアニストにしたい彼の母親(戸田菜穂)も大反対。親の目線でみれば、母の強制から逃れたいだけに見えてしまう早瀬くんは何だか頼りないのよね

泉が原さんには祝福してもらえましたが、そんな時、梨花から手紙と優子の実父・水戸さんが娘に送った手紙の束が送られてきます。森宮さんに相談して水戸さんに会いに行った優子は、水戸さんにも梨花から優子が書いた手紙の束が届けられていたことを知ります。梨花はみぃたんを取られたくない一心で父娘の手紙を隠していたのです。子供の頃なら許せなかった梨花の行為ですが、彼女の深い愛情を身をもって知る優子は今こそ梨花に会いたいと願います。しかし彼女に告げられたのは・・・

梨花が何故優子を置いて家を出たのか。何故彼女は優子のことをそれほどまでに深く愛していたのか。それが明かされるクライマックスで、梨花のイメージが反転します。彼女が本当に求めていたのは、自ら得られなかった命の存在と、そのためなら自らを犠牲にすることを厭わない強い思いだったという・・。

梨花の夫になった三人の男性それぞれもとても「出来た」人たちばかりで、ちょっと嘘くさいなという気もしますが、だからこそ優子はたっぷりの愛情に包まれて育ったわけですね

早瀬くんがピアノで身を立てる決意をして、皆に祝福されて結婚式を迎えます。森宮さんは早瀬くんに優子という幸せの「バトン」を渡すのでした。


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後宮の烏6

2022年04月23日 | 

白川紺子(著) 集英社オレンジ文庫

寿雪の銀髪が、衆目にさらされた。その銀髪こそが、前王朝の血を引く証だった。高峻が策をもって隠してきた寿雪の秘密がしられてしまったのだ。しかも寿雪の魂は何処かへと去り、その肉体に宿っているのは“烏”。加えて衣斯哈の行方も不明となり、状況は緊迫の度合いを高める。そんな中、寿雪の魂を呼び戻すためには肉親の存在が必要だという情報がもたらされるが……?(文庫あらすじ紹介より)

 

・血の縁

香薔の封印を破ることには成功しますが、寿雪の魂は回廊星河に流されてしまいます。寿雪が欒王朝の生き残りであることが知られ、高峻は宰相の明允ら寿雪の存在を危惧する者たちを何とか納得させて危機を脱します。花娘ら後宮の妃たちの書状や冬官の千里の弁も大いに助けとなりますが、それも寿雪の人柄故ですね 

寿雪の体には烏漣娘娘がいるわけですが、何とも幼いその思考に先が思いやられるような。 梟にとってはそれでも、いや、だからこそ助けたくなる妹なんでしょう。馬鹿な子ほど可愛いっていうものね。杼王、香薔と何度も騙されて猜疑心剥き出しだけど、半身を探し出すと高峻が約束したことで寿雪の魂を引き戻すには血縁者の協力が要ると教えます。異母兄である衛青は、高峻への忠義心と寿雪への肉親の情の狭間で悩んだ末、遂に自らと寿雪の関係を高峻に告白します。

 

・冬の咎人

回廊星河に流された寿雪が最初の烏妃である香薔と出会います。欒王朝の始祖である欒夕(香薔は字名の晁華と呼んでいます)や烏漣娘娘との関係が明かされますが、愛する晁華のために行動をエスカレートさせた結果逆に疎まれることになったと自覚できずに、やがて転生してくるであろう晁華を待ち続けているなんて・・・恐すぎる!!ちなみに回廊星河は幽宮と楽宮を繋いでいて、再生を待つ魂が廻る場所なんだそう。香薔といい、烏漣娘娘といい、あまりにも短絡的で幼稚ですが、どちらも孤独を何よりも恐れているんですね。

寿雪が目覚めた時、手を握っていたのは衛青です。でもその後は寿雪に対して相変わらずの態度なのよね

 

・海より来たりて

董千里と令孤之季は、高峻の命を受けて界島を訪れます。案内人の楪を通して序氏、昭氏に島の歴史、かつてこの島で起きた大災害の真相が語られます。千年前に起きた、鼈の神と烏漣娘娘の戦いにより、海底火山が噴火した客観的事実が明らかになるの。千里は王朝の暗部を押し付けてきた歴代の烏妃たちへ悔恨の思いがあり、寿雪を自らの命に代えても救いたいと決意しています。亡き妹を殺した白雷の姿をこの島で見かけた令孤之季は、憎しみを捨てきれないことへの悩みを千里に打ち明けます。島に起こり始めた異変は鼈の神の仕業のようで、海底火山を調査に出かけた二人は突然の噴火に巻き込まれ海に投げ出されますが、浜辺に打ち上げられた彼らは海燕子たちに助けられます。この浜辺には白雷とともに衣斯哈や阿兪拉も身を寄せているんですよね。さてさて、どう繋がっていくのかな。

これまでは互いに通じることができなかった寿雪と烏漣娘娘でしたが、夜に対話ができるようになりました。とはいえ、半身を取り戻した烏漣娘娘が、再び鼈の神と戦いを始める気だと知り、寿雪の悩みの種がまた増えてしまいます。 更に界島が神々の領域との境界にあると知った彼女は自ら出向く決意をするのね。

・血の鎖

沙那賣家の長兄・晨も高峻の命で父親の同行を探るため里帰り。父の朝陽への反抗心を抱える彼は、真っ先に亡き母の乳母だった浣紗の元に向かいます。彼にとっては母代わりの慕わしい人物。そこに次男の亘がやってきて家に連れ戻し、父は晨に分家の娘との縁談を宣言します。晨は父が亘を後継者にするのではないかと恐れと期待がないまぜになった感情を抱いていましたが、真相は・・・絶対的権力を持つ朝陽の秘密が暴かれ呆然とする晨。そうだよな~~そりゃ逃げ出すよな~~!ってわけで、賀州を出て界島で船を待つ彼に声をかけたのは寿雪!!まさに界島が以降の舞台になりそうですね。まさか、高峻まで追いかけて来ないよね

一方、父の意を受け北辺山脈へ向かった亘は、羊舌慈恵に出会います。厳しい北の山脈に不似合いな軽装の亘を見兼ねて声を掛けた羊舌慈恵ですが、もしかしたら亘は敢えて機会を作ったのかも。こちらも政治的な波乱を予感させますが、亘が予想しているように沙那賣家は滅亡に向かっているような 

物語は結末に向かって進んでいるようで、次巻を読むのが待ち遠しいです。


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彼女が最後に見たものは

2022年04月22日 | 

まさきとしか(著) 小学館文庫

クリスマスイブの夜、新宿区の空きビルの一階で女性の遺体が発見された。五十代と思われる女性の着衣は乱れ、身元は不明。警視庁捜査一課の三ツ矢秀平と戸塚警察署の田所岳斗は再びコンビを組み、捜査に当たる。そして、女性の指紋が、千葉県で男性が刺殺された未解決事件の現場で採取された指紋と一致。名前は松波郁子、ホームレスだったことが判明する。予想外の接点で繋がる二つの不可解な事件の真相とは――!?彼女はなぜ殺されなければならなかったのか。彼女はなぜホームレスになったのか。誰も知らない真実が明らかになる瞬間、世界が一転する。

理不尽な死と家族の崩壊を圧倒的な筆致で描く、大ヒットミステリ『あの日、君は何をした』続編!!! (アマゾン作品紹介より)

 

三ツ矢&田所シリーズ第2弾らしいですが、前作未読です。

どこか飄々として浮世離れしたパスカルこと三ツ矢刑事のキャラはサヴァン症候群じゃなかろうかと思ってしまうKY感がありながら、鋭い人間観察と意外に温かな人間性で惹きつけられます。そんな相棒の刑事としての能力に敬服しつつ、嫉妬と劣等感を刺激されながら、本当は彼に認めてもらいたいという憧れも抱いている田所君はまだまだ青いですね

千葉と新宿、一見無関係の二つの事件が実は繋がっていました。三ツ矢は千葉の事件の被害者である東山宅の出窓のフラワーアレンジメントに違和感を覚えます。いやいや、日が当たるとはいえ、出窓に飾るのもありなんじゃないかと思ってしまうけど 

かつて生活保護申請の相談に訪れた松波郁子を担当したのが東山義春とわかり、二人の被害者の接点が浮かび上がりますが、この時点では先が全く読めません。「護られなかった者たちへ」にも感じましたが、生活保護って本当の弱者を救ってはくれないんかい!

三ツ矢は郁子がホームレスになった理由にも執着し、度々田所を置いてきぼりに一人で捜査をしていて、彼自身が納得するまでは多くを語りません。これは相棒としてかなり厄介ですね

郁子の夫を轢いてしまったトラック運転手の井沢勇介は、自分の過失ではないと判明したものの罪悪感を拭えず酒に走り家庭崩壊して妻の成美から離婚を突きつけられます。ようやく立ち直りかけた時に郁子の打ちひしがれた姿を目撃し、再び罪悪感に襲われますが、見なかったことにして封じ込めてしまいます。新しい仕事に慣れたある日、ホームレスになっている郁子の姿をニュース画面で見た彼は郁子を探し出し、記憶を失くしていた彼女を陰ながら援助します。一方成美は、息子の湊の引きこもりを始め、自分の人生が思い描いたようにいかないことに苛立ち、湊元夫への恨みを募らせていきます。

理沙は悲しみに打ちひしがれている未亡人を演じながら、本当は夫の束縛から解放された幸福感を噛みしめています。一人娘の瑠美奈を実家に預け、再会した元カレとよりを戻し再婚する気満々ですが、当の相手は他の女性との結婚が決まっていて、理沙はつまみ食いだったという。彼が次第にエスカレートする理沙の振る舞いに恐れをなして距離を取ろうとするのも当然だね。

郁子の夫が勤めていた会社の社長の息子たち、恭太と拓海の兄弟は、父が郁子の夫にした裏切りを知り、松波夫妻に謝罪しようとして郁子がホームレスになっていることを知り、彼女に援助の手を差し伸べていました。

郁子を中心に、彼女と関わりのある登場人物たちの視点が加わり、過去と現在を行ったり来たりする構成で、徐々に事件の輪郭が浮かび上がってくるのですが、二人を殺したそれぞれの犯人については全く予想外でした。良い意味で裏切られた~!

郁子を殺した犯人の動機はあまりにも身勝手です。理沙もですが、二人に共通するのは「他人からどう見られているか」が大事で、「自分がいかに幸せか」を演出したいという我欲です。義春を殺してしまった犯人には大いに同情できます。偽りの幸せの裏にある醜い大人の事情が追い詰めたのですから。東山夫婦の二面性はまさに「似た者夫婦」と言えますが、その犠牲になったと言えるでしょう。それにしても義春、恐っ!!

郁子の無残な死体を前に、せめて汚れた衣服を替えてあげようとした関係者たちの善意が逆に郁子の死を過った理由に導いてしまったのは悲しいけれど、彼女は決して孤独でも「可哀相」でもなかったということは救いでもあります。

夫が死んだ責任を感じ、生活保護申請を慇懃無礼に拒んだ東山に恨みを抱いた郁子でしたが、A君(真犯人)との出会いが彼女に光を与えます。元々、500円玉貯金を恵まれない子供たちのために寄付することを子供のいない自分たちの生き甲斐にしていた松波夫婦は、まさに「善」なる存在なのね。郁子が犯人を庇うために凶器となったナイフを自らが所持してホームレスという生き方を選んだのも、それが犯人を守ることになると信じたから。まさに無償の愛ですが、愛する夫を亡くした彼女にとって、唯一の心の支えだったのかもしれません。彼女は決して不幸ではなかったのです。記憶を失くしていると周囲に思わせていた郁子が、本当はそう演じていただけなのかもと思わせるラストでした。


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ディア・エヴァン・ハンセン

2022年04月17日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2021年11月26日公開 アメリカ 138分 

エヴァン・ハンセン(ベン・プラット)は学校に友達もなく、家族にも心を開けずにいる。ある日彼は、自分宛てに書いた“Dear Evan Hansen(親愛なるエヴァン・ハンセンへ)”から始まる手紙を、同級生のコナー(コルトン・ライアン)に持ち去られてしまう。それは誰にも見られたくないエヴァンの「心の声」が書かれた手紙。後日、校長から呼び出されたエヴァンは、コナーが自ら命を絶った事を知らされる。悲しみに暮れるコナーの両親は、彼が持っていた〈手紙〉を見つけ、息子とエヴァンが親友だったと思い込む。彼らをこれ以上苦しめたくないエヴァンは、思わず話を合わせてしまう。そして促されるままに語った“ありもしないコナーとの思い出”は両親に留まらず周囲の心を打ち勇気を与え、SNSを通じて世界中に広がっていく。思いがけず人気者になったエヴァンは戸惑いながらも充実した学校生活を送るが、〈思いやりでついた嘘〉は彼の人生を大きく動かし、やがて事態は思いもよらぬ方向に進む—。(公式HPより)

 

ブロードウェイミュージカルの映画化で、監督はスティーブン・チョボウスキー。ミュージカル楽曲担当はベンジ・パセック&ジャスティン・ポール。

鬱と社交不安障害を抱えるエヴァンは、定期的なセラピーに通い、薬(ゾロフト・・・ジェイゾロフト、ウエルブトリン、アチバン・・ロラゼパム)を服用しています。セラピストからは自分宛ての手紙を書くという宿題を出され、母親(ジュリアン・ムーア)には骨折した左腕のギブスに友達からサインしてもらうよう提案されます。母は友達作りのきっかけになると考えたのですが、エヴァンにとってはどちらもプレッシャーなのね。ちなみにエヴァンは母子家庭(父親は彼が小さい時に家を出た)で母は看護士をしていて決して裕福ではありません。

学校で、唯一の友人ジャレット(ニック・ドダニ)にサインを頼むも、「母親同士が友人なだけ」と断られてしまいます。図書室で手紙を何とか書き上げたエヴァンに、変わり者と評判のコナーが声を掛けてきて、真っ白なギブスを見て大きく自分の名前を書き込みます。ところが手紙に自分の事が書かれていると誤解したコナーに手紙を取り上げられてしまいます。手紙には密かに想うコナーの妹のゾーイ(ケイトリン・デバー)のことが書かれていたため、気が気でないエヴァン。ネットにあげてバカにされるのではと心配するあたりがまさに現代の若者ですね。

それから数日して、突然校長室に呼ばれたエヴァンは、コナーが自殺したことを知らされます。彼の両親のラリー(ダニー・ピノ)とシンシア(エイミー・アダムス)が、あの手紙をコナーが書いたエヴァン宛の遺書だと誤解していることを知り、訂正しようとするものの、ギブスに書かれたコナーの名前がさらに誤解を深めてしまいます。

マーフィー家に食事に招待されたエヴァンは、その席で誤解を解こうと考えましたが、シンシアからコナーの思い出話をせがまれ、彼女が亡き息子を理解したいと願う直向きさに打たれて、思わず彼女の意に添った話を作り上げてしまいます。森に二人で訪れ素晴らしい一日を過ごしたと語ったところ、シンシアにより以前家族で良く訪れていた幼いコナーが大好きだった果樹園で起こった事にされてしまい、楽しかった昔の家族の記憶を思い出させる結果になります。シンシアは更に二人がやりとりしたメールを見せて欲しいとせがみ、ジャレットの協力で偽のメールも作ってしまうんですね。友達じゃないと言った割にはしっかりエヴァンの相談に乗り秘密を守り協力しているんですけど

メールに自分の事が触れられていないと疑問を抱くゾーイには辻褄合わせのために自分の気持ちをコナーの思いとして語るの。嘘がどんどん大きくなっていきますが、ここまでならまだ優しい嘘の範囲でギリギリ許せるかな。

初めは二人が友人だったことが信じられない様子だったゾーイや、コナーとの間に感情の溝が出来ていたラリーの気持ちも、次第にコナーの良い面を懐かしむ気持ちになっていきます。

学級委員長のアラナ(アマンドラ・ステンバーグ)から、コナーの追悼式と追悼プロジェクト企画への協力をコナーの友人として求められたエヴァン。一見明るく積極的で皆のリーダー然としている彼女もレクサプロ(抗うつ薬)を服用していることを告白され、「誰もが悩みを抱えていて、それを一人で抱え込まなくても良いことを知らせたい」という気持ちに共感したエヴァンは、意を決してスピーチに臨みますが、用意した原稿を読む手は震え取り落としてしまいます。参加者の中にいたシンシアの彼を信じ切っている顔を見たエヴァンは、心を落ち着け、彼自身の孤独と絶望から救ってくれたのがコナーとの友情だったと、果樹園での出来事を引き合いに出して熱弁します。

この時の動画が拡散され、世界中で同じように悩む人々の共感を得て、一躍SNS上で有名人となったエヴァンは、ゾーイからも好意を示され、プロジェクトの寄付金も順調に集まっていきます。ラリーからオークション用にといくつかの野球用品を渡され、コナーの良い父親ではなかったかもと打ち明けられ、エヴァンを息子に持った父親は幸運だと言われ、複雑なエヴァン。彼は父親に棄てられていますからね。裕福なマーフィー家から家族の一員のように扱われ、自分が持てなかった「幸せな家族の時間」を味わううち、エヴァンは自分のついた嘘が真実だと思い込んでいきます。疑いを持つ母親に対してもいつしか溝ができていきました。

次第にプロジェクトへの熱意が冷めていくエヴァンに対し、目標金額達成に焦りを感じ始めたアラナが、エヴァンが本当にコナーの友人だったのか疑います。エヴァンは二人が親しかったとアラナを納得させようと、コナーがエヴァン書いた(ことになっている)遺書のコピーを送ります。絶対誰にも見せないよう言われたアラナでしたが、寄付金が集まらないことに焦った彼女は、この遺書をネットにあげてしまうの。ところが、遺書の宛先が家族ではなく友人だということにコナーは愛されていなかったのではと家族への非難が沸き上がります。
削除しても一度アップされたものは拡散され続けるのがネットの怖いところですね。

ゾーイを心配したエヴァンがマーフィー家を訪れると、ラリーとシンシアが息子の自殺の理由を巡り口論していました。それを見てもう黙っていられなくなったエヴァンは真実を告白します。優しさから出たとはいえ、だからこそ余計に傷つけられた一家の気持ちは・・・。

部屋で打ちひしがれているエヴァンを見つけた母は、彼の告白(遺書とされていた自分宛ての手紙と骨折の原因が木から落ちたのではなく飛び降りたこと)を聞いて、息子が抱えていた傷がいかに大きかったかを知ります。息子の苦しみに気付いてやれなかったことを謝り、これからはもっと寄り添っていくと約束する母。疑似家族ではなく本当の家族との絆を取り戻した瞬間ですね。

彼の嘘を公表しなかったマーフィー家は世間的に悪者となったままで、これに耐えきれなくなったエヴァンは自分が嘘をついていたことを動画で告白し、これにより再び独りになります。

エヴァンは改めてコナーについて調べ、彼の愛読書を読み、彼の本当の友達探しを始めます。
コナーが心のリハビリに参加して、自身が作った歌をギターを弾きながら披露している映像を手に入れたエヴァンは、それをマーフィー家とアラナ、ジャレットに送ります。そっか~!コナーにもちゃんと笑顔になれる場所があったんだね 特に家族は救われただろうな。

高校を卒業したエヴァンは大学進学を一年延ばしバイトして学費を貯めています。記念果樹園でゾーイと再会し、改めて謝罪するエヴァンを受け入れたゾーイは、コナーが愛したこの場所を見て欲しかったと彼に言います。

ラストは、エヴァンが自身に宛てた「もう二度と引き込まったり嘘で自分を作り上げずありのままの自分として生きていく」という決意を込めた手紙でした。

人は弱く間違いを犯す生き物だけど、きちんと謝罪しそこから歩き出す勇気も持っていることを改めて感じさせてくれました。


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流浪の皇女 グイン・サーガ144

2022年04月16日 | 

五代ゆう(著) ハヤカワ文庫

ワルスタット侯夫人アクテとその子らが監禁されているとは知らず、ワルスタット城を訪れたリギアやマリウスたちはラカント一味に囚われはするが、リギアは単身、脱出を画策する。一方、ヤガを支配する《新しきミロク》勢力だが、ブランやイェライシャ、そしてミロクの二人の高僧の予想外の活躍によって、その力に徐々にかげりが見えてきていた。さらに一方、苦難の旅を続けるシルヴィアを、流浪の先で待ち受けるものは?

 

第一話 追うもの追われるもの

ドリアン王子を攫った者たちの正体が明かされます…と言ってもその黒幕はまだ伏せられたまま。キタイというより沿海州の誰かのように思えるけど・・・。かなり初期、モンゴールの騎士アストリアスや、イシュトに父親を殺されたミロク教徒のアリサ、ノスフェラスで死んだマルス伯爵の息子が再登場。懐かしいな~~ ナリス様にいいように踊らされ(ヴァレちゃんも確か噛んでたのよね)、長い間虜囚にあった彼は、モンゴール再興というより、ただただアムネリスへの想いからこの計画に加わったようですが、途中から、自分が何のために動いているのか疑問を持ち始めているようです。幼い王子の瞳にアムネリスの瞳が重なり、彼の胸に去来する想いも複雑に揺れます。それにしても声を発しない王子の精神状態はかなり不安要素。

一方、グラチ爺さんとスカール、ウーラは王子の足跡を追うためイシュタールへ進入。スーティは宿で「一回休み」ね。ウーラが人間の男に化けられるって・・・前にもあったっけ?覚えてない 敵にすれば何とも厄介な爺だけど、味方ならけっこう役に立ちますね。

第二話 ワルスタットの客

グイン登場!といっても、回想としてアクテ夫人の部屋でのラカントとのやりとりが前回と数ページ被ってるのはいただけないかも

不甲斐ないマリウスは早々に捕らえられていたブロンたちと一緒に監禁されますが、薬を盛られているので体も頭も働かない様子。まぁ、まともであっても戦力にはならないんだけどね。

グインの名を耳にした途端、リギアの気力復活です。夫人の長男に抜け道を教えてもらい、再び塔を脱出して城門に駆け付けグインへ危険を知らせます。アンテーヌから父の命を受け、姉を救いにやってきたアウルス・アラン一行とグイン・アウロラたちも合流し、いよいよ陰謀が暴かれるか・・・というところで「続く」なのね

第三話 聖都騒乱

ババヤガの大暴走で大神殿は完全崩壊です。イェライシャが全員を神殿の外に転送しようとしますが、ブランとスカールがこぼれ落ち神殿内に取り残され、そこで最早人間の擬態もできなくなったカン・レイゼンモンロンと最後の戦いに。長い年月人に擬態していた彼は感情に流され大きな失敗をした挙句、知性を失っています。(元のあるべき姿に戻ったというべきか)神殿の奥深くに彼がこの地にやってきた時からある装置が眠っていましたが、ババヤガの力の暴走でこちらも暴走を始めたという・・・これって核起爆装置みたいなもの?

一方、二人の御僧は相変わらずの独自の感覚でヤロールの前に立ち説教を始めますが、パニクってる彼に通じるわけもない 片腕失って正気に返るのかはまだ不明です。

流石のイェライシャもこの二人には苦笑するしかない。ジャミーラたちに対してはあっさり対処しちゃうんですけどね。ただただうるさいだけの凡庸なトリオも、それぞれ「夢」の世界では幸せなのかも。ババヤガを正気に返したイェライシャですが、ヤガの人々を鎮めたのはアニルッダの言葉と祈りですね。

第四話 流浪の皇女

正体不明の騎士に攫われたシルヴィアが連れて来られたのはどうやらパロの王宮内。もちろん影で糸引くのはあのお方のようです。一体いつになったら姿を現すのやら。彼女の行方を追うパリスとユリウスも王都へ足を踏み入れますが、そこで目にしたのは何千と眠る竜騎兵の群れ。ぞっとするなぁ 

事ここに至ってさすがに不安になったフェリシアが幽閉されているレムスに愚痴る場面で次巻へ。レムスの無気力さ、虚無感も半端ないけれど、この先覚醒してパロ復興の力になるのかしらん?


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余命90分の男

2022年04月15日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2015年1月12日公開 アメリカ 83分

常に不機嫌で怒ってばかりいるため周囲から嫌われている中年男性ヘンリー(ロビン・ウィリアムズ)。病院で重い病気を宣告されて怒りまくるヘンリーにうんざりした女性医師シャロン(ミラ・クニス)は、余命があと90分しかないと出まかせを言ってしまう。ショックのあまり病院を飛び出したヘンリーは、これまでに失った幸せを取り戻そうとニューヨークの街を駆けまわる。一方、我に返ったシャロンは慌ててヘンリーを探そうとする。(映画.comより)

 

1997年のイスラエル映画「Mar Baum(The 92 Minutes Of Mr. Baum)」のリメイク作品で、ロビン・ウィリアムズ最後の主演映画です。

余命が90分しかないと宣告された嫌われ者の男が、人生を取り戻すべく奔走するを描いたハートフルコメディなのですが、いつも温和なイメージのロビンがほぼ怒りまくり、切れまくりの主人公を演じていて、まずそこに驚きます

彼の不機嫌の原因は長男を事故で失ったことから来ているようです。それまでは家族思いの優しく陽気な性格だったのに、常に何かに対して怒りを抱え、妻や次男とも距離が出来てしまっているヘンリーは、ある日交差点でタクシーとトラブルになります。訪れた病院で長時間待たされた挙句、主治医不在にキレた彼は、シャロンに対しても暴言を吐きまくります。不倫や愛猫の死で精神不安定になっていた彼女は怒涛のクレームにパニクり、余命を教えろと迫るヘンリーにキレてつい「90分」だと言ってしまいます。飛び出して行った彼を見て我に返りますが、ヘンリーは見つからず、途方に暮れながらも彼を探して病院に連れ戻そうとするシャロン。

一方、ヘンリーは弟アーロン(ピーター・ディンクレイジ)と顧客(彼も出席する筈だった)の前に現れて「もし余命を宣告されたら何をするか」と問います。「家族と過ごす」の答えを聞いて俄然その気になったヘンリーですが、妻(メリッサ・レオ)も息子のトミー(ヘイミッシュ・リンクレイター)も突然の態度に困惑し拒否してしまいます。

シャロンはアーロンとヘンリーの妻に事情を話し、何とかヘンリーを捕まえようとしますが、その都度すれ違ってしまうのね 

本当はトミーと一緒に仕事をしたかったヘンリーでしたが、彼がダンスの道を選んだことを許せずにいました。長男の死も受け止めきれずに何故自分だけが不幸に見舞われるのかと憤る彼はどんどん偏屈になっていったのです。せめてトミーに愛していると告げようと考えたヘンリーは、ビデオカメラを買い(吃音の店主を侮辱するシーンはでしたが)メッセージを録画するも、思わず怒りをぶつけてしまいます。我に返った彼は自殺しようと、昔トミーと訪れた橋にやってきます。そこにシャロンがやっと追いついて説得しますがそれを拒否して彼は飛び降りてしまうの。

川に浮かぶ彼を必死に岸に引き上げるシャロン。(あの高さで無事なわけないぞ)どうしてもトミーに会いにいくというヘンリーに協力することにしてタクシーを拾いますが、これが件の事故の相手で一悶着のあと、タクシーを奪って逃走する二人。おいおい!!

警官に止められても何とか切り抜け、トミーと会って言葉を交わした(ダンスもね)ヘンリーは、大人しく入院して8日後に穏やかに息を引き取ったのでした。その間彼は一度も怒ることなく家族と過ごしたのです。脳動脈瘤破裂って突然やってくるんじゃなかったかな?

シャロンは不倫を清算し病院を辞め、職場を変わり、新たな恋をしました。お相手はアーロンです

家族が集まりヘンリーの遺灰をあの川に撒く一行は、誰何した船員?に口々に暴言を浴びせます。その様子はまるでヘンリーが乗り移ったかのよう

もし自分の死期がわかるとしたら、何をしたいかなぁ?思わず自分に問いかけたくなりました。


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永訣の波濤 グイン・サーガ143

2022年04月14日 | 

五代ゆう(著) ハヤカワ文庫

犯罪の現場を目撃したスーティは、大きな衝撃を抑えることができず、スカールの言いつけにそむいて危険な一歩を踏み出すことに? ドライドン騎士団の一行は、沿海州付近に漂う不穏な雰囲気を感じながら、病身のヴァレリウスをともない、カメロンの遺骨とともに故郷ヴァラキアに帰還した。(「BOOK」データベースより)

 

第一話 影はささやく

弟を助けに行くと言うスーティの前に現れたのはグラチ爺さん。パロでの手痛い失敗を教訓とするどころか、懲りずに今度はスーティを手中に収めようと甘言で誘い出そうとします。琥珀が必死に止めにかかるのですが(元は彼女の判断ミスだしね)スーティの決意は変わりません。あと一歩で手中にというグラチウスでしたが、琥珀がスカールに送ったSOSによりウーラが駆けつけ、結局琥珀とウーラも同行してドリアン王子の救出に向かうことになるの。爺さんが孫の子守をする図が完成です。

第二話 永訣の波濤

こちらはヴァラキアでのカメロン葬儀の様子が美々しく描かれます。その裏では、権力者たちそれぞれの思惑が蠢き、ヴァレリウスはますます憂いを深めることに。あのいけすかないファビアンはドライドン騎士団として葬儀に加わってはいない様子でしたが、別の所で暗躍していたようで(はっきり正体は書かれませんが)オリ―・トレヴァーンを暗殺するエピソードは、オリ―の劣等感にまみれた人生にほんの少しだけ同情の余地と、ファビアンの屈折した怒りを感じさせました。

第三話 牢の中の聖者

ヤガでは、ブランがスカール救出に再び大聖堂の中へ。窮地のスカールを例の三人組が意図せず窮地を救ってくれる皮肉。ブランはザザと出会い、無事にスカールと合流し、アニルッダたちも加わってイェライシャの結界の中に。そこにババヤガの人知を超えた強大な力が大いなる破壊をもたらすようで・・。

第四話 ワルスタット虜囚

ワルスタットに向かったリギア一行は、アクテ夫人に面会叶わず捕えられてしまいます。部屋から逃げ出したリギアは夫人や子供たちも監禁されていると察知し、居場所を探します。逃亡の際や夫人が監禁されている塔に忍び込む際の描写が爪とかボロボロだし、筋肉限界だしで、読んでいるだけで痛みが。この時点でリギアはディモスがケイロニアの帝位簒奪を目論んでいると気付きます。何とか夫人と子供たちが囚われている部屋に入ることができたリギアですが、この時点で体力ゼロ。どうなることかな展開ですが、そこに「グイン」の一言が入り次巻に続くようで。

 

黄昏の国・ヴァラキア・ヤガ・ワルスタットと別々の物語が同時進行していく中、いよいよグイン登場か!というところで続くのね。


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とんび

2022年04月13日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)

2022年4月8日公開 139分 G

日本一不器用な男・ヤス(阿部寛)は、愛する妻・美佐子(麻生久美子)の妊娠にも上手く喜びを表せない。幼い頃に両親と離別したヤスにとって、“家族”は何よりの憧れだった。時は昭和37年、瀬戸内海に面した備後市。アキラと名付けた息子のためにも、運送業者で懸命に働くヤスだったが、ようやく手にした幸せは、妻の事故死によって脆くも打ち砕かれる。悲しみに沈むヤスだったが、人情に厚い町の人々に叱咤激励され、彼らの温かな手を借りてアキラを育ててゆく。
時は流れ、高校3年生になったアキラ(北村匠海)は、東京の大学を目指し合格を勝ち取る。だが、別居の寂しさを素直に伝えられないヤスは、「一人前になるまで帰って来るな!」とアキラを突き放す。そして昭和63年、久々に再会したヤスと大人になったアキラだったが──。(公式HPより)

 

重松清の親子の絆を描いた小説の実写映画化作品。監督は「糸」「護られなかった者たちへ」の瀬々敬久。

ヤスとアキラを演じる二人は、共にはっきりした顔立ちがまさに親子のよう このストーリーは記憶にあり、てっきり原作を読んでいたと思っていましたが、どうもTVドラマ(堤さんの方だったかな)の方を見ていたようです。内容的にはほぼ変わらなかったかな。肉体労働者で感情表現の下手なヤスを阿部さんが好演しています。

素直に感情を表に出せないヤスが、彼なりに精一杯の愛情表現を見せる姿が微笑ましく、姉貴分(実姉ではないのね)のたえ子(薬師丸ひろ子)や幼馴染の照雲(安田顕)に冷やかされてむきになるのも何だか可愛く映ります。出産の際の大騒動もヤスが皆に愛されているからこそです。

「とんびが鷹を生んだ」と周囲が騒ぎ立てる中、穏やかで幸せな日々が過ぎて行きます。しかし、ある雨の日にヤスの仕事場で起きた事故が美沙子を奪っていきます。葬儀の場で、無邪気に振舞うアキラの姿が涙を誘うシーンでした。父子2人の生活が始まりますが、たえ子や照雲・幸恵(大島優子)夫婦、ヤスの同僚たち(尾美としのり、濱田岳、吉岡睦雄)、社長(宇梶剛士)ら町の人々皆が見守り手を差し伸べ、大きな愛情に包まれてアキラは育っていきます。照雲の父で、ヤスにとって父親代わりの存在の薬師院住職海雲(麿 赤兒)が、寒い冬の海で父子にかけた言葉が何とも深かった 

物心ついたアキラが母の事故について尋ねた時は、はぐらかしたヤスでしたが、中学生になった時に「お母さんはお父さんをかばって死んだ」と嘘を付きます。本当は幼かったアキラを庇って亡くなっているのですが、息子が真相を知って傷つくことを恐れたのですね。

高校生になったアキラが後輩に理不尽な振る舞いをした時には拳骨が飛びます。仲直りの印にケーキを買ってくるのがまた微笑ましいヤスです。息子に非難されると自分の顔を自分で殴りボコボコになりながら理を説きます。反抗期のアキラもこれには態度を改めることになるんですね。まぁ元々優しい性格の子だものね 

赤ん坊の時に別れて以来会ったこともなかった父の病の知らせを受けたヤスは、弟(田中哲司)から父がずっと自分を案じていたことを聞かされます。ヤスの父は、息子を捨てたようになってしまったことを悔やみながら生きてきたようです。弟は父の再婚相手の連れ子なんですね。自分も父親になっているヤスは父へのわだかまりを捨て最期の父子の時を過ごすのです。

地元を離れ東京の大学に進学したいというアキラに、素直に寂しさを伝えられず意固地になる姿はどっちが親やねん!ですが、この頃には既にアキラの方が「大人」な感じです。意地を張りながらも、家を離れるアキラへエールを送るヤスと、敢えて車を止めずに去っていくアキラ。切なさと温かさが交差する場面です。

たえ子が嫁ぎ先に置いてきた娘の泰子(木竜麻生)が母を訪ねてきた時のエピソードも、農家ならではの時代感覚と偏見による苛めという背景を鑑みれば、なかなか泣けるお話ではありますが、今の若者には理解共感できるのかな?とも思いました。

そして昭和63年。大学入学以来、一度も帰って来ないアキラをヤスが訪ねていきます。アキラの勤め先の出版社の守衛(嶋田久作)に止められているところを由美(杏)が通りかかって助け船を出し、編集長(豊原功補)からアキラの入社試験の作文を渡されたヤス。そこにはアキラが亡き海雲から妻の死の真相を知らされていたこと、父への感謝の気持ちが書かれていました。久々の父子の再会はしかし、アキラがバツイチ子持ちで年上の由美と交際していることを告げられ決裂します。これも、今ならそこまで受け入れられないこと?と感じてしまいますが、30年以上前の感覚なら・・・そうだったっけかなぁ??

更に一年後。由美を連れて帰郷したアキラは再びヤスに彼女と結婚すると伝えます。意固地なヤスも、照雲の機転に思わず由美を庇い本音を語ります。祭りの神輿を父子で担ぐ姿に「とんびが鷹を生んだのではなく親子鷹だ!」のセリフが生きてくるシーンです

由美と連れ子の健介とアキラと訪れた海辺は、昔幼いアキラと親子三人で出かけた場所です。ヤスの目に過去の幸せな光景が浮かび、それは現在にリンクしていきます。彼は再び「家族」を手に入れたのです。

時は流れ・・・どうやらヤスの葬儀の準備をしているらしいアキラ一家。健介(井之脇海)と、あの時由美のお腹にいた美月(田辺桃子)が遺影の写真を選んでいます。

破天荒なヤスの人生の終わりは穏やかだったかはともかく幸福だったと感じさせるラストでした。


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翔けゆく風  グイン・サーガ142

2022年04月10日 | 

五代ゆう(著) ハヤカワ文庫

〈新しきミロク〉が実行したミロクの降臨という一大事は、ヤガとその周辺を震撼させる。ヤガの人々は中空に出現した巨大なミロクの姿に熱狂し、町は大混乱に陥る。その頃ブランは、ババヤガとイグ=ソッグの助力を得て、ジャミーラたち〈ミロクの使徒〉と戦ってフロリーを助け、イェライシャはヨナを救いだし、スカールは黄昏の国を後にして、ザザ、ウーラとともにスーティを連れて、新たなる波乱のヤガを目指していた。(「BOOK」データベースより)

 

第一話 風雲のヤガ

ジャミーラ・ベイラー・イラーグ対ババヤガのバトルは、カン・レイゼンモンロンの登場で決着をみないまま流れました。この3人、最初から力を合わせていたら難なく目的を達したのではないかと思うけど、利己主義の私欲の塊なんだものね ほんのちょっぴりカンさんに同情したくなりました 同情といえば、ブランの前にまたまたソラさんとヤモイさんが現れて頭を抱える図が浮かびます。一方、スカール達には新たな出会いの予感。

第二話 海を想う

カメロンの遺体を守ってヴァラキアに向かうドライドン騎士団の一行は、不本意な火葬を余儀なくされます。精一杯の支度を整え、亡きカメロンを夜通し偲びながら男泣きに泣く騎士団の面々。とりわけマルコの胸には復讐の昏い炎が燃えています。何か不穏な空気を感じてしまいますな。 ザカッロに宿をとりしばしの休息を得た一行は太守にカメロンの復讐のための挙兵を求めます。マルコは町でアッシャと出会い、病に倒れていたヴァレリウスを宿に連れ帰ります。パロ宰相への同情より、利用価値を値踏みするマルコは、もう以前の快活で純粋な若者ではなくなっていました。

第三話 祈る者たち

スカール達は、ヤガでティンシャという少女を助けた縁で、心眼の血脈を受け継いでいる盲目のアニルッダというミロク教徒に出会います。一方、ブランが危惧した通り、二人の高僧はヨナやフロリーの懇願やイェライシャの要請にも我関せずの態度で、彼らを困惑させます。ブランはこれまでの問答で耐性が出来ているのでどこか達観した面持ちなのが面白い 竜王の逆鱗を恐れながらも交信を試みたカン・レイゼンモンロンですが、空振りに終わります。怒られるより無視される方がより恐怖というのは理解できるぞ

第四話 うねる潮流

レムスの妃アルミナが御忍びで訪れ、ヴァレリウスにパロ奪還への援助を申し入れます。正気を失い国へ戻された彼女は、夫と息子を竜王の手で奪われたことに対する復讐心に燃えていて、そのためにはどのような手段でも構わないとヴァレリウスに迫り、彼を困惑させます。ところがその場にマルコが現れ、竜王とイシュト、対象は違えど、同じ復讐の炎に身を焦がす二人はすっかり意気投合し、ますますヴァレリウスに不安を与えるんですね。せっかく病から回復してきたところなのに、ヴァレちゃんもとことん可哀相な役回りだな。

一方、騎士団の最年長のアストルフォは太守に呼ばれ、脅迫を受けてある人物を騎士団に加えることに同意させられます。こいつが登場するなりクソ生意気な傲慢さで騎士団の若いメンバーたちとアッシャから総スカンを喰らうのですが、本当にむかつくキャラなのよね

一方、スーティは琥珀と夢の中で会話しますが、琥珀の話す内容は彼には殆ど理解できない(そもそも大人でも現代人以外には理解不能だけど)ながらも、誰かと話したいとおねだりしちゃうの。途中で竜王がどこぞへお出かけの気配を察知した琥珀。(だからヤガでのカンの交信が不通だったのね。)スーティと縁の深い異母弟のドリアン王子と繋いだ琥珀でしたが、当の王子はまさに賊の刃の只中で・・・

アッシャにティンシャ、スーティにドリアンまで登場し、何だか世代交代のような雲行になってきたような

それにしてもブランとヴァレリウスの苦難はまだまだ終わりそうもないですね。


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先生、私の隣に座っていただけませんか?

2022年04月09日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2021年9月10日公開 119分 G

漫画家・佐和子(黒木華)の新作漫画「先生、私の隣に座っていただけませんか?」。そこには、自分たちとよく似た夫婦の姿が描かれ、さらに佐和子の夫・俊夫(柄本佑)と編集者・千佳(奈緒)の不倫現場がリアルに描かれていた。やがて物語は、佐和子と自動車教習所の先生(金子大地)との淡い恋へと急展開する。この漫画は完全な創作なのか、ただの妄想なのか、それとも夫に対する佐和子からの復讐なのか。現実そっくりの不倫漫画を読み進めていく中で、恐怖と嫉妬に震える俊夫は、現実と漫画の境界が曖昧になっていく。(映画.comより)

 

漫画家夫婦の虚実が交錯する心理戦を描いたドラマですが、なんて面倒くさい夫婦なんだろ!

佐和子は夫が自分の担当編集者の千佳と不倫していることに薄々気付いていながら、認めたくなかった。でも実母が事故に遭ったという電話を受けた日に不倫現場を目撃してしまうんですね。車がないと不便な土地に住む母親(風吹ジュン)の世話をするため、夫婦で実家に住むことになった佐和子は、自動車学校に通うことになります。それを勧めてくれたのは夫ですが、彼の真意を測れない佐和子は、逆に別の意志を固めていきます。

教習所から帰ると食事も一緒にとらず仕事部屋に入って原稿を描く日が続きますが、ある時夫は佐和子の原稿を見て衝撃を受けます。そこにはリアルな自分たちの現実が描写されていたから。夫の送迎する車の中で佐和子は尋ねます。「不倫、してるの?」でも夫は嘘を付きます。彼の心理もわからないではないけれど、この一言が佐和子に決定的な行動を選択させることになるんですね。このあたりの夫婦の温度差が痛いぞ

自分の不倫は隠し通したいけれど、妻が教習所の先生に気持ちが動いていくのは嫌。でも漫画の内容を認めてしまえば自分の不倫も肯定することになるというジレンマに、夫は苦しむことになります。そして事は起こりました。免許が取れたある日、佐和子が二日間家を空け、「先生」を伴って帰ってきます。「心配」して駆けつけた(体の)千佳は俊夫に原稿を見せられても全く動じず、逆に「連載しましょう!ヒット間違いなし」と喜ぶ中、夫婦二人だけで「本音」を語り合った翌朝、佐和子と「先生」は家を出ていきます。母親だけが「真実」を見抜いていました。

千佳の気持ちは、全く理解できませんが、俊夫のダメダメぶりは共感はできないけれど、普通の男の心理としてはわからないでもないです。ヘタレな俊夫を佑君が好演していました。

でも佐和子が夫を許せず、復讐したいと望んでいたとしても、そんなに都合よく「相手」それもイケメンの若い男性と巡りあえるものか?そして相手がこれも都合よく自分に惚れるのか?この辺がどうも胡散臭いので、個人的にはでした。

佐和子が描く漫画のキャラは女性らしい可愛さがあって好みです。「やる気」を出した俊夫の描いたキャラは佐和子とは全く異なる男性誌のキャラのように骨太に見えました。結婚前は彼のアシスタントをしていた佐和子にとっては、漫画家としての気持ちが萎えていた夫を奮起させるというのも、もう一つの目的だったのかな。


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ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密 ネタバレあり

2022年04月08日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)

2022年4月8日公開 アメリカ 143分 G

魔法動物を愛するシャイでおっちょこちょいな魔法使いニュート(エディ・レッドメイン)が、恩師のアルバス・ダンブルドア(ジュード・ロウ)や魔法使いの仲間たち、そして人間(マグル)と寄せ集めのチームを結成し、史上最悪の黒い魔法使いグリンデルバルドに立ち向かう。その中で、ダンブルドアと彼の一族に隠された秘密が明らかになる。(映画.comより)

 

「ハリー・ポッター」シリーズの前日譚で、魔法動物学者ニュート・スキャマンダーの冒険を描く「ファンタスティック・ビースト」シリーズの第3弾です。原作者J・K・ローリングの脚本と、監督は「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」以降の全シリーズ作品を手がけるデビッド・イェーツ。ホグワーツ城のホールやホグズミード村のダンブルドアの弟の店なども多数登場しポッタリアンにも嬉しい映像に溢れています。前2作でグリンデルバルドを演じたジョニー・デップの降板は残念ですが、マッツ・ミケルセンのグリンデルバルドは冷酷さの中に孤独と悲哀が垣間見える演技で魅せてくれました。

1930年代のリオ・ベルリン・イギリス・アメリカ・ブータンが舞台。第二次世界大戦をうかがわせるナチの台頭を背景に魔法界の戦いを描いています。

グリンデルバルドの勢力が急速に拡大していく中、ダンブルドアはニュートにある任務を託します。ニュートは助手のバンティ(ヴィクトリア・イェーツ)、兄のテセウス(カラム・ターナー)、リタ・レストレンジの異父兄ユスフ(ウィリアム・ナディラム)、ホグワーツの呪文額教師ラリー(ジェシカ・ウィリアムズ)、そしてジェイコブ(ダン・フォグラー)と共に新たな冒険に出かけていくのです。

映画の冒頭、ニュートは「キリン」の出産に立ち会います。しかしクリーデンス(エズラ・ミラー)らグリンデルバルドの手下によって攻撃され、親キリンは落命、赤ちゃんも連れ去られます。悲しむニュートの前にもう1頭の赤ちゃんが!双子だったのね。彼らを安全な場所へ運んだのは例の鞄から出てきた魔法動物のワイバーンです。

未来が見えるというキリンを手中にしたグリンデルバルドに対抗するにはニュートたちの「予測できない行動」が必要となります。そこでまず、ユスフはヌルメンガード城のグリンデルバルドの元に向かい仲間になりたいと申し出ます。グリンデルバルドはクイニー(アリソン・スドル)の開心術で本心かを確かめ、ユスフが純血だったこともあり迎え入れます。クイニーはクリーデンスの見張りも命じられていましたが、彼女はユスフやクリーデンスの本心を全てグリンデルバルドに伝えてはいません。ここで既にクイニーの立ち位置がある程度察せられますね。

他のメンバーはドイツに行き、国際魔法使い連盟の会合に潜入し、連盟代表のフォーゲルにダンブルドアの伝言を伝えますが、彼はそれを無視してグリンデルバルドの無罪を宣言します。クイニーがグリンデルバルド側にいる姿に動揺したジェイコブは、ダンブルドアから貰った杖(彼はノーマジなので玩具でしかないのですが)を振りかざしてしまい、その行動が「マグルが魔法使いを暗殺しようとした」とグリンデルバルド側に利用され、国際魔法使い連盟の次期代表候補にグリンデルバルドも追加されてしまいます。

一方、クリーデンスはダンブルドアに何故弟である自分を捨てたのかと詰問します。不死鳥の出現にクリーデンスの死(オブスキュラスを生む者は早死にする)が迫っていることを知ったダンブルドアは、クリーデンスはダンブルドアの血を引いているが自分の弟ではないと告げます。え?では一体誰の??という疑問は早逝した妹に向いてしまいましたが・・・クリーデンスは、ダンブルドアの弟アバーフォース(リチャード・コイル)の息子だったのです。無口で不愛想なアバーフォースのイメージでしたが、彼も若い頃は恋をしていたのね

作戦決行日。ホグワーツの「必要の部屋」に集まったニュートたちは、ダンブルドアから最後の作戦の指示を受け、バンティに用意させた5つのトランク(1つだけが本物でキリンが入っている)をそれぞれ手に、ブータンで行われる国際魔法使い連盟代表選挙に向かいます。選挙では人の本質を見抜く力を持つキリンが代表に相応しい人物を選ぶのですが、グリンデルバルドは一度殺したキリンを魔法で操り利用しようとしていたのです。ニュートたちはもう1頭のキリンに正しい代表を選ばせ、グリンデルバルドを阻止しようとしていたのね。

グリンデルバルドの手下たちの攻撃を交わしながら会場にキリンを届けようと奮闘するメンバーでしたが、次々鞄を奪われてしまいます。しかしどのどれもがダミーで、ダンブルドアの仕掛けた魔法で沢山のパンや、噛みつく本などが手下たちを妨害します。 裏切ったように装っていたユスフもラリーとテセウスに合流します。ジェイコブを案じて現れたクイニーも味方に。愛は勝つ!!

ニュートの鞄もグリンデルバルドの手下に焼かれてしまい、会場ではグリンデルバルドが彼の魔法で操られているキリンに選ばれます。魔法族が人間界を支配するべきと宣言した彼はジェイコブに磔の呪文をかけます。聴衆は驚き恐怖を抱きますが、グリンデルバルドの支持者は熱狂します。この構図、ナチを連想させますね。

グリンデルバルドの前に進み出たクリーデンスは、自分を騙し多くの人を殺害してきたグリンデルバルドに異議を唱えます。グリンデルバルドの攻撃呪文と、そこに現れたダンブルドアの防御呪文が交差し、二人の「血の誓い」が破られ、そこから強力な魔法使い2人の壮絶魔法バトルが展開されます。このスケール感はやはりスクリーンで観るのが一番ですね でもこの場で勝敗はつきません。

ニュートはグリンデルバルドを選んだキリンが既に死んでいることを告発します。証拠が無いと反論するグリンデルバルドの前に、バンディが鞄を持って現れ、中からキリンが 改めて代表を選び直した結果、サントスが選ばれ、グリンデルバルドは逃亡します。アバーフォースは、クリーデンスと対面し、彼を家に連れて帰ります。「みぞの鏡」で二人は会話を交わしていたのですが、ダンブルドアから聞かされるまで父子だとは知らなかったのね。

NYのジェイコブの店で行われる結婚式に集まったメンバーたち。ニュートはティナ(キャサリン・ウォーターストン)と再会します。今作でティナの登場場面はほぼありませんでしたが、二人の間に流れる感情は充分伝わってきました。 

今作でも愛らしいニフラーのテディと鍵開け名人のボウトラックルのピケットが大活躍しています。他にも監獄の見張り役?のサソリに似たのとか、ニュートとキリンを安全な場所に運ぶ動物とか・・・特に監獄シーンでニュートとテセウスの動きがコミカルで楽しいの

キリンの双子や、ダンブルドア兄弟、ティナとクイニー姉妹、テセウスとニュートの兄弟にユスフとリタなど、兄弟の関係が重要な要素になっていた気がします。

ダンブルドア兄弟の妹・アリアナについても、彼女がクリーデンス同様オブスキュラスを抱えていたと明かされます。原作でも兄弟の決闘を止めようとして、どちらかの魔法に当たって亡くなったと書かれていましたが、妹の不安定さの原因は、マグルの少年たちに魔法を使っているところを見られて襲われたことで、オブスキュラスを宿したのだと明かされるのです。母親の死もオブスキュラスの暴走が原因なのね。

「ハリポタ」シリーズの中で、ダンブルドアがグリンデルバルドを破ってアズカバン送りになったことは既に書かれているのですが、今作ではまだそこまで到達していないようです。もしかして続編ありなの? 


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