東野圭吾(著) 集英社(刊)
解決の糸口すらつかめない3つの殺人事件。
共通点はその殺害方法と、被害者はみな過去に人を死なせた者であることだった。捜査を進めると、その被害者たちを憎む過去の事件における遺族らが、ホテル・コルテシア東京に宿泊することが判明。警部となった新田浩介は、複雑な思いを抱えながら再び潜入捜査を開始する――。(内容紹介より)
共通点はその殺害方法と、被害者はみな過去に人を死なせた者であることだった。捜査を進めると、その被害者たちを憎む過去の事件における遺族らが、ホテル・コルテシア東京に宿泊することが判明。警部となった新田浩介は、複雑な思いを抱えながら再び潜入捜査を開始する――。(内容紹介より)
東京で連続して起きた三件の殺人事件は、それぞれ単独の事件と思われていましたが、捜査を進めると、皆ナイフで刺されていることや被害者たちに前科があることが判明します。傷害罪で少年院を出たばかりの入江悠斗、懲役18年の刑期を終えて出所したばかりの高坂義弘、リベンジポルノで執行猶予付きの有罪判決を受けていた村山慎二です。
警部に昇進していた新田浩介は、先輩刑事の本宮と共に合同捜査に加わります。被害者を憎んでいると思われるそれぞれの関係者がホテル・コルテシア東京に宿泊することを知り、ホテル内での潜入捜査が決まります。過去二度の事件の捜査に協力していたホテル側は、「ホテル内のルールを順守すること」を条件に承諾。新田も再びフロントクラークとして不審人物の捜索にあたります。
同じく事件を担当する梓真尋警部は切れ者ですが、ホテルのルールを逸脱した強引な手法(盗聴や盗み撮り)をとり、新田と対立します。梓の部下になっていた能勢は彼女の優秀さを認めながらも危うさも指摘します。
支配人の藤木はロスのホテルに出向していた山岸尚美を急遽呼び寄せていました。山岸と新田は、事件に関する情報を共有します。
ホテルにチェックインした森元雅司(殺された母親の息子)と神谷良美(少年に殴られ植物状態となった後に死亡した息子の母親)、前島隆明 (リベンジポルノで自殺に追い込まれた娘の父親)の動向監視をする中、森元が「ファントムの会」(犯罪被害者の家族が集うネットフォーラム)の管理者であることが判明します。犯罪被害者たちの繋がりが浮かんだところで、ターゲットが長谷部奈央(恋人を刺殺したが薬物中毒下での心神喪失状態で不起訴 )の可能性が浮かび上がります。ホテルには彼女が殺した大畑誠也 の両親も宿泊していました。
新田と梓は協力して大畑夫婦を別々に聴取し、事件の真相に辿り着きます。
大畑、神谷、森元、前島らは、それぞれ会のメンバーの誰かが犯人ではないかと疑い、第四の殺人が起きるのを心配してホテルにやってきたのでした。
彼らは同じ境遇の仲間がいることで慰めを得、加害者の現状を知ることで彼らが本当に更生しているのか監視をしていましたが、彼らの死を望んでいたわけではありませんでした。
新田が偶然ホテルで再会した学生時代の友人の三輪葉月は、ヤメ検の弁護士になっていて、彼に宿泊客の情報を教えるよう頼んでいましたが、実は彼女は沢崎弓江こと長谷部奈央を案じてホテルにやってきたことがわかります。
奈央は犯行時の記憶が欠落していたため不起訴となっていましたが、罪の意識に苦しんでいました。仕事に行き詰まり鬱を発症して奈央と同じ施設で共同生活をしていた葉月は、奈央のために被害者の親(大畑)がどう感じているかを調べ、「ファントムの会」に自分のアドレスで接触させていたのです。このホテルを舞台に選んだのも、葉月が過去二度の事件の舞台がコルテシアだとの噂を耳にしていたからなのね。実は葉月こそが一連の事件の発端に思えました。まさに余計なお世話だったわけです。
「ファントムの会」のメンバーになり、被害者遺族の感情を知った奈央は、自分が代わって復讐することが贖罪になると信じ込んで3件の犯行に及び、最後に自分を殺すことで清算しようとしていました。新田は彼女を説得し自殺を直前で止めます。しかし、その際山岸が負傷してしまいます。
新田は息子を植物状態にした犯人が出所後もずっと罪を悔いて償いの気持ちを持っていたことを神谷に教えます。憎むべき相手を突然誰かに奪われた喪失感を抱え、彼が本当に更生しているのかを知りたかった彼女は、新田の話を聞いてやっと前に進むことができると喜びました。
事件解決後、違法捜査と民間人(山岸)を負傷させてしまった責任を取り警官を辞職した新田に、支配人の藤木は新設される警備部門のマネージャーを依頼するのでした。
シリーズ三作目で遂に新田は本当のホテルマンになるようです。
全ての舞台はホテル・コルテシア東京で、山岸とは良いバディ感を醸し出してきたのだから、続きがあるとしたらホテルの中の事件を警備員として解決することになるかも😁