「月の静かな夜のこと」上演は終了致しましたが、ネット上で閲覧出来る記事を紹介させて頂きます。
主催者の企画意図などを、よりご理解頂ければ幸いかと存じます。
■命の贈り物、芝居で恩返し (2010.3.17読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/osaka/news/20100317-OYT8T00066.htm
けいこを見守る杉本さん(中央)(大阪市東成区で)
白血病や骨髄バンクを題材にした芝居が19、20両日、大阪市東成区の府立健康科学センターで上演される。企画したのは、自らも白血病にかかり、骨髄移植を受けて社会復帰した同区のイベント会社経営、杉本郁夫さん(35)。知り合いの役者が出演し、白血病への理解とチャリティー募金を呼びかける。
芝居は「月の静かな夜のこと」。ある日突然、白血病と診断されたサラリーマンが、悩んだ末に妹や弟に病状を打ち明け、家族のきずなを確かめる過程を描いた。
杉本さんは高校卒業後、内装工として働き、1996年、建設中のマンション5階から転落して生死をさまよった。長いリハビリ生活を送り、左脚手術のため99年4月に血液検査を受けた際、慢性骨髄性白血病が発覚。自覚症状はなかったが、その半年後に骨髄提供のドナーが見つかり、2000年6月に骨髄移植手術を受けた。
退院後は、「病気やけがの人の役に立ちたい」と、健康づくりに関する研究などを行う同センターで約5年間、非常勤職員として働いた。イベントを担当し、コンサートなどを数多く手がけた。
芝居は、当時知り合った劇団主宰の田中悟さん(39)(大阪市旭区)に昨秋持ちかけ、実現することに。田中さんが率いる「ONE WAY TRIP(ワン・ウエイ・トリップ)」の団員ら5人は、年明けから週2回、けいこに励んでおり、脚本を書いた田中さんは「少しでも白血病について知ってもらうきっかけになれば」という。
収益は、NPO法人「関西骨髄バンク推進協会」(大阪市)に寄付する予定で、杉本さんは「名前も知らないドナーから頂いた大切な命。今後も患者たちの支援を続けたい」と話している。
■骨髄バンク 知って 移植経験者が芝居企画 (2010.3.17大阪日日新聞)
http://www.nnn.co.jp/dainichi/news/100317/20100317042.html
本番に向けて練習を積む田中さん(右から2人目)と出演者たち
骨髄バンクで骨髄移植を経験した杉本郁夫さん(35)が企画した芝居「月の静かな夜のこと」が19、20の両日、大阪市東成区の府立健康科学センター(ゲンキープ大阪)2階会議室で上演される。「骨髄バンクの存在を知り、一人一人が考えるきっかけにしたい」という思いで公演に向けて準備を進めている。
杉本さんは2000年に移植手術を受けて社会復帰を果たし、チャリティーコンサートなどで骨髄バンクの啓発活動に取り組んでいる。芝居でのアプローチは初めてだが、「コンサートとはお客さんの層が違うと思う」と、昨年秋に知り合いの劇作家で俳優の田中悟さん(39)に制作を依頼。白血病と診断された主人公の心の葛藤(かっとう)や病気を告白された妹や弟の戸惑いをテンポのよい会話劇で描く。
田中さんは「患者やその家族が持つであろう不安や疑問、そして希望を入れた」と話す一方で、「これは、骨髄バンクへの登録を呼び掛けるメッセージを発信するものではない」と断言する。病気と骨髄移植・バンクについての基本情報を入れながらも、物語のベースにあるのは家族のつながり。病気をきっかけに家族のきずなを再認識していく。
「まずは知ること。そして一人一人が考えていくことだと思う。自分に当てはめて家族の一員になったように見てほしい」と田中さん。出演者の徳山佳孝さん(31)も「自分は何も知らないんだと痛感した。同じように知らない人でも理解でき、考えるべきテーマとして提供できる」と自信を見せる。
杉本さんは、今でも骨髄移植を受けることなく亡くなっていった患者仲間の存在を忘れたことはない。まちを歩くと、もしかしたらドナーとすれ違っているのではないか、とも思う。「社会復帰したからもう関係ない、ではない。ドナーの方への恩返しとしても、続けていきたい」。今後は学校での上演も視野に入れ、「これを第一歩にしたい」としている。