小説 「男たちの大和」

長男が「映画を見たいんだけどなぁ。」と言いながら、半分読みかけで置いていった本。
『泣ける映画』とは聞いていましたが、本を読んだだけで涙がこぼれました。

…黒板の中央に白墨で一行、「死ニ方　用意」と書きなぐられている。臼淵はしばしの間その文字に見入っていた。…
「日本は進歩をと言うことを軽んじすぎた。進歩よりも精神主義を重んじた。…幕末、薩英戦争で負けた薩摩、馬関戦争で敗れた長州は、その後、攘夷鎖国を捨ててヨーロッパから新式の武器を輸入して幕府を倒した。」…「敗れて目覚める・・・・それ以外に日本が救われる道があるか?」
…「…俺たちは日本が新しく生まれ変わるための先導になるんだ。未来の日本人のために、日本の新生のために先駆けて散る。まさに本望じゃないか。
それは臼淵がたどりついた「死ニ方　用意」の境地であった。


「死ニ方　用意」なんという言葉でしょう。
大和の沖縄出撃は神風特攻隊や人間魚雷回天と同じく初めから捨て身の作戦だったことをはじめて知りました。
大和を内海に待機させ、国防の砦とすることのほうが理にかなっていたと言うのに、大和を内海に朽ちさせて戦場に送り込まなければ世論が許さず、海軍の面子も立たなかったとは・・・。

所詮、一人一人の人間が聡明になる以外平和は築けないものなのでしょう。
それにしても、どうしたらあの悲惨な戦争をしないですんだのか、それとも、「敗れて目覚める」以外なかったのでしょうか。