千代の葬儀前後の一週間学校を休んだ。すみれは、起き上がることさえ苦痛である。祖母の竜子は、すみれの起きるのを待たずにパートに出かけてしまった。
「学校へは休まないで行こうね。約束だよ」
千代の言葉を思い出す。
「ずるずるしていると不登校になっちゃうよ」自分の声も聞こえる。
千秋と珠恵や久美が、薄ら笑いをするのが想像された。
布団をはね除け飛び起きた。鏡を見る。両頬を両手で擦った。音を立てて頬を叩く。両手で握り拳を作り、見えない敵にジャブを噛ます。見えない敵の攻撃を、頭を左右に振ってかわす。大声で誓った。
「ようし、すみれ頑張るぞ」
学校が近づくに従って鼓動が早くなってくる。歩を止めた。口を真一文字に結び呼吸を整える。
「来た。来たよ、すみれが」
校門近くで千秋の声がした。珠恵と久美もいた。三人は目を輝かせた。
「今日は来たの? 休むのも飽たってこと? ねえ、すみれ」
三人はすみれを取り囲んだ。そして、その輪を徐々に狭めてきた。端から見たら親しい雰囲気に見えるだろうと、すみれは思った。
珠恵がすみれの腕を抓った。すみれは痛みを堪えた。久美がすみれの足を踏んづけた。
「あら、ごめんなさい」
久美は大げさに謝った。三人が大声で笑った。
「ねえ、これって、いじめなの? ねえ、あんたたち、私をいじめているってこと?」
すみれは、腹に力を込めて叫んだ。
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著書・夢幻に収録済み★連作20「すみれ五年生」が始まります。
作者自身の体験が入り混じっています。
悲しかったり、寂しかったり苦しかったり、そのどれもが貴重なものだったと思える今日この頃。
人生って素晴らしいものですねぇ。
楽しんでお読みいただけると嬉しいです。
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