過不足のない疲れを感じながら、帰途の車内にいた。いつもより1時間早めの帰宅になる。台風10号の迷走ぶりに、湿った空気の車内は丁度座席が埋まる程度の乗車人数であった。
「う、うーつ、うーっ」という呻き声がした。後方の優先席付近に目をやると、若い女性が倒れていた。両脚は力なく投げ出され、頭が座席シートの下に入り込みそうな程の状態だ。一瞬、何が起きたのか理解できなかった。近くにいた中年の女性と男性が、「大丈夫ですか?」と声をかけた。倒れた若い女性の返事は無い。意識が無いように見えた。誰かが、非常通報装置を押した。某駅に停車する寸前だったので、滑り込んで停まったホームに「ジージージー」と、けたたましい音が鳴り響いていた。駅員が4,5人集まってきた。
倒れた女性は気が付いたようだが、眼は虚ろで顔色は真っ白。周りにいた数人と駅職員とでホームに降し、ベンチに掛けさせた。
駅職員が女性に何かを聞いたりしていたが、真っ白な顔に血の気は戻らない。私は、小学校6年生の時のことを思い出していた。
授業中だったのか、休み時間だったのかは思い出せないが、男子生徒が突然、机や椅子をなぎ倒すような勢いで倒れた。意識はなかったのかは覚えていないが、担任の先生が、右往左往していたのを覚えている。
私の乗った電車は、僅か6分遅れで発車した。この後、あの女性はどうなったかは分からない。深刻な病気でなければ良いが。
わが身を振り返れば、一時間以上もかけて踊りに行って、一レッスンとその後二時間のダンスタイムを楽しんできた。
「決して若くないのだから・・・ね、気を付けよう・・・」と、小さな声が口から洩れた。
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「と・ある日のこと」をお送りします。
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