「あなたねぇ、さいごはどうするつもり?」
電話の向こうのM子の言う「さいご」は人生の最期のことらしい。
M子の実母は90歳を越えていた。痴呆症らしい症状も出てきた頃、M子の兄や姉の手を煩わせることが多くなった。ようやく、実母を施設に預けることが出来た。それも、家に居たいということを説得し続けて、ようやく入所させたのだが、面会に行く度に、「家に帰りたい」と言い続けていたらしい。そのような状態だった実母を見て、自分が老いたなら、自分から施設に入所する。と言っていたM子だった。
「わたしは、最期の最後まで家にいるつもり」という私の言葉に一瞬息をのんだ様子。
「何故なら、入所したところが、必ずしも、自分に合った職員だったり、入所仲間だったりなら良いけれど、そうでなければ、大変な事よ。帰ると言っても、易々と家族が承知するとも限らないし、苦しむのは自分。出来る限り心身の健康を保って、最期の最後まで、この家で暮らしたいと思っているわ」
M子のため息が聞こえたような気がした。たぶん、M子が想像していた答えではなかったのだろう。
「お嫁さんの世話になるってことね?」
「そうなるかもしれないし、また、その時の状況が全く違ったものになっているかもしれないけれど」
「私は」M子が言葉を詰まらせた。
さて、本当はどういう状態の最期の最後になるのかは不明だ。誰しもが、突き当たる問題。人間として良い最期の最後が迎えられれば幸せなことだが。
誰にも看取られることも無く、ひっそりと最後を迎えたにしても、それはそれで、最高の良い最後かもしれないし・・・。
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「と・ある日のこと」をお送りします。
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