紫陽花記

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別館★写真と俳句「めいちゃところ」

★2 三年ぶりの発声

2023-05-07 06:33:49 | 「とある日のこと」2023年度


  新型コロナ感染症のニュースが報道されてから3年余。ピタリと行かなくなったカラオケ店。どちらかと言えば、大きな声を出す方ではなく、大人しいと言えば聞こえが良いが、少し内気の陰気さのある私に、歌友のOさんから電話があった。

「歌いに行こうよ、久しぶりに。コロナ、もう大丈夫そうだし」と、熱心に誘う。
「声が出ないわよう」
「私だって。一曲だけでもいいじゃない。あとはお喋りでもいいんだから」
 ということでカラオケ店へ。

店のママは帽子にマスク姿の私に戸惑った表情。
「元気そうねぇ、ママ。ワ・タ・シ・よ」ママの以前よりふっくらした両頬を両手で挟んで声をかけると、「あらぁ~」と、ママは思いだした様子。女性ばかり7人ほどのお客様がいた。以前同様に、奥まった窓際のソファーに案内されて腰を下ろした。

 先客が次々と歌う。皆、マイクをすっぽり包むような布袋で感染予防をしている様子。マスクは外して唄っている。
「これ、新曲なの。だから、歌えるかどうか?」と皆さん呟きながらマイクスタンドの前に。
「新曲ですって。昔の曲しか唄えないわ」と、Oさん。私だって浦島太郎みたいなもの。

 次々と聞いたことのない歌手名と曲名。どの曲を聴いても同じようにしか聴こえない。唄う皆さんは満足気に微笑む。惜しみない拍手を私たちはする。

「一曲歌おうかな」Oさんが選曲を。私は自分の歌える曲さえ忘れている。記憶を手繰る。テレサテンのところから入って「空港」を選ぶ。はてさて、音程は狂わないか? 声は出るか? 三年ぶりの発声は少しずつ調子を取り戻した。2曲目は「雨の旅人」この曲も古いが好きな曲だ。

この日は、2曲だけ・・・。


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