
「家にばかり居たら、ただのおばぁちゃん」と、更衣室のAさんが水色のドレスを着替えながら言った。何でも一時間半位電車に乗って、このEホールへ来るらしい。噂では定年まで百貨店の仕入れ業務をこなしていたとか。150cmの私より身長は低く見えるし、背中が少し曲がっている。御歳は80代半ばと見受けられるが、遠距離を物ともせず踊りに来るエネルギーに、現役時代のパワフルな仕事ぶりが想像できた。
「孫みたいな子等と踊っていられるのだから、有り難いよ」と、ボデイスーツだけになった上に、ベージュ色のTシャツを着て黒のパンツをするりと履いた。
私は、Aさんの言葉を何度も思いだした。大きな病気や怪我をせずにこのまま踊りに行くことが出来たなら、そして、ある日のこと、ボックリとお迎えの車に乗ることが出来たなら最高だわねぇ。それにはどうすれば良いのだろう?・・・。
先ずは、健康体でいるしかない。8週ごとの循環器科への通院と歯科医院への定期検診くらいで過ごせている現在は、身体障碍者の長男の介護と喫茶店主の仕事で疲れ切っていたあの頃と大きく変わっている。ぎっくり腰は数えきれないほどしたし、その後遺症の神経痛。諸々の問題を抱えていたので、不整脈と胃潰瘍も患った。その状態から抜けられたのは、次男の結婚後からである。考え方一つだが、キッチン係は卒業させられた。これが一番の幸せ。主婦は毎日の食事の担当は当たり前みたいだ。その係を卒業できたのである。
現役時代に覚えた社交ダンスと物書き。現在の楽しみの二つはこの先も続けたい。それには先ず、健康体で居なければ。あ、それに、踊り疲れて帰っても、夫の沸した一番風呂と次男の嫁の手料理に感謝、感謝、感謝である。
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