私宛に茶色のちょっと厚みのある封書が届いた。差出人は測量事務所になっていた。俄かに封書の内容は何事なのか理解できないまま開けると、我が宅地と隣地の境界線の確認をしたいとのこと。隣地が空き地になって売りに出されてから一年は経っていない。買い手が決まったらしい。我が宅地の所有者は私ではあるが、現在は家屋敷のことは夫と息子に任せきりでいる。
測量の約束日は小雨だった。測量士は二人。私と息子が対応する。狭い側庭と隣地の間の塀を挟んで、図面を見ながら境界線を確認する。隣家の解体後に塀を取り壊すかどうか話し合った時、たぶん我が方で巡らせた塀かもしれないということで、塀の取り壊しはしなかった。その塀は、我が方でなく隣地側の塀だと確認できた。
思えば我が夫婦は、初めて家屋敷を手に入れたのは結婚間もない二十代前半の時。高度成長期の時代で、訪ねてきた不動産屋の営業マンに、いろいろアドバイスをいただきながら、そして、迷った挙句、半ば脅されるみたいな勢いで、小さな宅地の小さな家を手に入れた。縁ある毎に家を買い替えたのは二度。そして、故郷に似た雰囲気の現在地へ落ち着いたのは三十代半ば。あれからン十年、吾ら夫婦は老境に入り、それなりの苦労をしながら、今では、息子に頼りっきりになりながらも、庭の植物の世話をするのが一つの楽しみとして暮らせている。境界線の一センチでも、汗と涙の賜物かもしれない・・・。
境界線の確認作業が終わると、隣地に立っていた売地の看板が外された。先日の線状降水帯の大雨の時、プールのようになっていた隣地も、やがては、近代的な家が建ち、大雨にでも安心な家と宅地となるのだろう。他人事ながら楽しみである。
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