紫陽花記

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別館★写真と俳句「めいちゃところ」

18 すみれと千代の娘

2023-04-08 06:34:33 | 著書・夢幻★すみれ五年生

 人間はどうして死ぬの?
 人間だけじゃないわ。生きているもの全部。死ななきゃ、地球がいっぱいになっちゃうじゃない。
 火葬されて。千代おばぁさんが可愛そう。
 そうね、でも、そのままにしておくと腐ってしまうわ。肉や魚と一緒よ。
 千代おばぁさんの心も燃えてしまったの?
 魂のことね。きっと体から離れているのよ。
 離れて、どこにいるの?
 すみれちゃんの側にいるかもね。それとも、もう天国に行ったかしら。
 すみれの側? 天国? 見えないよ。
 見えたら怖いわよ。というより、どんな形をしているのか分からないじゃない。
 千代おばぁさんの手、温かかった。だんだん冷たくなった。
 すっかり固く冷たくなって。その体も、もうないわ。
 千代おばぁさん、寂しがっていないかな。戻りたいと思っていないかな。
 ……きっと天国よ、良いところに行ったのよ。……だって、戻ってきた人はいないじゃない。きっと、すばらしいところに行ったのよ。
 ね、山谷のおじさんに会おうよ。おじさんもきっと寂しいと思っているよ。
 そうね。あの方、母に優しくしてくれていた。優しい人なのね。
 うん。山谷のおじさん、来てくれるといいね。電話しようかな。
 ……ご迷惑じゃないかしら。
 大丈夫。山谷のおじさん、優しいから。
 ……
 そうだ、おじさんと仲良くなってよ。
 ……ご迷惑じゃないかしら。



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著書・夢幻に収録済み★連作20「すみれ五年生」が始まります。
作者自身の体験が入り混じっています。
悲しかったり、寂しかったり苦しかったり、そのどれもが貴重なものだったと思える今日この頃。
人生って素晴らしいものですねぇ。
楽しんでお読みいただけると嬉しいです。
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(あかいままちからつきさくらしべふる)

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