「一回の脳震盪と八万ドルを手にして現役を引退するのは、一見してそう思っているほど悪い話ではなかった。」
「そのあと最初の場所に逆戻りして」
まちがってはいないけれども、なんとも煩わしい日本語に、ああ、やっぱり翻訳ものを買うのではなかったと後悔する。
訳者は名前のとおった人で、以前は読みやすい翻訳だったから、
迷いながら書店の処分品コーナーで買って帰った文庫。
まだ一割も読んでいないけれど再処分しようと思う。
原文が想像できるような翻訳、それでもいいが、すわりのよい日本語にしてほしい。
かつて伊丹十三だったか、俳優が翻訳したものは、
原文にそって主語を訳出したりしていても、
すらすら面白く読めたのは、俳優としてことばを究めた力があったからと思う。
国語が不得手な英文学科学生の下訳のまま本にしないでほしい。
翻訳に賞が設けられたそうで、翻訳本をふたたび読めるようになることを期待する。
やっぱり原文ではエネルギーと時間がかかる。