《あらすじ》
放心状態で車道に出て行くジェインを止めるゴヌク。
ジェインは涙が止まらない。
自分がとても惨めで、情けない。
「ゴヌク、あの人たちってそんなに偉いの?
あの人たちには、私のことなんか虫けら同然に見えるのね。
私だって、必死でここまで来たのに……」
「俺のことをホン・テソンだと思って、怒りをぶつければいい。やれよ」
ゴヌクの優しい言葉にジェインは思いの丈をぶつけた。
泣いているジェインに、自分も涙を流しながら、ゴヌクはキスをする。
「……なんのつもり?お安く見えた?」
「そうじゃない……」
自分でもよくわからない衝動に、ゴヌクは言いよどむ。
「じゃああんた、わたしを好きなの?」
ゴヌクは答えられない。
「私を慰めに来てくれたのよね。ありがと。だけど、人ごとじゃないわよ?
あんたも同じ。モネはオーナーの愛娘よ。
手に入れたければがんばるのね。お互い最後まで粘ってみましょ」
ジェインはそう言って、帰って行った。
ジェインは屋台でひとり焼酎を飲んでいる。
「人生そう甘くない。こんな日だってあるわよ」
ゴヌクは、離れたところでジェインの様子を見守っている。
酔っ払った彼女が、危ない目にあわないように。
階段で寝入ってしまったジェインに肩を貸し、明け方まで一緒にいた。
自分がそうしていることを気取られないように。
久しぶりにモネに会いに行ったゴヌクは、喫茶店で一枚の絵に目をとめた。
高大なアフリカの大地に立つふたりの原住民の女性。
「あの場所は、人の心を惑わす。
高大な草原をゆったりと歩くマサイ族。
彼らを見ていると、怒りや喜びや悲しみ、それらの感情が虚しさにかわる……」
遠い目をするゴヌク。
「そう?私にはよくわからないわ。
私はあなたを見てるとドキドキするし、しあわせ。
世界を手に入れた気分。あなたさえいれば十分よ。会いに来てくれてありがとう」
しあわせそうなモネ。
翌朝テソンを迎えにいったゴヌクは、例の少年について捜査状況をきかれた。
偽のテソンは、密陽に住んでいたという。
秘書室のキム室長からの情報だった。
「今日、行ってきます」
ジェインはいつも通りギャラリーに出社した。
シン夫人への軽蔑、不満を抑えて、謝罪する。
これも生きていくためだ。いつか成功するためだ。
夫人のために急ぎの配車の手配をしていたジェインは、
偶然ギャラリーの前でゴヌクを見つけた。
昨夜のこともあって、気まずい気分だったが、声をかける。
「ねぇ、シム・ゴヌク」
「何だ、言えよ」
「車、頼めないかしら。運転手がつかまらないの。シン夫人の送りよ」
少し考えて、ゴヌクは承諾した。
「……ありがと」ジェインは小さく礼を言った。
ギャラリーを出ようとしたシン夫人は、クァク刑事に止められた。
養子に入り、離縁されたというテソンという少年。
「どこにいるかご存じですか?」
「昔のことよ。知らないわ。もう来ないで。しつこいわ!」
夫人は怒りながらゴヌクの車に乗った。
「なぜ、あの子のことを?」
シン夫人は、運転手を務めているのがゴヌクだと気付いて不機嫌だ。
「あなたアメリカで教育を受けたのに、なぜ韓国へもどったの?」
「自分を捨てた親を探すためです」
「なんのために?」
「知りたいんです。なぜ残酷に捨てたのか。雨の中に放り出した理由を」
ゴヌクは夫人の反応を見ている。
「雨?あなたモネの財産を狙っているんでしょ。あきらめなさい。許す気などないわ」
ゴヌクは笑った。
「何がおかしいの?」
「モネはお母様にそっくりだと思いまして。
優雅で気品があり、美しいですね」
「止めて!止めなさい!私をバカにしてるの!」
ゴヌクは笑って取り合わない。
車を飛ばして、奨学金授与式に夫人を送り届けた。
会場には、テラの姿があった。
ゴヌクを見つけ、驚きと不安で、彼を見つめる。
知人らがシン夫人を見つけ、挨拶を始めた。
「あら、お嬢さんと息子さんもご一緒なの?
精悍なお顔立ちの立派な青年ね」
「いえ、違うのよ、あの人は……」
ゴヌクはにっこり笑って、挨拶をする。
あえて誤解を解かないまま、息子のように振る舞うゴヌク。
テラはずっと眉をひそめている。
ゴヌクが立ち去ろうとしたとき、
言葉が話せない様子の子どもたちがバスから降りてきた。
シン夫人やテラに向かって何か伝えたい様子だが、わからない。
ゴヌクは気付いて、さっと手話で話をきいた。
子どもたちは、トイレを探していたのだ。
「手話ができるの?」
テラの表情が柔らかくなる。
「ええ、少し」
「どこで習ったの?」
「ずっと昔、父から」
ゴヌクは口の端で笑って、去って行った。
テソンは、昨晩のジェインとゴヌクの様子が頭から離れない。
ゴヌクを問い詰めようかと妄想までするが、
実際には「今度携帯を切ったら殺すぞ!」とすごんでみせるくらいが関の山だ。
会長には、現場の資材紛失について責められ、問題解決せよと叱られる。
くさくさして、キム秘書室長に話しかけた。
「例の子どもの故郷を教えたって?」
「例の子どもとは?」
「偽のホン・テソンさ。ツキのないやつだ。あいつはなぜこの家に来たんだ?」
「それは……」
室長が言いかけた言葉を、折良く現れたシン夫人がさえぎった。
「なぜ今になってそんなことを聞くの?」
「退屈だからさ。俺の前にきた子のこと、覚えてるだろ?」
「覚えていないわ。そんな子いたかしら?」
シン夫人の返事は冷たいものだった。
ゴヌクは、密陽を訪れていた。
幼い頃の自分の面影を追い、両親と暮らした懐かしい家にたどり着く。
父は犬小屋を作り、母は芋をふかしておやつにしてくれた。
自分を呼ぶ、父の姿。
(父さん……会いたいよ……)
ゴヌクの手は、知らず知らずのうちに言葉を綴っていた。
今は荒れ果てた家の庭で、ひとり泣いた。
(母さん……)
地元の人が、声をかけてきた。
「ソウルの人?ここを買うかい?
そういえば夫婦には息子がいたっけ。
でもかまわないよな、20年来墓参りにも来ない薄情もんだ」
初耳だった。両親の墓があったなんて。
村長が遺体を引き取って、葬ってくれたらしい。
その墓には、年に1回、中年の男性がやってくるらしい。
ゴヌクは初めて、両親の墓にまいった。
そして、小さくなってしまった両親の墓の前で、あらためて復讐を誓う。
神が彼らの味方なら、悪魔が俺の味方になる。
ジェインは、ギャラリーオープンの招待状をテソンに届けた。
彼女を引き留めて話をしたいのだが、ジェインは冷たい。
何度か袖にされても、テソンはあきらめなかった。
バスに飛び乗ったジェインを追いかけて、自分もバスに乗りこんできた。
小切手でバスに乗ろうとする世間知らずのお坊ちゃん。
強引だけれど、一生懸命な姿に、思わずジェインも笑ってしまった。
一緒に入ったレストランで、偶然、テソンはシン夫人と顔を合わせた。
席を外していたジェインは、母子の冷ややかな会話を漏れ聞いてしまう。
どうしても、母の愛情をあきらめきれない様子のテソン。
ジェインは、テソンに優しく接する。
「変だな。さっきまで口も聞かなかったのに」
「おなかがすいてたからよ」
そう言われてテソンもまんざらではない。少し気分がよくなった。
「ひとつ聞いてもいいか?
シム・ゴヌクとはどういう関係?」
「ああ、ただの友達よ」
「じゃあ、特別な関係じゃないってこと?」
「ええ、うっとおしいくらい」
ジェインの返事を聞いて、テソンは嬉しかった。
ヘシングループについての調査は続いている。
どうやら、シン夫人が密かにグループの株を買い占めているらしい。
筆頭株主はシン夫人とホン・テラ。テラの持ち株が増えているようだ。
ゴヌクはテソンに命じられ、資材盗難の現場に入った。
作業員を装って、情報を集める。
この事件が解決できなければ、クビだと言い渡されている。
モネはゴヌクを食事に誘った。
呼び出されたゴヌクは、後からきたテラに気付いた。
ふたりを会わせようというモネの策略だったのだ。
渋々同席するテラ。
モネは、ゴヌクを会社に入れてくれるよう、姉に頼んだ。
「用件ってそれ?あなたが指示したの?」
「いいえ」
ゴヌクも初耳の話だった。
「彼が兄さんの秘書なんてイヤよ。わたしと結婚するんだし」
「父さんは交際を許すといっただけよ」
「同じことでしょ!」
ゴヌクは知らぬ顔で食事を続けている。
「モネと結婚する気はあるの?」
「いいえ、ありません」
「オッパ」モネはすねたようにゴヌクを呼ぶ。
「モネはまだ、若いので」
ゴヌクはなだめるように、モネの手に、自分の手を重ねた。
モネが席を外した時、テラはきいた。
「あなたはモネを誘惑し、次はテソンに取り入った。次は誰かしら?」
ゴヌクは答えない。
「私?」
それでもゴヌクは黙っている。
「家族にひとりひとり取り入っていく理由を考えたわ。お金?」
「結局あなたもその程度の考えか」
「え?」
「俺は大富豪じゃないが、暮らしには困っていない」
「ではなぜ?いえ、いいわ、聞きたくない。
いずれにしろ、私は堕ちないわ。最初からあなたなんて眼中にない」
「眼中にない、か。それでもあなたに近づいたら?」
「許さないわ」
「楽しみだな」
ゴヌクはテラの攻撃的な言葉をきいて、面白そうに笑った。
テラは席を立ち、雨の中出ていく。
「何かあったの?」
戻ってきたモネは不安そうだ。
「大丈夫だ。送ってくるよ」
ゴヌクは、雨の中傘も持たずに出ていったテラを追いかけた。
「迎えが来るまで、一緒に待つよ」
「どきなさい」
「一緒に待つ」
ゴヌクを無視して道路に出て行ったテラは、あやうく車と接触しかけた。
とっさに手を伸ばしたゴヌクが、彼女を抱き寄せる。
明るい夏の雨が、ふたりに降りかかる。
「濡れたね」
ゴヌクが囁いた。
「これ以上やめて」
「こわいか?」
「とことんやるつもり?」
「傘をさせよ。風邪を引く」
迎えが到着し、テラは逃げるように乗り込んだ。
走り去る車をゴヌクは見つめていた。
(つづく)
ほほ~、ジェインはそういう感じなんですか……。
強いなぁ、この子。
すっごく弱っている時に、憎からず思っている男にこんなことされて、
よろめいちゃってもおかしくないんですけどね~。
この強さが彼女の魅力なんだなー。
雑草のような、とでも言いましょうか。
ひとりで立ってる強さに、ゴヌクは惹かれてしまうんじゃないでしょうか。
キスした後、自分でもなぜそんなことしたのかわからなくなってるゴヌクがかわいいです。
いつもは女を手玉に取る悪い男なのにね。
部屋でひとり、ジェインと一緒に撮ったポラロイドを眺めてる。
ゴヌクにとって彼女は、無視できない存在。
つい、からかってみたくなる存在。
助けずにはいられない女。
あ、思わず2枚も貼ってしまった……。
ぐぐ、うらやましい。
あんなふうに影ながら守ってもらいたいなー。
ジェインを見失うまいと必死になってるゴヌクにぐっとくるのだわ。
ジェインは強い。
シン夫人に、自分から詫びを入れにいく。
どんなにあの人が理不尽だとしても、今は耐えるしかないから。
しかしどうなんでしょうね~。
こういう目にあって、「いくら金持ちだからってそんな横暴には屈しない!」と
見切りをつけるのも、強さだと思うし、
「いつか這い上がる日のために屈辱に耐える」のも強さだと思うし。
ジェインは後者の道を選んだわけです。
こういう時の選択で、生き方の違いっていうか、人生観の違いがはっきりするんだろうな。
健気、というよりは、泥臭い生き方を選ぶジェイン。
そこに卑しさというか、一種のやさぐれ感が漂ってしまう気がする。
あまり類をみないヒロイン像だな。
すごくきれいなのよ。この美貌は武器なのよ。それは自分でもわかってるよね。
ゴヌクはアフリカにも行ったことあるんでしょうか。
モネを夢中にさせる色男テクニックかと思いきや、
わりと本気で絵に見入っていましたね。
厳しい自然の中で生きているマサイ族を見ると、
ちっぽけな人間の感情に揺さぶられている自分が虚しくなるのかもしれません。
そこで悟りを開いていれば、こんな復讐劇を演出してはいないでしょう。
悲しいのは、喜びすらも虚しく感じられてしまうということ。
あの大地にも、生きる喜びは存在すると思うんだけどなー。
しっかし、モネを手玉に取り、テラを誘惑し、
うまくやれると思ってるんでしょうか、ゴヌクくん。
レストランで、モネの腕をギュッとして挨拶するところ、好きですけど。
さわやかに触ってもらえると嬉しいのよね、女子はね。
テラが自分を意識しまくってるとわかってて意地悪げにニヤニヤするゴヌクは
まったく悪い男ですね。
テラ姉さんもいい加減年増のくせに初恋も経験してませんから、
ゴヌクの手のひらで転がされっぱなしです。
あの、なんか手話出来る男ってちょっとかっこよく見えるのはなんででしょうね?
特に韓国では、社会奉仕の精神とか尊重されるからでしょうか。
ブドウ畑のチャン・テッキもちょっと手話できる設定でした。
テラ姉さんもそれまでよりまくってた眉間の皺が消えちゃってさ。
これは計算されたものではないので、ふたりがゴヌクの正体に気付く伏線かもね。
濡れた人って色っぽいんだよなー。
しかもね、「洋服を着たまま濡れている」というシチュエーションは、
すごく「禁忌を犯している」感が漂うんですよ。
一度試しに洋服を着たままシャワーしてごらんなさい。
なぜかすごく抵抗感があるから。
ふたりでびしょびしょになって、「こわいのか」なんてきかれて、
あー、ほんとに真っ昼間の明るい夏の雨の中でよかった!
夜だったらもう抜け出せないよ。
テラもいつまで逃げられるかしら。
妹を裏切り、不仲の夫を裏切り、ゴヌクに堕ちてゆくのかしら。
大人ですから、いくとこまでいっちゃいそうなのがこわいわ。
この妙な明るさと、濡れそぼつふたり。
今回はなかなかいい感じだったな~。
食事中、モネがゴヌクにひそひそと囁くでしょ?
その最中、彼はじっとテラを見つめてるんだよね。挑発的にね。
そうやって意地悪されたり、そうかと思えば優しく抱き留められたり、
ジェットコースターにのってる気分ですよ。
昼間っからあやしいふたりですよ。
テソンはもうジェインに夢中ですね。
ゴヌクを問い詰める妄想ときたら……。
テラもそうですけど、あんたたちは妄想姉弟だね。
ふたりしていったい何をモヤモヤしとるんじゃ。
テソンとシン夫人は血のつながっていない親子のはずですが、
切れてきーっと怒鳴るところがそっくり。
そういうお母さんを見て育つと、そうなっちゃうんでしょうか?
最初のテソンは死んだと思っている様子のシン夫人。
キム室長は遺体を確認した、と言っておりますが、あやしい。
毎年ゴヌクの両親の墓に参っているのは、きっと彼だと思います。
白雪姫じゃないけれど、ゴヌクに同情して見逃してくれたんだと思う。
だってそもそも、殺さなきゃいけない事情って何?
遺体まで確認しないとだめだってどういうことかしら?
そのあたり、謎のにおいがしますね。
刑事さんたち、ちゃんと探り出してくれるでしょうか?
ゴヌクの両親についても、けっこう謎が残ってると思うんですよ。
最終回までには、そのあたりもはっきりさせてほしいなぁ。
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