もう少し、この現場を推理をすれば、
《なぜ偽装建築だとバレたのか》の部分であろう。
現場で一団となって偽装計画をしていて、余ったはずの鉄筋の材料の隠し方もあるだろう。
トラック数台で運び出す量だから、深夜こっそり隠せるような単独犯でないから……だろう。
それよりも、抜き取った鉄筋の材料と手間代相当分をゼネコンが独り占めして、協力業者へ
は実質取り付け分の支払いをして、差額分は『儲けた』と皮算用したはずだ。
鉄筋は少なく組み立てたが労務費は正規の手間代を支払うほどゼネコンは間抜けではない。
協力業者の親方は職人さんへ支払うべき手間賃が減れば、隠し事は手ですくった水同然で、
こぼれ落ちた水が熱湯になって湯気にまでなったのである。
覆水盆に返らず、こぼれた水とは建設業界の信頼の源であり、それを失ったのだ。
耐震設計強度の偽装問題で、確認検査の審査期間が長くなった。
公的機関を増やして設計図や構造計算をいくら厳重にチェックしようとも、施工の段階で
間違えていましたと言い訳を通すつもりの偽装がどこかに潜んでいる、と私なら追及する。
パソコンソフトからのデータを捏造して、検査機関を騙してまで建物を創ろうとするゼネコン
に対し、仮に構造設計者が協力しても、構造計算者に見返りはほとんどないものだ。
鉄筋の重量が減った場合に、減った材料分の購入代と手間賃の何%が構造計算者の懐に
潜るならば、倒壊寸前の限界値まで計算、あるいは偽装計算をしたくなる誘惑に負けるだろう。
構造計算者は設計料の何%が構造計算代金とか、計算書の枚数が契約金額の対象になって
いるから、現実は鉄筋が増えても減っても、損得がなく、むしろ頁数が増えるように文字を
大きくしたり文字間を拡げたり工夫して、計算書を見栄えよく作成しているものだ。
つまり構造屋さんは偽装計算にはメリットがないから、どうでもイイ事であると言える。
それでもゼネコンから強制されたと言えば、そのゼネコンから二度と仕事が廻って来なくなる
から、真実も言えずに、計算した本人が全ての罪を被るしかないのだろう。
どこかからの圧力で計算式は偽装されたまま行政審査へと進むのである。
審査する側の人は構造計算のプロではないから、一級建築事務所の印のあるぶ厚い
計算書をチェックしながら間違いを発見するのは無理だと見越していて、
バレモトの偽装工作を指示するのは悪質行為である。
チェック機関を二重にして、審査回数を増やすのが悪いとは言わないが、審査合格が総て
ではないし、その通りに創っているか迄を検査しなくては、折角の計算書が無駄である。
《手抜き》工事と言われ続ける建設業に、背広組の机の上の出発点から偽装が始まっている
時代になり下がってしまっては、建設業のイメージアップはなす術が無い。
《築く》という目前のものだけを見るから、周囲に気づかないのである。
《儲ける》という計算と引き換えに、信用を失うのである。
《創る》という使命があれば、手抜きも偽装も関係無い言葉である。
………若手現場マンは何を目標に、この業界を泳ぐのであろうか・・・。
≪建設現場の玉手箱≫より抜粋
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます