『命綱』を本音で・・・
安全について語ると語り尽くせない程、難しい問題があり過ぎる。
『安全第一』と分かっていても出来ない事も有り、無駄に思える様な事や
矛盾している事でも形式(書類管理)だけの為?にも、安全にしなさいと
いう内容のものも有る。
安全にと設置したもの(手すり等)が仕事をする上で邪魔になる場合もある。
一度事故が起こるとすぐに原因を厳しく追い求められる。
要は起こった後でワイのワイのと言ったって、事故が起きた事はどうしよう
もない事なのだ。
「何故手を打てなかったのか!」
とも言うし、
「本人(被災者)の不注意によるものだ」
とも言える場合だって、労災扱いには紛(まぎれ)もない。
痛いのは本人もさることながら、現場は支店を通してさらに労基署からも、
厳しい警告をうける。
これはかなり現場としては痛手だ。時間的ロス、施主への信用失墜、とにかく
事故は起こしたくないのは、皆の願いだ。
単純作業で日常の慣れから安心しきった所でも、本人の不注意によるという
事故がおきる場合が多い。
安全パトロール、安全活動を実施して危険なカ所の指摘は色々と言える。
言った本人が他の現場で自分の言動(行動)に責任を持って、指摘されない
様に仕事をしているかは、問題だ。
―――今日は『命綱(安全帯)』について話てみよう――――
「高所作業には命綱を着用しましょう(着用させろ!)」
とパトロールでは指摘する。
現場の者全員それは良い事だと分かっている。
だから、協力業者の社長さんは必ず命綱を作業員全員に渡す。
現場も一応予備迄置いてある。
現場で作業中に使っているか、いないのかでなくて、腰にブラ下げて
あれば万事OKなのだ。
重い命綱を腰に巻いていないと、
「現場では命綱を着用する事の遵守項目違反」
として、親方が呼出しを食う事にもなりかねない。
持っていればそれで安全と言うものでもなかろうに……と私は正直に言う。
『裸の王様』
じゃああるまいし、オカシイ、納得出来なければ自分の意見を言うしかない。
意味のある命綱の装備に私はしたいのだ。
「命綱を先ず着装しましょう」
という事で、その為には現場内へ入る時から全員着用しているかをチェックした所
で、墜落防止と何の関係があるのか分からない。
高所からの墜落事故防止の為に必要なのが命綱の役目である。
朝礼時、ラジオ体操を行いながらも命綱を義務付けている事に、疑問を感じる
現場代理人は私だけだろうか。
安全教育に於いて、
『高所とは?』
と聞くと「2m以上の所」と答える。
「命綱を腰に巻きつけたものの、これを引っ掛ける所はどこにあるのだ?」
と言う質問が、必ず出る。
重たい命綱を腰に巻いて、屋上のはき掃除をするにも、地上2m以上の所な
ので必要なのだと言う。
建物が高くても、作業者が屋上に立てば,一階や室内を掃いているのと何も
変わらないと私は思う。
座敷ほうき片手にちり取りを持って掃き掃除をするのに、命綱は必要か?だ。
命綱をどこに引っ掛けて掃除をするのかについて問えば、
「これは決まりだから………」
との返答だ。
こう答える人は何の自覚もポリシーも無いのかと聞きたいけれど、安全責任者と
しては『不要です』とは発言出来ないのも、無理はない。
場内は『保護帽と安全帯着装の事』と大看板を掲示してあるものの、高所作業
でなくても墜落とは関係ない室内でも重装備での作業で安全なのですか?
外部足代(一般的ビティ足場)上で巾が90㌢~120㌢ある所で、外壁タイルを
貼る・塗装工事等の仕事でも
「命綱を使用しなさい」
と指導する。
足代の外面はスジカイが入り、ほこり飛散防止用のシートもあり、更に内側
(建物の仕事をする側)には手すりがあってもだ。
時には手すりがあると作業が出来にくい場合もあり、一旦外して作業を行う時
もある(現場黙認)が弋工は足場組立図通りに組んでいる。
型枠工、左官工、タイル工等の外部作業者が外したままの手すりを、弋工が
再々取り付けては《また外された》の繰り返しで現場は何時も悩んでいる。
取り付け責任者の弋工の人数に対して、外す人の何と多い事か……。
外したらなぜ復旧しないかというと、
「明日もそこで俺達は仕事をするのだから―――」
と明確な答えだ。
「それなら、手すりの代わりにロープを張って命綱を引っ掛けろ」
とムキになると、
「命綱をしてたら作業半径1mだし、動きにくい。足代と外壁の間隔は30㌢
未満あって、そこにもビティ一段置きに墜落防止棚があり、落っこちそうに
ないし、 『今までに落ちた事』なんか一度もない!」
と経験論で正当性(着装不要論)を述べる。
(全く同感だ)
と私が感心していたのでは、
『安全監理が甘い、何とかさせろ、他の現場では皆やっているのに・・・』
とお叱りをこうむる。さあ困ったネ。
瓦(かわら)屋根の様に先の尖(とが)った建物の場合、親綱(命綱取り付け用の
ロープ)を張ると、屋根瓦は葺(ふ)けない。
瓦を葺くのに、親綱ロープを張った住宅屋根の現場も見た事も無い。
親綱を固定する柱の代わりの物も無い。
下手すればロープを屋根端に飾ったままで作業している場合もある。
親綱を張ったものの、命綱はどこに掛けるんだ?
ニワトリが先か卵が先かの論争に似ているね。
~~ 続く ~~
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます