原題 Sully
岡谷スカラ座です。
週末、「君の名は。」を見る人でごった返している映画館で今回の「ハドソン川の奇跡」を鑑賞。どちらかといえば、こちらの観客数は多いとは言えませんでした。
私としては、混んでいる劇場でなくてよかったと思いましたが、評判になっている割にはお客さん少ない、というところがちょっと残念。
まず、この作品、
イーストウッド監督らしい作品、と思えました。
単に、飛行機事故が起こりハドソン川に無事着水、乗客乗員全員が無事に助かりました、というような内容の映画ではなく、登場人物、特に事故を起こしてしまった
機長の心のひだを見事に描いている作品だと思いました。
私も含めて多くの日本の方は、この飛行機事故については何となく知ってはいるが、その後の顛末ということについては良く知らないのではないでしょうか。
無事に生還できたことは良いのですが、その後、
機長が乗客を危険にさらしたという容疑者としてNTSB国家運輸安全委員会から厳しい追及を受けていたのです。
この映画は
事故そのものではなく、容疑者とされてしまった機長とその関係者のことを描いた映画なのです。
そのため、原題はSullyとなっています。Sullyとは今回の機長、Chesley Burnett Sullenbergerさんのニックネームなのです。決して、日本語タイトルのような「ハドソン川の奇跡」とはなっていません。
ですから、この映画を単にパニック映画と思って見に行くと、なんじゃこれ、という感じになってしまうと思います。
自分の故意ではないにせよ、事故を起こしてしまったという苦悩。最善の方法と考えハドソン川に着氷したはいいけれど、本当にそれが正しかったのか自分に問う苦悩。。
そのような機長の苦悩とともに、この飛行機事故に関わった人々の迅速な行動をもが96分という短い時間に全て凝縮されています。
見終わって、単に「この事故、すごかったね、」なんていう感想ではなく、心がほっこりするようなヒューマンドラマを見終わったような感想でした。
機長の苦悩が描かれているからこそ、乗客が近くの船に救出されるシーンでは思わず涙がこぼれそうになりました。
ということで評価は
🍎🍎🍎
です
来年のアカデミー賞作品賞、でしょうね。
でも、欲を言えば、もうちょっと機長たちの苦悩の様子を見ていたかったかな、とも思いました。
[USエアウェイズ1549便不時着水事故]
離陸後ほんの1分半後のバードストライクで両エンジンが停止してしまった事故。
この事故では全てに「タイミングが合った」というような状況で全員が助かったのだと思います。それは
機長がハドソン川に着水できたこと
管制官が直ちに緊急要請を出したこと
着水できたところに橋や船など全くなかったこと
周囲の定期戦などが迅速に救助に向かえたこと
機長がSullyだったこと APUを作動させたこと
などなどです。
まず機長の判断。この事故はNYの陸地で起きているわけですから陸地は建物だらけ。この陸地に墜落したら飛行機の乗客のみならず、より多くの犠牲者を出していたことでしょう。このような事態を避ける意味でも、ハドソン川に着水、という選択を機長は選んだのではないでしょうか。
また、着水ですが、飛行機が海や川に無事に着水できるのは奇跡といえる状況です。ジェット機が着水して全員が助かったという事故は後にも先にもない、と思われます。なぜなら、着水時に少しでも機体が傾くと機体の分解は避けられません。それで、全員がアウトとなっていた可能性が高いです。管制官も当然そのように想像したのでしょう。
今回の場合、見事に水平に静かに着水できました。高度が低かったということも良かった点でしょう。が、機長の機体のコントロールが絶妙だったと思われます。着水時の進入角度というものがあるそうですが、たとえその通りに着水したとしても無事ではなかったとも言われています。この辺りは、機長の経験値とも言えると思います。
また、着水前、機長が
APUを作動させたことも良かったと言われています。
APUとは補助動力装置のこと。エンジンが停止してしまったため、メインの電気系統がダウンしました。このような場合などにこのAPUを作動させるこで電気系統が引き続き作動させることができるわけですが、これはチェックリストの優先項目には含まれていないということです。機長のこの咄嗟の判断で計器類がきちんと表示され、機体を安定化することが可能となり失速するのが避けられたということです。
まさに、この事故にこの機長あり、という組み合わせだったのだと思います。
Sullyさん、15歳ぐらいから飛行機のりだったようで、この40年という経験がこの事故に生かされたのでしょう。また、空軍にもいましたからね。
映画の中でもSullyがAPUのスイッチを押すところが描写されていますが、このAPUとは何か、ということを知らないとその重要性に気が付かないと思います。
また管制官というのは飛行機を空港まで誘導するのが仕事なのですが、今回の場合、事故に緊迫性を察知した管制官が直ちに周辺機関に緊急要請を連絡しています。これも乗客の生存を助けたとも言われています。
実際に起きた飛行機事故ということで、事前のお勉強もこの映画を見るのには必要かもしれません。
ということで、下をクリックしていただけるど、メーデー!の動画を見ることが可能です。
メーデー!9:航空機事故の真実と真相 ハドソン川の奇跡
映画『ハドソン川の奇跡』予告編