先日、沖縄県の首里城が火災により失われ、大きなニュースとしてとりあげられています。
首里城は琉球王朝の王城として建築された城です。
守礼門が2千円札に使われていることでも知られています。
首里城は戦争で被災したあと、何十年もの歳月をかけて復元されたそうです。
城は漆塗りで消失前の塗り直し作業では、より琉球王国時代に近い工程と技法で作業が行われたということです。
つまり首里城は「漆の工芸品」ともいうべき、日本で唯一の朱(あか)い城なのです。
その沖縄県のシンボルともいうべき城が、わずか一晩で壊滅的な被害を受けてしまったという衝撃的な出来事が現実として起きてしまいました。
その後復元に関してのニュースの中で、首里城の正殿に使われている瓦を再現するのは不可能であるということも判明しました。
正殿に使用された5万5千枚の瓦は、現在は採取が困難な土を原料にしていることやその土を使って瓦をつくる職人がいないということです。
首里城は琉球の伝統によって造られた城ですが、このことは一度失われたものを復元することの困難さを物語っています。
伝統は「精神の形」であって人から人へと伝えられるものです。
パソコンのDATAとして保存できるものではありません。
日大豊山の水泳部にも100年を超える伝統がありますが、これも歴代の顧問・コーチ・選手により受け継がれてきたものです。
日大豊山は「学校水泳」という「精神の形」を伝統とし、スポーツと学業と生活を教員と共にすることで人間教育に取り組んでいます。
同じ志をもつ生徒が様々な方々の協力を得ながら、切磋琢磨する毎日を送っているのです。
これも日大豊山高校の水泳部が存続してこそ成り立っている教育のありかたです。
伝統を守り継続することには大変な困難が伴います。
ましてや一度失われてしまったものを取り戻すということは何倍もの時間や労力を要するものです。
私も何度か首里城を見学しましたが、その美しさに伝統の素晴らしさを感じた一人です。
いつかその美しさを見る日が来ることを祈っています。
竹村知洋