オリンピックに出場する条件として、日本水泳連盟が独自に定めているのが「派遣標準記録」です。
派遣標準記録のSは優勝レベル、Ⅰは銅メダルレベル、Ⅱは決勝進出レベルです。
今回は2019年の世界水泳の決勝を基準として記録が定められました。
この基準は最低でも決勝に進出できる実力がなければ、オリンピックに出場できないということを示しています。
さらに1か国でオリンピックに出場できるのは、個人種目で上位2名、リレー種目で上位4名という条件があります。
まとめると競泳種目でオリンピックに出場するには、次の2つの条件をクリアする必要があります。
①オリンピック選考会の決勝で派遣標準記録Ⅱを突破すること。
②オリンピック選考会の決勝において個人種目で上位2位以上、リレー種目で上位4位以上になること。
つまり、優勝したとしても派遣標準記録より0.01秒遅かったり、派遣標準記録を突破していても3位であればオリンピックには出場することができないということになります。
また、決勝での記録だけが採用されますから予選や準決勝で上記の基準を満たしていても選考されません。
競泳のオリンピック選手の選考は、決勝レースでゴールタッチをした瞬間にオリンピック選手が決定するという、まさに「一発勝負」なのです。
たとえ前年度に世界記録を出していても、選考会の決勝で失敗してしまえば選考されません。
選考会までの強化練習や調整はもちろん、体調管理や精神状態などすべての準備を万端にする必要があります。
特に社会人や大学4年生でオリンピック選考会に臨む選手たちは、自分の競泳人生すべてをかけてこの場に挑むことになります。
これがオリンピック選考会の会場を包み込む緊張感につながっていくわけです。
私自身も選手時代にアトランタオリンピック選考会の決勝を体験しましたが、明らかに召集所の雰囲気はいつもと違っていることを感じました。
そのような雰囲気の中で、本来の実力を発揮するというのは大変難しいものです。
選考会では選手だけでなくコーチも不安になるものですが、最後は自分たちのやってきた練習を信じるしかありません。
自信がつく練習をどれだけやってきたか、ということが勝負の分かれ目になるのだと思います。
「自信がつく練習をする」というのはHPに掲載している「55の教え」の一つであり、ここでも日大豊山水泳部の伝統が生きることになります。
https://blog.goo.ne.jp/buzanswim/e/cf4267dab90f219f8f594c4ba05a93e1
日本水泳連盟が定めるオリンピックの派遣基準はおそらく他の競技と比べても大変厳しいものだと思いますが、競泳競技の本質にあった公平な選手選考であり、日本の競泳のレベルを向上させるものであることは間違いありません。
東京オリンピックの日本代表として、自信がつく練習を行い、本番を迎えたいと考えています。
竹村知洋