誰もが認める最強世代の現4歳牡馬。その中でもトップクラスに位置するのが「神7」ならぬ「最強7」。
図式は、ヴィクトワールピサ、ヒルノダムール、ペルーサのSS系3頭に、エイシンフラッシュ、ローズキングダム、トゥザヴィクトリー、ルーラーシップのキングマンボ系の4頭。秋にはSS系のダークシャドウが加わりSS系4頭VSキングマンボ系4頭の「最強8」になるであろう。
春のグランプリに「最強7」が揃い踏みとなれば、さぞかし盛り上がるだろうと思いきや、蓋を開けてみればSS系3頭は出てこない。Vピサは、ドバイWCを制したとなれば、宝塚記念には目もくれずに次は凱旋門賞を目指すのは当然で、ヒルノも春天を制した直後に、宝塚を回避し、秋のG1シリーズか凱旋門を目指すと、昆調教師が早々と明言。残るペルーサを管理する藤沢調教師は、最後の最後まで迷ったようだが、結局「とてもじゃないが、使える状態ではない」と判断し、秋に備えることとなった。
ここに今年の宝塚記念を紐解く重要な鍵が隠されている気がしてならない。
SS系トリオの3頭のうちVピサ以外の2頭はともに春天に出走した。ヒルノは大阪杯がメイチの仕上げで、悲願の重賞制覇を果たしたが、そこから更に「ここで壊れても構わない」かのような仕上げで春天に臨み、栄冠をもぎ取った。また、ペルーサは、距離適性に疑問を感じたのか、ダービー後は菊花賞をパスして秋天、JCと駒を進めたにもかかわらず、菊花賞よりタフな春天へ出走した。府中が大好きな藤沢調教師ならば、安田記念という選択肢もあったはず。が、現実には春天出走へ踏み切り、宝塚も回避。ただでさえ、疲労が残りやすい長丁場。ましてや、今年は渋った馬場で、しかも、あの乱ペース。与えたダメージは想像以上に大きいのではないだろうか?
春の古馬頂上決戦の春天に出走する以上、全馬メイチの仕上げのはず。現に、ロズキンの橋口調教師は、JCの繰り上がり優勝ではなく「ここでロズキンの本当の強さをお見せするためにスッキリと勝ちたい」と言っていた。八分の仕上げで勝てるほど、春天は甘くはないのだ。ヒルノと鎬を削ったエイシンフラッシュはいうまでもなく、ダービー以降、押せ押せのローテで使い込まれたトゥザグローリーなら尚更だ。
となると、春天を見送り、ここを目標に定めたルーラーシップがフレッシュさで言えば一番。トゥザグローリーとは異なり、ダービー後は、一息入れながらの使われ方で、狙い済ましたレースをことごとく奪取している。前哨戦の金鯱賞で出遅れながらの快勝激を見せつけられれば、イメージ的にもOK。その金鯱賞も春天と同様に道悪で行なわれたが、先のマーメイドSを楽勝したフミノイマージンを見れば、その疲労度ウンヌンを延べるのは穿ちすぎ。また、宝塚記念のレースキャラの一つである「ここが悲願のG1初制覇」にも重なり、その人気に拍車をかける。だが、死角はある。
■血統傾向~過去21年■

ルーラーシップの死角、それは母父にトニービンの血を持っていることに他ならない。
過去21年、トニービンの血を父か母父に持つ馬は【0-2-4】と、好走はするものの一度も勝っていないのだ。トニービンと同じグレイソブリン系のカロ・ラインのシャルードからは、94年1着のビワハヤヒデが出ているのだが。
<父か母父がトニービンの馬の成績>
95年3着エアダブリン(6番人気)
98年3着エアグルーヴ(3番人気)
04年3着リンカーン(3番人気)
05年2着ハーツクライ3番人気)
06年2着ナリタセンチュリー(10番人気)
10年3着アーネストリー(3番人気)
オークス、秋天の覇者である当代きっての女傑であったルーラーの母エアグルーヴですら3着に甘んじた。となれば、ルーラーの半兄フォゲッタブルも、また然り。そして、金鯱賞(3着)を叩いて、ここ狙いの昨年3着のアーネストリーも、残念ながら昨年の雪辱を果たすことはできないだろう。
決して、相性が悪いとは言わないが、いや、これだけ3着以内(しかも人気薄でも)に入っているのだから、むしろ宝塚記念とは相性が好い方である。しかし、一度も勝っていないことは事実。トニービンの血にとって、宝塚記念は鬼門なのである。
<該当馬>
△アーネストリー…グラスワンダー×トニービン
△キャプテントゥーレ…アグネスタキオン×トニービン(回避予定)
△トーセンジョーダン…ジャングルポケット×ノーザンテースト
△ハートビートソング…アグネスタキオン×トニービン
△フォゲッタブル…ダンスインザダーク×トニービン
△ルーラーシップ…キングカメハメハ×トニービン
ところで、昨年も書いたが、トニービン同様に3着以内には入っているものの一度も勝っていない血統が、もう一つある。
それはニジンスキー系だ。
ニジンスキー系を父か母父に持つ馬は【0-3-6】と、トニービン以上に勝ち切れない。
<父か母父がニジンスキー系の馬の成績>
90年3着ヤエノムテキ(4番人気)
91年3着タイイーグル(8番人気)
95年3着エアダブリン(6番人気)
96年・97年ともに3着ダンスパートナー(3番人気・4番人気)
99年2着スペシャルウィーク(1番人気)
04年2着シルクフェイマス(6番人気)
06年3着バランスオブゲーム(9番人気)
10年2着ブエナビスタ(1番人気)
ブエナの父スペシャルウィークも2着。つまり、ブエナは父方と母方に「鬼門血統」であるニジンスキー系を二本持っていることになり、エアダブリンもトニービンとニジンスキー系を二本持っていた。
<該当馬>
△ブエナビスタ…スペシャルウィーク×カーリアン
ちなみに宝塚記念を制した牝馬は、66年エイトクラウンと05年スイープトウショウの2頭のみで、75年以降の過去36年で【1-2-5-37/45】である。とはいえ、これだけ牝馬にとっては荷が重いという傾向が出ている宝塚記念で、2着に来るのだから、ブエナは間違いなく強いの確か。だが、昨年ブエナが負けたのは事実(しかも父と同じ1番人気で)。それが、決してニジンスキー系のせいとは言わないが。