■血統傾向■
創設された97年以降の血統傾向を掲載するが、傾向把握の対象とするのは馬場改修となった04年以降の過去9年。
以前は父か母父にミスプロ系を持つ馬が【2-3-5】と活躍していたが、近年ではロベルト系の活躍に押され気味。ロベルト系を持つ馬は、昨年は馬券対象にならなかったが、07年~11年まで5年連続で【3-3-3】で、毎年必ず1頭は馬券になっている。
<ロベルト系保有馬>
07年1着サンライズバッカス…母父リアルシャダイ
07年2着、08年2着ブルーコンコルド…母父BT
08年3着ワイルドワンダー…父BT
09年1着、10年3着サクセスブロッケン…父シンボリクリスエス
10年1着エスポワールシチー…母父BT
11年2着フリオーソ…父BT
11年3着バーディバーディ…父BT
全体的には、目につくのがノーザンダンサー系。
特にアメリカンダート血統のストームバード系とヴァイスリージェント系の2系統。
<ストームバード系:2-2-1>
05年1着メイショウボーラー…母父ストームキャット
05年2着、06年2着シーキングザダイヤ…父ストームキャット
07年1着サンライズバッカス…父ヘネシー
12年3着ワンダーアキュート…父カリズマティック
<ヴァイスリージェント系:1-1-1>
06年1着、09年3着カネヒキリ…母父デピュティミニスター
09年2着カシノドライブ…母父デピュティミニスター
他では2着2回のヌレイエフ系。
04年2着サイレントディール…母父ヌレイエフ
12年2着シルクフォーチュン…母父アルワウーシュ
アメリカンダート血統といえば、ボールドルーラー系も忘れてはいけない。
<ボールドルーラー系:1-2-0>
09年2着カシノドライブ…父マインシャフト
10年2着、12年1着テスタマッタ…父タピット
なお、父SS系は【2-2-1】で、04年2着サイレントディール(父SS)、06年1着・09年3着カネヒキリ(父フジキセキ)、10年1着エスポワールシチー、12年2着シルクフォーチュン(いずれも父ゴールドアリュール)の実質4頭しか馬券になっていない。
■コース傾向~1回東京ダート1600m■
先週までで合計15レースが行なわれた。
レースの血統傾向とは異なり、父SS系が【5-6-4】と活躍している。
父SS系の次に活躍を見せているのが、父、母父合計で【4-2-3】のロベルト系。ただし、先週の土日では、母父グラスワンダーの2着1回があるのみで、ロベルト系が活躍できる馬場ではなくなってきてるのかもしれない。
ミスプロ系は、父、母父合計で【5-6-5】のミスプロ系だが、活躍しているのはフォーティーナイナー系【2-2-2】とキングマンボ系【0-1-2】の2系統。
ノーザンダンサー系では、上述のアメリカンダート血統の2系統とダンチヒ系の活躍が目につく。
ストームバード系:0-2-2
ヴァイスリージェント系:2-2-1
ダンチヒ系:1-0-3
意外なのは、ダートのイメージが湧いてこないグレイソブリン系が【3-1-1】と、父で3勝をあげている点。このグレイソブリン系を持つ馬では、04年1着アドマイヤドン、11年1着トランセンド(いずれも母父トニービン)の2頭の勝ち馬が出ているので、これがお宝血統かもしれない。
なお、グレイソブリン系と同じナスルーラ系のアメリカンダート血統のボールドルーラー系は【2-1-1】である。
■カレンブラックヒルの取捨■
今年のフェブラリーSの馬券の焦点は、なんといってもカレンブラックヒルの取り扱いに尽きる。
初ダートがダートG1にもかかわらず、上位人気に支持されるのは間違いなく、ひょっとしたら1番人気まであるかもしれない。
初ダートでダートG1といえば、昨年のJCDのトゥザグローリーが思い出される。同馬は母トゥザヴィクトリーが01年フェブラリーS3着の後、ドバイWCで2着に入ったことで、ダート適性の可能性を評価されて、7番人気の穴人気に推されたが、結果は12着大敗。
ダート適性を示す血統的背景ならば、トゥザグローリーよりもカレンブラックの方が圧倒的に上。
まず、ダイワメジャー産駒の芝・ダート別の成績を把握しておく。
(13年2月3日現在。%は左から勝率、連対率、複勝率の順。以下同じ。)
【ダイワメジャー産駒】
芝:111-114-91-629/945 11.8% 23.8% 33.4%
ダ: 47- 43-32-366/488 9.6% 18.4% 25・0%
ダートの出走回数は芝の約半分の488回であるが、各率でダートの成績がヤヤ落ちている。
しかし、比較対象がないと何とも言えないので、芝・ダート兼用の産駒を出すことで知られているキングカメハメハとクロフネの成績と比べてみる。
【キングカメハメハ産駒】
芝:401-338-346-2698/3783 10.6% 19.5% 28.7%
ダ:311-270-272-1942/2795 11.1% 20.8% 30.5%
【クロフネ産駒】
芝:225-271-199-2097/2792 8.1% 17.8% 24.9%
ダ:534-456-451-3934/5375 9.9% 18.4% 26.8%
キンカメもクロフネも、僅かながらもダートでの成績の方が良い。そして、ダメジャのダートでの成績は、クロフネの成績に似ているので、芝・ダート兼用種牡馬の素質はあると言っても良いかもしれない。
次に、カレンブラックヒルの血統的バックグラウンドについて。
ご存じのようにダイワメジャーは、名牝系のスカーレット一族のプリンス。その祖であるスカーレットインクから連なる名牝は、どちらかといえば芝のイメージが強いが、実はダート重賞を制した数々の馬を輩出しているのだ。
スカーレットインク~スカーレットブルー~アナスミラビリスからは、牝馬ながら地方重賞を6勝2着2回のトーセンジョウオーが誕生している。
●トーセンジョウオー…ティンバーカントリー×リアルシャダイ
04年関東オークス(川崎・G3)1着
05年マリーンC(船橋・G3)1着
05年スパーキングレディー(川崎・G3)1着
06年クイーン賞(船橋・G3)2着
07年TCK女王盃(大井・G3)2着
07年エンプレス杯(川崎・G2)1着
07年マリーンC(船橋・G3)1着
08年スパーキングレディー(川崎・G3)1着
また、ダイワメジャーの母スカーレットブーケの姉であるスカーレットローズの仔、つまりメジャーと従姉弟の関係になるスカーレットレディは4頭のダート重賞勝ち馬を輩出している。
●サカラート…アフリート×SS
05年東海S(中京・G2)
05年ブリーダーズゴールド(旭川・G2)
05年日本テレビ盃(船橋・G2)
08年マーキュリーC(盛岡・G3)
●ヴァーミリアン…エルコンドルパサー
05年彩の国浦和記念(浦和・G2)
06年ダイオライト記念(船橋・G2)
06年名古屋グランプリ指定(名古屋・G2)
07年川崎記念(川崎・G1)
07年JBCクラシック(大井・G1)
07年JCD(東京・G1)
07年東京大賞典(大井・G1)
08年フェブラリーS(東京・G1)
08年JBCクラシック(園田・G1)
09年帝王賞(大井・G1)
09年JBCクラシック(名古屋・G1)
10年川崎記念(川崎・G1)
●キングスエンブレム…ウォーエンブレム×SS
10年シリウスS(阪神・G3)
●ソリタリーキング…キングカメハメハ×SS
12年東海S(京都・G2)
12年日本テレビ盃(船橋・G2)
面白いのが、この4頭の父はすべてミスプロ系ということ。となると、4頭の母スカーレットレディと同じ血統構成のダイワメジャーにミスプロ系グラインドストーン(ファピアノのライン)を配したカレンブラックヒルにも、大いに魅力を感じることは確かである。
だが、世の中そんなに甘くはない。
芝・ダートのG1を制した馬といえば、アグネスデジタル(00年、01年マイルCS連覇、01年秋天、02年香港C、02年フェブラリーS、03年安田記念)とクロフネ(01年NHK、01年JCD)を思い浮かべる方も多いことだと思う。
しかし、前者はもともとダートで実績を積み芝に転戦してきた馬であり、後者はNHKを制したあと、ダービー5着、神戸新聞杯3着を経て、芝の路線には見切りをつけ、初ダートの武蔵野S(G3)で2着に9馬身という圧倒的パフォーマンスを見せつけ、JCDを制したように、本番前にはダート適性があることは明らかだったのである。
一方、カレンブラックヒルは全くもっての初めてのダート。それも砂の王者を決めるG1に出走してくるのだ。
血統的背景からはダート適性はありそうに見えても、実際に走ってみないと分からない。東京ダート1600mは、スタート時点が芝なので、そこでスピードの違いを発揮し、なんなくハナを奪いそのまま逃げ切る、というのが陣営の作戦らしいのだが。
JRA初のダートのG1・フェブラリーSが創設された97年以降、初ダートがJRAのダートG1に出走した馬は合計21頭いるのだが、その成績は【0-0-1-20】と、惨憺たる結果に終わっており、その平均人気は7.7番人気、平均着順は12.1着と、とてもじゃないが手は出せない。唯一、馬券対象になったのは、01年フェブラリーS3着のトゥザヴィクトリーのみで、馬券圏外に散った20頭のなかには、カレンブラックヒルと同じく、99年のNHKの覇者シンボリインディをはじめ、5頭のG1馬が含まれている。
<芝G1馬の初ダートがダートG1の成績>
シンボリインディ(99年NHK)…00年フェブラリーS(5番人気/9着)
オレハマッテルゼ(06年高松宮記念)…07年フェブラリーS(10番人気/16着)
ヴィクトリー(07年皐月賞)…08年フェブラリーS(8番人気/15着)
ローレルゲレイロ(09年高松宮記念・スプリンターズS)…10年フェブラリーS(8番人気/7着)
グランプリボス(10年朝日杯FS、11年NHK)…12年フェブラリーS(6番人気/12着)
血統的背景に加えて、今年の登録メンバーを見渡すと、絶対的存在といえる馬が見当たらないので、「ひょっとしたら…」と思ってしまうのは確か。しかし、それが罠であることをデータが教えてくれている。
血統的背景を信じるか、それともデータを信じるか。そこが当り馬券とハズレ馬券の別れ道となりそうな、今年のフェブラリーSだ。
血統傾向でも不振な父SS系であること、コース傾向では父SS系は活躍しているがダイワメジャーは2着が1回しかないこと、そしてどうせ人気になるのは必至なので旨味はないので、個人的にはデータを信頼し、バッサリと切る予定。