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趣向について

2016年05月19日 | 茶の心の話
茶の湯に於ける趣向についての話を、一服戴きながらいたしました。

その時その場で行われる自然発生的行為が、結果として趣向となるのですが、意識的に求めて趣向を凝らそうとすれば、それは自分の意識に基づいた表現になりますので、どうしても不自然さは拭い去ることは出来ません。
趣向をと求めた時に、それはもう純粋な心による趣向ではなくなってしまいます。
趣向は、欲求に基づいたり、予定準備することではなく自然発生的に行動されるものです。
そのありのままの心は、わざと趣を感じさせるように誘導したり、求めて風流を演出するというような、作り物の所作から生まれるものではありません。
侘び茶において何か趣向を凝らそうと思い、自分の思いを持ちすぎてしまっては、自意識が強く出てしまいますので、自然な振る舞いも、客との調和も難しくなります。
自意識を捨てて、無意識に調和するために、作為を無くして、自然に発露していく所作に侘の心を見れば、それが本当の趣向ということになるのです。
また茶の湯の道具選びは、季節感や招待客を考慮に入れて分相応に調へ、茶室の作りは、奇抜になれば自我が出ますので周りの様子に合わせ、茶庭の掃除などは、区切りはありませんので、自分の心が落ち着き、客に歩いてもらえるようにと、すべてに調和していけば、それが本来の趣向になります。
自我の欲求的趣向を持たないことにより、道具組は自然な取り合わせになり、それらを用いる茶室、そこに至る庭などが、混然一体となることが可能になります。

いい席でした。