夏場に増えた体重を減らすために最近はなるべく腹八分目~七分目を心がけるようにしておるのでござる。
そのせいなのかこんなの書いてしまいました。
創作ものです。
ちょっと長いよ~
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
腹が減ったので牛丼屋にやってきた。
オフィス街の真ん中にあるとはいえ午後2時の牛丼屋は閑散としており、客の姿も昼食をとりそこねたスーツ姿の会社員らしき中年男性がひとりスポーツ新聞を読みながら牛丼を食べてるだけであった。
俺が店内に入るとカウンター内の店員(20歳前後のにーちゃん)が「らっしゃいませ!」と威勢のいい声で迎えてくれた。
カウンターの席に座り「さて、何を食うかな・・・」とメニューに目をやる。
そのとき店の自動ドアが開いて小柄な男が俺の席の左側ひとつ空けたところに座ったのだ。
ボーダー柄のTシャツにジーンズ姿のそいつは店員と同じくらいの20歳前後であろうか。
それにしても華奢だなぁ、細過ぎじゃないか。
俺の体型とは正反対だな、と心の中で苦笑。
俺は身長が190cm体重が100kgの巨漢なのである。
大学時代にはラグビー部に所属してて30歳になった今でも社会人のラグビーチームで毎週末練習で汗を流してるのだ。
その巨体と運動量を維持するためには当然食べる量も半端ではないのである。
まぁ、さすがに30の声を聞いてからは健康のことも考えてなるべく大食いは控えるようにしてるんだけどね。
さて、どうするか。
メニューを見てて目に入ったのは牛丼の「特盛」
この店で一番量の多い牛丼である。
ご飯は大盛り、上に乗る牛肉は並盛りの2倍ってやつ。
しかしここは健康のことも考えて牛丼の並盛りで我慢しておくか。
店員に声をかけようと思ったそのとき、左の華奢な兄ちゃんが「すいません、特盛りお願いします」と注文。
な、なに!お前、特盛りを食うのかよ。
お前のようなか細い頼りない体つきのヤツが特盛りを食べてその横で俺のような巨漢が並盛りでは格好がつかんじゃないか!
俺はあわてて店員に「こっちも特盛りで頼むわ」と注文。

1分程度で俺の前のカウンターに牛丼が置かれる。
牛丼は注文してすぐに出てくるのがいいね。
よし、食うぞ。
まずはカウンターの上に置いてある七味唐辛子を丼全体に振りかけて、やはりカウンター上に備え付けの紅ショウガをどっさり牛丼の上に盛るのね。
そして左手で丼をわしづかみにして右手に握った箸で一気にかっこむのだ。
牛丼なんてものはお上品に食べるもんじゃないからね、ガツガツ食ってこそ牛丼のうまさがわかるってものよ。
むふふふ、口一杯に頬張った肉とご飯を咀嚼して飲む込む快感。
うん、牛丼はこうでなくっちゃ。
俺は大食いでもあるんだけど、かなりの早食いでもあるの。
牛丼やカレーならものの2、3分で食べちゃうのだ。
ふう、旨かった~~~
大食いの俺からすればこの程度では満腹にはほど遠いんだけど、さっきも書いたように健康のためには食べ過ぎはよくないからね。
さて、精算して帰ろうかなぁ、と思ったそのとき、隣のボーダーTシャツの兄ちゃんが
「すいません、牛丼の特盛りをもうひとつお願いします」
見ると、さっき同時に注文した特盛りの牛丼を俺と同じ速度で完食してやがるじゃないか。
しかも、さらに特盛りの追加だと!!
この野郎、大食いの俺にケンカ売っとるのか!!
一旦帰ろうとして浮かした腰を再び椅子に落ち着けて「こっちも特盛りお代わりな」と冷静を装って店員に注文。
店員は俺たち二人の顔を見て一瞬呆れたような表情を浮かべたもののすぐに営業スマイルに戻って厨房に向かって「特盛り二丁~」
隣のヤツはこっちを全く無視したような無表情で前を向いたまま。
なに、格好つけてんだよ、まったくもう。
まぁ、ええわ、大学のラグビー部でも俺以上の大食漢はおらんかったからなぁ。
牛丼の特盛り2杯くらいは軽いものよ。
「お待ちどうさまでした」
俺と兄ちゃんの前に丼が置かれる。
唐辛子を振る、紅ショウガを乗せる、そしてほぼ同時に丼を手に持って食べ始める。
さっきは全く見てなかったので気付かなかったのだが、ヤツの食い方は俺のようにガツガツとかっ込むのではなく、一口ずつ同じペースで箸で肉とご飯を口に入れていくのである。
ただ、その一口の量がやたらと多いので優雅に食べてるように見えても丼の中身がみるみる減っていくのだ。
今回もヤツは俺とほぼ同時に完食。
食べ終わった兄ちゃんはお茶をすすって満足気な様子。
しかし華奢なその体で特盛り2杯もよく食べたなぁ、うんよくがんばったぞ。
俺はライバルの健闘を称えながら今度こそ帰ろうと・・・・・
「すいません、カレーライスもらえますか」
なんだと!!!
まだ、食う気なのか!!!
このまま帰ったら俺の負けみたいじゃないか!!
しかたない本気で勝負してやるか。
「お、こっちもカレーな”大盛り”で」
俺の注文を聞いたヤツは初めてこっちをちらりと見て
「すいません。僕のカレーも大盛りにしてもらえますか」
この野郎、完全に俺に勝負を挑んできたな。
そんな細身で190cm100kgのこの俺に勝負を挑むとは無謀なやつめ。
営業スマイルをすっかり忘れて心配そうな顔つきの店員が二人の前にカレーを置きながら「そんなに食べて大丈夫ですか?」と兄ちゃんに声をかける。
ヤツはニコっと微笑む。
おいおい、店員さんよ、俺には「大丈夫ですか?」って言ってくれんのか?
ま、この体を見れば大丈夫だと思うに決まっとるわな。
カレーは飲み物、俺はあっという間に飲み干してやったわい。
ちらりと横を見るとヤツも完食直前。
ここは一気にとどめを刺してやろう。
「豚丼の大盛り!」
こっちをちらりと見た兄ちゃんはカレーの最後の一口をスプーンに乗せたまま。
「すいません、僕も豚丼の大盛りをお願いします」
あらら、まだ勝負するつもりか。
無理はしないほうがええんとちゃうか。
ふと見るととっくに食べ終わってさっきまでスポーツ新聞を読んでた会社員らしいおっさんが呆れたような表情でこっちを見てるじゃないか。
さらに俺たちのすぐ後に入ってきた男子高校生3人組も食べかけの牛丼の箸を止めたままこっちを凝視してるし。
俺たちの勝負にギャラリーが付いてしまったか。
これはいよいよ負けるわけにはいかないな。
気合いが入るじゃないか!!!
豚丼の大盛りも5分足らずで双方完食。
こやつできる!
ただ者ではないな。
食べ終わったヤツはまだ余裕のある顔つきで俺のほうを見る。
その余裕は本物なのか?
無理して余裕ある風に見せてるだけじゃないのか?
俺がギブアップするのを待ってるだけじゃないのか?
甘いな、俺が本気を出せばまだまだ食えるぞ。
俺はニヤリと笑って「うな丼ひとつ」
季節限定のうな丼は今しか食べれんからね♪
みそ汁付きなのも嬉しいのだ。
俺の注文を聞いて男子高校生3人組から「おぉ!!」と声が上がる。
ヤツはそれを聞いてから「こっちも同じものでお願いします」
高校生の一人がスマホをこっちに向けてる。
写メでも撮っとるのか?
ツイッターにでもアップするのか?
困ったやつやなぁ、俺の勇姿が世界に拡散されてしまうじゃないか、わははは。
お、きたきた。
鰻様~~~♪
旨いねー!
脂の乗ったフワフワの鰻、濃厚で甘めのタレ、そのタレが染みたご飯。
そりゃ本格的な鰻専門店の鰻に比べれば雲泥の差なんだろうが、この値段で気軽に鰻が食えるのは嬉しいよなぁ。
またまた俺とヤツはほぼ同時に完食。
食べ終わると同時に今度はヤツが「牛焼き肉定食をお願いできますか」と注文しやがった。
その声を聞いてカウンター内の店員と客の中年サラリーマンと3人の男子高校生が一斉に俺の顔を見る。
わかってるって、期待は裏切らんよ。
「俺にも牛焼き肉定食な」
いつの間にか店内にはけっこうな数のお客さんが入ってきてるじゃないか。
その客のほとんどが俺とヤツのことをちらちらと見てるのがわかる。
客の中に高校生の姿が多いのはこの対決をあの男子高校生がほんとにラインかツイッターでネットに流しやがったせいなのかも。
牛焼き肉定食もお互いに完食。
しかしさすがの俺もかなりの満腹状態になってきてしまった。
ヤツの様子をチラ見するもまだまだ余裕のある様子。
ほんとに余裕があるのか、虚勢を張ってるのかは判断つかぬなぁ。
俺だって満腹なそぶりはヤツに見せるわけにはいかんからな。
さて、ヤツはどう出る?
場合によってはこのまま引き分けで許してやってもいいのだぞ。
「麦とろ定食ください」
そうか、まだ勝負するのか・・・・
わかった!とことん限界までやってやろうじゃないか!!
「こっちにも麦とろ定食!!」
店内のギャラリーから「おぉ!!!」と歓声があがる。
どこで聞きつけてたのか、カウンターに座ってるお客の後ろに立って拙者たちの対決を見る人まで現れてきたじゃないか。
表をみると店のガラス越しに店内の様子を見る人垣が二重三重にもなってるし。
多くのギャラリーに見守られながら対決は続く。
麦とろはずるずると飲むように食べられるので案外楽に食べられるのだが、一緒に付いてる牛皿がけっこうきつい。
みそ汁で流し込むようにして食う。
なんとか完食。
少し先に食べ終わってたヤツは俺が食べ終わるのを見届けて「牛丼の特盛りをお願いします」
こ、ここにきてまた牛丼の特盛りなのか・・・・・
とはいえ、こんなひょろひょろ野郎に負けるわけにはいかんじゃないか!
「俺にも特盛りひとつ」
ギャラリーからは拍手とともに「すげー!」「どんだけ食うんだよ!!」「化けもんか!!」という声が。
誰が化けもんじゃ!人間じゃ!!
目の前に置かれた特盛りの牛丼がとてつもない大きな壁に見えてきた・・・・
でも、俺、負けない!
がんばる!!
左手で丼を持つ。
あれ、牛丼ってこんなに重かったっけ?
右手の箸で牛肉をご飯とともに口の中に押し込む。
口の中には入るけど飲み込めない・・・・・・
動きが止まる・・・
俺は中身が半分以上残った状態の丼をカウンターの上に静かに置く。
箸が右手から力なく落ちてカウンターに転がる。
と、同時にヤツは完食した丼をカウンターに置いてお茶に手を伸ばす。
勝負の決まったその瞬間ギャラリーから勝者であるボーダーTシャツの兄ちゃんをたたえる拍手と歓声がわき起こったのだ。
力なくうなだれる俺を横目に勝者のヤツは大勢のギャラリーに握手されたり背中を叩かれたりの祝福を受けながらさながら凱旋パレードのように堂々と店を出ていったのである。
負けた・・・・
俺の完敗だ・・・
ヤツが出て行ってからも店内の興奮はなかなか収まらずいつまでもざわついたまま。
そんな中、ふと我に返った店員がつぶやいた・・・
あいつ、金払ってない・・・・食い逃げだ・・・・・・
カレーの日々 9/21、9/22更新~
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掲示板 なんぞ一言
源五郎日記 お休み中~
そのせいなのかこんなの書いてしまいました。
創作ものです。
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腹が減ったので牛丼屋にやってきた。
オフィス街の真ん中にあるとはいえ午後2時の牛丼屋は閑散としており、客の姿も昼食をとりそこねたスーツ姿の会社員らしき中年男性がひとりスポーツ新聞を読みながら牛丼を食べてるだけであった。
俺が店内に入るとカウンター内の店員(20歳前後のにーちゃん)が「らっしゃいませ!」と威勢のいい声で迎えてくれた。
カウンターの席に座り「さて、何を食うかな・・・」とメニューに目をやる。
そのとき店の自動ドアが開いて小柄な男が俺の席の左側ひとつ空けたところに座ったのだ。
ボーダー柄のTシャツにジーンズ姿のそいつは店員と同じくらいの20歳前後であろうか。
それにしても華奢だなぁ、細過ぎじゃないか。
俺の体型とは正反対だな、と心の中で苦笑。
俺は身長が190cm体重が100kgの巨漢なのである。
大学時代にはラグビー部に所属してて30歳になった今でも社会人のラグビーチームで毎週末練習で汗を流してるのだ。
その巨体と運動量を維持するためには当然食べる量も半端ではないのである。
まぁ、さすがに30の声を聞いてからは健康のことも考えてなるべく大食いは控えるようにしてるんだけどね。
さて、どうするか。
メニューを見てて目に入ったのは牛丼の「特盛」
この店で一番量の多い牛丼である。
ご飯は大盛り、上に乗る牛肉は並盛りの2倍ってやつ。
しかしここは健康のことも考えて牛丼の並盛りで我慢しておくか。
店員に声をかけようと思ったそのとき、左の華奢な兄ちゃんが「すいません、特盛りお願いします」と注文。
な、なに!お前、特盛りを食うのかよ。
お前のようなか細い頼りない体つきのヤツが特盛りを食べてその横で俺のような巨漢が並盛りでは格好がつかんじゃないか!
俺はあわてて店員に「こっちも特盛りで頼むわ」と注文。

1分程度で俺の前のカウンターに牛丼が置かれる。
牛丼は注文してすぐに出てくるのがいいね。
よし、食うぞ。
まずはカウンターの上に置いてある七味唐辛子を丼全体に振りかけて、やはりカウンター上に備え付けの紅ショウガをどっさり牛丼の上に盛るのね。
そして左手で丼をわしづかみにして右手に握った箸で一気にかっこむのだ。
牛丼なんてものはお上品に食べるもんじゃないからね、ガツガツ食ってこそ牛丼のうまさがわかるってものよ。
むふふふ、口一杯に頬張った肉とご飯を咀嚼して飲む込む快感。
うん、牛丼はこうでなくっちゃ。
俺は大食いでもあるんだけど、かなりの早食いでもあるの。
牛丼やカレーならものの2、3分で食べちゃうのだ。
ふう、旨かった~~~
大食いの俺からすればこの程度では満腹にはほど遠いんだけど、さっきも書いたように健康のためには食べ過ぎはよくないからね。
さて、精算して帰ろうかなぁ、と思ったそのとき、隣のボーダーTシャツの兄ちゃんが
「すいません、牛丼の特盛りをもうひとつお願いします」
見ると、さっき同時に注文した特盛りの牛丼を俺と同じ速度で完食してやがるじゃないか。
しかも、さらに特盛りの追加だと!!
この野郎、大食いの俺にケンカ売っとるのか!!
一旦帰ろうとして浮かした腰を再び椅子に落ち着けて「こっちも特盛りお代わりな」と冷静を装って店員に注文。
店員は俺たち二人の顔を見て一瞬呆れたような表情を浮かべたもののすぐに営業スマイルに戻って厨房に向かって「特盛り二丁~」
隣のヤツはこっちを全く無視したような無表情で前を向いたまま。
なに、格好つけてんだよ、まったくもう。
まぁ、ええわ、大学のラグビー部でも俺以上の大食漢はおらんかったからなぁ。
牛丼の特盛り2杯くらいは軽いものよ。
「お待ちどうさまでした」
俺と兄ちゃんの前に丼が置かれる。
唐辛子を振る、紅ショウガを乗せる、そしてほぼ同時に丼を手に持って食べ始める。
さっきは全く見てなかったので気付かなかったのだが、ヤツの食い方は俺のようにガツガツとかっ込むのではなく、一口ずつ同じペースで箸で肉とご飯を口に入れていくのである。
ただ、その一口の量がやたらと多いので優雅に食べてるように見えても丼の中身がみるみる減っていくのだ。
今回もヤツは俺とほぼ同時に完食。
食べ終わった兄ちゃんはお茶をすすって満足気な様子。
しかし華奢なその体で特盛り2杯もよく食べたなぁ、うんよくがんばったぞ。
俺はライバルの健闘を称えながら今度こそ帰ろうと・・・・・
「すいません、カレーライスもらえますか」
なんだと!!!
まだ、食う気なのか!!!
このまま帰ったら俺の負けみたいじゃないか!!
しかたない本気で勝負してやるか。
「お、こっちもカレーな”大盛り”で」
俺の注文を聞いたヤツは初めてこっちをちらりと見て
「すいません。僕のカレーも大盛りにしてもらえますか」
この野郎、完全に俺に勝負を挑んできたな。
そんな細身で190cm100kgのこの俺に勝負を挑むとは無謀なやつめ。
営業スマイルをすっかり忘れて心配そうな顔つきの店員が二人の前にカレーを置きながら「そんなに食べて大丈夫ですか?」と兄ちゃんに声をかける。
ヤツはニコっと微笑む。
おいおい、店員さんよ、俺には「大丈夫ですか?」って言ってくれんのか?
ま、この体を見れば大丈夫だと思うに決まっとるわな。
カレーは飲み物、俺はあっという間に飲み干してやったわい。
ちらりと横を見るとヤツも完食直前。
ここは一気にとどめを刺してやろう。
「豚丼の大盛り!」
こっちをちらりと見た兄ちゃんはカレーの最後の一口をスプーンに乗せたまま。
「すいません、僕も豚丼の大盛りをお願いします」
あらら、まだ勝負するつもりか。
無理はしないほうがええんとちゃうか。
ふと見るととっくに食べ終わってさっきまでスポーツ新聞を読んでた会社員らしいおっさんが呆れたような表情でこっちを見てるじゃないか。
さらに俺たちのすぐ後に入ってきた男子高校生3人組も食べかけの牛丼の箸を止めたままこっちを凝視してるし。
俺たちの勝負にギャラリーが付いてしまったか。
これはいよいよ負けるわけにはいかないな。
気合いが入るじゃないか!!!
豚丼の大盛りも5分足らずで双方完食。
こやつできる!
ただ者ではないな。
食べ終わったヤツはまだ余裕のある顔つきで俺のほうを見る。
その余裕は本物なのか?
無理して余裕ある風に見せてるだけじゃないのか?
俺がギブアップするのを待ってるだけじゃないのか?
甘いな、俺が本気を出せばまだまだ食えるぞ。
俺はニヤリと笑って「うな丼ひとつ」
季節限定のうな丼は今しか食べれんからね♪
みそ汁付きなのも嬉しいのだ。
俺の注文を聞いて男子高校生3人組から「おぉ!!」と声が上がる。
ヤツはそれを聞いてから「こっちも同じものでお願いします」
高校生の一人がスマホをこっちに向けてる。
写メでも撮っとるのか?
ツイッターにでもアップするのか?
困ったやつやなぁ、俺の勇姿が世界に拡散されてしまうじゃないか、わははは。
お、きたきた。
鰻様~~~♪
旨いねー!
脂の乗ったフワフワの鰻、濃厚で甘めのタレ、そのタレが染みたご飯。
そりゃ本格的な鰻専門店の鰻に比べれば雲泥の差なんだろうが、この値段で気軽に鰻が食えるのは嬉しいよなぁ。
またまた俺とヤツはほぼ同時に完食。
食べ終わると同時に今度はヤツが「牛焼き肉定食をお願いできますか」と注文しやがった。
その声を聞いてカウンター内の店員と客の中年サラリーマンと3人の男子高校生が一斉に俺の顔を見る。
わかってるって、期待は裏切らんよ。
「俺にも牛焼き肉定食な」
いつの間にか店内にはけっこうな数のお客さんが入ってきてるじゃないか。
その客のほとんどが俺とヤツのことをちらちらと見てるのがわかる。
客の中に高校生の姿が多いのはこの対決をあの男子高校生がほんとにラインかツイッターでネットに流しやがったせいなのかも。
牛焼き肉定食もお互いに完食。
しかしさすがの俺もかなりの満腹状態になってきてしまった。
ヤツの様子をチラ見するもまだまだ余裕のある様子。
ほんとに余裕があるのか、虚勢を張ってるのかは判断つかぬなぁ。
俺だって満腹なそぶりはヤツに見せるわけにはいかんからな。
さて、ヤツはどう出る?
場合によってはこのまま引き分けで許してやってもいいのだぞ。
「麦とろ定食ください」
そうか、まだ勝負するのか・・・・
わかった!とことん限界までやってやろうじゃないか!!
「こっちにも麦とろ定食!!」
店内のギャラリーから「おぉ!!!」と歓声があがる。
どこで聞きつけてたのか、カウンターに座ってるお客の後ろに立って拙者たちの対決を見る人まで現れてきたじゃないか。
表をみると店のガラス越しに店内の様子を見る人垣が二重三重にもなってるし。
多くのギャラリーに見守られながら対決は続く。
麦とろはずるずると飲むように食べられるので案外楽に食べられるのだが、一緒に付いてる牛皿がけっこうきつい。
みそ汁で流し込むようにして食う。
なんとか完食。
少し先に食べ終わってたヤツは俺が食べ終わるのを見届けて「牛丼の特盛りをお願いします」
こ、ここにきてまた牛丼の特盛りなのか・・・・・
とはいえ、こんなひょろひょろ野郎に負けるわけにはいかんじゃないか!
「俺にも特盛りひとつ」
ギャラリーからは拍手とともに「すげー!」「どんだけ食うんだよ!!」「化けもんか!!」という声が。
誰が化けもんじゃ!人間じゃ!!
目の前に置かれた特盛りの牛丼がとてつもない大きな壁に見えてきた・・・・
でも、俺、負けない!
がんばる!!
左手で丼を持つ。
あれ、牛丼ってこんなに重かったっけ?
右手の箸で牛肉をご飯とともに口の中に押し込む。
口の中には入るけど飲み込めない・・・・・・
動きが止まる・・・
俺は中身が半分以上残った状態の丼をカウンターの上に静かに置く。
箸が右手から力なく落ちてカウンターに転がる。
と、同時にヤツは完食した丼をカウンターに置いてお茶に手を伸ばす。
勝負の決まったその瞬間ギャラリーから勝者であるボーダーTシャツの兄ちゃんをたたえる拍手と歓声がわき起こったのだ。
力なくうなだれる俺を横目に勝者のヤツは大勢のギャラリーに握手されたり背中を叩かれたりの祝福を受けながらさながら凱旋パレードのように堂々と店を出ていったのである。
負けた・・・・
俺の完敗だ・・・
ヤツが出て行ってからも店内の興奮はなかなか収まらずいつまでもざわついたまま。
そんな中、ふと我に返った店員がつぶやいた・・・
あいつ、金払ってない・・・・食い逃げだ・・・・・・
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