窓の外に目をやると血のような赤い赤い月が暗い中空に浮いているのが見える
血の色の丸い月の前をいくつもの蝙蝠の黒い影が横切って行く
こんな夜はしっかり戸締まりをして家の中で朝が来るまで息を潜めてじっとしてなきゃいけないんだよ
風の音
違うよ
あれは古(いにしえ)からの魔物たちのうなり声
耳を澄ませてごらん
生け贄を探して町を徘徊する奴らの引き摺るような足音が聞こえるから
誰かが閂を下ろしてある玄関扉を開けようとガタガタと揺らす
大丈夫
入り口にはニンニクもイワシもヒイラギの枝も吊るしてあるよ
心配しなくていいんだよ
何があっても僕が君を守るから
ランプの灯りも消してしまおう
外に灯りが漏れるとここに君がいることがわかってしまうからね
ランプの消えた部屋の中は窓から射し込む月明かりで仄かに紅く染められる
なにを怯えてるの
え、僕に影がないだって
何を言ってるんだい
僕は優しく微笑みながら君に近づく
君は不安そうな表情で後ずさりする
どうしたの
怖くなんかないんだよ
僕の口に何か付いてるの
牙がどうしたって
僕が一歩近づくと
君は同じだけ後ろに下がる
蒼ざめた顔で胸のロザリオを握りしめる
すぐ後ろは壁だよ
もうそれ以上後ろには下がれないよ
壁に背中を押し付けるようにして怯える君
そんな君にゆっくり近づき
そっと君の肩に右手をかける
そのとき二の腕に鋭い痛みを感じた
思わず痛みを覚えた腕を抱えて後方に2、3歩よろめいた
僕と君の間に黒猫がいた
僕の腕を傷つけたのはこいつの爪だったのか
黒猫は君を守るように四肢を踏ん張り
僕と君の間に立ちふさがる
威嚇するように全身の毛を逆立て
怒りの眼差しで僕を睨みつける
金色の瞳に睨まれた僕は何故だか体の力が抜けていく
だめだ
その目でみつめるな
足がよろめく
立っていられなくなって床にしゃがみ込む
この町には魔力を持つ黒猫がいるという噂を聞いたことある
こいつがそうなのか・・・
僕は黒猫の視線に耐えきれず人の姿を保てなくなる
そして翼のある本来の姿に戻ってしまった
黒猫が僕に飛びかかってくる
僕は翼を羽ばたかせて黒猫の攻撃から逃れる
さっき腕を傷つけられたせいか思うように飛べない
右へ左へ上へ下へ
ふらふらと宙を逃げ回る
黒猫は何度目かの跳躍でその鋭い爪で薄い膜のような僕の翼を切り裂く
僕は力なくひらひらと床に舞い落ちる
床に落ちた僕を黒猫が前足で押さえつける
黒猫は上から僕を悠然と見下ろして
にゃぁと鳴いた
カレーの日々 6/19更新~
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掲示板 なんぞ一言
源五郎日記 お休み中
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こんな夜はしっかり戸締まりをして家の中で朝が来るまで息を潜めてじっとしてなきゃいけないんだよ
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違うよ
あれは古(いにしえ)からの魔物たちのうなり声
耳を澄ませてごらん
生け贄を探して町を徘徊する奴らの引き摺るような足音が聞こえるから
誰かが閂を下ろしてある玄関扉を開けようとガタガタと揺らす
大丈夫
入り口にはニンニクもイワシもヒイラギの枝も吊るしてあるよ
心配しなくていいんだよ
何があっても僕が君を守るから
ランプの灯りも消してしまおう
外に灯りが漏れるとここに君がいることがわかってしまうからね
ランプの消えた部屋の中は窓から射し込む月明かりで仄かに紅く染められる
なにを怯えてるの
え、僕に影がないだって
何を言ってるんだい
僕は優しく微笑みながら君に近づく
君は不安そうな表情で後ずさりする
どうしたの
怖くなんかないんだよ
僕の口に何か付いてるの
牙がどうしたって
僕が一歩近づくと
君は同じだけ後ろに下がる
蒼ざめた顔で胸のロザリオを握りしめる
すぐ後ろは壁だよ
もうそれ以上後ろには下がれないよ
壁に背中を押し付けるようにして怯える君
そんな君にゆっくり近づき
そっと君の肩に右手をかける
そのとき二の腕に鋭い痛みを感じた
思わず痛みを覚えた腕を抱えて後方に2、3歩よろめいた
僕と君の間に黒猫がいた
僕の腕を傷つけたのはこいつの爪だったのか
黒猫は君を守るように四肢を踏ん張り
僕と君の間に立ちふさがる
威嚇するように全身の毛を逆立て
怒りの眼差しで僕を睨みつける
金色の瞳に睨まれた僕は何故だか体の力が抜けていく
だめだ
その目でみつめるな
足がよろめく
立っていられなくなって床にしゃがみ込む
この町には魔力を持つ黒猫がいるという噂を聞いたことある
こいつがそうなのか・・・
僕は黒猫の視線に耐えきれず人の姿を保てなくなる
そして翼のある本来の姿に戻ってしまった
黒猫が僕に飛びかかってくる
僕は翼を羽ばたかせて黒猫の攻撃から逃れる
さっき腕を傷つけられたせいか思うように飛べない
右へ左へ上へ下へ
ふらふらと宙を逃げ回る
黒猫は何度目かの跳躍でその鋭い爪で薄い膜のような僕の翼を切り裂く
僕は力なくひらひらと床に舞い落ちる
床に落ちた僕を黒猫が前足で押さえつける
黒猫は上から僕を悠然と見下ろして
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