地球温暖化基礎知識
地球温暖化の影響予測(世界)
IPCC第5次評価報告書では、このまま地球温暖化が進むと、今世紀末には地球の平均気温が最大で約4.8℃上昇すると予測しています。そうなったら地球はどうなるのでしょうか?
下図のPDFダウンロードはこちらから>>(温暖化パネル No.05 ※数値はIPCC第4次評価報告書を使用しています)
(1)海水の熱膨張や南極やグリーンランドの氷河が融けて、今世紀末には海面が最大82センチ上昇します。
(2)現在絶滅の危機にさらされている生物は、ますます追い詰められ、さらに絶滅に近づきます。
(3)マラリアなど熱帯性の感染症の発生範囲が広がります。
(4)降雨パターンが大きく変わり、内陸部では乾燥化が進み、熱帯地域では台風、ハリケーン、サイクロンといった熱帯性の低気圧が猛威を振るい、洪水や高潮などの被害が多くなります。
(5)気候の変化に加えて、病害虫の増加で穀物生産が大幅に減少し、
世界的に深刻な食糧難を招く恐れがあります。
年間3000億ドル(約35兆円)以上の損害!?
国連環境計画(UNEP)が2001年2月に発表した報告では、2050年に二酸化炭素の濃度が2倍になると、繰り返される異常気象や海面上昇による土地の喪失、漁業や農業への悪影響、水不足などで年間3000億ドル(約35兆円)以上の損害が発生すると予測しています。
IPCC第3次評価報告書でも、壊滅的な異常気象による世界規模での経済的損失は、1950年代の年間39億USドルから1990年代の年間399億USドルへとすでに10.3倍も増大していると指摘しています。
こうした損害を補償する保険も、今後保険料が高騰していくでしょう。
大規模で急激な変化の可能性
地球温暖化によって、北大西洋の海洋の大規模な循環が変わり、グリーンランドや南極の氷床が崩壊し、シベリアなどの永久凍土や沿岸の堆積物から大量の温室効果ガスが放出されるなど、予測できない急激な変化を引き起こす可能性さえあります。
地球温暖化は、先進国と途上国の格差を拡大する
日本やアメリカ、カナダ、ヨーロッパ、ロシアなどの先進国では、気温の上昇幅が小さければ悪影響だけでなく、冬季の暖房費用の軽減など好影響もある可能性があります。
また悪影響に対処するだけの技術力も資金力もあります。
しかし、少しの気温の上昇で多くの途上国が正味の経済的損失を被り、温暖化が進行すればするほど損害も大きくなります。にもかかわらず、途上国にはその悪影響に備えるだけの力はありません。
その結果、地球温暖化の利益を受ける人がいても、地球全体では被害を被る人の方が多くなります。
気がついたときには手遅れに
地球温暖化による気温や水温の上昇、降水量の変化などによって、自然の生態系も深刻な影響を受けます。
しかし目に見える変化は、気候が変化した後、数年、数十年、数百年と遅れて起こります。ですから今大きな変化がないからといって、地球温暖化の影響は大したことがないと思っていると、いずれ取り返しのつかない変化が生じることになるかもしれません。
海面上昇の影響
2080年代までに海面水位が40cmしか上昇しなかった場合でも、海面上昇がない場合に比べて、毎年高潮により浸水を受ける人口が世界全体で7500万~2億人も増加します。
また熱帯、亜熱帯の島嶼国は、標高の低い土地が多いのに加えて経済的に貧しい人々が多く、もっとも深刻な影響を受けやすいと考えられています。海面の上昇によって、沿岸侵食の拡大、土地や財産の損失、人々の移住、高潮のリスクの増大、沿岸の自然生態系の減衰、淡水資源への塩水(海水)の浸入が起こり、これらの変化に対処するため高いコストが生じるでしょう。
また観光は多くの島にとって収入及び外貨獲得の重要な源ですが、異常気象の増加などや海面水位の上昇から深刻な観光資源の損失に見舞われます。