消費増税対策、議論混迷=財政再建置き去りに懸念
2019年10月に予定する消費税率10%への引き上げに備え、政府が策定を急ぐ景気対策の議論が混迷の度合いを深めている。
柱となる増税分のポイント還元をめぐっては民間側が制度の複雑さに難色を示し、「プレミアム付き商品券」でも所得制限をめぐる問題が浮上。需要減への対策の議論が盛り上がる一方、本来の目的である財政再建が置き去りとなる「本末転倒」を懸念する声も出ている。
消費税増税の負担軽減策では持ち帰りの食料品などを8%に据え置く軽減税率を導入。コンビニの顧客がイートインスペースを利用するケースでは、どの税率を適用するかで店側と混乱が生じる可能性が指摘される。
政府はこれに加え、消費者が中小の小売店でクレジットカードなどのキャッシュレス決済を利用した際に増税分をポイントで還元する制度も検討。しかし、増税が約10カ月後に迫る今になっても対象店舗などの線引きははっきりしない。制度が複雑になれば事業者の事務負担は増え、消費者の使い勝手も悪くなる。自民党が7日実施したヒアリングでは、流通業界団体が「事業者を大小で区別しない簡素な仕組みにすべきだ」と訴えた。
カードを持たない高齢者らを支援するため、公明党は公費で購入価格に一定額を上乗せするプレミアム商品券の発行を提案。政府内で具体的な検討が進む。政府は購入者を低所得層に制限したい意向だが、利用者の収入が少ないことが周囲に分かってしまうとして、与党の一部が反発。0~2歳児がいる世帯には中高所得層も含めて購入を認める案が8日、政府・与党内に浮上した。
来年10月の消費税増税では本来の税収増約5.6兆円が軽減税率の影響で1兆円の減収となるほか、増収分の一部を子育て支援などに充てる。日銀によれば国民負担増は2兆円強で、税率が5%から8%に上がった14年4月当時の4分の1程度。SMBC日興証券の末沢豪謙金融財政アナリストは「特別な対策は必要ない」と強調する。
景気対策費用が巨額に上れば、それだけ消費税率引き上げによる増収分を財政再建に回せなくなる。岸田文雄自民党政調会長は今月初めの国会審議で「景気への影響に備える話ばかりがクローズアップされ、何のために消費税率を上げるのかという議論が忘れ去られている」と苦言を呈した。