新元号、即位前「内定」で公表検討 署名は新天皇
来年5月1日の新天皇即位に伴って改める元号に関し、政府は新元号を即位前に「内定」し、その段階で公表することを検討している。即位前の4月中に有識者会議などを開き、内定した新元号を公表する一方、改元の政令は5月1日に閣議決定する。政令に署名するのは新天皇になる。自民党内外の保守派は、今の天皇陛下が署名すると新天皇と新元号の「一体不可分性」が破られると主張し、事前公表に反対していた。手続きを分離し保守派に配慮する。【「平成」取材班】
公表時期は、来年4月21日に予定される統一地方選後半の投開票が終わった後、即位の1週間前をめどにする案が浮上している。ただ、内閣官房関係者は「1週間や10日ではシステム改修が間に合わない」と疑問視する。一方、保守派は「内定から閣議決定までの期間が長いと、内定案への賛否の議論が起きかねない」と懸念しており、調整が今後本格化する。
政府は今年5月、官民のシステム改修に1カ月はかかるとの理由で、改元の1カ月前の新元号公表を想定して準備するよう各省庁に指示した。しかし、保守派は、平成のうちの新元号公表は「元号並立」の状況になり、明治以降に天皇一代に元号一つと定めた「一世一元」に反すると懸念。「事前公表では『天皇の元号』ではなく『内閣の元号』になる」と主張してきた。内定案は政府方針と保守派の意見の折衷策として浮上した。
自民党関係者によると、伊吹文明元衆院議長が安倍晋三首相に提案し、首相も「検討する」と応じたという。保守系団体「日本会議」関係者は「伝統尊重と、国民生活への影響軽減は対立するものではない」と指摘し、容認できるとの見方を示した。
前回の代替わりでは、昭和天皇が逝去した1989年1月7日に、元号を翌8日から平成とする政令を公布した。その際(1)有識者懇談会(2)衆参両院の正副議長からの意見聴取(3)全閣僚会議−−を経て元号を3案から平成に絞り、その後の閣議で政令を決定した。今回、「事前内定」する場合は(1)〜(3)を来年4月中に行い、閣議を同5月1日に行う方向だ。
首相官邸内では、首相に近い衛藤晟一首相補佐官が保守派の声を代弁するのに対し、杉田和博官房副長官は早期公表に理解を求めている。