高村薫の「マークスの山」、文庫本と単行本は違うよ~と言われ、単行本を読んでみました。
これは!面白い!
文庫本のときは、読むのにあんなに苦労したのに、
こっちはすんなりと読めるし、無理なく話しが頭に入っていく。
なぜ???
わたしの中で「合田雄一郎」という人物がしっかりイメージできていることが原因か(腐った方向に)、
個性的すぎる七係の面々に愛着がわいているせいか、
「マークス」=美少年という置き換えが成功したせいか……。
原因を探るべく、文庫本のほうも借りてみました。
違う!こ、これは、ぜんぜん違うと言っていいんじゃないか?
ストーリーの構成とか、展開の仕方とか。
「マークス」なんかももっとまともに狂っているし。
文庫本では、わたしにとって彼は、頭と精神を病んでいる気の毒な青年でしかなく、
そういう人間が起こした犯罪でした的な話しが、好きではなかったんだけど、
単行本の「マークス」は狂っているなりに、彼の行動が理解でき、悲哀さえ感じます。
ラスト、北岳のシーンはちょっとカンドーものです。
同じように山に登って同じように死ぬんですけどね、なぜかジーンときます。
物語の終わりが義兄への電話で終わるのもいいですね~。
電話に出た加納に「雄一郎」と一言名乗るシーン。
君たちは恋人同士ですか!?うふふふふふ~。
ああ、そうだ森くん、よかったね、「俺のお蘭」に昇格して。(p298下段)
(たしか文庫本にはなかったよね?)
それにしても、最初に出した単行本のほうが面白かったというのは、ちょっと複雑な気分ですね~。
文庫本までの10年の間にいろいろ思うところがあったということなのでしょうけど。
(阪神大震災の影響が大きいと聞いてますが……)
これから「マークスの山」を読む方、文庫しか読んでない方には、
ぜひ単行本編をお勧めします。