“子ども”を取り巻く諸問題

育児・親子・家族・発達障害・・・気になる情報を書き留めました(本棚4)。

子どものロコモティブシンドローム その3:子どもロコモを改善するために親子でできること

2024年08月01日 07時12分55秒 | 健診
子どもロコモ解説、その3は“親子でできること”。

読み終わって感じたのですが、
学校健診の「運動器検診」のチェック項目は、
「運動しなさすぎ → ロコモ」
の他に、
「運動しすぎ → スポーツ障害」
もあります。

3回シリーズのこの記事ではロコモのみ扱っており、
スポーツ障害については記載がなく、
“片手落ち”の感が否めません。

学校健診の短時間の流れ作業の中で、
あれやこれやとすし詰めのチェック項目をこなすのは無理というモノ。
運動器検診はやはり言い出しっぺの整形外科医が、
学校健診から独立して担当すべきだと思います。


<ポイント>
・体前屈ができない子は、単に股関節が固いだけでなく、肩甲骨まわりが固い硬い子が多い。
・姿勢で一番注意すべきなのが、骨盤を立たせること。
・日常生活で子どもロコモを改善できる方法は片足立ちがおすすめ。日常生活では、歯を磨くときなどに1~2分行うとよい。
・食べること、休養をとること、運動すること。この3つは、子どもロコモ改善にはとても大事。


■ 危険な「子どもロコモ」 改善策はストレッチ・体操・睡眠・食事…
整形外科医・林承弘先生に聞く「子どものロコモティブシンドローム」 
#3 子どもロコモを改善するために親子でできること
 整形外科医:林 承弘
2024.01.11:コクリコ

 1回目では子どもロコモの原因と症状、チェック項目について。2回目では子どもロコモを放置したまま成長するリスクと対策について解説してもらいました。3回目では、実際に親子でできるストレッチや体操と、睡眠・食事についてお話しいただきます。

<目次>
  • 「子どもロコモ体操」は親子で!
  • 片足立ちでロコモを改善
  • 運動機能を身に着けることが大切
  • ロコモ改善には朝食も大切
  • しっかり眠ることも子どもロコモの改善に
▶ 「子どもロコモ体操」は親子で!

──子どもロコモを改善するためには、やはり親の役割が大きいのでしょうか?

林承弘先生(以下、林先生):そうですね。私はいつも「子どもロコモ体操」をレクチャーするときには、必ず「お母さん、お父さんも一緒にやってね」と伝えています。
 というのも、子どもの姿勢をチェックすることでかなり変わってくるからです。それと、デスクワークが多い親御さんも、一緒にやることで効果が期待できますよ。
 では早速、以下の方法で一緒にやってみましょう!

【子どもロコモ体操】
① 両手を後頭部にあて、息を吸って肩甲骨を寄せる。
② 息を吐きながら両肘を前に。数回繰り返す。
③ 両手を組み、手のひらを天井に向けて両手を頭上に上げる。
…すべて引用:全国ストップ・ザ・ロコモ協議会「子どもロコモ

──実際にやってみると、肩甲骨がぐっと動くのがわかりますね。

林先生:そうなんです。肩甲骨の動きがよくなると体前屈もできます。体前屈ができない子は、単に股関節が固いだけでなく、肩甲骨まわりが固い硬い子が多いんです。
 そして、姿勢で一番注意すべきなのが、骨盤を立たせることです。腰のところに手を当てて前にぐっと押してみましょう。すると骨盤が立ちます。骨盤が立つと背骨が連動して猫背が解消されて姿勢がよくなります。

▶ 片足立ちでロコモを改善

──日常生活で子どもロコモを改善できる方法は何かありますか?

林先生:片足立ちがおすすめです。日常生活では、歯を磨くときなどに1~2分行うといいですね。親御さんは、キッチンにいるときや、デスクワークの合間などに。
 ちなみに、歩行中に両足がついている状態は2割程度で、8割は片足立ちです。片足立ちをしっかりやるとバランス能力や筋力がついてきて、歩行や階段昇降が楽になってきます。
 スキマ時間の中でロコモ改善運動の要素を入れるといいですね。

▶ 運動機能を身に着けることが大切

──ところで、スキャモンの発育曲線(※)のピークを逃すと運動機能を取り戻すことは難しいのでしょうか?
 スキャモンの発育曲線をみると、10歳前後で神経系はすでに成人の95.6%に達しています。10歳前後では、動きのもと(コーディネーション)を習得することが大切。

(※)スキャモンの発育曲線


1930年、スキャモンが人の身体諸属性は大きく4つのパターン(神経型、リンパ型、生殖型、一般型)に分類されることを提唱しました。神経系は10歳前後で成人の95.6%発達し、さまざまな神経回路が形成されることがわかっています。

林先生:無理ではないですが、子どもの成長曲線に合わせて身につけるのが一番いいと思います。ピークを超えてからでも遅すぎることはないのですが、そのときにやったほうが、動きの質を高めることができて、スポーツを楽しんだり、日常生活で安全に身を守ることにつながります。
 ロコモとは関係ないですが、小学生ぐらいの子どももダイエットしていると耳にします。一番困るのは、骨の成長に関してですが、最もスパークがかかる小学校高学年でダイエットをしてしまうことです。骨の成長のスパークに乗れず、骨密度が低いまま大人に……。
 特に女性の場合は、閉経を迎えると骨密度がグッと下がってしまいます。はじめの骨量をきちんと上げておくには、もちろん運動も必要ですし、過度なダイエットは避けるべきです。小学校高学年の女子がなぜ太るかというと、この時期は骨に刺激を与えるためでもあります。痩せてしまうと栄養もそうですし、骨にとっても良くないんです。
 だからこの時期は、体重を落とすのではなく、しっかりと食べてカルシウムなどの栄養素を十分摂っておくことが大切です。骨は20歳ごろに完成します。20歳の時点で骨量が少ないと、将来的に骨粗しょう症に早く入ってしまうことになります。これを伝えることも、子どもロコモ啓発のひとつになると思っています。

▶ ロコモ改善には朝食も大切
──ロコモ改善のためには、生活習慣改善という意味で、食生活も大切になってきますか?

林先生:そうですね。主食、主菜、副菜のそろった食事でバランスよく食べることが大切です。特に1日の原動力になる朝食たんぱく質をしっかり摂ること。
 以前、埼玉県で運動器検診のモデル事業を行ったとき、食事内容のアンケートも取りました。すると、約9割は朝食を摂っているという回答だったのですが、バランスよく摂れている子どもは、約3割でした。「パンだけ」「牛乳だけ」といった内容が多くみられました。
 朝食をバランスよく摂れているかどうかによって、学力も運動能力も明らかに違ってきます。文部科学省「平成31年度(令和元年度)全国学力・学習状況調査」のデータにもありますように、朝食がしっかり摂れている子は、算数や国語の成績も良く、かけっこやボール投げなどの運動能力も高いことが報告されています。

▶ しっかり眠ることも子どもロコモの改善に

──現代は「眠育」という言葉もあるほど、睡眠時間の短さが問題になっています。睡眠も子どもロコモに影響するのでしょうか?

林先生:睡眠時間が短いと、寝不足と寝坊して時間がないため、朝食がしっかり摂れないことが多くなります。食べること、休養をとること、運動すること。この3つは、子どもロコモ改善にはとても大事です。
・・・

子どものロコモティブシンドローム その2:子どもロコモの対策方法

2024年08月01日 07時00分51秒 | 健診
子どもロコモ解説、その2は“対策”です。

<ポイント>
・外遊びが減ったことで、体の使い方がわからない子どもたちが増え、ケガや骨折のリスクが高まっている。
・小・中学生のとき、スマホやタブレットゲームばかりして、外遊びをあまりしていないと、中高生になって身体能力の低下に気づく、というケースが多い。
・保育園や幼稚園のころの3~5歳ぐらいは、バランス能力や空間認知能力がもっとも伸びる時期。この時期に外遊びをしないと、小さなケガをしたり、痛みを感じたりする機会がなく、「危険回避能力」が身につかない。
・危険回避能力がないまま、中高生になって、いきなり激しい部活を始めると、大きなケガをしたり、骨折したりしやすくなる。
・オススメの外遊びは、鬼ごっこやジャングルジム、それからラジオ体操。
・スマホをしていると、猫背といった悪い姿勢になりやすい。
・「体が硬い」と言われている子どもは、実はそれほど硬くなくて、体の使い方がわからないことが多い。

■ 急増する「子どもロコモ」を放置… 心身の成長に与える「悪影響」〔専門医が解説〕
整形外科医・林承弘先生に聞く「子どものロコモティブシンドローム」 
#2 子どもロコモの対策方法
 整形外科医:林 承弘
2024.01.10:コクリコ)より一部抜粋(下線は私が引きました);

 子どもが、体の使い方を学ぶ機会を失ったまま放置しておくと「転倒してもとっさに手が出ない。すぐ疲れてしまい、さらに体を動かすのが億劫になるなど、心身の成長に悪影響を与える可能性があります」とは、林整形外科院長・林承弘先生。
 さらに大人になったときには、生活習慣病への懸念もあるといいます。

<目次>
  • 運動の減少によってケガのリスクが増加
  • 子どもロコモ対策には適度な運動と外遊びが大切
  • 姿勢を正しく保つことを日ごろから意識すること
▶ 運動の減少によってケガのリスクが増加

──1回目では、子どもロコモが起きる原因と症状、チェック項目についてお話いただきましたが、部活で本格的にスポーツを始める中高生のころになると、ロコモの症状は改善されるのでしょうか?

林承弘先生(以下、林先生):工業高校の養護教諭の先生が以前、「体前屈ができない生徒が一定数いる」「最近の高校生は、小・中学生のころにあまりケガの経験がなく、入学後に初めてケガをするケースが多い」とお話しをされていたことがありました。
「靴ひもを結べない」「マット運動で前転したときに船酔いのような気持ち悪さを感じる」なども耳にします。小・中学生のとき、スマホやタブレットゲームばかりして、外遊びをあまりしていないと、中高生になって身体能力の低下に気づく、というケースが多いですね。
 また、1970年からの骨折患者でみると、約40年間で保育園児・幼稚園児の骨折はやや減少、小学生で増加し、中高生では3倍に増えています。
 幼稚園や保育園で骨折の件数が少ないのはなぜかというと、「危ないから……」といった理由で、外遊びをさせる機会が減ってしまったことが考えられます。ケガをすると子どもへの対応に加えて、親御さんへの対応も必要ですから。
 しかし、保育園や幼稚園のころの3~5歳ぐらいは、バランス能力や空間認知能力がもっとも伸びる時期です。この時期に外遊びをしないと、小さなケガをしたり、痛みを感じたりする機会がなく、「危険回避能力」が身につかないことになります。
 危険回避能力がないまま、中高生になって、いきなり激しい部活を始めると、先ほどの話のように大きなケガをしたり、骨折したりしやすくなります
 ほかにも、2023年2月にさいたま市のN小学校で「コロナ禍の子どもロコモ」というタイトルで講演会に行ったときの話です。養護教諭の先生に「廊下を歩いていると生徒同士がぶつかってしまうんです」という話をお聞きしました。

──「空間認知能力」がないため、相手を避けられないということでしょうか?

林先生:はい、特に低学年に多く見られるとおっしゃっていました。今の低学年の子どもたちは、コロナの自粛生活のときが3~5歳前後。空間認知能力を獲得する時期に体をほとんど動かしていないため、運動機能が低下したままきてしまったというのが原因と考えられます。

▶ 子どもロコモ対策には適度な運動と外遊びが大切

──子どもロコモの対策として、サッカーや野球など、スポーツ系の習い事をするのは効果的でしょうか?

林先生:習い事で運動をしていても、必ずしも運動機能がいいとは限りません。原因はうまく体を動かせていないこと。運動をしている子も、していない子と同じように、子どもロコモの兆候が出ていることがあります。
 例えば、「肩を上げなさい」「体前屈しなさい」と言っても、必ずしもすべての子どもができるとは限りません。運動をやりすぎることで、体の硬さやバランスにひずみが出てしまうこともあるので、ほどよい運動、外遊びが大事です。

──具体的にどのような外遊びがおすすめでしょうか?

林先生:鬼ごっこやジャングルジムがいいですね。今は「危ないから」といって、やらせない親御さんも見かけます。しかし、大人が見守っている中であれば危なくないですし、避け続けるといつまでたっても危険回避能力が身につきません。
 あとは、素足で行うトランポリンもおすすめですね。バランス能力と姿勢がよくなります。

▶ 姿勢を正しく保つことを日ごろから意識すること

──スマホが日常の現代の子どもたちは、操作中の子どもの姿勢についても気になるところです。

林先生:そうですね。大人もですが、スマホをしていると、猫背といった悪い姿勢になりやすい。たとえば、大人の頭の重さを約5kgとして、首を15°前傾すると首にかかる負荷が約10kg、30°だと約15kg、45°だと約20kgの負荷がかかると言われています。真下を向いた姿勢(60°)では小学3年生の体重にあたる27kgもの負荷がかかることに。
 そうすると、肩甲骨まわりや股関節がガチガチに固くなってしまい、疲れやすさやイライラするといった体の不調から運動機能全体が落ちてしまいます。
 先日、私のクリニックに手を骨折した子どもが来院しました。ドッジボールをしていて、後ろへ下がったときにバランスを崩して手をつき、骨折してしまったのです。
 その子を診ると、体が硬いし、しゃがむと尻もちをついてしまう。ドッジボールでもバランスがとれなくて倒れてしまった結果、変な手のつき方をして手首を骨折してしまったんですね。
 このように、運動をやっていてもやっていなくても、基本的な姿勢と、肩甲骨と股関節をしっかり動かせるかどうかがとても大切なのです。

──大人も肩甲骨まわりと股関節が固いと、姿勢が悪くなって腰痛や肩こりの症状が出ますよね。何か、効果がある取り組みはありますか?

林先生:良い姿勢がとれるか、維持できるかがとても重要です。良い姿勢を保ちながら、肩甲骨と股関節の動きをよくする。これが運動機能を改善・維持するために一番重要な要素です。
 取り組みとしては、体育の授業の準備体操でよく行われている、ラジオ体操がおすすめです。ただ、きちんとやらないと効果がありません。数分でいいから、しっかり股関節と肩甲骨を意識してやることによって、ずいぶん変わってきます。

──子どもや親御さんが、現在「子どもロコモ」に危機感を覚えていると感じられますか?

林先生:あまり意識していないように思います。それが一番問題ですね。車で例えると、ガチガチで余裕のないハンドルだと事故を起こしやすいので、ある程度ハンドルにもゆとりが必要です。
 体も同じで、関節の可動域も余裕が必要で、可動域が小さいとケガをしやすい傾向にあります。「体が硬い」と言われている子どもは、実はそれほど硬くなくて、体の使い方がわからないことが多い
 例えば、びんの蓋の空け方がわからなかったり、雑巾が絞れなかったりする子どもがいますが、これは一度きちんと教えるとできるようになります。やったことがないものは、想像が付かないからできないわけです。
 子どものときには、体のゆとりを最大限に持っておいても、大人になるにつれて体が硬くなってくる。しかし、姿勢を良くしたり、肩甲骨と股関節をしっかり動かしたりすることによって、ある程度の可動域を得られ、すると大人になってもケガのリスクが少なくなるのです。



子どものロコモティブシンドローム その1:原因と症状、5つのチェック項目

2024年08月01日 06時11分14秒 | 健診
私は小児科医で学校健診も担当しています。
現在の学校健診には「運動器検診」が含まれます。
整形外科医が提案し、他科医師(学校医の中で整形外科医は5%だけ)が担当するというねじれのある内容です。
ふだんの診療で扱わない疾患群を早期発見するミッションであり、
気を遣います。
「言い出しっぺの整形外科医が担当すべきだよなあ」
と思うこともしばしば。

現在社会問題化している“側弯症検診”も、
現場の混乱をよそに、
整形が会は高みの見物をしていますから。

解説・啓蒙記事を見つけたので、
知識の確認目的で読んでみました。

<ポイント>
・ロコモティブシンドロームとは、英語で移動することを表す「ロコモーション(locomotion)」と、移動するための能力があることを表す「ロコモティブ(locomotive)」からつくられた造語で、移動するための能力が不足したり、衰えたりした状態を指す。
・大人のロコモの兆候は「階段が上がりづらくなる」「速く歩けない」「すり足になってつまずきやすい」の3つで、老化現象による運動器の障害を指します。これらの兆候がコロナ禍の長期休校明けに、子どもの1割弱に見られた。
・子どもの外遊びが圧倒的に減ってきていることが子どもロコモの増えた大きな原因ではないか。
・子どもロコモチェック項目;
 ① 5秒以上ふらつかずに片足立ちすることができない
 ② しゃがみ込むとき、途中で止まったり、後ろに転んだりする
 ③ 両手を上げたとき、手の先から肩にかけて垂直にならない
 ④ 立って体を前にかがめたとき、ひざを伸ばしたまま手の指を床につけられない
 ⑤ 手をグーにしてひじを引いたあと、パーに開いて腕を前に出す動作をスムーズにできない
・学校健診における「運動器検診」で特に気になっていることは、子どもたちの姿勢が猫背なこと。そしてアゴが前に出ている子どもが多いこと。
・子どもロコモ3つの原因
 ① 運動習慣の変化:成長期の運動不足あるいは激しい運動のしすぎにより、からだの柔軟性が低下
 ② 生活習慣の変化:外遊びをする機会が減ったことにより、小さなケガをすることも少なくなり、危険回避能力が低下
 ③ 姿勢不良:長時間のテレビゲームやスマートフォンの使用により、あご出しやねこ背など姿勢が悪くなりやすい
・外遊びをしないでいると、股関節周りが固くなり、体前屈ができなくなる。しゃがむと転倒して床にお尻をついてしまうことも。今回のコロナ禍で、さらに増えた。身体の使い方がわからない子が増えている。
・体の柔軟性の低下は、肩甲骨や股関節をしっかり動かすことによって改善できる。親子で毎日1日数分間、「子どもロコモ体操」をやるよう指導すると、およそ1~2週間継続することで改善され、2ヵ月後にはきれいな姿勢になる。

■ 5歳で腰痛! 「子どものロコモ」3つの原因と症状・5つのチェック項目
整形外科医・林承弘先生に聞く「子どものロコモティブシンドローム」 
#1 原因と症状、5つのチェック項目について
 整形外科医:林 承弘
2024.01.09:コクリコ)より一部抜粋(下線は私が引きました);

 近年、子どもの遊びはゲームが主流に。また、現代の子どもたちは習い事が多く、外で遊ぶ時間が少なくなったことで、体を動かす機会が減っています。
 そのため、「転びやすくなった」「姿勢が悪い」「疲れてすぐ座りたがる」などの症状が出る子も。そこで心配されるのが、子どもの運動機能低下を指す「子どものロコモティブシンドローム」、通称「子どもロコモ」です。
「コロナ禍で子どもロコモが一層進んだ」と話すのは、子どものロコモ予防・対策に取り組む林整形外科院長・林承弘先生。子どものロコモについて、原因と症状を林先生に解説していただきました。

<目次>
  • 子どもロコモと大人のロコモの違い
  • 子どもロコモ5つのチェック項目
  • 子どもロコモ3つの原因
  • 5歳の子どもに腰痛の症状
▶ 子どもロコモと大人のロコモの違い

──まずは、子どものロコモティブシンドロームについて教えてください。

林承弘先生(以下、林先生):ロコモティブシンドロームとは、英語で移動することを表す「ロコモーション(locomotion)」と、移動するための能力があることを表す「ロコモティブ(locomotive)」からつくられた造語で、移動するための能力が不足したり、衰えたりした状態を指します。通称「ロコモ」と呼ぶことが多いですね。
 これまではロコモというと、バランス能力や柔軟性の低下、不良姿勢など、40代以上の中高年の運動器機能低下として指摘されていましたが、最近では子どもにもロコモの症状が見られるようになりました。
 ただ、大人のロコモと子どもロコモでは兆候が異なります。大人のロコモの兆候は「階段が上がりづらくなる」「速く歩けない」「すり足になってつまずきやすい」の3つで、老化現象による運動器の障害を指します。興味深いのは、これらの兆候がコロナ禍の長期休校明けに、子どもの1割弱に見られたことです。
 しかし、子どもロコモのチェック項目は大人とは異なります。

▶ 子どもロコモ5つのチェック項目
 子どもロコモには、以下の5つの項目をチェックします。


【子どもロコモチェック項目】
① 5秒以上ふらつかずに片足立ちすることができない
② しゃがみ込むとき、途中で止まったり、後ろに転んだりする
③ 両手を上げたとき、手の先から肩にかけて垂直にならない
④ 立って体を前にかがめたとき、ひざを伸ばしたまま手の指を床につけられない
⑤ 手をグーにしてひじを引いたあと、パーに開いて腕を前に出す動作をスムーズにできない

<参考>

▶ 子どもロコモ3つの原因

林先生:子どもにとって、普段の運動や、外遊び、生活習慣がとても大事なこと。私が十数年ずっと子どもたちを見てきて、子どもの外遊びが圧倒的に減ってきていることが子どもロコモの増えた大きな原因ではないかと思っています。さらに今回のコロナ禍で、その傾向が増している印象です。2020年に自粛生活を送った、今の小学校低・中学年は、特にそうだと言えるのではないでしょうか。
 また、2016年から、小学1年生から高校3年生までの全学年を対象に、学校健診において「運動器検診」が必須化されたのですが、この検診で私が特に気になっていることは、子どもたちの姿勢が猫背なこと。そしてアゴが前に出ている子どもが多いことです。姿勢が悪い子どもは、腕がまっすぐ上に上がりません。これは肩甲骨まわりが、ガチガチに固くなっている状態だからです。

【子どもロコモ3つの原因】
① 運動習慣の変化:成長期の運動不足あるいは激しい運動のしすぎにより、からだの柔軟性が低下
② 生活習慣の変化:外遊びをする機会が減ったことにより、小さなケガをすることも少なくなり、危険回避能力が低下
③ 姿勢不良:長時間のテレビゲームやスマートフォンの使用により、あご出しやねこ背など姿勢が悪くなりやすい

林先生:外遊びをしないでいると、股関節周りが固くなり、体前屈ができなくなります。しゃがむと転倒して床にお尻をついてしまうことも。これは以前から多かったのですが、今回のコロナ禍で、さらに増えたと感じています。身体の使い方がわからない子が増えていると考えられます。

──林先生が、子どもにロコモの症状が出ていると気づいたのはいつごろでしょうか?

林先生:埼玉県教育委員会と協力して、埼玉県のモデル事業として「埼玉県学校運動器検診」を2010年~2013年に行いました。その際、校長先生や養護の先生から、「どうも最近、子どもたちの体の様子が変」という話をよく聞くことがあったんです。
 例えば、「雑巾がけをしていて、体を支えきれずにあごをついて倒れてしまう」「転倒したときに、手が出ず頭を打ってしまう」「先生とキャッチボールをしているとき、たった数メートルの距離でもボールが顔面に当たってしまう」などです。

▶ 5歳の子どもに腰痛の症状

林先生:私自身、診察中に子どものロコモに気づくということはありませんでした。しかし、養護の先生たちの話を聞いてから注意深く診てみると、ケガした子どもの中で、体が硬いとか、バランス能力がうまく整っていない子が多いことがわかりました。
 ある5歳の男の子の話ですが、お母さんから「この子は姿勢と体の動きが悪い。さらに腰痛があります」と、来院された子がいました。
 体の柔軟性の低下は、肩甲骨や股関節をしっかり動かすことによって、その場で改善できます。親子で毎日1日数分間、「子どもロコモ体操」をやるよう伝えると、およそ1~2週間継続することで改善され、2ヵ月後にはきれいな姿勢になり、腰痛もなくなっていました。
 よくなってからその子に「前の悪い姿勢をやってごらん」というと「いやだ」というのです。なぜかというと、悪い姿勢は自分にとって気持ちがいいものではないことがわかったから。姿勢が良くなると運動機能も良くなってきます。大人がそういう気づきを起こさせることも大事だと思いました。
 残念なことに、今の時点では子どものロコモに気づける人があまりいません。整形外科医も子どものロコモの視点で見ていないと、見逃してしまうことが多いのが現状です。
 ほとんどの子どもが整形外科に来院する理由はケガや故障。「バランスが悪い」「体が硬い」などの症状で受診したとしても、「体が硬いのはしょうがないね」と、そのまま返されてしまうケースが多くあります。
 私としては、運動器検診で「体が硬い」と指摘され来院された親子には、まずは丁寧に診ること。そして子どもロコモの対策と、親子で改善できる体操を教えるようにしています。
 しかし、まだまだ「なんでもない」と診断され、すぐに帰されることが多いといいます。もっと子どもロコモの認識が広まればと、日々活動を続けているところです。