“子ども”を取り巻く諸問題

育児・親子・家族・発達障害・・・気になる情報を書き留めました(本棚4)。

発達障害には“治療”ではなく“支援”を

2024年05月22日 08時07分35秒 | 発達障害
某セミナーで広瀬宏之先生のお話を聞きました。
発達障害関連の講演では、病気の概説に終始し、
ピンとこないまま終わることが多いのですが、
広瀬先生のお話は腑に落ちましたので、メモを備忘録として残しておきます。

私が腑に落ちたポイントは、
・発達障害は「発達凸凹+困りごと」であり治るものではない
・だとすれば、治療ではなく支援が中心となる
・問題は個人にあるものではなく社会的障壁にある
・発達障害児に「失敗は成功のもと」は通用しない
  → (フォローなき)失敗は二次障害のもと
・支援のゴールはすべて自分でできることではなく、人を頼る術を知ること
等々。

▢ 発達障害=発達凸凹+困りごと
・発達凸凹:生まれつきの遅れ・偏り
・困りごと:凸凹と環境とのミスマッチ

▢ 支援モデル3つ
1.医療モデル:原因追及 → 治療
2.療育モデル:抽出 → 訓練 → 包摂
3.社会モデル:個々に応じた社会参加

▢ 社会モデル支援の内容
・対象:社会的障壁
・ToDo:合理的配慮
・場:全生活の場
・目標:社会参加

▢ 発達障害を治すとはできない、凸凹を活かす視点を
・社会的障壁を減らしていくことで困りごとや不適応は減らせるが、凸凹それ自体はあまり変わらない
・苦手なことは周囲がサポートする、“後付け”で獲得できるスキルもある、得意・好きなことは強みとして活かす

▢ 「できた!」が発達の原動力
・成功体験の積み重ねが大切

▢ 避けたい悪循環
・うまくいかないことが多い
・怒られる回数がうなぎ登り
・頑張っても怒られるだけ
・挑戦や努力をしなくなる
・自尊心の低下「どうせおれなんか・・・」

▢ 発達障害児に「失敗は成功のもと」は通用しない
・(フォロー泣き)失敗は二次障害のもと
・困る行動・“問題行動”が増え、その子本来の発達すら滞る

▢ 発達を促すコツ
・ハードルは低く 
・こまめにほめる
・難しいことは手伝う

▢ ハードルを上げると・・・
・できないことばかり増える
・「どうしてできないの!」と叱られる
・自尊心・自信の低下
・チャレンジ精神の低下

▢ ほめるコツ
・小さな(良い)変化を見つける
・肯定的な注目を言葉で実況中継
・伝わる褒め方・・・皮肉・嫌みは禁句
・親もほめる

▢ ほめる目標
・やって欲しい行動が定着すること
・行動や人格の価値判断ではない

▢ できないことは・・・
・遠慮なく手伝う
・できたらほめる
・過剰な先回りはしない
・サポートは減らしていく

▢ 適応過程
・周囲の理解と配慮
  ⇩
・日々の生活が改善していく
  ⇩
・自分の凸凹を自覚できる
  ⇩
・自分で工夫するようになる

▢ 支援のゴール
・自分なりに人生に対処できる
・ただし、自立とは「困ったときにSOSを出せる」ことであり、
 すべて自分でできることではない
・それぞれの社会参加や幸せな時間・・・それには当事者を含めた共同作業での支援が不可欠

むかしから「できの悪い子どもはかわいい」という言葉がありますが、
そんな子どもを大切に育てる極意としても通用する内容だと思いました。

“緑”のススメ

2024年05月20日 08時20分01秒 | 子どもの心の問題
以前、動物学者か文化人類学者の本を読んでいて、
「人間が樹木や森林に癒やしを感じるのは、
 かつて類人猿が草原から樹上に登り、
 樹上界を支配することにより進化したため」
というフレーズに出会いました。

そういう私自身も、樹木に癒やされ、
“巨樹巡り”を趣味としています。

下記の記事に出会いました。

■ 公園や森林は幼児のメンタルヘルスを育む
 緑地が近くにある環境で育った子どもは、たとえそれが公園や広い裏庭であっても、2〜5歳時に不安や抑うつといった感情的な問題を抱える可能性の低いことが、新たな研究で明らかになった。
・・・
 Towe-Goodman氏は、「われわれの研究結果は、自然の中に身を置くことが子どもにとって良いことを示す既存のエビデンスを裏付けるものだ」と述べる。また、「就学前の子どもが自然とふれあうことの重要性を示唆する研究結果でもある」と付言している。
 この研究では、米国41州、199郡に住む2,103人の子ども(男児50.5%)を対象に、居住地周辺の緑地への曝露と小児期初期(2〜5歳)および小児期中期(6〜11歳)の内在化障害(不安、抑うつなど)と外在化障害(攻撃、ルール違反など)の関連を検討した。居住地周辺の緑地は、衛星画像を基にした植生密度を示す指標であるNDVI(Normalized Difference Vegetation Index、正規化植生指標)を用いて評価した。小児期初期の評価を1,469人が平均年齢4.2歳時に、小児期中期の評価を1,173人が平均年齢7.8歳時に受けた。
 その結果、親の教育レベルや出産時の年齢、子どもの性別などの諸要因で調整しても、居住地周辺の緑地の多さは小児期初期の不安や抑うつなどの内在化障害の症状の少なさと有意に関連することが明らかになった。一方、小児期中期の子どもでは、居住地周辺の緑地と内在化障害や外在化障害との間に有意な関連は認められなかった。
 Towe-Goodman氏は、「将来的には、自然の中でどのような経験をすることが、小児期初期の子どものメンタルヘルスと関係しているのかが検討される可能性がある」とNIHのニュースリリースの中で述べている。同氏はさらに、「家や学校の周囲に緑地を作ったり自然を保護したりすることが、子どものメンタルヘルスにどのような違いをもたらすかも研究すべきだ」と付け加えている。
・・・

<原著論文>


テレビ・DVD視聴と発達

2024年05月18日 14時41分35秒 | 子どもの心の問題
昔からテレビやビデオ、DVDの視聴時間が長いと、
発達に問題が起こるのではないか、と言われてきました。

それを裏付けるデータが示されました。
その記事を紹介します。

単純に考えると、
コミュニケーションの練習が不十分だからできないだけ。

これは、運動する機会が減ったから、
運動器検診が必要になるほど運動機能が落ちました、
と似てますね。

「発達スコアの個人差は年上の兄弟、保育園の利用、子どもへの読み聞かせ、という三つの育児環境が特に関連した」
とあり、これもコミュニケーションや運動する時間の長さが影響していることを証明しています。

「子どもが運動不足になったのは、
 大人が子どもから“空き地”を奪ったからだ」
という意見を耳にしたことがあります。


■ 乳幼児の発達遅れる原因に~テレビ、DVDの長時間視聴~
千葉大学 山本緑助教ら

 テレビなどメディアの視聴時間と子どもの発達の関連について、千葉大学予防医学センター(千葉市稲毛区)の山本緑助教、国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)エコチル調査研究部の目沢秀俊チームリーダーらの研究グループは、長時間の視聴は乳幼児の発達が遅れる原因の一つになる、と発表した。
・・・
◇海外研究で進展
 山本助教によると、2018年に報告されたカナダの大規模な研究で大きな進展が認められた。「2、3、5歳の幼児を対象とした研究で、因果関係を推測できる手法により、視聴時間が長いと発達スコアが低くなる(発達が遅れる)ことを初めて明らかにしました」。ただし、より低い年齢でもそのような傾向があるのかについては、明らかになっていなかった。

◇1歳児から発達に影響
 山本助教らは、カナダの研究と同じ手法を用い、日本の1歳児を含む乳幼児を対象に、テレビ、DVDの視聴時間と発達スコアの関係を調査。環境省の「子どもの健康と環境に関する全国調査」に参加した、11~14年生まれの乳幼児約5万8000人について1、2、3歳時点のデータを解析した。
 その結果、「発達やメディア視聴時間の個人差を考慮しても、1歳時または2歳時の視聴時間が長いと、1年後の2歳時、3歳時それぞれの発達スコアが低くなることが分かりました」。視聴時間が長い子どもは、1年後も長かったという。
 発達領域別にみると「1歳時の視聴時間が長いと2歳時のコミュニケーション領域の発達スコアが低くなった。2歳時の視聴時間が長いと、3歳時の走る・歩くなどの『粗大運動』、手先の器用さなどの『微細運動』、他人とのやりとりに関する行動という3領域の発達スコアが低くなりました」。発達スコアの個人差は年上の兄弟、保育園の利用、子どもへの読み聞かせ、という三つの育児環境が特に関連したという。
 山本助教は「親が計画的な視聴を考えることが大切。テレビに頼らず、絵本を読んで話し掛けたりする時間を少しでも増やせるとよいと思います」と話している。