約50年前に思春期を経験したアラ還のおじさんが振り返ってみます。
あのエネルギーに満ちて、
誇大妄想的な夢を見て、
異性に惹かれ、
自分をコントロールするのが難しかった、
思春期とは一体何だったのだろう?
先日、録画してあったNHKの教養娯楽番組「ヒューマニエンス」で、
思春期を特集していました。
■ ヒューマニエンス「"思春期"リスクテイクの人類戦略」
初回放送日: 2022年6月1日
人間という不思議な存在を問い続ける「探求の旅」シリーズ。今回は、人類だけが持つ「思春期」という特別な戦略。好奇心旺盛で、リスク大の行動が好きになる青春のヒミツ! コドモからオトナへ「思春期」がテーマ。最新の脳科学では思春期は30歳まで続くという。脳神経線維のミエリン化がその頃まで完成しないと、性ホルモンが脳に引き起こす「衝動」を抑えられないためだ。だが、それは人類進化で大きな意味を持つことも明らかに。思春期の感情的なリスクテイク行動が「好奇心」につながり、世界への生息域の拡大につながったというのだ。人類誕生から現代まで、時空を超えて「思春期」を妄想する。
フムフム、なるほど、と頷く場面がいくつもありましたので、
メモ書きしておきます。
▢ 思春期は子どもから大人への移行期
従来、
「思春期は10歳頃始まり18歳くらいで終了する」
とされてきました。
何を持って“思春期の終わり”と定義づけるかは、
“大人とはなにか?”を定義づけるのと同じくらい難しい。
一応、
「面倒を見てもらうのが子ども」
「面倒を見るのが大人」
という漠然としたイメージがあります。
▢ 思春期の始まりは性ホルモン急上昇による“アクセル”全開
思春期が始まる10-12歳頃になると、
男女ともに性ホルモンがスパートがかかったように急に増加します。
すると、扁桃体(感情を司る)と側坐核(リスクを顧みずいろいろ挑戦したくなる)が刺激され、
“アクセルがかかった”状態になります。
危険を顧みずに行動し、感情の起伏が激しくなるのです。
大人が“ダメ”ということをあえて行い、
いつもイライラしている思春期の男子女子像が見えてきますね。
▢ 思春期の終わりはミエリン化による“ブレーキ”の完成
では思春期の終わりは性ホルモンの低下でしょうか?
いえいえ、女子は閉経までの40年間、男子も同じくらいの期間、
性ホルモン分泌は多い状態が維持されています。
では、何が起こっているのでしょう?
それは“神経線維のミエリン化(髄鞘化)”です。
ミエリンとは
「神経線維を脂肪が取り巻いて神経伝達速度を速くする」
構造物。
理性を司る大脳皮質と、
本能を司る辺縁系にある扁桃体・側坐核をつなぐ、
神経線維のミエリン化が進むことにより、
伝達速度が早くなる=結びつきが強くなる、
が起こります。
現象としては、大脳皮質(理性)による辺縁系(本能)の、
コントロールができるようになるのです。
つまり、ブレーキをかけられるようになる、ということ。
▢ 思春期は「ハイリスク&ハイリターン」
思春期を進化学の視点から見ると、
「創造的な時期」と捉えることができます。
アフリカの狩猟を生業とする先住民族の研究では、
大人集団と思春期男子集団が別々に狩りをするそうです。
大人集団は、すでに実績のある猟場に出かけていき、
思春期集団は大人と異なり、
未知の土地に出かけていきたがります。
すると、収穫ゼロで帰ってくることが多いのですが、
ときに想定外の獲物を持ち帰ることもあります。
そう、新しい猟場の発見です。
これを番組では「ハイリスク&ハイリターン」と表現していました。
▢ 「トライ&エラー」がめんどくさくなったときに思春期が終わる。
思春期の子どもは、
大人から教えられただけでは実感が湧きにくく、
知識が身につきにくいことを本能的に知っています。
だから自分で挑戦・実体験をして失敗を繰り返し、
物事の捉え方を学習していきます。
失敗を恐れて無難な選択をするようになったときが、
“思春期の終わり”なのでしょう。
▢ ヒトは思春期前は脳の発達にエネルギーを注ぐ。
ヒトはなぜ10歳代に思春期を設定したのでしょうか。
科学的には、
・ヒトは脳が最大限に発達した生物
・10歳までは脳の発達・完成にエネルギーを注ぐ
・脳と体の発達を同時に進めるのはエネルギー的に難しい
・脳の発達が一定程度完成したら、急いで体と心を発達させる
ということだそうです。
▢ アクセルの効かない現代っ子
最近の思春期研究では、
“意欲に乏しい子ども”が増えてきたというデータがあります。
エネルギーの塊で、何かに挑戦せずにはいられない年頃に、
何が起きているのでしょう?
一つには“失敗するのが怖い”というマイナス感情。
思春期はトライ&エラーですから、
失敗するのが当たり前、
むしろ失敗から学んでいく時期ですが、
それを怖いと感じているのです。
それは、社会からの“失敗が許されない”という、
無言の圧力があるのかもしれません。
SNSの発達で、炎上したり、退場を求められたり・・・
日本社会全体で“失敗したら終わり”という雰囲気を醸し出しているのは、
危険極まりない。
▢ 人類が世界中に住むようになったのは、思春期のお陰?
ホモ・サピエンスはアフリカで誕生し、
全世界に広がっていきました。
その原動力には思春期特有の
「ハイリスク&ハイリターン」行動が必要だったのではないか、
と番組では推論していました。
戦いに敗れて逃げ延びて生活圏が広がったという要素もあるでしょうが、
「あの山の向こうには何があるんだろう?」
「自分の目で確かめてみたい。」
という衝動が抑えられなかったのではないか、と。
以上、メモの終わり。
そんな思春期に、我々はどう対峙すべきなのでしょう?
まわりの大人の役割は、
・思春期の特権は「トライ&エラー」と認識する
・失敗してもいいんだよ、とサポート
・好きなことを思う存分やりなさい、と自由を与える
という環境を提供することでしょうか。
そんな彼・彼女らが社会を動かすようになると、
新しい発想で日本はどんどん良くなっていくはず。