“子ども”を取り巻く諸問題

育児・親子・家族・発達障害・・・気になる情報を書き留めました(本棚4)。

「こどもはおもしろい」(河合隼雄著)

2012年08月31日 17時49分57秒 | 教育
講談社、1995年発行

ちょっと古い本ですが、尊敬する心理学者の著作です。
晩年は文化庁長官も務めた河合氏は、ユング心理学を日本に紹介し、箱庭療法も導入した先駆者であり、高校教師の経験もあります。

内容は、学校教育としてユニークな取り組みをしている小中高教師たちとの対談集。
指導要領に沿って子どもを’管理’した方が楽な教師稼業、しかしわざわざ苦労して個性的な取り組みをしているのはなぜなのか? ~という問いに対して、各先生は持論を展開します。
子どもと真摯に向き合い育ち合うには、教師側にも腹をくくった強さと多大なエネルギーが必要であることが窺われました。

一番印象に残ったのは、登校拒否児を集めた高校の話。
新任の先生が来校すると、なんと生徒たちに評価させるのです。
「あの先生はあかん、使い物にならへん」と生徒が言えば、その先生はクビになってしまう。
ストレスフルな環境で学校へ行けなくなった子どもたちには、建前だけの大人と本音で勝負できる大人を見分ける嗅覚が備わっているのですね。
それを通してしまう校長先生の腹の据わりようには驚かされました。

おしなべて「教師→ 生徒」の一方通行ではなく、「教師⇔生徒」という双方向のやりとりで信頼関係を築いていく手法が多く紹介されています。
それができる先生は、対談に呼ばれるほど貴重と云うことでしょうか。

「キミは何のために勉強するのか」(富田一彦著)

2012年08月05日 11時56分55秒 | 育児
大和書房、2012年発行

著者は代々木ゼミナールの英語講師で、その道では有名な先生らしい。
本書を読むと東大出身で、ご子息も東大生であることが分かります。

そんな立場から「勉強することの意味論」を展開しています。

勉強は知識を詰め込むことではなく知恵を磨くことである。
知恵とは抽象化する技術である。
この目的からすると、現在の学校の授業はなっていない。
システムも変だし、教師も努力不足である。


とこんな内容が繰り返し書かれています。
わかりやすい授業で生徒に自信をつけさせ、試験で現実を突きつけることは正しい方法、と。
その他にも「そうそう、そうだよなあ」と頷ける箇所がいくつもあり、勉強になりました。

しかし、この本が対象にしている読者層は、おそらく受験生の上部1割くらいの成績優秀者という印象が拭えません。
人生から「勉強」という要素のみを抜き出せばこの本の内容は正しいと思いますが、それだけではちょっと・・・所詮、予備校講師の著者には学校が抱えるいろんな問題は他人事なのなかあ。

「自分に自信が持てない学生」という表現にはドキッとしました。
現代の日本の子育ての問題点が、塾講師も感じるほど顕在化しているのですね。

また、ちょっと話がくどくて読むのが辛かった。
著者の提案である「抽象化」をすれば、1/3のボリュームで云いたいことは伝えられるのではないでしょうか。