“子ども”を取り巻く諸問題

育児・親子・家族・発達障害・・・気になる情報を書き留めました(本棚4)。

行動分析学を駆使する臨床心理士「奥田健次」

2019年05月05日 08時19分07秒 | 発達障害
GW10連休中に録りためたTV番組を消化しています。
これも以前から気になっていた番組、約2年かかってようやくたどり着きました。

■  “ひらめき”で自閉症と闘う 異端の出張カウンセラー(2017年3月30日、フジテレビ)



<内容紹介>
 歯に衣着せぬ物言いと大胆な行動…その斬新な“ひらめき”で「確実に結果を出す」と息巻く臨床心理士がいる。テンガロンハットにビンテージのパンツ、スカーフや、時にヘアカラーをキメて、国内外を飛び回る《出張カウンセラー》、奥田健次だ。
専門は発達障害、特に自閉症の子ども。奥田のやり方は特徴的だ。それゆえに“異端児”扱いされる。その信念は『親が変われば子どもが変わる』。自閉症は一人一人みんな違う。奥田独自の“ひらめき”でその子に合った解決策を瞬時に見い出し、具体的な解決法、トレーニング方法を親に指導、そして子どもに確かな変化をもたらしてきた。
 2歳半になる男の子のもとを奥田が訪れた。男の子は、半年前に「自閉症スペクトラム」の疑いありと診断された。まだ言葉を発することができないこの子と両親に、奥田は幾つかの指導を施す。すると…表れてきたのは「会話」の兆し。“子どもと親”に起こった変化をカメラが追う。
 奥田が出張カウンセリング以外に力を入れているのが、特別支援学校での教師の指導だ。訪れた長野県の養護学校では、まわりの物を投げてしまい集団行動ができない自閉症の少女に向き合う。そこでも奥田は“ひらめき”で、担当教師の意識を変えていく。そして三カ月後…少女は見事に、集団行動への一歩を踏み出した。
 子どもが100人いれば、その解決法も100通り。誰も思いつかない数々のメソッドを、瞬時に見極める奥田式“ひらめき”カウンセリングとは?さらに、カウンセラーとしての人生を賭け奥田が始めた新たな挑戦。それは一体何なのか?


 奥田氏は発達障害に対して行動分析学を駆使して対応し、成果を上げてきた方のようですね。
 しばらく前に、NHKのあさいちという番組で平岩幹男先生による応用行動分析が放映され、それと同類と感じました。

 誤解を怖れずに言えば、動物の調教と同じです。
 親が望む行動を子どもがとったらご褒美(好きな食べ物)を与えることを繰り返し習慣づける手法。
 “親”を“調教師”、“子ども”を“動物”に置き換えると、一目瞭然です。
 まあ、子どもを育てるエッセンスですから、ご褒美が褒め言葉になれば“しつけ”とも表現できます。

 番組ではその先も扱っていました。

 発達障害(とくに言葉が遅れている自閉症スペクトラム系)が泣いて訴えるときの対応が見事でした。
 「泣いて訴えることに対応していると、それで済んでしまうので言葉が出ない現状のまま」
 「泣いて訴えるときには、目線を合わせずコミュニケーションをとらず電信柱になってください」
 「泣き止んだときだけ、振り向いてコミュニケーションをとってください」
 と両親に指導。

 え?
 子どもが泣けばあやしたり、何が原因なのか考えて対応するのが親の役目ではないの?

 両親は彼の指導内容を頭で理解しても、なかなか行動に移せません。
 でも彼の指導に従って両親が訓練を続けると、徐々に成果が上がりました。

 なるほど。
 泣いている子どもの気持ちを汲んで先回りして対応することは、子どものためになっていないんだ。
 ん?
 発達障害児ではなく、健常児ではどうなんだろう・・・。 

 次に、子どもの発声を促す訓練が始まりました。
 まねをして声を出すとご褒美(好きな食べ物)をもらえる。
 すると子どもは、要求を声を出して訴えるとかなえられることを学習します。
 軌道に乗ると、みるみる有意語の発語が増えてきました。

 なるほどなるほど。

 ポイントは、親が子どものためを思ってしていることが、逆に子どもの発達や自立のブレーキになっているという悲しい現実を認識すること。
 行動分析学は、それを親子にとってプラスのエネルギーに変換する力をもつ学問なのですね。

 奥田氏の発想はフレキシブルで、カウンセリングの現場でもどんどん即興で展開します。
 その能力の源泉は、彼自身がTourette症候群であることだと告白していました。

 全国を股にかけてカウンセリングに奔走する奥田氏の夢は、発達障害児と健康児が一緒に保育を受けられる施設を作ること。
 番組中ではやっと認可が下りたところで終わっていましたが、現在開園(サムエル幼稚園)しているようです。

「キミのこと聞かせてよ~木原雅子さんの出張授業~」

2019年05月05日 06時58分18秒 | 子どもの心の問題
GW10連休中に録りためたTV番組を消化しています。
以前から気になっていた番組を見てみました。

ETV特集「キミのこと聞かせてよ~木原雅子さんの出張授業~(2017年7月8日放送)



<番組内容>
 京都大学の医学博士・木原雅子さんは、いじめや学級崩壊など課題を抱える学校で数々の出張授業を行ってきた。その手法はとてもユニーク。エイズの予防研究で培った“実践的な性教育”で、子どもたちに不安定な思春期の心と向き合ってもらい、そこから解決の糸口を探っていく。社会の変化と共に複雑になる子どもたちの問題と、大人はどう向き合っていけばよいか。ある中学校を舞台に、思春期の子どもたちと向き合った半年の記録。



 同業者でありながら、木原さんの名前を知りませんでした。
 もともとはHIV感染症の研究者で、日本の若者の性行動の実態を知り、これは何とかしなくてはいけないと性教育・講演をはじめたものの手応えがなく、試行錯誤しながらたどり着いたのがTVで放送された「学校へ入り込んで行う活動」なのでした。
 それも、「教える」という上から目線ではなく、今、クラスで起こっている何が問題なのかを生徒の話に耳を傾けることにより分析し、それに対応するというものです。

 放送された内容は、いわゆる“学級崩壊”クラスの立て直し依頼。
 木原さんは生徒たちの話に耳を傾け、“生徒 vs 先生”の構図は見せかけで、その本質は“生徒間の友達関係の問題”であることに気づきました。
 「何か目立ったことを言うと、いじめられる」というコミュニケーションをとることが怖くなっている状態だったのです。
 生徒間がギクシャクしてストレスがたまっており、それを先生という共通の仮想的を設定することにより、かろうじて解消していたのでした。

 この構図って、ありがちですね。
 北朝鮮・韓国・中国が国民の不満を日本という仮想敵国を設定することにより解消しようとするのと同じです。

 先生だけが原因ではないので、先生方がいくら頑張っても解決しません。
 木原さんが次にとった方策は、仲良しグループを解体して自分の意見を発表し合う授業でした。
 すると、「あれ、あの人はこんな風に思っているんだ」という新たな発見の連続。
 自分の意見を言い、他人の意見も聞き、それを認め合う授業です。

 すると、ピリピリしていたクラスの雰囲気が変わりました。

 この状況、以前にも見たことがあることに気づきました。
 菊池省三先生の授業です(プロフェッショナル仕事の流儀「未来をつかむ、勝負の教室」2012年放送)(菊池先生の「ことばシャワー」の奇跡 生きる力がつく授業)。
 人の揚げ足をとって相手を責めるのではなく、褒め言葉のシャワーでクラスの雰囲気を激変させたのは衝撃的でした。

 次に木原さんは、先生と生徒の対話を持つ機会を設定しました。
 休み時間に行う簡単なミニテスト。
 それをきっかけに先生と生徒の会話が生まれます。
 もともと先生方は仕事量が多くて、一人一人の生徒と向き合う時間がなかったのです。
 この手法は、先生にも生徒にもよい効果を生み、双方の距離が近くなり、学力が向上しました。

 そして、最後の授業では、「1年後の自分はどうなっているかを想像して、現在の自分にエールを送る文章を書いてみよう」がテーマ。
 自分の将来を想像し、現在の自分を見つめ直すこと。
 これは効きますね。

 以前、女子校の保健室の先生に聞いた話を思い出しました。
 いろいろ問題行動を起こす子どもも高校2年生になると落ち着くことが多いとのこと。
 それは「自分の将来を考えるから」と言ってました。
 将来を見据えて腹をくくり、今のまま自分ではダメだと自覚するのかもしれません。

 木原さんは「自分が子どもたちを変えた」とは言いません。
 「自分を表現できるきっかけを作った、子どもたちが持っている引き出しを開けるサポートをした」と表現します。
 これぞ、大人の役割なのでしょう。

 この番組を見ている途中、過去のことが何度も頭に浮かびました。
 たぶん、子どもが生き生きするためのポイントは、昔も今もそう変わらないのでしょう。

 大切なことは「話を聞いてもらう、存在を受け入れ認めてもらう」ことだと感じています。
 これって、現代社会に欠落していることですね。

 子どもの存在を受け止める大人たちがすでに、彼・彼女ら自身がそのような経験をしてこなかった。
 日本社会も男性(夫)を家庭から引きはがして働きづめにすることで戦後復興を果たしてきた事実。
 
 先日、NHK-Eテレの「子育てすくすく」という番組で、母が子育てに孤独を感じるときという特集をしていました。
 内容は「夫が話を聞いてくれない、すれ違う」という訴え。
 その夫は働きづめで家に帰っても疲れ切って使い物にならない。
 妻が話を聞いて欲しいという気持ちもわかるけど、夫の気持ちは語られていないことに妻たちは気づかない。

 現代日本の病理ですね。
 働き方改革で、夫を家庭に連れ戻すことができるかどうかが、これからの日本の将来を占う鍵だと思います。