・・・「食べない子が変わる魔法の言葉」という本を読んでみました。
著者は山口健太氏(日本会食恐怖症克服支援協会理事)という方です。
内容は好き嫌い>発達障害(感覚過敏)でしょうか。
料理法より親子のコミュニケーションに重きを置き、
子どもが楽しく食事をできる環境を演出するさまざまな方法が提案されており、参考になります。
食べない子が置かれた環境の構図には、
(親)お腹が空けば食べるだろう、なぜ食べないの?
(子)初めて見る食べ物はちょっと恐い、まだ上手く飲み込めないからこれは食べられないよ・・・
というギャップが存在します。
親が強引に進めると子どもは萎縮して食べなくなってしまう、
それを子どもの発達を観察しながら上手に誘導するのがよい方法、
といったところでしょうか。
今までいろいろ調べてきた私にとって、
この本の内容は「相談と指導で何とかなった」事例レベル、と感じました。
それでもよくならない子どもたちは医療機関に逃げ込みますので、
著者はその世界に触れていません。
だからこの本を読むとすべて解決する、とは思わない方がよいと思います。
備忘録としてメモを残しておきます。
▶ 調理の工夫は好き嫌い・偏食の根本的な解決にはならない
・「食べない子」が「楽しく食べられる子」に変わるために一番大切なのは「コミュニケーション」。
・「食べろ!」と言われると食べられず、「無理して食べなくていいよ」と言われると食べられる。
▶ 「食べない子」に関するよくある間違い
Q1. 食欲は空腹だから湧き上がるもの?
A1. ❌️
人はストレスを感じたり、不安や緊張状態にあったりすると、空腹でも食欲が出ないことがある。緊張によってのどの筋肉が動かしにくくなるので、食べ物が飲み込みにくくなり、消化器官の働きも悪くなる。
Q2. 好き嫌い・偏食は子どものわがまま?
A2. ❌️
好き嫌い・偏食は生理学的な問題で、そもそも食に対する見え方の問題や、口に入れた感じ、中には上手く咀嚼ができなかったり、飲み込みが困難な子どもがいて、そういった特性や身体的な問題が、食の困難・偏食を大きく規定している。
乳幼児の場合、好き嫌い・偏食は「感覚の問題」に起因することが少なくない。
Q3. 好き嫌いをしていると栄養失調になる?
A3. ❌️
好き嫌い・偏食があっても栄養失調にはならない。不安な方は成長曲線を利用し、身長と体重のSD値が2.0以上ある場合は栄養面に問題がある可能性があり、病院を受診すべし。
推定エネルギー必要量(日本人の食事摂取基準2015年版)の7割以上で、元気に過ごせていれば、基本的に栄養失調の心配はない。
Q4. 苦手な食材は年齢とともになくなっていく?
A4. ❌️
一般的には、苦手な食材は年齢とともになくなる傾向がある。それは年齢が上がるにつれて味覚を感じる細胞(味蕾)が減少し、味をマイルドに感じやすくなるため。また、人は初めてのモノや初体験の事柄を本能的に拒絶するが、生きていくうちにいろいろな食べ物に触れる機会があり、慣れていく。
しかし2歳前後の偏食には要注意。2歳前後は味覚芽発達する時期なので、さまざまな種類の味覚を強く感じやすくなり、食に偏りが出る傾向がある。
Q5. 食べないものは食卓に並べない方がいい?
A5. ❌️
子どもが嫌いなモノは避けて、好きな食材の料理だけを並べがち・・・が一般的ですが、そのような生活を続けると食生活が広がらないという弊害もあるようです。
ただ、苦手なモノにひたすら挑戦させるだけでは、イヤな記憶として残ってしまう可能性もあり、要は「正しい提案」を行うことです。
▶ 「食べない子」が出すSOSサイン
以下の6つのサインがみられる場合は「この子は食事で苦しんでいる」と理解すべし。
「ちゃんと食べなさい!」とプレッシャーをかけると逆効果になるので要注意。
1.吐き出す:
「食べてみないと、自分に合うかどうかわからない」
⇩
食べてみたが・・・
⇩
「今の自分の感覚には合わない」ので吐き出す。
2.泣き出す:
・「理由があって食べられないけど、それを自分では説明できない」という気持ちの表現。
3.水をよく飲む:
・緊張により嚥下機能が低下して食事を上手く飲み込めないために水で流し込んでいる状態。
4.ゲップをよくする(呑気症・空気嚥下症):
・緊張などの精神的な理由により無意識に空気を飲み込んでしまい、ゲップという症状として現れる。
5.オナラをよくする:
・呑気症の症状の一つ、緊張などで空気を飲み込んだり、腸の機能が低下することからオナラをしやすくなる。
・よくオナラをする子どもは、食事の時にストレスを感じて空気を多く飲み込んでいる可能性がある。
6.口数が減る(場面緘黙):
・いつもはふつうに話せるのに、特定の緊張を感じる環境ではほとんど話せなくなることを場面緘黙という。
・心理的な要因が大きく、食事の時だけ極端に口数が減るなら、食べられないサインと捉えるべき。
▶ 「食べない子」が変わる5つのステップ
(ステップ1)この食べ物、知らないよ
(ステップ2)この食べ物を知ってもらう
(ステップ3)この食べ物に興味を持ってもらう
(ステップ4)この食べ物に触れてもらう
(ステップ5)この食べ物を食べてもらう
・・・このステップをショートカットせずに進めばスムーズなはず、
でも親はせかしがち。
▶ 食べないのにはワケがある
多くの場合、以下に挙げた7つのうち、複数が当てはまる:
1.見た目
2.味覚鈍麻
3.刺激
4.食感
5.香り・風味
6.飲み込みやすさ
7.精神的な理由
・・・自分の子どもにはどれが当てはまるのか把握することで、子どもの感覚を理解して受け入れ、その上でコミュニケーションを取りながら対策を考える。7の「精神的な理由」を除き、子どもが成長して行くにつれ、次第に1の「見た目」が一番の理由になっていく。
▶ 食べない理由その1「見た目」
・初めて目にする食材には大人でも抵抗がある。
・子どもも「いつもと見た目が違う」「ちょっと変な見た目」で食べる意欲が減退してしまうことがある。
(例)
✓ 白米は好きだが、炊き込みご飯は苦手。
✓ 同じ食材でも料理や形が変わると食べない。
✓ 同じ食器や容器にこだわる。
▶ 食べない理由その2「味覚鈍麻」
・もともと味を感じにくい子どももいますが、はじめから濃い味に慣れてしまうと味覚が麻痺し、特定の味付けや調味料を多く使った濃い味を好みがちです。
(例)
・白米が苦手で必ずふりかけをかける。
・しょうゆやソースをつけすぎる。
・カレーや丼ものを好んだり、濃い味のおかずばかりを食べる。
▶ 食べない理由その3「刺激」
・2の逆で味に敏感な子どもがいます。味を強く感じるため濃い味付けが苦手です。
・甘い味を“やさしい味”と感じて好む傾向があったり、果物やマヨネーズなどの酸味だけを極端に強く感じてしまい食べられなかったりします。
・2歳前後の自然な味覚の発達に伴って味を強く感じてしまうケースもあり、「これまで食べていたのに、おかしいな?」という現象が経験されます。
(例)
✓ 甘い味付け以外は薄味を好む。
✓ ジュースより水やお茶を好む。
✓ 酸味か辛味、スパイスなどが苦手。
▶ 食べない理由その4「食感」
・「特定の食感」を好む子どもがいます。
・濡れたもの、ねっとりしたものなど、柔らかい食感のモノを受け付けない子どもがいます。
・カリカリしたモノやパリパリしたものを好む子どもがいます。
▶ 食べない理由その5「香り・風味」
・ニオイに敏感な子どもがいます。
・生魚を食べられなかったり、ダシの風味が強い味噌汁やお吸い物が苦手な子どもがいます。
▶ 食べない理由その6「飲み込みやすさ」
・トロトロした飲み込みやすいものは食べられるけど、パサパサした食感のものを飲み込みづらいと感じる子どもがいます。
・固い肉や生野菜などの繊維質のモノをかみ切れずに吐き出す子どもがいます。吐き出したことを責めると、それがトラウマとなり「嘔吐恐怖症」を発症したり、偏食がひどくなることがあります。
▶ 食べない理由その7「精神的な理由」
・聴覚過敏などが原因で周りが気になり食事に集中できなかったり、親しい関係以外の人には緊張してしまったりして、ストレス状態に陥ることで食事が進まない子どもがいます。
▶ 「おやつを食べ過ぎてしまう」「好きなものだけ食べすぎてしまう」ことへの対策
・お菓子なら袋で出すのではなく、最初から個別の器に入れて出すようにする。
・好きな料理・食べ物は、大皿から自由に取り分けるスタイルではなく、最初から小皿に1人分を盛り付ける。
・ルールを作る:
(例1)好きなモノのおかわりは、苦手なモノに少しでも挑戦してからにする。
(例2)おかわりは2回までにする。
▶ 魔法のルールその1「費やす時間は1日1分」
・食べないことへの対策に何時間もかけると親子共々疲弊します。
・対策に費やす時間は「1日1分」と短時間で切り上げ、毎日の積み重ねで。
▶ 魔法のルールその2「4つの“しすぎ”を手放す」
1.イライラしすぎ:食べてくれないことで親がイライラしてしまい、食卓がギスギスした雰囲気になり、子どもがさらに食べなくなるという悪循環を形成。
2.不安になりすぎ:必要以上に心配すると、大人の不安が子どもにうつり、余計に食べなくなる悪循環を形成。
3.プレッシャーのかけすぎ:プレッシャーをかけすぎると食事のトラウマから精神障害(会食恐怖症など)を起こすことがあります。
4.放置しすぎ:「好きなモノしか出さない」のもこの一つ。
▶ 魔法のルールその3「ガッカリした姿を見せない」
・期待が大きいとガッカリも大きい。
・期待しなければガッカリもしない。
▶ 魔法のルールその4「お母さんにかける魔法の言葉」
・子どもが食べてくれないとき、つい「なんで食べないの!」といってしまいそうなときには「そうきたか!」とつぶやくと感情的になるのを防げることがある。
▶ 魔法のルールその5「子どもに決めさせる」
・人は自分で決めたことを守りたがる(社会心理学)。
(例)「しっかりたべようね!」 → 「どれくらい食べる?」
(例)「7時になったらご飯よ!」 → 「何時からご飯を食べたい?」
▶ 魔法のルールその6「苦手なモノは25%まで」
・苦手なモノでも食卓に並べた方がよい、でもその比率は25%までにしないとハードルが高すぎる。
・苦手なモノが一切並ばない食卓にしてしまうと、その子の食は広がらず、偏食のまま大人になってしまう可能性がある。
▶ 魔法のルールその7「食材にポジティブイメージを」
・初めて見る食材・料理は子どもにとって恐い存在(大人でも海外旅行へ行き見たことのない料理が出てくると不安になります)。
・子どもは思考力が未熟なため、抽象的な発想ができないことを知ろう。
(例)リンゴを知っている子が初めて梨を見たときに「同じようなもの」と認識するのは難しい。
→ 「これはりんごのお友達で甘くて美味しいよ!」とアドバイス。
(例)お母さんが作ったカレーとおばあちゃんが作ったカレーを同じ料理と認識できない。
・だから苦手なモノでも初めてのモノでも“食べなくても”食卓に並べた方がよい。知ってもらい、慣れてもらい、興味を持ってもらう目的で。
→ するとある日、「食べた!」というサプライズがあるかも。
・お弁当は例外で、子どもの好きなもの・子どもが食べられるものを優先すべし。食事が楽しくなくなってしまうかもしれない。家である程度食べられるようになってからお弁当に入れる方がよい。
▶ 魔法のルール8「好き嫌いは“悪”ではない」
・目標を「好き嫌いなく何でも残さず食べる」に設定すると窮屈になるので「楽しく食べる」ことに設定すべし。
・「野菜を残すと農家さんが悲しむからちゃんと食べなさい」という押しつけで子どもが野菜を嫌いになったら・・・農家さんはもっと悲しむかもしれない。
▶ 魔法のルールその9「スモールステップを大切に」
・ある食材を食べるまでに踏むステップに対する親子のイメージには大きなギャップがある。
(大人)苦手なものがある → ひとくち食べさせてみる、こども用に取り分けてみる、程度
(子ども)苦手なものがある → 見たことのない食べ物が食卓に並んでいる → パパとママが食べている → 「これ、なんだろう?」とその食べ物が気になり始める → その食べ物についての情報を得る → 食べ物に興味が湧 → 試しにニオイを嗅いでみる → ペロッと味見をしてみる → ひとくち食べてみる → 自分用として食べる
・食べていない状態でも、食べるための準備は着々と進んでいる。1か月に1つステップアップしたら順調、くらいの気持ちで見守るとよい。
▶ 魔法のルールその10「心の状態を見る」
・特殊なシチュエーションだと食べられることがある。
(例)こどもが行きたがっていたレストランで食べた。
(例)仲のよい友だちと並んで座ったら食べた。
▶ 魔法のルールその11「迷ったら“自分(親)が楽しい方”を選択」
・食卓を囲んだとき、子どもの楽しさばかりを優先すると、親の心の充実はおろそかになり、結果的に雰囲気が悪くなりがち。
・自分(親)がしんどくなる前にあきらめて気持ちを切り替えることも必要。
・メニューは自分(親)が食べたいものにしてよい。
・子どもにお菓子を制限する際に、自分(親)も制限する必要はない。時には親子で楽しく食べたり、こっそり一人で食べてもよい(なんだかサザエさん的)。
<参考>
・食べない子が変わる魔法の言葉(山口健太著、辰巳出版)