“子ども”を取り巻く諸問題

育児・親子・家族・発達障害・・・気になる情報を書き留めました(本棚4)。

食べないのにはワケがある〜食べない子が変わる魔法の言葉〜その1

2025年01月27日 08時49分50秒 | 育児
・・・「食べない子が変わる魔法の言葉」という本を読んでみました。
著者は山口健太氏(日本会食恐怖症克服支援協会理事)という方です。

内容は好き嫌い>発達障害(感覚過敏)でしょうか。
料理法より親子のコミュニケーションに重きを置き、
子どもが楽しく食事をできる環境を演出するさまざまな方法が提案されており、参考になります。

食べない子が置かれた環境の構図には、
(親)お腹が空けば食べるだろう、なぜ食べないの?
(子)初めて見る食べ物はちょっと恐い、まだ上手く飲み込めないからこれは食べられないよ・・・
というギャップが存在します。

親が強引に進めると子どもは萎縮して食べなくなってしまう、
それを子どもの発達を観察しながら上手に誘導するのがよい方法、
といったところでしょうか。

今までいろいろ調べてきた私にとって、
この本の内容は「相談と指導で何とかなった」事例レベル、と感じました。
それでもよくならない子どもたちは医療機関に逃げ込みますので、
著者はその世界に触れていません。
だからこの本を読むとすべて解決する、とは思わない方がよいと思います。

備忘録としてメモを残しておきます。

▶ 調理の工夫は好き嫌い・偏食の根本的な解決にはならない
・「食べない子」が「楽しく食べられる子」に変わるために一番大切なのは「コミュニケーション」。
・「食べろ!」と言われると食べられず、「無理して食べなくていいよ」と言われると食べられる。

▶ 「食べない子」に関するよくある間違い

Q1.  食欲は空腹だから湧き上がるもの?
A1.  ❌️ 
 人はストレスを感じたり、不安や緊張状態にあったりすると、空腹でも食欲が出ないことがある。緊張によってのどの筋肉が動かしにくくなるので、食べ物が飲み込みにくくなり、消化器官の働きも悪くなる。

Q2.  好き嫌い・偏食は子どものわがまま?
A2.  ❌️ 
 好き嫌い・偏食は生理学的な問題で、そもそも食に対する見え方の問題や、口に入れた感じ、中には上手く咀嚼ができなかったり、飲み込みが困難な子どもがいて、そういった特性や身体的な問題が、食の困難・偏食を大きく規定している。
 乳幼児の場合、好き嫌い・偏食は「感覚の問題」に起因することが少なくない。

Q3.  好き嫌いをしていると栄養失調になる?
A3.  ❌️ 
 好き嫌い・偏食があっても栄養失調にはならない。不安な方は成長曲線を利用し、身長と体重のSD値が2.0以上ある場合は栄養面に問題がある可能性があり、病院を受診すべし。
 推定エネルギー必要量(日本人の食事摂取基準2015年版)の7割以上で、元気に過ごせていれば、基本的に栄養失調の心配はない。

Q4. 苦手な食材は年齢とともになくなっていく?
A4.  ❌️ 
 一般的には、苦手な食材は年齢とともになくなる傾向がある。それは年齢が上がるにつれて味覚を感じる細胞(味蕾)が減少し、味をマイルドに感じやすくなるため。また、人は初めてのモノや初体験の事柄を本能的に拒絶するが、生きていくうちにいろいろな食べ物に触れる機会があり、慣れていく。
 しかし2歳前後の偏食には要注意。2歳前後は味覚芽発達する時期なので、さまざまな種類の味覚を強く感じやすくなり、食に偏りが出る傾向がある。

Q5.  食べないものは食卓に並べない方がいい?
A5.  ❌️ 
 子どもが嫌いなモノは避けて、好きな食材の料理だけを並べがち・・・が一般的ですが、そのような生活を続けると食生活が広がらないという弊害もあるようです。
 ただ、苦手なモノにひたすら挑戦させるだけでは、イヤな記憶として残ってしまう可能性もあり、要は「正しい提案」を行うことです。

▶ 「食べない子」が出すSOSサイン
以下の6つのサインがみられる場合は「この子は食事で苦しんでいる」と理解すべし。
「ちゃんと食べなさい!」とプレッシャーをかけると逆効果になるので要注意。
1.吐き出す:
「食べてみないと、自分に合うかどうかわからない」
  ⇩
 食べてみたが・・・
  ⇩
「今の自分の感覚には合わない」ので吐き出す。
2.泣き出す:
・「理由があって食べられないけど、それを自分では説明できない」という気持ちの表現。
3.水をよく飲む:
・緊張により嚥下機能が低下して食事を上手く飲み込めないために水で流し込んでいる状態。
4.ゲップをよくする(呑気症・空気嚥下症):
・緊張などの精神的な理由により無意識に空気を飲み込んでしまい、ゲップという症状として現れる。
5.オナラをよくする:
・呑気症の症状の一つ、緊張などで空気を飲み込んだり、腸の機能が低下することからオナラをしやすくなる。
・よくオナラをする子どもは、食事の時にストレスを感じて空気を多く飲み込んでいる可能性がある。
6.口数が減る(場面緘黙):
・いつもはふつうに話せるのに、特定の緊張を感じる環境ではほとんど話せなくなることを場面緘黙という。
・心理的な要因が大きく、食事の時だけ極端に口数が減るなら、食べられないサインと捉えるべき。

▶ 「食べない子」が変わる5つのステップ
(ステップ1)この食べ物、知らないよ
(ステップ2)この食べ物を知ってもらう
(ステップ3)この食べ物に興味を持ってもらう
(ステップ4)この食べ物に触れてもらう
(ステップ5)この食べ物を食べてもらう
・・・このステップをショートカットせずに進めばスムーズなはず、
でも親はせかしがち。

▶ 食べないのにはワケがある
多くの場合、以下に挙げた7つのうち、複数が当てはまる:
1.見た目
2.味覚鈍麻
3.刺激
4.食感
5.香り・風味
6.飲み込みやすさ
7.精神的な理由
・・・自分の子どもにはどれが当てはまるのか把握することで、子どもの感覚を理解して受け入れ、その上でコミュニケーションを取りながら対策を考える。7の「精神的な理由」を除き、子どもが成長して行くにつれ、次第に1の「見た目」が一番の理由になっていく。

▶ 食べない理由その1「見た目」
・初めて目にする食材には大人でも抵抗がある。
・子どもも「いつもと見た目が違う」「ちょっと変な見た目」で食べる意欲が減退してしまうことがある。
(例)
✓ 白米は好きだが、炊き込みご飯は苦手。
✓ 同じ食材でも料理や形が変わると食べない。
✓ 同じ食器や容器にこだわる。

▶ 食べない理由その2「味覚鈍麻」
・もともと味を感じにくい子どももいますが、はじめから濃い味に慣れてしまうと味覚が麻痺し、特定の味付けや調味料を多く使った濃い味を好みがちです。
(例)
・白米が苦手で必ずふりかけをかける。
・しょうゆやソースをつけすぎる。
・カレーや丼ものを好んだり、濃い味のおかずばかりを食べる。

▶ 食べない理由その3「刺激」
・2の逆で味に敏感な子どもがいます。味を強く感じるため濃い味付けが苦手です。
・甘い味を“やさしい味”と感じて好む傾向があったり、果物やマヨネーズなどの酸味だけを極端に強く感じてしまい食べられなかったりします。
・2歳前後の自然な味覚の発達に伴って味を強く感じてしまうケースもあり、「これまで食べていたのに、おかしいな?」という現象が経験されます。
(例)
✓ 甘い味付け以外は薄味を好む。
✓ ジュースより水やお茶を好む。
✓ 酸味か辛味、スパイスなどが苦手。

▶ 食べない理由その4「食感」
・「特定の食感」を好む子どもがいます。
・濡れたもの、ねっとりしたものなど、柔らかい食感のモノを受け付けない子どもがいます。
・カリカリしたモノやパリパリしたものを好む子どもがいます。

▶ 食べない理由その5「香り・風味」
・ニオイに敏感な子どもがいます。
・生魚を食べられなかったり、ダシの風味が強い味噌汁やお吸い物が苦手な子どもがいます。

▶ 食べない理由その6「飲み込みやすさ」
・トロトロした飲み込みやすいものは食べられるけど、パサパサした食感のものを飲み込みづらいと感じる子どもがいます。
・固い肉や生野菜などの繊維質のモノをかみ切れずに吐き出す子どもがいます。吐き出したことを責めると、それがトラウマとなり「嘔吐恐怖症」を発症したり、偏食がひどくなることがあります。

▶ 食べない理由その7「精神的な理由」
・聴覚過敏などが原因で周りが気になり食事に集中できなかったり、親しい関係以外の人には緊張してしまったりして、ストレス状態に陥ることで食事が進まない子どもがいます。

▶ 「おやつを食べ過ぎてしまう」「好きなものだけ食べすぎてしまう」ことへの対策
・お菓子なら袋で出すのではなく、最初から個別の器に入れて出すようにする。
・好きな料理・食べ物は、大皿から自由に取り分けるスタイルではなく、最初から小皿に1人分を盛り付ける。
・ルールを作る:
(例1)好きなモノのおかわりは、苦手なモノに少しでも挑戦してからにする。
(例2)おかわりは2回までにする。

▶ 魔法のルールその1「費やす時間は1日1分」
・食べないことへの対策に何時間もかけると親子共々疲弊します。
・対策に費やす時間は「1日1分」と短時間で切り上げ、毎日の積み重ねで。

▶ 魔法のルールその2「4つの“しすぎ”を手放す」
1.イライラしすぎ:食べてくれないことで親がイライラしてしまい、食卓がギスギスした雰囲気になり、子どもがさらに食べなくなるという悪循環を形成。
2.不安になりすぎ:必要以上に心配すると、大人の不安が子どもにうつり、余計に食べなくなる悪循環を形成。
3.プレッシャーのかけすぎ:プレッシャーをかけすぎると食事のトラウマから精神障害(会食恐怖症など)を起こすことがあります。
4.放置しすぎ:「好きなモノしか出さない」のもこの一つ。

▶ 魔法のルールその3「ガッカリした姿を見せない」
・期待が大きいとガッカリも大きい。
・期待しなければガッカリもしない。

▶ 魔法のルールその4「お母さんにかける魔法の言葉」
・子どもが食べてくれないとき、つい「なんで食べないの!」といってしまいそうなときには「そうきたか!」とつぶやくと感情的になるのを防げることがある。

▶ 魔法のルールその5「子どもに決めさせる」
・人は自分で決めたことを守りたがる(社会心理学)。
(例)「しっかりたべようね!」 → 「どれくらい食べる?」
(例)「7時になったらご飯よ!」 → 「何時からご飯を食べたい?」

▶ 魔法のルールその6「苦手なモノは25%まで」
・苦手なモノでも食卓に並べた方がよい、でもその比率は25%までにしないとハードルが高すぎる。
・苦手なモノが一切並ばない食卓にしてしまうと、その子の食は広がらず、偏食のまま大人になってしまう可能性がある。

▶ 魔法のルールその7「食材にポジティブイメージを」
・初めて見る食材・料理は子どもにとって恐い存在(大人でも海外旅行へ行き見たことのない料理が出てくると不安になります)。
・子どもは思考力が未熟なため、抽象的な発想ができないことを知ろう。
(例)リンゴを知っている子が初めて梨を見たときに「同じようなもの」と認識するのは難しい。
 → 「これはりんごのお友達で甘くて美味しいよ!」とアドバイス。
(例)お母さんが作ったカレーとおばあちゃんが作ったカレーを同じ料理と認識できない。
・だから苦手なモノでも初めてのモノでも“食べなくても”食卓に並べた方がよい。知ってもらい、慣れてもらい、興味を持ってもらう目的で。
 → するとある日、「食べた!」というサプライズがあるかも。
・お弁当は例外で、子どもの好きなもの・子どもが食べられるものを優先すべし。食事が楽しくなくなってしまうかもしれない。家である程度食べられるようになってからお弁当に入れる方がよい。

▶ 魔法のルール8「好き嫌いは“悪”ではない」
・目標を「好き嫌いなく何でも残さず食べる」に設定すると窮屈になるので「楽しく食べる」ことに設定すべし。
・「野菜を残すと農家さんが悲しむからちゃんと食べなさい」という押しつけで子どもが野菜を嫌いになったら・・・農家さんはもっと悲しむかもしれない。

▶ 魔法のルールその9「スモールステップを大切に」
・ある食材を食べるまでに踏むステップに対する親子のイメージには大きなギャップがある。
(大人)苦手なものがある → ひとくち食べさせてみる、こども用に取り分けてみる、程度
(子ども)苦手なものがある → 見たことのない食べ物が食卓に並んでいる → パパとママが食べている → 「これ、なんだろう?」とその食べ物が気になり始める → その食べ物についての情報を得る → 食べ物に興味が湧 → 試しにニオイを嗅いでみる → ペロッと味見をしてみる → ひとくち食べてみる → 自分用として食べる
・食べていない状態でも、食べるための準備は着々と進んでいる。1か月に1つステップアップしたら順調、くらいの気持ちで見守るとよい。

▶ 魔法のルールその10「心の状態を見る」
・特殊なシチュエーションだと食べられることがある。
(例)こどもが行きたがっていたレストランで食べた。
(例)仲のよい友だちと並んで座ったら食べた。

▶ 魔法のルールその11「迷ったら“自分(親)が楽しい方”を選択」
・食卓を囲んだとき、子どもの楽しさばかりを優先すると、親の心の充実はおろそかになり、結果的に雰囲気が悪くなりがち。
・自分(親)がしんどくなる前にあきらめて気持ちを切り替えることも必要。
・メニューは自分(親)が食べたいものにしてよい。
・子どもにお菓子を制限する際に、自分(親)も制限する必要はない。時には親子で楽しく食べたり、こっそり一人で食べてもよい(なんだかサザエさん的)。


<参考>
食べない子が変わる魔法の言葉(山口健太著、辰巳出版)

BLW(BabyLedWeaning)のリスクとデメリット

2025年01月13日 12時00分00秒 | 育児
前項で紹介したBLW(BabyLedWeaning)はいいことずくめのように聞こえますが、
果たしてそうでしょうか?

今回はその“影”の部分として、リスクとデメリットを扱います。
これを知った上で導入を考えた方が安全・安心です。

まずは前項目の最後の方で触れたリスクについて。
こちらの本によくまとまっていました。
なお、「従来法」とは離乳食を保護者がスプーンであげる方法を指します。

周囲の理解を含めた環境整備も大切ですが、
窒息事故に直結するリスクとして食材と調理法が大きなポイントだと感じました。

内閣府のガイドラインでは「果物は生ではなく加熱して柔らかくして与えましょう」と書いてあるそうです。
すりおろしても大きめの破片が残っていれば、のどに詰まる可能性はあります。
また、ブドウやミニトマトも与えていいことになっていますが、「四等分」するように書かれています。

「この食材は安全、この食材は危険」だけではなく、
「安全な形で出す」まで気をつかう必要があるということ。

では本の要約を備忘録として残しておきます。

Q.  BLWと従来法でアレルギーの発症率に違いがありますか?
A.  ありません。
〜BLWは初めから固形食なので、大量のアレルゲン食材が一気に胃の中に入ることはありません。だからアレルギーを引き起こす可能性は少ないと言えます。

Q.  BLWでは初期から固形物を与えますが、のどに詰まりませんか?
〜BLW中には「オエッ」とえずいたり、「ゴホッ」と咳き込んだりすることはあります。これは窒息を防ぐ防御反応(※ 咽頭反射、咳反射)で窒息そのものではありませんので、不安になったり過度に心配する必要はありません。
 本当に窒息すると、胃気ができず声が出なくなります。つまり赤ちゃんは静かになってしまいます。ちょっと目を離したとき「妙に静かだなあ・・・」というパターンで発見されることがあります。このため、BLW中は保護者が見守る必要があります。離乳食を与えているときは保護者が側にいる必要があることは従来法と変わりません。

咽頭反射:飲み込めないくらい大きな食べ物を前方に押し出して吐き出そうとする動き。窒息しないための安全装置。
 窒息ではなく正常な防御反応です。大人の咽頭反射は舌の奥の方で起きますが、赤ちゃんでは大人に比べて舌の前の方でこの反射が引き起こされる傾向があります。そのため、生後6〜7か月に食事を始めたばかりの赤ちゃんにはよく見られることです。咽頭反射を繰り返すことで、赤ちゃんは安全に食べるスキルを学習していきます。
・しっかり噛むこと
・詰め込みすぎないこと
・奥まで入れすぎないこと
月齢が進めば起こりにくくなっていきます。

咳反射:何かの拍子で食べ物などが気道に入ってきたり、詰まりそうになったとき、侵入を防ぐために起こる反射。
 赤ちゃんがむせているとき、それが咳反射かどうかは、
✓ 顔が赤くなっている
✓ ゲホゲホッと何かを吐き出そうとしている
✓ 涙目になっている
などで見分けることができます。咳反射は咽頭反射同様、窒息を防ぐための自然な反射です。
咳反射が起きているときは、赤ちゃんの口に指を入れて無理に取り出そうとする必要はありません、見守ってください。

Q.  窒息の判断とその対応方法を教えてください。
A.  「オエッ」「ゲホゲホッ」などのえずきや咳込みはなく、赤ちゃんが静かになってみるみる顔色が青くなったときは窒息の可能性大です。119番に電話して救急車を呼び、背部叩打法胸部突き上げ法で詰まっているものを吐き出させる必要があります。これを吐き出すまで何回も繰り返します。
 吐き出せず、途中で赤ちゃんの意識がなくなった場合は心肺蘇生法に切り替えます。



Q.  窒息のリスクが高くなる状況・食べ物はありますか?
A.  あります。
(赤ちゃんが窒息しやすい状況)
✓ 椅子にもたれて座っている(背筋が伸びていない)
✓ 気が散っている(TVや動画を見ている)
✓ のどに詰まらせやすい食べ物を与えられる
✓ 息を吸って食べる
(窒息しやすい食べ物)
✓ 小さくて固いもの
✓ 丸くて小さいもの(ミニトマト、ブドウ
✓ 皮付きのもの(サツマイモ、バナナなど)
✓ 気道の中で圧縮されやすいもの(食パンなど
✓ 粘着性のあるもの
(窒息の基本的な安全対策)
✓ 背筋が伸びるよう真っ直ぐ座らせる
✓ 絶対に赤ちゃんを一人にしない
✓ 小さくて丸いものは与えない
✓ 赤ちゃんの口に突然食べ物を入れない

日本BLW協会HPより;
(窒息の危険性がある食材)

(窒息の危険性がある食材の工夫の仕方)


Q.  初めから固形物を与えて赤ちゃんは消化できるんですか?
A. はい、できます。
 生後5か月になる頃には、赤ちゃんの消化機能・腎臓機能は食事を受け入れられるまでに成熟するとされており、問題ありません。
 赤ちゃんのウンチに食べ物のかたまりが出てくることがありますが、消化しきれなかったものが出てきているだけで、すでに栄養分は吸収されており、心配する必要はありません。

Q.  自宅でBLWをしている赤ちゃんを保育園に預けるときはどうすればいいですか?
A.  保育園側にBLWをしていることを伝えましょう。園の規模や方針により、どこまで受け入れてもらえるかはケースバイケースです。言葉だけではわかってもらえないときは、実際にどのようなものをどのように食べているかの写真や動画を見てもらうのも理解を助けます。
★ 日本BLW協会のHPからBLWのリーフレットが無料でダウンロードできますので、これを利用するのも一つの方法です。

さて次にこちらの動画からBLWのデメリットを拾ってみました。

1.片付け&洗濯が超大変
・きれい好きのお母さん、汚れる・散らかるとイライラするお母さんには向いていないかも。
・毎食後、着替えが必要になる。
・床の汚れは掃除機で済むレベルではなく、毎日(毎食後?)ぞうきんがけ。
(対策)
・食事と着替え(とシャワー)はセットと開き直る。
・袖付きエプロンの使用もあり(本人が嫌がらなければ)。
・床には新聞紙を敷いたりで対応は可能ですが・・・。

2.正解がわからず不安
・日本ではまだ普及しきっていないので情報収集に限界あり。
・食材選び、硬さや大きさ、量、出し方などで悩むことが多い。
( → 加熱してピューレ一択、っていうのはかなり楽!)
・予想外の反応も楽しいので「当たったらラッキー」くらいのスタンスがよい。

3.最初の数ヶ月のメニューが難しい
・野菜や肉類は柔らかくしてなんとかできた。
・でも主食(ごはん)と汁物が悩みの種。ごはん粒はとにかく散らばるし、散らばると赤ちゃんの気が散る。汁物はスプーン以外でどうやって食べる?

4.外出先での食事が難しい
・散らかし放題の初期は難しい。
・玄米パンとか干し芋はお勧め。

5.周囲に理解されにくい
・生後6か月の赤ちゃんに固形物をあげることにたいていの人はビックリする。
・「ヤバい母親」と思われる可能性あり。
・初めてBLWを実践する場合、不安になる時期が必ず来るが、そうなったとき一人で悩むのは厳しい。
 「片付け面倒〜」「食べないな〜」「栄養足りてるかな〜」
・子育てに口出ししがちな姑と同居とか、理解のない旦那だったら従来食(ペースト離乳食)の方がいいかも。
 → 動画や本を見せて説明して理解してもらうことをお勧めします。


<参考>
BLW(赤ちゃん主導の離乳)をはじめよう! (日本BLW協会 著、原書房、2020発行) 
子どもの窒息対応(日本BLW協会)
気道異物除去(乳児・幼児)(日本赤十字社)


BLW(baby led weaning)≠ 手づかみ食べ、=赤ちゃん主導の離乳食

2025年01月12日 12時00分00秒 | 育児
好き嫌い・偏食について調べていたら、
離乳食を食べない赤ちゃん問題が立ちはだかり、
その解決法としてBLWにたどり着きました。

こちらの動画元祖提唱者の著作のポイントが説明されていましたの視聴してみました。

印象・ポイントは、
・赤ちゃんの離乳を親のしつけではなく“赤ちゃんが主役”に置き換える方法。
・赤ちゃんが“食べるスキル”を獲得していく過程を親が腹をくくって見守る方法であり、赤ちゃんが試行錯誤する様子を楽しく見守ることでもある。
・BLWを経験した赤ちゃんは食べることが好きになり、自分で食べたという達成感を経験できる。
・昔の日本では普通だった「親の食べているものから取り分ける」が入っており、親の手間が減る。
等々、“子どもの成長・発達を見守る”という子育てのエッセンスを凝縮したものと感じました。

メモを残しておきます。

前編〜基礎知識〜

▶ BLWとは何か?
・ジル・ラプレイ氏(助産師&保育士)が提唱した離乳方法
・子どもの自主性や手先の器用さが身につく
・取り分けスタイルで親も楽
 ✓ 裏ごしの手間なし
 ✓ 食べるべき量の基準なし
  → 親のストレスほとんどなし

▶ BLW=手づかみ食べ、ではない!
・Baby Led Weaning=赤ちゃん主導の離乳食
・赤ちゃんが自分で食べる、赤ちゃん主体の方法
・手助けしたい気持ちをグッと抑えて赤ちゃんにすべてを委ねる
 → 我が子を助けたい気持ちをどう抑えるかが重要ポイント
・目の前の食材を選ぶところから飲み込むまで赤ちゃんが自分でコントロールするため、
自尊心・自立心が養われる。

▶ 親のすべきこと
1.いつから離乳食を始めるかを決める。
2.赤ちゃんが食事の練習をする環境を整える。
3.どんな食べ物を提供するかを決める。

▶ BLWの基本ルール
1.赤ちゃんと一緒に食卓に着き、親も食事をする。
2.赤ちゃんが食べ物に興味を示したら、それで遊ぶよう促す。
3.食べ物は、赤ちゃんがつかみやすい形で提供する。
 〜裏ごしした食材は使わない。いきなり固形物を与える。
4.最初から赤ちゃん自身が自分で食べる。
 〜準備だけして、あとは赤ちゃんにお任せ。
5.食べる量や何を食べるかは、赤ちゃんに決めさせる。
6.赤ちゃんが欲しがる間は授乳を続ける。

▶ BLWが安心な理由
・“食べる”ことは“歩く”こと同様、発達過程で自然に獲得していくこと。
・その過程を親が過剰に干渉しない、阻害しないことが大切。

▶ 素朴な疑問集
Q.  いきなり固形物を与えて食べられるの?
 → 離乳食初期は、たべられなくてもいい、食べる練習をする時間と考える。
 歯がなくても食べる練習はできる(歯ぐきでカミカミ、あごや舌を使う練習)。
 生後9ヶ月頃までは赤ちゃんのメインの栄養源は母乳・ミルク(離乳食は“補完食”)、
 母乳・ミルクを欲しがるだけあげていれば問題ない。
Q.  のどに詰まらないのかな?
 → 安全装置(咽頭反射、咳反射)が作動するので大丈夫。
 のどに詰まりそうになると“咽頭反射”“咳反射”が起こり「オエッ」「ゲホッ」となる。
 これを繰り返すことで「この大きさは今は食べられない」と学習する。
 本当に窒息すると声が出せなくなる( → 応急処置はこちら)。
Q.  赤ちゃんが食べたいものだけ食べたら、栄養バランスが崩れない?
 → 1日単位ではばらつきがあるが1週間単位で見るとバランスが取れることが多い(検証不十分です)

▶ BLWを赤ちゃんの視点から見てみると・・・
・赤ちゃんにとって“食べる”ことは初体験!ドキドキ、ワクワク。
・“赤ちゃん視線”で考えてみましょう。
Q.  人から見知らぬ物体を手渡されたら、あなたはどうする?
 ✓ 眺める
 ✓ 触る
 ✓ 手に取る
 ✓ ニオイを嗅ぐ
 ✓ これはおもちゃ?もしかしたら食べものかも?と思う
 ✓ 口に入れてみる
 ✓ 舐めたりカミカミしてみる
 〜BLWでは赤ちゃんが初めてこれを行うことになります。
  初期は“食べる時間”にならなくても仕方ない、
  慣れる時間、練習する時間です。
Q.  初めてあなたが自転車にまたがったとき、乗れましたか?
 ✓ 初めは乗りこなせない
 ✓ 何日も練習して乗れるようになる
 ✓ その後、乗り方を忘れていない・・・ですよね。
・練習していないことはできない、最初からうまくはできない
〜これは自転車にも食事にも当てはまる。
・赤ちゃんは「未知の物体の調査」と「新しいからだの使い方の練習」を同時に行っているのです。
・「親が手伝わない」ことって難しい・・・つい手助け、口出しをしたくなりがち。
 ✓ 赤ちゃんの食事のサポート
 ✓ はやく食べるようせかす
 ✓ 完食するよう促す
 ✓ マナー違反を注意する
〜これらはすべて“親目線”の余計なお節介かもしれません。

後編〜実践〜

▶ 離乳食を始める時期:生後6か月頃
・赤ちゃんの準備が整ったかどうかのチェックポイント
✓ からだの発達:抱っこやハイチェアの支えがあれば背筋を真っ直ぐ伸ばした状態で座れる。
✓ 赤ちゃんのモチベーション:家族の食事の様子を観察したり、テーブルの上の食べ物をつかもうとする。

▶ 基本的安全対策
1.食べ物を手でつかみやすいように、赤ちゃんを真っ直ぐ座らせる
〜ベビーカーに寄りかかっている姿勢は❌️ 、ハイチェアがお勧め。
2.のどに詰まる可能性のある食べ物など、危険な食べ物は与えない。
〜赤ちゃんがつかめないモノ=安全に食べる準備ができていない。
3.大人が赤ちゃんの口に食べ物を入れない。
4.赤ちゃんが食べ物を扱っている間、邪魔をしない。
〜テレビなどを見ていると注意散漫となり誤飲・誤嚥リスクが高くなる。
5.食べ物のあるところで、赤ちゃんを一人にしない。
6.食後は食べ物が口の中に残っていないかチェックする。

▶ 危険な食べ物・気をつけるべき食材(イギリスの例)
(危険な食べ物)
・食塩が必要以上に含まれている(食塩は1日1g以下に抑える)
・砂糖が必要以上に含まれている
・食品添加物
・十分に火が通っていない生のシーフード(感染症のリスク)
・はちみつ(ボツリヌス菌のリスク)
・サメ、メカジキ、マカジキ(水銀リスク)
・低温殺菌していないチーズ(リステリア菌リスク)
・ブラン食品、生のブラン(食物線維が多すぎる)
・紅茶・コーヒーなどカフェインを含む飲み物
・ライスミルク(無機とヒ素のリスク)
・豆乳(アルミニウムと植物性エストロゲンリスク)
・炭酸飲料と希釈していないフルーツジュース(虫歯リスク)
・のどに詰まりそうな食べ物(小さくて丸いもの、固い果物、魚の骨など)
(気をつけるべき食材)
・青魚
・アレルギーの恐れのある食べ物

▶ 食材・料理の(マイ)ルール
・自然食材が使われている家庭料理、大人にとってもバランスのよい食事を心がける。
・野菜あるいは果物は毎食、炭水化物・たんぱく質はそいれぞれ2食に1回以上提供する。
・前述の「危険な食べ物」は控える、輸入物のチーズも避ける。
・味の濃い料理を取り分けるときは一度お湯ですすぐ。
・ジュースは与えない。

▶ お勧めの食材
(6〜8か月)スティック状の食べ物
(7〜9ヶ月)小粒の柔らかいもの、ツルツルしたもの ・・・丸くてのどに詰まりそうなものはカットして
 ✓ この時期には“中休み”をする赤ちゃんがいるそうです。
(8〜10ヶ月)レーズンなどの小粒な食べ物、ディップ
 ✓ 食べ物に対する姿勢が“興味” → “食事”に切り替わる時期。
(9〜12ヶ月)様々な形や舌触りの食べ物

★ ちなみに赤ちゃんの発達を対応させると・・・
(6〜8か月)手づかみ、手からはみ出た食べ物を歯ぐきで噛んだりしゃぶったり
(7〜9ヶ月)手の扱い・噛むのが上手になる、柔らかいモノを口に押し込める
(8〜10ヶ月)指でつまめる、両手を同時に使える
(9〜12ヶ月)米などの小さいモノもつまめる
(11〜14か月)フォークやスプーンを使いたがる

▶ お勧め周辺グッズ
・Babybyorn製ハイチェア(品番067021)・・・廃盤
 ✓ プラスチック製
 ✓ テーブル取り外し可能で丸洗いできる
 ✓ 赤ちゃんの上体をしっかり固定してくれる
・マスカー(W1100mm×D25M)・・・床の汚れ対策、ホームセンターで売ってます
・袖付きエプロン(西松屋で726円)・・・首回りが緩むのが玉に瑕


小児科医の私としては、のどに詰まらせたときの対処法をしっかり学んでから行う方が安全・安心かなとも感じました。
日本BLW協会でも注意喚起をしています。

窒息について(日本BLW協会)

なお、医師の立場からは直径4cm未満(トイレットペーパーの芯の穴の大きさ)は乳幼児ののどに詰まる可能性があるため「与えてはいけない・周りに置いてもいけない」と指導しているのですが、この点だけ整合性がとれません。



<参考>
「自分で食べる! 」が食べる力を育てる:赤ちゃん主導の離乳(BLW)入門(ジル・ラプレイ著、2019年発行、原書房)
子どもの窒息対応(日本BLW協会)

子どもの“偏食”対策

2025年01月05日 09時27分21秒 | 育児
以前“子どもの好き嫌い”を取りあげましたが、
「苦手な食べ物があるけど、体格も普通で元気に過ごせている」
子どもが対象でした。

今回は、
「苦手な食べ物があり、健康に支障をきたしている」
という、グレーゾーンから病的な状態までカバーする内容です。

子どもが食べられない理由・原因を医学的に評価し、
それを解消する方法を紹介します。


▶ 子どもが食べない3つの理由
1.かめない、飲みこめない
2.感覚が過敏か、鈍感
3.知らないから

(解説)
1.かめない、飲みこめない
食べるまでの動作は、
①食べ物を目で見て確認する、手を使い、箸を動かし、食べ物をつかむ
②口に入れる、前歯でかじりとる
③舌を使って奥歯へ食べ物を移動させる、奥歯で食べ物をすり潰す
④舌を使ってのど元へ送り込む、嚥下する(飲み込む)
の過程があるが、各段階が未発達の子どもはうまくできない。
うまくできない子どもは以下のものが苦手になる。
・硬すぎるもの・繊維が多すぎて噛み切れないもの
(例)繊維質の野菜、お肉、きのこ、魚介(タコ・イカ)など
・水分量が少なすぎてパサパサしているモノ
(例)パン、カステラ、焼き魚など
・のどや口腔内に張り付きやすいもの
(例)のり、海藻類、キュウリ(薄切り)、ウエハース、モナカの皮など
・粘りが強すぎてのどに詰まりやすいモノ
(例)お餅、お団子、イモ類など
・水分量が多く、口の中でばらけてまとまりにくいモノ
(例)かまぼこ、コンニャク、リンゴなどの果物など
・細かすぎて気管に入ってしまいやすいモノ
(例)みじん切りの野菜、ひき肉など

食べる動作の発達レベルは以下でチェック可能です。


 → 口を閉じることができない子どもの練習方法
・ストローを使って、好きな形に切った折り紙を吸い上げる
・おもちゃの笛を思いっきり吹く
 → 舌をうまく動かせない場合
・くちびるにジャムなどを塗り、それを舐め取る

2.感覚が過敏か、鈍感
感覚過敏、感覚鈍麻などは発達障害(神経発達症)の一種である自閉スペクトラム症(ASD、対人関係が苦手で強いこだわりがあるとされる)の傾向がある子に多く見られ、ASD児には偏食が多い。ただし、五感には個人差が大きい。
(例)
・人より味を強く・薄く感じる。
・天ぷら・揚げ物の衣が口の中に刺さる感じがして痛い。
・もっちりした食感が気持ち悪い。
・料理の見た目がグロテスクに見える。
・少しの音が気になって集中して食べられない。
・哺乳瓶、スプーンなど、食器類の触った感じが気持ち悪い。
・口周りを触られることに強い嫌悪感がある。
・内臓の感覚が鈍感で空腹を感じない。

3.知らないから
子どもがある食材を食べるようになるまでの道程は、
1知らない → 2知る → 3興味を持つ → 4触れる → 5食べる
という壁を乗り越えて達成します。
対策は、食材に触れる機会を増やすこと。具体的には、
① 食材当てゲーム(目隠ししてニオイで当てる、触って当てる)
② お買い物で食材をかごに入れてもらう。
③ 食育関連の絵本を読む。
④ 家庭菜園や果物狩り
⑤ 釣り、魚のつかみ取り

▶ 好き嫌い・偏食を加速させるNG行動3つ
1.緊張感のある食卓
2.子ども主体のメニューになりすぎる
3.おやつの時間、食べ終わる時間に一貫性がない

(解説)
1.緊張感のある食卓
・食べないと怒られるかもしれない(ビクビク・ピリピリ)。
・「残さず食べなさい」はNG → 「食べきれなかったら残してもいいよ」
・まず親が「食事は楽しい」ことを見せる、親のイライラや焦りはマイナスポイント。

2.子ども主体のメニューになりすぎる。
・“子どもの言いなりメニュー“はNG、子どもの食が広がらない。
・“特別な日”ならOK、でも日常的にはNG。
・メニュー決めの主導権は大人が握るべし。毎回子どもの言いなりメニューでは、大人側の疲弊と不満が溜まりがち。

3.おやつの時間、食べ終わる時間に一貫性がない。
① 食べたいときに食べられるおやつでは、1日3回の主食を食べられなくなる。対策として、
・おやつをあげるときのポイント;
✓ 袋出しは避け、お皿に出してからあげる。
✓ エネルギー量が少ないモノに置き換える
・小さい子の場合には;
✓ お菓子はできるだけ子どもの手に届かないところに置く。
✓ 必要以上に回おきをしない。
・ある程度子どもが大きくなってきたら;
✓ お菓子の食べ過ぎが体の成長にはよくないことなどを伝える。
✓ お菓子はどれくらいまでにするか、親子でルールを決める。
②ダラダラ食べをやめる。対策として、
・食事の時間は30分が目安。
・子どもに「まだ食べたい?」と聞いて頷くなら延長OK(ただし1回まで)。
・食べるのが極端に遅い子どもは食べる機能(口腔機能)を要チェック。

以上に問題がなくても食べてくれない場合は「すでに好きなモノでお腹いっぱい」になっている可能性あり。
好きなモノだけ平らげて、他の食材にたどり着く前にお腹いっぱいなので箸が止まる。
 → 今食べられるものの提供量を減らす。食事内容の割合は「好きなモノ:苦手なモノ:ふつう=1:1:2」が目安。


<参考書籍>
・「偏食の教科書」(山口健太著、藤井葉子監修、青春出版社)

子どもの“好き嫌い”への対応

2025年01月01日 19時48分23秒 | 育児
乳児検診に出かけていって、
お母さんの心配事のビッグ2が「かんしゃく」と「偏食」です。

偏食について深めたいと考え、現在情報収集中です。
まずはYouTube動画のレクチャーから拾ってみました。

(注意)発達障害系の特性がある子どもは、「感覚過敏」「こだわり」「食感が苦手」「ニオイが苦手」などが前面に出てくることがあり、紹介する方法では解決できない場合があります。主治医にご相談ください。

<ポイント>
・ヒトは甘み・うま味・塩辛い味は脳が本能的に「おいしいもの」と認識し、苦みと酸味(すっぱい)は脳が本能的に「危険なもの(毒・腐敗物)」と認識する(⑫)。
・2歳児の50%が偏食とされているが、これは異常ではなく本能であり、発達段階における“自己防衛行動”である。「この食べ物は危険ではない」ことがわかると口にするようになる(①)。
・食べる以前に“その食べ物に慣れさせる”ことが大切、聴覚・視覚・嗅覚に訴えて興味を持たせる工夫をする(①②)。
・調理を工夫して食べさせる試みは、5回以内であきらめてはいけない、10〜20回(①)出し続けると成功率が上がる(⑬では30-50回と紹介)。
・苦手な食材の価値を下げる行為は避ける;“ご褒美形式“は、その食べ物の価値を下げるイメージを植え付けてしまう(①)、子どもの偏食に関する親の会話を子どもに聞かせない・・・“自分は〇〇がキライ”というイメージを植え付けてしまう(②)。
・苦手な食材克服その1“選択ボード作戦”・・・調理法を書き並べたボードを用意し、子どもに選ばせると興味が湧いて食べる確率上昇(⑥)。
・苦手な食材克服その2“お手伝いエプロン作戦”・・・こども用のエプロンを用意し、調理(無理な場合は配膳でも可)に参加させると興味が湧いて食べてくれる確率上昇(⑦)。
・実際に食べさせる際に「食べやすいかどうか?」という視点も必要(②)、味ではなく調理法(バラバラになりやすいか?)や食感(例:固い食べ物、ヌルッとした食べ物、パサパサした食べ物)が嫌いな場合もある。
・「一口だけ食べて」は賛否両論・・・ハードルが高い(①)、繰り返して安全であることを保障する(⑬)。
・“ささくれ作戦”・・・食材を指先のささくれより小さくカットし、それを1個食べられたらほめる(③)。
・食卓・椅子に座ろうとしない子ども対策その1“食券作戦”・・・その子用の特別な食券を作りお店屋さんごっこを演出する(④)。
・食卓・椅子に座ろうとさえしない子ども対策その2;“お手伝い作戦”・・・ちょっとしたお手伝い(箸を並べる、ソース・ドレッシングを置く)をさせて参加させると俄然興味が湧く(⑤)。
・自分で食べようとしない子ども(食べさせて〜)対策は“くじ引き作戦”・・・食べ物の絵や名前を書いた紙を箱に入れ、くじを引かせると「自分で選んだ」感が生じて食べてくれる確率上昇、子どもが使う食器を一緒に買いに行き選んでもらうだけでも効果あり(⑧)。

・・・要するに、
・食材になれさせる。
・子どもが主役の食卓(食事環境)を提供する。
ことに尽きるようですね。

****************************************************************************

・2歳児の50%が偏食とされており、これは異常ではなく本能である。
・偏食が始まる時期は1歳〜1歳半であり、行動範囲が広がる時期に一致する、何でも食べてしまうと危険であるから、自分の身を守るために食べるものを子どもなりに取捨選択する行動が、大人から見ると“偏食”になってしまう傾向がある。
・本能的に避けている場合、その食べ物が危険でないことがわかれば、子どもは食べるはず。
・ある食材を食べなくなった2歳児に対して、母親はあの手この手で工夫して食べさせようとする、しかし5回程度であきらめてしまう。某研究ではめげずに10〜20回出し続けると「その食材は危なくない」と認識が変わり食べる確率が上がると報告されている。
・偏食は大人の忍耐力と粘りで解決することがままある。「この子は〇〇は食べないんだ・・・」とあきらめないことが大切。
・「〇〇(苦手なもの)を食べたらおやつを食べていいよ」というご褒美形式は子どもの偏食を悪化させる可能性がある。〇〇という食材が価値が低いものというイメージを植え付けてしまい、食べたくなくなってしまう。
・食卓以外の日常生活の中で、苦手な食材と接触する機会を増やす。買い物に行って子どもに選んでもらう、買ってきた食材の絵を一緒に描く、など。すると子どもはその食材に慣れてきて危険でないと思うようになる。

(例)ピーマン
・ピーマンが苦手な子どもにピーマンの肉詰めを出すが子どもは食べない・・・親はピーマンの味が嫌いだと思いがちだが、実はピーマンの肉詰めの食べにくさが苦手だったりする。ピーマンの肉詰めを食べているとピーマンと肉がずれてしまい、落としたりしてしまいがち。この場合の解決法は、調理法を変えること、細かく刻んだり、ミキサーにかけたり・・・すると単純に“食べやすくなる”から食べるようになる。
・「一口食べてごらん」は結構ハードルが高い言葉。絶対に食べたくないものを「一口」と言われても、それは恐怖以外の何者でもない。
・苦手な食材を勧めるときは、聴覚・視覚・嗅覚に訴えて興味を持たせる工夫をする。例えば料理前のピーマンの形を子どもと一緒に触って観察する、ニオイを嗅ぐ、調理後のピーマンのニオイをまた嗅いで違いに気づいてもらう、ピーマンを食べるときの音を聞いてもらう、など。子どもがピーマンに興味を持てば、「舐めてみる?一口食べてみる?」のハードルが低くなるはず。
・両親が子どもの前で「この子最近、ピーマンを食べないのよ」という内容の話はタブー。大人の会話は子どもにとって重いもので、それを聞いた子どもに「あ、僕はピーマンが苦手なんだ」とダメ押しをしてしまう。ネガティブな会話ではなくポジティブな会話を聞かせよう。

・苦手な食べ物をムリして克服する必要はない(他の食材で栄養が補充可能、子どもの食事は楽しさ・うれしさが大事)。
・(ささくれ作戦)指先の“ささくれ”より小さくカットし、それを真っ白なお皿の上に一粒だけのせ、「こんなに小さいねえ〜」と声がけしながら大人と一緒に食べる、食べられたら褒める、おかわりできるなら同じ事をもう一度くりかえす、食べられたら褒める、成功体験になり子どもに「自分は苦手な〇〇が食べられた!」と自信がつく、次のステップは少しずつ大きくカットして出していくと食べてくれる確率が上がる。

食券を使い、“お店屋さんごっこ”を演出する。
・「食券を渡すとご飯が出てくるから使ってね」と事前に用意する。丁寧に作るのがコツ。
・食券には「〇〇くんのカレーライス」など、名前を入れると「自分だけのための特別なチケット」になり、子どもの興味を引く。
・食券依存が心配になるかもしれないが、繰り返すと食券にはいずれ飽きて卒業する、その頃には“ご飯の時は食卓に座る”習慣が自然に身についているはず。

・子どもが席に着かない理由:自分に関係なく用意された環境なので興味が湧かない。過程に係わると俄然興味が湧くので、ちょっとだけ手伝ってもらう。
・お手伝いの種類は、料理を手伝うのはハードルが高いので、お箸を出して並べてもらう、調味料(ソース、ドレッシング)を置いてもらう、などが入りやすい。

・食べる・食べないの前段階として、まず興味を持ってもらうことが大切。
・苦手な野菜の味を嫌がっていることが多いが、食感や調理法など“なんとなくイヤ”と避けている場合もある。
・(選択ボード作戦)自分の好みの調理法を選択できるようにボードを作り(あつく・うすく、こいめ・うすめ、やわらかい・かたい、フォーク・スプーン、小さい・おおきい、やく・ゆでる等)、選んでもらうと料理自体に興味を持つとともに“自分が主役”になるので食べてくれる率が上がる。

・ポイントは、苦手な食材に親しみを持ってもらうこと。
・(お手伝いエプロン作戦)子どもの“手伝いたい”気持ちを上げる効果がある。エプロンをして料理のお手伝いをしてもらう。
・低年齢で料理が危なかったら、配膳を手伝ってもらうだけでも十分。
・料理に参加してつくる体験をすることで、苦手な食材に親しみ・愛着が湧く。

・自分で食べようとしないとき、「食べなさい」という指示や命令ではなく、子どもに「自分で決めた」という意識を持ってもらうことが大切。
・(くじ引き作戦)食事のメニューを書いた紙を箱の中に入れ、くじ引きで自分が引いたものを食べるルールを作ると、「自分で決めた」という意識を持ちやすくなるため、自ら進んで食べてくれる確率上昇。
・子どもがつ書く食器(箸、スプーン、お皿など)を一緒に買いに行き選んでもらうだけでも効果あり。

・スプーンやフォークが苦手な子どもには“遊び感覚の練習“がお勧め。
・(スプーン・フォークで運びごっこ)スプーン、フォーク、2cm角にカットしたスポンジを用意し、親子で皿から皿へ運ぶ遊びをして、楽しみながら練習すると苦手を克服できる。ていねいに運ぶとか、はやく運ぶとか、設定しても良い。
・うまくできたらたくさんほめて、うまくできなくてもがんばった姿をほめてあげましょう。
・成功体験を積み重ねることで、自信がついて自然と身につきます。

・食べることに対する集中力が続かないことが原因であることも多い。
・集中力を切らさずに食事を続けれもらう“どんぶり作戦”・・・残してしまったご飯類を別の器に移し替えて“どんぶり”を作りましょう。
・器を買えることで気持ちがリセットされ、食事に対する集中力が戻ります。

前提として、「全部食べなくても大丈夫」というスタンスでないと親の余裕がなくなって「食べる楽しみ」がなくなり親子ともどもストレスが生まれがち。
・「食べる」「食べない」の前においしさやどんな味かを話す → 「〇〇、おいし〜い!」
・あ〜ん、をして食べさせるときは、口に入れるまでの動きにいろいろなバリエーションを用意する → 「次は飛行機?車?」
・子どもが好きなキャラクターの話題で食事の時間も楽しく → 「ア〜ン、パンチ!でバイキンマンをやっつけよう!」
・少しでも多く食べて欲しい場合は、量を減らした上で、自分で選べるようにする → 「半分この、どっちを食べる?」
・ただ食べなければならない、というわけではなく、「自分のために言ってくれているんだ・・・と思わせる → 「おいしいから、ちょっとだけ食べてみる?」
・「ほめる」というより、食べられたという「事実」を伝えて次の自信につなげていく → 「お!食べられたね!」
・苦手だとわかっているものは最初から少ししか入れない、ハードルを下げて上げる → 「これで最後!!」
・あまり量を食べない場合は、最初から少な目に盛り付けて、全部食べる達成感を味わえるようにする → 「おかわりしよっか?」

・甘み・うま味・塩辛い味は脳が本能的に「おいしいもの」と認知し、苦みと酸味(すっぱい)は脳が本能的に「危険なもの(毒・腐敗物)」と認知する。
・思春期になれば食べる食材の種類が自然に増えるので、元気にしていればあせることはない。


1.「ひとくち食べてね」を30〜50回繰り返し続ける(この食べ物は安全と認識させる)。
 → 苦手な食べ物を出さないようにする、見えないように調理するのはNG。
2.嫌いな食べ物の価値を上げる。
 → 嫌いな食べ物の悪口を言うとさらに嫌いになるのでNG。
 → 嫌いな食べ物を食べたら好きな食べ物をご褒美にあげるのもNG。
 → 価値を上げる言葉の例;
「ニンジンを食べたらカゼを引かないよ」
「ピーマンはバイ菌をやっつけるパワーをくれるよ」
「お肉を食べたら髪がつやつやになるよ」
「ご飯を食べたらしっかり元気に走れるよ」
 → 子どもにとって神レベルの食べ物になったら食べてくれます。
3.たんぱく質をコツコツ摂取
・偏食の原因のひとつに“たんぱく質不足”がある。たんぱく質が不足してくると、消化酵素の作られる量が減ってしまうので「お肉が嫌い」「魚や卵が苦手」となりがち。また、肝臓の機能も低下して、臭いに敏感になる( → 魚の臭いがキライ)。
・肉・魚・卵・乳製品・大豆を積極的に摂りましょう。乳製品しか食べない子どもはカルシウム・マグネシウムのバランスが悪くマグネシウム不足になりがちなので海藻類・種実類・青菜類を一緒に食べさせましょう。
4.「あいうべ体操」をする。
・偏食の原因の一つに「食感がキライ」がある(例:固い食べ物、ヌルッとした食べ物、パサパサした食べ物)。
 → 味が苦手なのではなく、食感が苦手で食べられないパターン。
・赤ちゃんの時にあって成長とともに消えていく原始反射(柔らかいものだけ食べる)があるが、その中の「探索反射」が残っていると口の周りが敏感になり上記の食べ物が苦手になる。原始反射を消すための訓練が「あいうべ体操」。
(あいうべ体操)
 大きく「あ」 → 横に「い」 → 前に突き出して「う」 → 下にベロを出して「べ」
 ・・・これを3-5回で1セット、1日3セットが理想。
★ あいうべ体操は表情筋が鍛えられるので、ほうれい線予防、肌のハリを与える、等のメリットがあり、親子で行うことをお勧めします。

・食育専門モンテッソーリ教師、いしづか かな先生
・「子どもを知って受け止める、そして安心させて上げる」
・まずは3つの生活習慣に注目して子どもを観察しましょう。
 ✓ 睡眠は十分か
 ✓ おなかが空いているか
 ✓ 体の調子(便秘など)は悪くないか
 上記+「食事に集中できる環境か」も大切。
・解決しない場合は他に原因がないか考えるが、子どもの“食べない理由”はたくさんあり、“子どもの個性”という側面も;
 ✓ 感覚過敏;臭いを強く感じたり、口の中に入れたときの味が刺激的に感じたり。
 ✓ 発達の問題;噛む力が未熟、うまく飲み込むことができない等。
 ✓ 胃が小さい;ヒトはストレスがかかると胃が小さくなる。
・“子どもの気持ち“を考える。食べられない、食べたくない子どもに「食べて」と言われるのはつらい。
・食卓を楽しい雰囲気にして、子どもの「食べてみたいな」という気持ちを育みましょう。
・子どもと食べ物をつなぐ工夫として、一緒に買い物をする、一緒に料理をする、など工夫をしてみましょう。


<番外編>


子どもの夜尿症

2024年08月02日 19時23分53秒 | 育児
小児科開業医の当院には、
1年に数人ペースで夜尿症の相談があります。

夜尿症とは、膀胱に貯められる尿量(膀胱容量)を夜間つくられる尿量(夜間尿)が上回り、
あふれてしまう状態です。

乳幼児期は、
(膀胱容量)<(夜間尿)
ですが、小学校に上がる頃には
(膀胱容量)>(夜間尿)
となり、夜尿は消えていきます。

しかし中には、
1.膀胱容量が小さいまま
2.夜間尿が多い
ため、この逆転が起きずに夜尿が残ることがあります。

当院での治療は、
1 → アラーム療法を提案
2 → 薬物療法(ミニリンメルト®)
が基本です。

おっと、その前に大切な生活指導がありました。
それは「水分の摂り方」です。

飲んだ水分は約3時間後に尿となって排泄されます。
ですから、寝る時刻の前3時間は水分を制限していただきます。
もちろん、喉が渇いて眠れない、というのはやり過ぎ。
夕食の味を薄めにして、夕食後のがぶ飲みを予防しましょう。

小児夜尿症の解説記事を見つけました。
知識のアップデート目的で読んでみました。
ポイントを記しておきます。
…気づいたのですが、著者(インタビューを受けた今西Dr.)はアラーム療法を第一選択としている様子、薬物療法(ミニリンメルト®)は第二選択に位置づけられています。これも時代の流れかなあ。

<ポイント>
・子どもによっては眠りが非常に深く、尿意が生じても目を覚ますことができない、これに加え、膀胱機能の発達や、自律神経の働きが未熟だと、夜間に作られる尿の量が多いことが重なって、おねしょをしてしまう。
・徐々に4歳を過ぎると、夜もおねしょをしなくなります。
・気をつけてほしいのは、大きくなっても日中に漏らしてしまう場合です。日中は夜寝ているときと違い、意識があります。それでも漏らしてしまったり、おしっこが我慢できなかったりするというのは、場合によっては膀胱・尿道の神経や機能に問題がある可能性も考えられます。
・5歳を過ぎても「おねしょ」「おもらし」が頻繁に続く場合は一度受診を考えてください。「5歳以上で、1ヵ月に1回以上のおねしょが3ヵ月以上続く場合」「1週間に4日以上のおねしょは“頻回”」。
・日本では夜尿症は7歳でも有病率は10%程度。
・治療では、主に生活指導。投薬なども行うことで、自然に治癒する場合より治癒の期間も短く、2~3倍治癒率が高まる。
・生活指導の内容は、基本的に就寝2時間~3時間前から飲水制限、夜寝る前に、必ずトイレに行く(2度行かせるという専門家の意見もあります)。
・アラーム療法はパンツや専用のパッドにセンサーをセットして、おねしょを感知して、寝ている子どもを音や振動で起こすように促すもの、これを繰り返して子ども自身がおねしょに気がつくようにすると、子どもは「眠いから起こされたくない」という意識が働いて、膀胱の尿を蓄える能力を高めていくようになり、夜間の尿の量が減るという効果も現れる。
・アラーム療法の効果が今ひとつの場合は薬物療法を考慮する、デスモプレシン(ミニリンメルト)という抗利尿作用ホルモンと同じような働きをする薬を投薬する。この薬は口の中で「溶かして飲む」ものなので、薬の飲み方のコントロールができることが必要になり、ちゃんと飴を舐めて食べられるような年齢の子でないと、処方をするのが難しい。
・昼間のおもらしは“意識がある状態での排尿”であり、夜尿とは別の病態と考えるべきである。


■ 夜尿症」 5歳でも1ヵ月以上続く場合が受診目安 専門家ふらいと先生が解説
#1 受診が必要な「夜尿症」について
小児科医・新生児科医:今西 洋介
2024.03.25:コクリコ)より一部抜粋(下線は私が引きました);

 幼稚園や保育園、学校への進学が気になる時期や、お泊り保育、林間学校などの泊まりがけのイベント前などに気になってくるのが「おねしょ」や「おもらし」。進学前になんとかしなくては、と焦る保護者の方も多いのではないでしょうか。・・・そこで今回は今西先生に、おねしょとおもらしについて解説してもらいました。
 1回目は「おねしょはどうして起きるのか」について。症状が起きる原因や、日中のおもらしと夜間のおねしょの違いなどについてお聞きしました。

<目次>
  • 成長と共に自然治癒しない「夜尿症」
  • 「おねしょ」と「おもらし」の違い
  • 「5歳」が受診の目安
▶ 成長と共に自然治癒しない「夜尿症」
──進学・入学の時期が近づくと、「おねしょ」や「おもらし」について気にしだす親御さんが多くなります。でも、「おねしょだし、そのうち成長すれば治るかな」と思う方も多いと思うのですが、そもそも、おねしょはどうして起きるのでしょうか?

今西洋介先生(以下、今西先生):尿が膀胱に溜まって、膀胱が大きくなると神経が刺激されて尿意を感じるようになります。でも、子どもによっては眠りが非常に深く、尿意が生じても目を覚ますことができない場合があります。これに加え、膀胱機能の発達や、自律神経の働きが未熟だと、夜間に作られる尿の量が多いことが重なって、おねしょをしてしまうのです。
 とはいえ2歳ごろまでは、排尿を上手にコントロールできないので、反射的にしてしまいます。だからおねしょは当たり前のことなんです。
 でも、4歳ごろには徐々にコントロールができるようになり、親が「トイレに行こうね」と促したりすれば、昼も夜も漏らすことは少なくなります。そうして徐々に4歳を過ぎると、夜もおねしょをしなくなります。

▶ 「おねしょ」と「おもらし」の違い

──夜間の「おねしょ」と、昼間に漏らしてしまう「おもらし」では違いがあるのでしょうか?

今西先生:昼間の「おもらし」もおねしょと同様に、大きくなって排尿・膀胱の機能が発達していくことで改善する場合が多いですね。夜間の「おねしょ」と同じように、2~3歳ごろには少しずつおもらしもなくなっていきます。
 身体の発達と同じように、排尿・膀胱機能の発達にも個人差があるので、「3歳なのにおもらしをしている」「なかなかおむつがはずせない」と焦ることはないでしょう。
 ただ、気をつけてほしいのは、大きくなっても日中に漏らしてしまう場合です。日中は夜寝ているときと違い、意識があります。それでも漏らしてしまったり、おしっこが我慢できなかったりするというのは、場合によっては膀胱・尿道の神経や機能に問題がある可能性も考えられます。これは便を漏らしてしまうのも同様です。
 5歳を過ぎても「おねしょ」「おもらし」が頻繁に続く場合は一度受診を考えてください。この場合、おねしょの場合は「夜尿症」、おもらしの場合は「尿失禁症」の可能性があります。

▶ 「5歳」が受診の目安

──ではまず、親としては「5歳」というのが受診の目安と考えて良いのでしょうか?

今西先生:そうですね。夜尿症には明確なガイドラインがあって、『5歳以上で、1ヵ月に1回以上のおねしょが3ヵ月以上続く場合』、そして『1週間に4日以上のおねしょは“頻回”』といわれています。
 日本では、調査によると夜尿症は7歳でも有病率は10%程度と報告されています。つまり、1クラスのうち約3人は夜尿症の子がいるという計算です。
 幼稚園の年長さんや、小学校に上がってもおねしょをしているというのは、なかなか保護者としても周りに相談しにくいでしょう。さらに子ども自身も、お泊まり保育でオムツを持っていかなくてはいけないというのは、子どもの自尊心が傷つくことになります。これが高学年になれば、なおのこと子どもの心は傷つくはずです。
 実際、小学校の2~3年生くらいで「おねしょが続いているから受診しよう」と考える方は比較的少なく、林間学校が行われる4~5年生ぐらいになって、そのとき初めて親も子どもも受診しようと考えるご家庭が多いです。
 受診後の治療では、主に生活指導になります。また症状によっては、投薬なども行うことで、自然に治癒する場合より、治癒の期間も短く、2~3倍治癒率が高まるといわれています。
 確かに昔は、おねしょは“ときがくれば治る”という考えもありました。しかし、放っておいても治らない「夜尿症」だと、治療が必要な場合もあるということ。そして、月に2~3回のおねしょだから」と放っておかずに、5歳を過ぎてもおねしょが続いているようなら、ぜひ受診を考えてみてくださいね。・・・

■ おねしょが続く「夜尿症」 3つの治療法「生活指導」「アラーム法」「投薬治法」
#2 「夜尿症」の治療について
小児科医:今西 洋介
2024.03.26:コクリコ)より一部抜粋(下線は私が引きました);
・・・今回は「夜尿症」の治療法についてです。生活指導、アラーム法、投薬治法の3つの治療法を、今西先生に詳しくお話しいただきました。

<目次>
  • 飲水のコントロールや生活リズムを整えるのがファーストステップ
  • アラーム療法と投薬での治療法
  • 効果の早い投薬治療でも水分摂取量の管理が重要に
▶ 飲水のコントロールや生活リズムを整えるのがファーストステップ
──・・・実際に、病院ではどのような治療をするのでしょうか?

今西洋介先生(以下、今西先生):最初は生活指導を行います。診察時に話を聞いていると、子どもによっては、寝る前にかなりの量のお水やお茶を飲んでいるという子が結構いるんですよね。これではもちろん、夜間におしっこが出てしまいます。
 ですので、生活指導では、基本的に就寝2時間~3時間前から飲水制限をしてもらいます。また、夜寝る前に、必ずトイレに行くこと。そして毎日の排便の習慣や、早寝早起きといった生活リズムを整えることの重要性も伝えていきます。実はこれだけで改善をする子もいるんですよ。

▶ アラーム療法と投薬での治療法
今西先生:生活指導だけで改善が見られない場合は、「ピスコール」というアラーム療法を取り入れます。
 具体的には、パンツや専用のパッドにセンサーをセットして、おねしょを感知して、寝ている子どもを音や振動で起こすように促すものです。
 これを繰り返して、子ども自身がおねしょに気がつくようにします。このアラーム療法を行っていくと、子どもは「眠いから起こされたくない」という意識が働いて、膀胱の尿を蓄える能力を高めていくようになり、夜間の尿の量が減るという効果も現れるように。しかし、それでも難しい場合は投薬を考えます。

──投薬をすると、具体的にどのような作用が体に起きるのでしょうか?

今西先生:デスモプレシン(ミニリンメルト)という抗利尿作用ホルモンと同じような働きをする薬を投薬します。
 例えば、水を飲んだら間髪入れずにおしっこが出てしまうようでは生活できませんよね。そうならないため、人間の体の中では抗利尿作用ホルモンが働いて、利尿を妨げる働きをしています。デスモプレシンはこの働きを薬にしたもので、持続的な尿量の調整が可能になります。
 ただ、この薬は口の中で「溶かして飲む」ものなので、薬の飲み方のコントロールができることが必要になります。ですから、ちゃんと飴を舐めて食べられるような年齢の子でないと、処方をするのが難しいです。

▶ 効果の早い投薬治療でも水分摂取量の管理が重要に
──夜尿症で悩む保護者にとっては、投薬で尿量が調節できて、親も子も安心して夜眠れるというのは大変うれしいと思います。でも一方で、投薬となると副作用のことも気になります。

今西先生:そうですよね。実はこの薬は副作用が強く、「水中毒」になる可能性があります。・・・寝る前に水分を規定以上飲んだ上に、薬を摂取することで、さらに体内に水分をとどめてしまう。そして、血液中のナトリウム濃度が低くなり、水中毒が起きるのです。そこで、水分摂取量の管理について保護者が気を配る必要が出てきます。

──たとえば夜尿症ではなく、昼間にも漏らしてしまうような場合でもこのお薬は効果があるのでしょうか?

今西先生:日中漏らしてしまうというのは、実は夜のお漏らしとはまた別と考えたほうがいいでしょう。
 というのも、前回の記事でもお話ししたように、日中は寝ているときとは違い、意識がはっきりしています。そういう状態でもおしっこを漏らしてしまうというのは、自分で排尿のコントロールができなくなっているということです。この場合はデスモプレシン(ミニリンメルト)ではなく別のお薬が必要になってきます。

──ということは、日中と夜間のおもらしは別のものと認識して、病院へ受診する際に伝えたほうがいいということですね。ちなみにほかに保護者が気をつけておくべき点はありますか?

今西先生:生活指導やアラーム療法、投薬で夜尿症が一度は治ったのに、半年後など間隔を空けてまた症状が出てしまうパターンがあります。この場合、夜尿症ではなく、例えば糖尿病や脳腫瘍、甲状腺の病気などの病気が隠れていることも考えられます。「おねしょがまた再開した」と気軽に考えず、再度受診をするようにしましょう。・・・

■ 「夜尿症」は育て方や子どもの性格が問題ではない 
#3 「夜尿症」を悪化させてしまう要因を取り除くには?
小児科医・新生児科医:今西 洋介
2024.03.27:コクリコ)より一部抜粋(下線は私が引きました);

・・・最終回となる3回目は、「夜尿症」に悩む家庭が心掛けるべきことについてお聞きしました。

<目次>
  • 夜尿症は育て方や子どもの性格が問題ではない
  • おねしょを繰り返しても𠮟らないことが大切
  • トイレトレーニングと同じ「成功したらほめてあげる」
▶ 夜尿症は育て方や子どもの性格が問題ではない
──どんな子どもでもおねしょをした経験はあるのに、自分の子どもが夜尿症になってしまうと、「わたしの育て方が悪かったのかな」と、つい考えてしまうものです。
 子どもと接する時間が長いからこそ、保護者が自分のせいだと責めてしまい、親子にとって夜尿症がよりつらいものになっているように思います。

今西洋介先生(以下、今西先生):「私がオムツを外すことにプレッシャーをかけたからかも……」など、保護者の方が受診時にお話しされることがあります。
 でも、夜尿症は親の育て方や、子どもの性格などが原因ではありません。1回目でもお伝えしたように、膀胱の収縮や尿道括約筋の緊張・弛緩を司る神経は未発達なこと、夜間の尿量が多い、睡眠から覚醒できないということが原因です。ですから必要以上にお母さん、お父さんが自分、そして子どもを責めることはありません。
 夜尿症は身体の発育に関係する部分も多く、治療にかかる期間もそれぞれ。決して焦る必要はないのです。ですから周囲と比較する必要もないですし、見守る気持ちで治療をしていきましょう。

▶ おねしょを繰り返しても𠮟らないことが大切
──子育てと一緒ですね。それぞれの子どもに個性や特性があって、成長を見守るように、夜尿症も子ども自身のペースを見守って、一緒に伴走してあげることが大切なんですね。

今西先生:そうですね。そして見守ってあげることと同じくらい大切なのが「𠮟らないこと」です。頻繁におねしょをされると親の負担は本当に大変ですよね。
「なんでまたおねしょしたの!」とつい言ってしまう気持ちもわかります。でも、𠮟られることで子どもは排尿時に緊張するようになってしまい、夜尿症が悪化することも。
 できる限り𠮟らずに、おねしょをしなかったときはほめてあげて、子どもに自信をつけてあげるといいでしょう。

──お話をお伺いすると夜尿症では精神的な影響が大きいように思いました。

今西先生:𠮟らない、ということも大切ですが、同時に子どもが置かれている状況で受けるストレスというものも考える必要があります。
 実は受験のストレスや親の離婚などが引き金となって、夜尿症が起きることもあるのです。身体的な発育に加え、子どもの心にストレスがかかっていないかということを考えてみることも必要でしょう。

――受験のストレスで引き起こされる夜尿症というと、やはり大きくなってもなかなか治らない場合もあるのでしょうか?

今西先生:ほとんどのお子さんは、成人するまでに治ると言われていますが、15歳以上でも1~2%程度の子は夜尿症があるといわれていて、稀に成人しても続くケースはあります。小さいうちでもかなりおねしょの頻度が高いのであれば、早めに受診をすることをやはりおすすめしますね。

▶ トイレトレーニングと同じ「成功したらほめてあげる」
──ちなみに2~3歳ごろのお子さんを抱えているお母さん・お父さんは、オムツをはずすトイレトレーニングを始めるかと思うのですが、その際にあえておしっこでオムツが濡れる感覚を覚えさせたります。しかし、このことで夜尿症を引き起こすということはないのでしょうか?

今西先生:オムツを外すトイレトレーニングをする中で、お尻が濡れる感覚に慣れて遊び続けてしまう子どももいるかもしれませんね。でも、それが夜尿症を引き起こすということはないでしょう。
 逆に、夜尿症だからといってオムツを履かない年齢なのにオムツを履かせるのは、子どもも嫌がるのであれば、あまりおすすめはしません。おねしょシーツなどを敷いて、寝具などが濡れない対策をとりましょう。そして、お母さん、お父さんは「応援しているよ」という気持ちを子どもにきちんと伝えてあげてほしいと思います。
 特に、子どもの年齢が大きくなると「自分だけおねしょをして恥ずかしい」「親に迷惑をかけている」という不安や劣等感を抱くようになります。オムツを外すトレーニングのときに、「トイレでおしっこできたね、えらいね!」と褒めてあげたように、まずは子どもの不安を取り除いてあげましょう。
 そして、そういった親の心のケアがベースにあった上で、さらに親と子ども本人の「治したい」という気持ちが大切になってきます。治すには、生活習慣を見直したり、飲水の制限をしたりと、いろいろ地道な努力が必要ですが、焦らずに取り組んでいってください。・・・



親からの愛情をたっぷり受けた子の特徴は?

2024年07月07日 07時28分36秒 | 育児
興味深いテーマの記事が目に留まりました。
子どもを観察する際に役立ちそう…
いやいや、自分自身がどうか考えてしまいそう(^^;)。

私なりにまとめると、親の愛情が豊かということは、
・親が子どもの長所も短所も受け止めてくれる。
・だから子どもは安心して自由に行動できる。
ということに尽きるかもしれません。

あるあるなのが、「この子のためを思って…」とかわいがるのですが、
気がつくと親の希望や理想を押しつける“ゆがんだ愛情”になってしまうこと。
こどもは“叱られない行動”を取るよう誘導され、
自由度がない窮屈な生活になってしまいます。

■ 親からの愛情をたっぷり受けた子の特徴7選
 えらせん(作家)
2024/7/5:Yahoo!ニュース)より一部抜粋;

1.目標に向かって努力する
 愛情をたっぷり受けた子って、自己肯定感が高いです。だから「自分にもできる」って心から思えるようになります。例えば「将来はパイロットになりたいな」って目標を持ったら「英語の勉強頑張ろう」と自分から努力し始めます。親から「あなたならできる」って応援されてきたから、自分を信じてチャレンジする勇気があるんです。

2.学校であったことを話す
「今日、学校で何があったの?」って聞かれて、楽しそうに話す子は、家族との信頼関係がしっかりしている証拠。「話したら、ちゃんと聞いてくれる」って信じているから、学校での出来事を自然に話せるんですね。

3.自分のミスを認める
これは大人でも難しいこと。でも、愛情たっぷりに育った子は、ミスを認めることを恐れません。「失敗しても、愛されなくなるわけじゃない」って安心感があるから、素直に「ごめんなさい、自分が悪かった」って言えるんです。

4.わからないと言える
「わからない」と言うのって、実は勇気がいること。でも愛情たっぷりに育った子は、それを恥ずかしがりません。「わからないことがあったら、聞けばいいんだよ」って教えられてきたから、素直に「これ、わからないんだ」って言うことができます。

5.泣いてる友達を励ます
他人の気持ちに寄り添える子って素敵ですよね。自分が励まされた経験があるから、友達が泣いているのを見ると、自然と「大丈夫?」って声をかけられるんです。優しさの連鎖ってことですね。

6.親の仕事が将来の夢
これって、親子関係の良さを表しているんです。親の仕事を身近に感じて、「かっこいいな」って思える環境で育ったんですね。「僕もパパみたいな仕事につきたい」なんて言われたら、嬉しいですよね。

7.ありがとうが自然といえる
「ありがとう」をたくさん言ってもらってきた子は、自分も自然に「ありがとう」が言えます。感謝の気持ちをもって、支えあって生きていくことの必要性を理解しているんですね。

一見、「手のかからないいい子」は、
親の期待に添うよう努力し緊張を強いられています。
自分が否定されることを極端に恐れます。
1と2、それから6、5、7はかろうじて満たすかもしれませんが、
3と4は難しいような気がします。

子どものスクリーンタイムを減らす効果的な方法

2024年07月02日 06時15分16秒 | 育児
社会問題になっているスマホ依存、ゲーム依存…
その解決法はあるのでしょうか?

もともとは利便性を求めて開発・発展してきたものなので、
もはや手放すことはできません。
「使われるな、使いこなせ!」
という意見もありますが、なかなかこれが…。

科学的データで解決法を見いだせないかなあ…
と常々感じていたところに、以下の記事が目に留まりました。

<ポイント>
・子どもをスマホやダブレット、テレビなどのスクリーンベースのデバイスから引き離すことは可能である。
・最も効果的な方法2つ;
(その1)食事中や就寝時にデバイスの使用を禁止する。
(その2)親自身が適切にデバイスを使用する姿を子どもに見せる
・子どもに説教している親自身も、これらのことを実践するよう心がける。
・デバイスの使用を「ご褒美」や「罰」として用いることは、スクリーンタイム減少効果がない。

まあ、「親が手本を見せる」というオチですね。

■ 子どものスクリーンタイム削減に親がすべきこととは?
HealthDay News:2024/06/28:ケアネット)より一部抜粋(下線は私が引きました);

 常にスマートフォン(以下、スマホ)を手にしている子どもに対してフラストレーションを抱えている親にとって心強い研究結果が明らかになった。子どもをスマホやダブレット、テレビなどのスクリーンベースのデバイス(以下、デバイス)から引き離すことは可能なことが、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のグループによる研究で示されたのだ。同研究では、食事中や就寝時にデバイスの使用を禁止すること、親自身が適切にデバイスを使用する姿を子どもに見せることの2つの実践が最も効果的であることが示されたという。・・・
 論文の筆頭著者である、UCSFベニオフ小児病院の小児科医であるJason Nagata氏は、「この研究結果は、親がトゥイーン(8〜12歳の子ども)やティーンに使える具体的な戦略を示しているという点で心強い。その戦略とは、スクリーンタイムに制限を設けること、子どものデバイスの使用状況の把握に努め、寝室にいる間や食事の時間にはデバイスの使用を禁じることだ」と話す。さらに「子どもに説教している親自身も、これらのことを実践するよう心がけるべきだ」と付け加えている。
 Nagata氏らは、米国の思春期の脳の発達に関する研究(ABCD研究)の参加者のうち約1万人の12~13歳の子どものデータを分析した。ABCD研究では、親が「わが子はデバイスを使いながら眠りにつく」などの項目についてどの程度当てはまるのかを、1(全く当てはまらない)から4(強く当てはまる)までの4段階で回答していた。その後、親の評価により子どもの1日のスクリーンタイムをどの程度予測できるのかを調べた。・・・
 その結果、子どもの就寝時のデバイスの使用は、1日当たりのスクリーンタイムの1.60時間の増加と関連することが明らかになった。同様に、食事中のデバイスの使用と、親が子どもと一緒にいるときにもデバイスを使用する「悪い手本」である場合も、スクリーンタイムはそれぞれ1.24時間と0.66時間の増加に関連していた。
 一方で、食卓や寝室でのデバイスの使用を禁止するルールを設けることは、子どもの1日当たりのスクリーンタイムの1.29時間の減少につながっていた。また、食事中や就寝時の子どものデバイスの使用状況を監視することも効果的で、1日当たりのスクリーンタイムは平均で0.83時間減っていた。このほか、効果がない対策があることも分かった。デバイスの使用を「ご褒美」や「罰」として用いている親の子どもでは、1日当たりのスクリーンタイムが平均で0.36時間長かった
 Nagata氏は、「子どものデバイスの使用時間を減らすために親にできることの中で最も重要なのは、寝室でのデバイスの使用を禁止することかもしれない。就寝時のスクリーンタイムによって思春期早期の健康や発達に不可欠な睡眠時間が減ってしまう。親は、子どもの寝室にはデバイスを置かないこと、夜間にはデバイスの電源や通知をオフにすることを検討するのが良いだろう」と話している。


子どもの “偏食” “好き嫌い” への対処法

2022年05月25日 15時09分25秒 | 育児
便秘治療で通院しているお子さんの診療では食事内容が話題になることがあり、
そこで決まって出てくる単語が「偏食」「好き嫌い」です。

しかし私は指導する資格がありません。
なぜって、私の子どもがすごい偏食で、
ラーメンとポテトチップスとローソンのからあげクンで生きていました。
中学生になるまで食パン以外給食をほとんど食べられませんでした。

なので教科書で読んだ通り一辺のことしかアドバイスできません。

・苦い野菜は本能的に“毒”と感じますから、最初から食べないのは当たり前。
・料理は塩や砂糖で強く味付けするのではなく「ダシ」をうまく利用しましょう。

等々。

肝心の便秘対策としては、
・水溶性食物繊維:海藻類、ネバネバ系食品
・不溶性食物繊維:野菜類、糸寒天(おススメです)
を紹介してます。

近年、サンファイバーという製品が話題になりましたが、
毎日食べると高くつきますので紹介はしていません。

なお、野菜ジュースには食物繊維は含まれていませんので、
便秘対策としては有効ではありません。

当社の野菜ジュースは、水に溶けない不溶性の食物繊維は搾りかすとして取り除きますが、
水溶性の食物繊維は野菜ジュースの中に若干残っています

と本来期待する不溶性食物繊維が含まれていないことを明言しています。

さて、NHKの育児番組「すくすく子育て」に好き嫌いをテーマにした回がありましたので、
内容を一部抜粋・引用して紹介させていただきます。

ご意見番・コメンテーター;
・太田百合子氏(東洋大学 非常勤講師/管理栄養士)
・宮里暁美氏(お茶の水女子大学 特任教授/保育学)

余談ですが、私の子どもはこの番組の最後にある「視聴者の写真投稿コーナー」で一度登場したことがあります(^^)。
あのときのナレーションは清水ミチコさんだったなあ。

・・・「甘味(あまみ)」「うまみ」「塩味(えんみ)」には大切な栄養素が含まれています。
お米や芋類の「甘味」は、炭水化物で、エネルギーの元です。
肉や魚の「うまみ」は、アミノ酸で、体を作ります。
「塩味」はナトリウムで、私たちに必要なミネラルをとることができます。
一方で、「酸味」には腐敗のイメージがあり、「苦味」は毒のようなサインが感じられます。そのため、少し怖いと思ってしまい、野菜が苦手になりがちなのです。(太田百合子氏)

・子どもは、3歳ぐらいでようやく全ての歯が生えそろいます。それまでは、繊維質のものや、ほうれんそうの葉のように薄いものを、歯ですりつぶすことができません。(太田百合子氏)

・野菜に含まれる栄養は、ほかの食材からもとることができます。果物や芋類など、ほかのものが食べられていれば大丈夫です。(太田百合子氏)

やはり、本能的に「苦み」(と「酸味」)は受け付けないようにできている、ということですね。

便秘対策としての野菜摂取についての回答です。

・いいウンチを作るには、食物繊維と水が必要です。・・・果物や芋類など、他の食材からもとることができます。
例えば、食物繊維は、納豆からもとれます。やわらかいので、小さな子どもにも食べやすいですね。
なめこなどの、きのこ類にも含まれます。
苦手な食材であれば、こまかくしてスープにするのもいいでしょう。いろいろなものを組み合わせて食物繊維をとってください。(太田百合子氏)

成人領域の便秘治療のWEBセミナーを聞くと、
「水分はみんなが思っているほど便秘に影響しない」
という説明が近年多くなりました。
小腸・大腸で1リットル単位の水分の吸収や分泌が行われているので、
100ml単位の差は関係ないとのこと。
まだ栄養士さんまで知識が普及していないのかな。

それから、ASD(自閉スペクトラム症)児はキノコが苦手です。
あのグニャッとした食感がダメらしいです。

次は、
「いろいろ工夫して食べさせようとしているけど失敗続きでつらい」
「苦手な野菜がわからないように料理しているのに・・」
という質問への回答です。

・苦手な食材をわからないようにして、「栄養があるからね」と言って食べさせても、子どもは「だまされた」と感じることもあります。
すると、「今度は何を入れたの?」と、疑心暗鬼になってしまいます。
苦手な食材でも、例えば、にんじんは「にんじんだよ」と見せてあげることも大事だと思います。(太田百合子氏)

・頑張り過ぎるのはあまりよくありませんが、工夫することは大切です。
例えば、味や形状はごまかさずに、大きさや硬さは、子どもの発達に合わせて調理してみてください。(太田百合子氏)

最近の育児書を読んでも、このような
「工夫し過ぎると逆効果のこともある」
という表現が多いですね。
昔は「食材がわからないように細かく刻んで料理に仕込む、
お母さんの腕の見せ所ですよ」と書かれていたと記憶しています。

次は「食べられない子にどう声をかけたらよいか?」という質問への回答です。

・「これを食べないと、大きくなれないよ。病気になるよ」のように、子どもを怖がらせるような言葉がけはやめましょう。
かえって、子どもが不安になってしまいます。(宮里暁美氏)

・「今」は諦めることも、ときには大切です。
その食材を食べないと病気になってしまうわけではありません。
「今はいいか」と考えてもいいのではないでしょうか。
ただ、苦手な食べものを、食卓にのせ続けることは重要です。
まわりの人が、おいしそうに食べる様子を見せておくのです。
いずれ、「親が『おいしい』と言っていたな」と思い出されて、食べるようになることだってあるのです。(宮里暁美氏)

うちの子どもも、「友達が美味しそうに食べていたから食べてみたら食べられた」がキッカケになりました。

元々は「本能的に危険な食べ物」と避けることが「好き嫌い」のはじまりですから、
「慣れさせる」「危険ではないことを繰り返し教える」ことも解決の糸口になりそうです。

「あきらめないで食卓に出し続ける、10〜20回続ければ慣れてくる」
「一緒に買い物に行って子どもに選ばせたり、その絵を描いたりと日常に取り込む」
などが役立つと云ってました。


そして最後のコメント。

・幼児期は、自己主張の時期です。食べ物の「好き嫌い」を含めて、たっぷり出させてあげるのが大事です。
自己主張を受け止める大人は大変かもしれません。
でも、受け止めてもらえた愛情や関わり方が土台となって、我慢を覚えていきます。
そして、繰り返しになりますが「食事は楽しく」を大事にしてください。(太田百合子氏)

やはりここでも子どもの気持ちを受け止めきれないまま、
親が「大人ルール」にはめ込もうとして子どもとぶつかる構図が見え隠れしてきます。


<参考>

▢ 食事の悩み ~子どもの好き嫌い~(すくすく子育て)

こどもの “かんしゃく” と “ぐずり” への対処法

2022年05月24日 08時45分02秒 | 育児
さて、子育ての悩みの定番“かんしゃく”です。
子育てが一段落したアラ還の私でも、
いまだに“正解”がわかりません。

このテーマもNHKの「すくすく子育て」の特集回から、
専門家のコメントを拾ってみました。

ご意見番・コメンテーター;
・遠藤利彦氏(東京大学大学院 教授/発達心理学)
・井澗知美氏(大正大学 准教授/臨床心理学)

まずは、「園ではいい子だけど、家ではわがまま放題で困っている」
という相談に対する回答です。

・お子さんは、幼稚園という“社会”に適応しようと頑張っていると思います。
家に帰ってお母さんの顔を見ると、安心して、自分のフラストレーションのようなものを発散して、心のバランスをとっているのではないでしょうか。
家の外では「いい子」を演じているところもある。
でも家には、ダメな自分もイヤな自分も、すべてをひっくるめて「好きだよ」と言ってくれる親がいる。
とても健康的な状況だと思います。(遠藤利彦氏)

これはありがちなパターンですね。
この逆のパターン、つまり「家ではいい子、園では乱暴者」は危ないとされてます。
家で緊張して素を出せないのは、リラックスできる雰囲気がないと云うこと。

・自我が発達してきた子どもの場合は、自分で選ばせるのもよいですね。
例えば、「トイレに行ってほしい」と伝えたいとき、「行って!」「でない!」の言い合いになるようであれば、「ママとお歌を歌ったあとに行く? それとも時計の針が3になったら行く?」のように、選択肢を与えてみる。
「自分」が出てきている子どもは、「自分で決めた」と思えるほうがよいと思います。(井澗知美氏)

この辺の対応は、前項目“イヤイヤ期”と共通するものがあります。
命令ではなく、選択肢を含んだ提案なら、自我が否定されずに済みます。

次は「気に入らない」「思い通りにならない」と泣き叫んで手がつけられない、という相談に対する回答です。

・かんしゃくを起こしている子どもは、混乱していて、うまく頭を働かすことができません。
そのため、わかりやすく伝えることが大切です。
例えば、「ジュースがほしい!」とかんしゃくを起こしているとき、「お風呂から出てからにしようか」だけだと、うまく伝わらず「飲めないんだ」と思ってしまうかもしれません。
「お風呂から出たら、ジュースを飲もうね。おいしいよ」など、丁寧に伝えてみてください。
子どもが「ジュースを飲むためには、お風呂に入ればいい」とわかるように伝える工夫が大切です。(井澗知美氏)

・騒いでいるときは少し待ってあげることが大切です。
泣きやんで、少し落ち着いたところで、「ジュースを飲もうか」「ちょっとママとどこかに行こうか」のように声をかけるのがよいでしょう。
子どもは、親から声をかけられる、つまり、親から温かい注目をしてもらえる体験をすることで、心が安定していきます。(井澗知美氏)

“かんしゃく”を起こしている子どもは“混乱していて自分でもどうしてよいかわからない”と解説していますが、
お風呂に関係なくジュースが欲しいと訴える場合も有りますから、この対応は応用範囲が狭いと思われます。
「少し待ってあげる」「泣き止んで少し落ち着いたところで」とありますが、
数十分泣きわめいている状況を放置して周りからの冷たい視線に耐えるのは無理です。
残念ながら井澗氏のコメントでは「泣き叫んでいる子どもへの対応は困難、泣き止むまで待つ」という結論になってしまいます。

・古代ギリシャ哲学者のアリストテレスも言うように、怒りというものは、怒る対象、怒るタイミング、怒る方法を間違えると、その効果がなくなってしまいます。
例えば、言葉でわかってもらえる相手なのに、人やものにあたってしまう。
いってみれば、かんしゃくは対象・タイミング・方法を間違えた怒りではないでしょうか。
子ども自身も、いつのまにか、かんしゃくのような怒りは「自分のためにならない」と気づいて、発達とともに減っていくのではないかと思います。(遠藤利彦氏)

遠藤氏も解決法は示せず、子どもの成長を待つという結論にとどまります。

・子どもの怒りを抑えつけるのではなく、怒り方を学ぶ機会だと考えてみましょう。
このとき、子どもが自分の感情を理解することが大切になります。
子どもが感じている気持ちにふさわしい言葉を、タイミングよく貼ってあげる、「感情のラベリング」をしてあげるのです。(遠藤利彦氏)

・例えば、ゲームに怒ったときに、「うまくいかなくて、悔しかったね」「負けちゃって、がっかりだよね」といった声をかけます。
感情のラベリングは、子どもが自分の感情を理解するために、周りの大人が心掛けたい働きかけです。
ラベリングをしてあげることで、子どもは徐々に「今の自分の感情」がどのようなものかを理解していきます。
理解できるようになると、自分の感情とうまくつきあえるようになっていくと思います。(遠藤利彦氏)

できることは、混乱している子どものこころを言語化して整理するサポート(感情のラベリング)、でしょうか。

次は“かんしゃく”ではなく“グズリ”の相談に対する回答です。

・「この子はちょっと時間のかかる子だな」と思って声をかけると、声のトーンから切迫感がなくなり、やわらかくなると思います。
・・・子どもができていることを、もう少しほめてあげてくださいね。(井澗知美氏)

できないことを責めると子どもは追い詰められてしまう、できることをほめると子どもは自信を持ち、グズリは減るかもしれない・・・。

最後にお二人からのコメント;

・基本的に、プラスの感情もマイナスの感情も、自然に経験して、自然に表現されることが、子どもにとって健康な状態だと考えてください。
そういった感情について、子どもが落ち着いているときに話をしましょう。(遠藤利彦氏)

・グズりやかんしゃくは、とても大変な行動です。
でも、大変な面ばかりを注目するのではなく、いろいろできるようになってきた子どもでも、まだまだ甘えたい部分もあると考えてください。
1日に10~15分でも、短い時間でいいので、子どもがグズってないときに、一緒に遊ぶような時間を持ちましょう。
そんな時間があれば、子どもの気持ちが落ち着いていくと思います。
いろいろと工夫しても、うまいかない場合もあります。
そんなときは、地域の保健センターや子ども家庭支援センターなど、
発達の専門の所に相談する方法もあります。(井澗知美氏)

いずれにしても、前項目の“イヤイヤ期”、今回の“かんしゃく”や“ぐずり”は子ども本人が困っていることが共通点として存在すると感じました。
その“困った感”を大人は“どすこい!”と受け止めて、サポートしたり、待って成長を見守ったり・・・なんだか思春期の反抗期への対応と似てますね。

最後になりましたが、私は“かんしゃく”と“ぐずり”に困っている方には漢方薬の使用を提案しています。
よく処方する抑肝散は500年前、小建中湯は2000年前から使われてきた方剤です。
昔からこのような子どもは当たり前に存在し、それに対応するため知恵を絞った成果として伝わってきたお薬ですので、利用しない手はありません。


<参考>

▢ どうする? 子どものグズるキレる(すくすく子育て)

▢ 印象に残る症例②
なかしまこどもクリニック 院長 中島 俊彦