“子ども”を取り巻く諸問題

育児・親子・家族・発達障害・・・気になる情報を書き留めました(本棚4)。

「障害プラスα~自閉症スペクトラムと少年事件の間に~」(NNNドキュメント)

2017年07月31日 06時20分12秒 | 発達障害
NNNドキュメント「障害プラスα~自閉症スペクトラムと少年事件の間に~」(2016.5.15放送、日本テレビ)

<内容紹介>
 「人を殺してみたかった」2年前の佐世保女子高生殺人事件の加害少女は動機をそう語った。少女には自閉症スペクトラム障害の鑑定結果が出た。しかし、障害がそのまま少年事件に結びつくわけではない。「2つの間には、プラスαの要因がある」と専門家たちは語る。〝プラスαの要因〟とは何か。少年院や児童自立支援施設の子どもたちの生の声を聞くことで、子どもたちの中にある〝生きづらさ〟の正体を探る。また矯正施設で行われる国内初といわれる、再犯防止のためのトレーニングにも密着する。


 録画してあったものを1年以上経過してから視聴しました。
 巷では賛否両論があった番組のようです。
 私は小児科医ですが、発達障害は専門外です。
 そんなスタンスの私にとって、いくつか新たな情報が得られました。

 専門家として杉山登志郎医師が登場。
 彼の著作を何冊か読んだことがあります。

 杉山医師は「発達障害だけでは犯罪に走ることはない。障害+迫害体験(虐待、過剰な叱責、いじめ等)がそのきっかけとなる」と断言していました。
 虐待でもネグレクトの方が身体的虐待よりハイリスクというデータも示しました。
 そして、虐待する親もまた過去に虐待された被害者であることが多いという事実(虐待の連鎖)にも言及しました。
 つまり、目の前の子どもの治療だけでは解決せず、親も治療する必要があるということです。

 それから、彼の診療場面が放映され、過去のトラウマを探る手法は一見、催眠術のように見えました。
 一般の小児科医にはとても真似ができません。
 やはり発達障害は非専門家が扱うものではないとあらためて観じた次第です。


より詳しい内容紹介
 犯罪白書 平成27年版によると、2014年の少年による刑法犯の検挙人員は戦後最小となった。その為、不可解な事件が目立つ様になった。2014年7月26日、長崎県佐世保市では15歳の少女による同級生殺害事件が発生し、彼女は動機について「人を殺してみたかった」と語った。家庭裁判所は自閉症スペクトラム障害の中でも特殊な例としながら、この障害の特性などが殺人の欲求に大きく影響していると述べた。一方、自閉症スペクトラム障害の子を持つ母親は「障害と少年犯罪を結び付けられて迷惑している」と語る。

 自閉症スペクトラム障害は発達障害の一種で、脳機能の発達が関係する先天性の障害であり、コミュニケーション能力や社会性に問題があるとされる。この障害には個人差がある為、周りが気づかない場合も多く、特定の分野においては驚異的な能力を発揮する事もある。アメリカの精神医学界ではアスペルガー症候群と自閉症などは自閉症スペクトラム障害として統一され、日本もこれに倣いつつある。

 30年以上発達障害の患者を診てきた浜松医科大学の杉山登志郎医師は、児童自立支援施設で調査を行った。すると、当時児童自立支援施設に入所していた102人の内、75%以上に自閉症スペクトラム障害がある事がわかったという。しかしこれは障害=犯罪という事ではない。杉山医師は、障害に「プラスαの要因」がなければ犯罪には結びつかないと話した。

 杉山医師が語るプラスαの要因とは何なのか?その答えを知る為に、三重県伊勢市の宮川医療少年院を訪れ、複数の少年にインタビューを行った。自閉症スペクトラム障害と、少年事件の間にあるプラスαの正体に迫る。

 宮川医療少年院の少年にインタビューし、自閉症スペクトラム障害の傾向がある少年達の生の声を聞いた。少年達は「ムカついて発散したかった」「やりたい気持ちを抑えられない」「怒られてイライラした」「思い通りにならなくて爆発した」「もっと難しいものを盗みたかった」などと語った。

 児童自立支援施設「阿武山学園」(大阪・高槻市)の中には中学校がある。児童自立支援施設とは、犯罪などの不良行為をしたり、する恐れのある少年たちを自立させる施設であり、進学に向けて支援を行う。入所者の中で自閉症スペクトラム障害の傾向がある少年達に話を聞くと、「ハマったら止まらなくなってしまう」「人がいった事を理解するのが苦手」「テンションのコントロールが出来ない」などと語り、社会での生きづらさが垣間見えた。

 家庭裁判所の調査官として少年達と接してきた、京都工芸繊維大学の藤川洋子特定教授は、自閉症スペクトラム障害と少年事件の関係について、「自閉症スペクトラム障害=犯罪ではないが、様々な要因が結びついて犯罪に至ってしまうという事例はある」と話した。自閉症スペクトラム障害などの発達障害の診断を受けた子どもを持つ親が集まる「アスペ・エルデの会」を取材すると、親達は「自閉症スペクトラム障害と犯罪を短絡的に結びつけるのはとんでもない。本人が一番自分の障害に困っている」などと話した。

 浜松医科大学の杉山登志郎医師は「発達障害だけでは何も起きない。プラスαの要因がないといけない」と語る。杉山医師によると、そのプラスαとは過剰な叱責や学校でのいじめなどの迫害体験であり、犯罪に繋がる可能性が高まるという。杉山医師の調べによると、自閉症スペクトラム障害の子どもが虐待を受けると非行に走ってしまう確率は3.7倍、ネグレクトだと6.3倍にも増えるという。宮川医療少年院

 警察庁の発表によると、虐待を受けた恐れがあるとして警察が児童相談所に通告した子どもは2015年には3万7000件を越え、過去最多となった。今回取材した宮川医療少年院の少年達6人すべてにネグレクトやいじめの経験があった。これが杉山医師が言うプラスαなのだろうか?杉山医師は、トラウマは脳に大きなダメージを引き起こす為、自閉症スペクトラム障害と犯罪をトラウマが結びつけてしまう場合があると話した。

 杉山医師は、トラウマを見つけ出して処理する治療を行っており、その現場に立ち会った。自閉症スペクトラム障害の診断を受けたという少年は、コミュニケーションが苦手で自分の行動が抑える事が出来ないと話した。治療には「パルサー」という器具を使うが、この器具の振動する部分を左右の手にもたせて交互に刺激を与えると、感情を司る右脳を落ち着かせ、理性を司る左脳を活発化させる事が出来るという。記憶に埋もれていたトラウマを探しだす事が目標だが、患者の安全が第一で、フラッシュバックなどの副作用が起きないようにやらなければいけないという。

 自閉症スペクトラム障害の診断を受けたという少年を杉山医師が診察していった結果、少年が暴力行為を繰り返す原因は親からの虐待から来るトラウマであった事が判明した。少年の母親も自閉症スペクトラム障害があり、彼女も子どもの頃に自分の母親から激しい叱責を受け続けていたという。彼女は幼い頃に母親から音楽への道を断念させられており、自分の母親から受けた心理的虐待がトラウマとなり、彼女も息子にしつけのつもりで虐待を行ってしまっていたのだった。少年の治療をすすめる為にはまずは母親が自分のトラウマを上手く処理出来る様にしなければならなかった。

 児童精神科医の宮口幸治さんは、6年前にここに赴任し、少年達を診察する中で、少年達は認知機能が弱いという事に気づいたという。認知機能が正常に働いていないと、特に見る・聞く事から得る情報が正しく認識されず、自分では間違っていないと思っていても誤った行動に出てしまう。宮口医師は自閉症スペクトラム障害などで困っている子ども達の特徴について「認知機能の弱さ」「身体的不器用さ」「融通の利かなさ」「感情理解の乏しさ」「対人スキルの乏しさ」「不適切な自己評価」の6つを挙げる。

 宮川医療少年院では、再犯を防ぐ試みが行われている。認知機能の訓練という事から「コグトレ」と名付けられたその訓練とは?

 宮川医療少年院では、再犯を防ぐ試みが行われている。認知機能の訓練という事から「コグトレ」と名付けられたその訓練は、週に2度、およそ90分間行われている。認知機能の弱さを改善する訓練「最初とポン」は、教官が読み上げる文章を聞いて最初の言葉だけを記憶し、文章の中に動物が登場したら手を叩かなければいけないという物だった。訓練を取材していると少年達はトレーニング中に先生の言葉を遮っており、話を最後まで聞く事が出来ないという自閉症スペクトラム障害の特徴が出ていた。

 身体的不器用さを改善するコグトレは「キャッチ棒」。新聞紙を丸めた棒を相手に投げて渡すという物で、相手との距離感を養う。宮川医療少年院の法務教官の佐藤秀紀さんは、日々の少年達の行動を見る中で、力の入れ具合や体の感覚がしっかりしていない事に気づいたという。また、認知機能の弱さと身体的不器用さを同時に改善出来る「色か絵か?」というトレーニングもある。絵の行動と色の行動を記憶し、絵と色を組み合わせて行うトレーニングだった。コグトレを続けた少年の絵は、わずか4カ月で驚くほどの変化を見せたという。

 コグトレは少年院以外でも広がりつつある。非行化した子ども達の進学を支援する大阪市立弘済中学校分校の奥村教頭(当時)は、コグトレを導入した理由について「この学校の卒業生の高校中退率は85%から90%以上。その原因は授業をきちんと聞けない事や、人の話をきちんと聞けない事」と話した。考案者の宮口医師は、学校教育の現場でもこのコグトレを必要としているはずだと訴えている。

 大阪府にある和泉市立国府小学校では、新たなる試みが始まっている。それは通常の授業についていくのが難しい子どもの為の特別支援学級で、勉強だけでなく生きづらさも改善してくれると、コグトレには大きな期待が寄せられている。自閉症スペクトラム障害の傾向がある子ども達に日常で感じている悩みを聞くと、「友達がやっているとしたら自分となんか違うと思う」「失敗ばかりしてしまう」などの意見が出ていた。


『祖父母手帳』

2017年07月30日 10時45分06秒 | 育児
 まだこの本を読んでいません。
 紹介記事(監修を務めた小児科専門医の森戸やすみさんへのインタビュー)を読んだだけですが、フムフムとうなずけるコメントがありましたのでメモメモ。
 予防接種に関わっている小児科医は「感染症と予防接種の基本的なことを教育する場がない」という現実を日々思い知らされています。
 それと同様、現在の日本には子育てを学ぶ場がない、という指摘に激しく同意しました。

 あ、これから読もうとしている人はネタばれの可能性があるのでこのブログを読んではいけません!

■ 育児の常識は時代によって変わる!『祖父母手帳』監修の医師が語る課題
2017.7.19:WEDGE Infinity

・子どもに何かあるとお母さんは自分のせいって思ってしまうことが多いんですよね。「風邪を引いたのは寒くさせてしまったから」とか。子どもは1年間に平均6~7回風邪をひきますからって説明するとホッとしてくれます。

・お父さんは自分のせいって思わない傾向があるように思います。女親は「自分のせいで子どもが~~になる」ことをすごく気にして、男親はもう少し客観的。

・ネット上に育児情報は多いですが、真偽を確かめることはとても難しいのです。情報過多で玉石混交ですが、怪しいもののほうが多いんです。官公庁や大学病院、学会、公の研究所のホームページから探すことをお勧めします。

・ワクチンは大事ですが、同時接種が怖いとか、ワクチン自体がいらないという声があり、悩む親御さんが多いので書きました。予防できる病気が増えたので今は予防接種の数が増えたんですね。日本では混合ワクチンが少ないので、一度に3本4本打つこともあるのですが、親世代、祖父母世代は自分たちはそんなに打ってないからから不安を感じる。予防接種の必要性をきちんと調べてきたお母さんの横でおばあちゃんが「そんなに打つの? かわいそう!」って言っていることもありますね。「うちは心配なので2本までで」って言うお母さんもいます。病気はいつもらうかわからないので、本当は抵抗力の弱い幼いうちに打ち終わるのがいいんです。

・昔は細菌性髄膜炎って年間に1000人くらい発症していました。私が20年前くらいに研修医だった頃、髄膜炎ということがわかってご両親にお話するのがとてもつらかった。1歳未満の子が細菌性髄膜炎になると3分の1は亡くなり、3分の1は後遺症が残る。元気に治るのは3分の1という状況だったのです。それが今はヒブワクチンを4回打てば、ヒブによる細菌性髄膜炎の発症はほぼゼロにすることができます。

・外国の母子手帳は定期予防接種が受ける順番通りに書いてあるけれど、日本は定期予防接種の後に任意予防接種が載っていたりして把握しづらい。受ける月齢順に並んでいたら、受け忘れがないし、確認しやすいし、誤接種が減るし、任意接種のワクチンの接種率が上がるでしょうね。

・日本の母子手帳は専門家が監修しているので情報自体に間違いはないですが、読み物として面白くない。何が重要で優先度が高いのかがわかりづらいです。

・今の日本には育児を教える人がいないんですよね。医者に聞かれても子育てしていない医者もいっぱいいるし、医者は子育てを教える人ではなくて病気の専門家ですからね。基本的には、医者は病気の予防と治療、助産師はお産、保育士は預かっているときだけ、学校は教育機関。


発達期のセロトニン減少が自閉症発症メカニズムに関与する可能性

2017年07月16日 08時34分13秒 | 発達障害
 自閉症の科学的解析記事です。
 セロトニン減少は、果たして原因なのか、結果なのか・・・・

■ 発達期のセロトニン減少が自閉症発症メカニズムに関与する可能性-理研
QLifePro:2017年06月26日
◇ 15番染色体において重複異常が頻出
 理化学研究所は6月22日、モデルマウスを使った実験で、発達期のセロトニンが自閉症発症メカニズムに関与する可能性を明らかにしたと発表した。この研究は、同脳科学総合研究センターの内匠透シニアチームリーダー、日本医科大学大学院医学研究科の鈴木秀典教授らの共同研究グループによるもの。研究成果は「Science Advances」に6月21日付けで掲載されている。
 自閉症(自閉スペクトラム症)は、社会的コミュニケーション能力の欠如や繰り返し行動が特徴的な発達障害のひとつであり、症状は生涯にわたり表出する。また、自閉症の罹患率は年々増加しており、2010年の米国の調査では、約68人に1人が自閉症だとされている。そのため自閉症の症状を緩和させる療法の発見に向けて、原因解明が社会的に強く求められているが、その発症メカニズムはほとんどわかっていない。
 自閉症患者の中には、ゲノム異常を持つ人が見つかっており、なかでも15番染色体において重複異常が頻出することが知られている。また、過去の研究で、自閉症患者の脳内において神経伝達物質のセロトニンが減少していることが示されていた。

◇ セロトニン療法が自閉症に効果的である可能性
 研究グループは、ヒトの15番染色体重複と同じゲノム異常を持つモデルマウス(15番染色体重複モデルマウス)を解析したところ、脳内セロトニンの減少に関連して、セロトニンの供給元である中脳の縫線核の働きが低下していることや、セロトニン神経の投射先である大脳皮質(体性感覚皮質バレル野)での感覚刺激の応答異常を発見。また、発達期に重点をおいた選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)による薬理学的なアプローチでモデルマウスの脳内セロトニン量を回復させることにより、縫線核と大脳皮質の電気生理学的異常を改善させることに成功。さらに、15番染色体重複モデルマウスの成長後にセロトニン量を回復させることで、社会性行動異常も改善することがわかったという。
 抗うつ薬として使用されているSSRIは、過去にも自閉症患者に対して投与されてきた実績があるものの、その効果について結論が出ていなかった。今回の研究成果は、セロトニン療法が自閉症に効果的である可能性を示すもの。今回の研究による知見は今後、自閉症の適切な治療法の開発にも貢献するものと期待できる、と研究グループは述べている。


理化学研究所 プレスリリース

自閉症の人が他人と目を合わせない理由

2017年07月16日 06時36分49秒 | 発達障害
 自閉症児の行動には意味があることを東田直樹君から教わりました。
 目を合わせないことを脳の過敏性から説明した記事です;

■ 自閉症の人が他人と目を合わせない理由
HealthDay News:2017/07/12:ケアネット
 自閉症の人が他人の目をほとんど見ようとしない理由を追究した研究の結果が、「Scientific Reports」6月9日オンライン版に掲載された。
 研究を実施した米マサチューセッツ総合病院のNouchine Hadjikhani氏は、「自閉症の人は一見、他人との対話に興味がないように見えるが、そうではないことが分かった。目を合わせないのは、脳の特定部位が過剰反応することに由来する過剰な覚醒状態(excessive arousal)の不快感を低減させるための手段であることが明らかにされた」と述べている。
 アイコンタクトを避けることは、社会や個人に対する無関心を示すサインだとみなされることが多い。しかし、自閉症の人は「他人と目を合わせると不快感やストレスを覚える」と話すことが多いと、同氏らは指摘する。
 今回の研究ではこの問題を検討し、皮質下系(subcortical system)と呼ばれる脳の経路が関与していることを突き止めた。この経路は、乳児期には人間の顔に関心を示すように促し、後には他人の感情を理解することを助ける働きがあり、アイコンタクトをしたときに活性化される。
 同氏らは自閉症の人(23人)と定型発達の対照群(20人)に人間の顔の映像を見せ、自由に見てもらった場合と、目の領域だけを見てもらった場合の脳の活動を観察した。その結果、自由に見てもらった場合は両群で同様の脳の活動がみられたのに対し、目の領域だけを見た場合、自閉症の人では脳の皮質下系が過剰に活性化することが分かった。この傾向は特に怖がっている表情の顔を見たときに強くみられたが、楽しそうな顔や怒った顔、普通の顔でも同じ結果が得られた。
 Hadjikhani氏は、この知見が自閉症の人の関心を引くための有効な方法につながる可能性があると述べている。「自閉症児に対する行動療法では、他人の目を見ることを強制すると大きな不安を与える可能性がある。アイコンタクトを少しずつ習慣化する方法を取ることで、自閉症児はこの過剰反応を克服し、長期的にみればアイコンタクトをできるようになるかもしれない。それにより、人と目を合わせないことが社会脳の発達に及ぼす連鎖的な影響も回避できる」との見方を同氏は示している。


<原著論文>
・Hadjikhani N, et al. Sci Rep. 2017 Jun 9.

「あなたが生まれてから」

2017年07月08日 06時47分23秒 | 子どもの心の問題
あなたが生まれてから
くわばた りえ:著
マイナビ、2014年発行



<内容紹介>
「100点の母」にならんでいい。「0点の母」じゃなかったらええやん♪
 オフィシャルブログ「くわばたりえのやせる思い」がママたちから絶大な支持を集めているくわばたりえさん。
 本書は、ブログ記事に書き下ろし原稿を加え、イラストと組み合わせたメッセージブックです。子育ての喜び、悩みがリアルに綴られていて、子育てママなら共感必至!
 特に、くわばたさんが「赤ちゃん」「お兄ちゃん」「パパ」の視点からママたちに伝えたいことを絵本のように展開した「絵本ページ」は必見です。
 子育て中は心に余裕がなくなり、子どもや旦那さんにつらく当たってしまいがちですが、そんなとき、この「絵本ページ」は、家族への思いやりを取り戻すきっかけになるかもしれません。
 「絵本ページ」を子どもに読み聞かせることで、「大好きだよ」という思いを伝え合うのもおすすめです。
 読む度に「これでいいんだ」「わたし、がんばってる! 」と自分を認めることができ、わが子への愛を再確認できる貴重な一冊。疲れたとき、元気が出ないとき、子どもを寝かしつけた後にそっと開いてみてください。


 一読しての感想は「なぜ日本の子育てはこんなに苦行になってしまったのだろう」という素朴な疑問。
 苦しみ:楽しみ=7:3 という印象です。
 これでは出産・子育てに希望を持てません。

 主因は母親の孤立でしょうか。
 支え合う横の人間関係がないと孤立無援の大プロジェクトになってしまいます。

 この本の白眉は旦那さんの独白ページ。
 ここまでストレートに書いてある本をついぞ見たことがありません。

 育児関係の本を読むたびに感じていました。
 母親は赤ちゃんを守る。
 父親は母親と赤ちゃんを守る。
 では父親を守ってくれる存在は?

 仕事から帰った父親は、母親の育児報告を黙って聞くべきである、とよく書かれています。
 では父親の抱える仕事のストレス、母親の訴えを聞くストレスの蓄積はどう解消すればいい?

 追い詰められる母親ばかりがクローズアップされますが、会社にも家庭にもこころ休まる場所のない旦那さんのストレスを顧みる視点がなければ、父親はつぶれてしまう、日本の自殺者は減らないと思います。

 ここまで悪化してしまった育児環境、絡み合った糸をほどいて一つ一つ解決していかなければ、日本の未来はないと思いました。

「子どもたちのミーティング 〜りんごの木の保育実践から」

2017年07月07日 13時17分34秒 | 子どもの心の問題
子どもたちのミーティング〜りんごの木の保育実践から
柴田愛子、青山誠、共著
りんごの木、2011年発行



内容紹介
第一部:けんかのこと、遊びのこと、友だちに言いたいこと、子どもたち同士で話し合う、りんごの木のミーティング。子どもたちの言葉そのままに実況収録。
第二部:柴田愛子と青山誠の対談。


NHKの育児番組「すくすく子育て」にゲストで出演した柴田愛子さん。
話を聞いていると「この人は子どものことを深く深〜く理解している」と第六感が働きました。
彼女に興味を持ち、本を購入して読んでみました。

いや〜、すばらしい。

りんごの木」という保育所では、保育者ではなく子どもたちが主役のミーティングが開かれているらしい。そこでは、大人が気づかない子どものこころの揺れ動きが共有され、大人では考えつかない視点や発想の意見のオンパレード。
友達とのやり取りの中で一歩ずつだけど確実に成長していく子どもたちの姿に驚かされます。
そして自分の気持ちを言葉にすることにより、自分でも気づかなかった新たな発見があったり、スリリングですね。


<備忘録>

■ 第一部

・動物園の動物と野生の動物は違う。どっちが幸せ?
 野生の動物はエサを自分でとらない限り食べられない。もしかしたらずっと食べられなくて死んじゃうかもしれない。それに、自分が他の動物のエサになって食べられてしまうかもしれない。危険極まりない。でも野生の動物は自由。寝たいときに寝て、行きたいところに行ける。
 動物園の動物は、毎日2回ご飯が食べられる。他の動物に食べられることはない。安全。でも自由じゃない。寝たいときでも人間に起こされて部屋の外に出される。外に痛くても檻の中に入れられる。

 みんなが動物ならどっちを選ぶ?

 動物園という意見が多い。どうしてそう思うのか聞くと「だってたべられないから」「あんぜんんだから」。
 一方の野生派は「じゆうなほうがいい」「どうぶつえんにいるとなにもうまくならない、きのぼりとかさ」。

 大人の意見(動物園勤務歴あり)。 
 わたしは野生の動物の方が幸せだと思う。動物と一緒にいるとね、自分も、人間も、動物なんだってすごく強く感じるの。そうすると、それまで人としての幸せだと思ってきたもの、たとえば「長生きすること」とか「おいしいものを食べる」とかは、あまり大切なことじゃなくて、ただ生きているって事がすごく大切に思えるの。野生の方が「生きる」ってことをしていると思う。「生きる」の周りにに、余分なものがくっついていない気がする。


■ 第二部

・こどもって3歳ぐらいは表情や動きで気持ちや要求などほとんどのものを表している。ところが4歳、5歳になってくると、感情は表情で読み取れるけど、その子の思っていること、考えていることは読み取れない。読み取れないときに言葉を投げかけてみると、言葉になって出てくるということに気がついた。

・幼稚園は集団のルールを守るために通っているのではなく、個人の育ちに集団が必要と認識すべき。ルールを守るか、守らないか、というようなミーティングはしない。本来、ルールというのは人と人との関係の中で生まれてくるもの。

・今の日本では、お金と時間と親の労力もかけて子育てしている。親が子どもの運転手代わりになって塾へ行きお稽古事をいくつも掛け持ち、大半のお金が子どもの教育費に流れて・・・それでいながら、子どもたちの自己肯定感の低さが世界一ってどういうこと?
 これって、子どもが望んでいないことに費やしているから、子どもが育たないのでは。

・ミーティングの思考回路

(感情レベル)困ったことがあった
  ↓
(意識づけ)何に困っているのか
  ↓
(思考)どういう解決方法があるのか
  ↓
(判断)その中で、自分はどれを選択するのか
  ↓
(決断・結論)さらに自分の性格から考えると、どれしか選択できないのか? 自分にできる方法は?


「ギーク」(Geek)とは?

2017年07月03日 06時09分51秒 | 発達障害
 見慣れない単語ギーク(Geek)。
 下記記事では「知能レベルが高く、興味のあることに対する集中力がある一方で、人付き合いは苦手なタイプの人を指す口語」と説明されています。
 そしてこの傾向は、高齢の父親の息子に多く、社会的に成功する傾向がある一方で、ギーク度の高さと自閉症には共通した遺伝子変異が関与している可能性を示唆しています。

 う〜ん、一部うなづけるところがありますね。

■ 高齢の父親の息子は“ギーク”度が高い?
HealthDay News:2017/07/03
 若い父親の息子よりも、高齢の父親の息子の方が、「ギーク(Geek)」になる可能性が高いことを示唆する研究結果が「Translational Psychiatry」6月20日号に掲載された。
 「ギーク」とは、知能レベルが高く、興味のあることに対する集中力がある一方で、人付き合いは苦手なタイプの人を指す口語。今回の研究を実施した米マウントサイナイ・アイカーン医科大学シーバー自閉症センターのMagdalena Janecka氏らは、「ギークの特性があると、学業で優秀な成績を収め、現代社会で成功しやすい」としており、父親が高齢であることのベネフィットを示されたとしている。
 同氏らは今回の研究で、英国の双生児を対象とした研究であるTwin Early Development Study(TEDS)に参加した子ども7,781人の12歳時の非言語的な知能レベルや興味の限定および反復行動、社会的孤立の評価データに基づき、子どもの “ギーク度”をスコア化した。
 その結果、男児の場合、父親が高齢になるほどギーク度のスコアが高まることが示された。一方、このような関係は女児では認められなかったほか、母親の年齢による影響はなかった。
 これまで、高齢の父親を持つ子どもは自閉症や統合失調症を発症する可能性が高いことを示す研究報告が相次いでいたが、Janecka氏は「今回の研究では高齢の父親の息子は学業面でもキャリア面でも有望であることが示された」としている。
 また、この結果について同氏は「高齢の父親の方が若い父親よりもキャリアが確立されていて、裕福である可能性が高いことが背景にあるのではないか」と考察。それによって、子どもがより恵まれた環境で成長し、レベルの高い学校に進学できているとも考えられるとの見方を示している。
 さらに同氏は、ギーク度の高さと自閉症には共通した遺伝子変異が関与している可能性を示唆。こうした遺伝子変異は高齢の父親に多くみられる傾向にあることも分かっているという。同氏は「このような遺伝子変異をいくつか持って生まれた子どもは学業で優秀な成績を収めるが、たくさんの遺伝子変異があり、さらに他の危険因子が加わると、自閉症の素因になる可能性があるのではないか」との推測を示し、「最近報告された自閉症と知能指数(IQ)の高さには共通した遺伝子が関与していることを示す研究結果も、それを支持している」と説明している。


<原著論文>
・Janecka M, et al. Transl Psychiatry. 2017 Jun 20;7(6):e1156.