“子ども”を取り巻く諸問題

育児・親子・家族・発達障害・・・気になる情報を書き留めました(本棚4)。

犬の訓練士、中村信哉氏の仕事

2018年01月31日 13時37分05秒 | 育児
NHKプロフェッショナル・仕事の流儀「ワンちゃんスペシャル」(2018.1.29放送)

 ペットの犬に関わるプロの仕事師達を紹介した番組。
 トリマー、獣医師に引き続き登場したのが訓練士の中村信哉氏でした。
 もともとは警察犬訓練士だった彼は現在、栃木県の大田原市で、暴になった愛犬を更生させることを仕事にしています。
★ 「北栃木愛犬救命訓練所

<放送内容>
『悪者になっても、命を守る』
 ペットブームのかげで、毎年のように起きる飼い犬によるかみつき事故。例年4,000件以上発生し、死亡事故まで起きている。そんな飼い主の手に負えなくなった凶暴犬を専門に預かり、更正を請け負うのが、訓練士・中村信哉。飼い犬との平穏な生活を求め、中村を頼る声は全国各地から届く。だが、その訓練は極めて厳しく、批判の声も浴びることさえある。それを承知の上で、中村は自らの信念を貫き通す。
 「厳しいのが嫌いだからといって、やらなかったら襲ってくることも止まらないし犬はかみ続けてしまうんですよ。かむ犬は治らないんだとあきらめてしまって処分をしたケースがあるんです。命が終わってしまうんです。だから厳しくやるわけです。それこそ、どんな方法を使ってでも飼い主さんのもとで一生を送らせたい。」
 中村が引き受けた犬の更正率はおよそ8割。更正を断念した犬も事実存在するが、中村はその犬たちをすべて“わが子”として引き取っている。






 世論は彼の手法を批判する動物愛護団体もいて喧々ガクガク状態のようです。

 でも私は、別のところに興味を持ちました。
 ペットとしての犬が凶暴化する原因は様々でケースバイケースだが「叱るだけとか褒めるだけとかの極端なしつけが一因」と中村氏。
 中村氏が行っている訓練は「人間が上、犬は従うもの」というルールをとことん教え込むことです。
 あくまでもペットとして生き残れるようにしつける内容。
 なぜなら、ペットとして振る舞うことができないと人間社会から抹殺されてしまうからです。
 飼い主に尻尾を振り、甘える存在でなければ生きていけないからです。

 「人間の子育てと同じではないか」と誤解された視聴者もいたのではないでしょうか。
 しかしペットのしつけと、人間の子育ては違います。

 昔々、オオカミの集団生活の上下関係がハッキリしたしくみを観察した縄文人は、「あの階層の一番上に人間が立つことができれば、オオカミをてなづける事ができるかもしれない」ことに気づき、実行して長い時間をかけて「犬」というペットを作り出しました。
 ペットは人間の指示を忠実に守る存在です。
 ですから人間にとって喜びや満足感を得られるだけの動物であり、現代社会ではそれが“癒やし”に変化してきました。

 一方、人間の子どもは成長発達し、自立して親を追い抜いていく存在です。
 たくさんの愛情を必要とする上に、自立するために親との葛藤も抱えます。
 ですから親は、喜びだけではなく、悲しみ・怒りなど、様々な感情でその存在を揺さぶられます。
 これぞ人生の醍醐味(と私は思っています)。
 その葛藤の末に一人前になって自立し、家族を持ち、子孫を残すことを見せてくれると、他に代えられない充実感を与えてくれます。

 現代の日本社会では、ペットを育てることはできても、人間の子どもを育てる能力が落ちてきてしまいました。

動物の「子殺し」、人間の「子殺し」

2018年01月13日 08時03分48秒 | 動物の子育て
少し前にNHK総合「ダーウィンが来た!」でネコの生態を2回にわたって特集していました。
その中で私の興味を引いたのは「雄ネコによる子殺し」です。
動物が生きる目的は「種の保存」という考え方もありますが、現在は「自分の遺伝子コピーの保存」が第一目的であるという考えがコンセンサスを得ているようです。
雄ネコが子ネコを殺すシチュエーションは、「発情期に雌ネコが他のオスの子どもを連れているとき」。
哺乳類では一般的に、子育て中(授乳中)は発情しないため、その子どもを抹殺すると自分の相手をしてくれるという論理です。
人間はそれを見て「残酷」と思うのがふつうでしょう。
でもネコにとっては自分の子どもを守る(かわいがる)のと、他のオスの子どもを殺すことは、「自分の遺伝子コピーを残す」という目的の下ではイコールなのですね。

これを学問的に解説した本を見つけました。

「本当は怖い動物の子育て」竹内久美子、新潮選書、2013年発行



たしか発売時に興味を持って購入したのですが、その後本棚のインテリアと化し、今回ようやく読了することになりました。

すると、子殺しに限らない厳しい動物界の「掟」がたくさん紹介されているではありませんか。
「自分の遺伝子のコピーを効率よく残す」ために子殺しも辞さないだけでなく、妊娠や受精をもコントロールするすべを身につけている種も存在することを知りました。

さらに後半、「動物の子殺し」という視点から、「人間の子殺し(虐待)」を検討している項目はこの本の白眉です。
原始的な狩猟採集生活をしている民族・部族の中には、母親に自分の産んだ子どもを育てるか捨てるかの判断を委ねられる社会が存在する、そしてそれは少数派ではないという事実を知り愕然としました。
そしてその母親が子どもを殺すときの判断材料は、現代日本が抱える“虐待”の危険因子とオーバーラップします。
つまり、虐待死させる前に育てられない子どもはなき者とするという社会システムが存在するのです。
子どもを捨てた母親は他人から責められることはありません。
その部族では「自分の子どもを見捨てたことのない女は皆無」という動かすことのできない現実があります。

これらの情報を、子ども虐待対策に導入して生かさなければならないと感じました。
“倫理観”や“母性”などという性善説に期待し、頼っている場合ではありません。
“生物”あるいは“哺乳類”としての生存目的から評価し、対応すべき時が来ています。
子どもを守るためには、ハイリスクの親子を抽出し、見守り、子育てが無理を判断したら問題が起きる前に(子どもに心の傷が残る前に)対処することが必要でしょう。


**********<備忘録>**********

ジャイアントパンダの育児放棄
 ジャイアントパンダは双子を生む確率が45%と高いが、双子を産んだとしても片方の子しか育てず育児放棄する。

兄弟姉妹どうしのサバイバルゲーム
 同胞同士で殺し合いをさせ、生き残った方を育てる種がいる(例:タスマニアデビル、イヌワシ、マグロやカツオ)。
タスマニアデビル)一度に生まれる子どもは20〜40頭と多いが、育児嚢の中の乳首の数は4つしかない。そこでこの“先着4名”の座をかけ、生まれたばかりの子どもたちは命がけのレースを展開する。ひとたび乳首に食らいついたら、何が何でも離さない。当然、他の子どもは飢えて死ぬしかない。
キハダマグロ(参考1)「後期仔魚」(しぎょ)は目が異様に大きく、口が全体の1/3位を占めている“口裂け魚”様であり、これは共食い(自分と同じ種の魚を食べる)目的の変態である。この共食い期を過ぎると、体の大きさに対する口の大きさはだんだん小さくなり、ふつうの魚っぽい姿になっていく。

近大マグロ(参考2)近畿大学水産研究所が世界で初めて成功した完全養殖のクロマグロ。養殖の家庭で大きな問題点の一つが、やはり後期仔魚どうしの共食いだった。ただし、体の大きさが同じだと共食いは起きず、体の大きさが違うと起こることに気づき、体の大きさで分けて養殖することで解決した。

母親の妊娠放棄・育児放棄
 エサが足りなくなると妊娠をストップする大型哺乳類がいる。せっかく産んだのに一頭しか子が生まれてこなかったら育児放棄する種さえいる(例:グリズリー)。

哺乳類の子殺し
 自分の子を一刻でも早くメスに産んでもらうために、メスが抱えている乳飲み子(他人の子)を殺すオスがいる(例:ハヌマンラングール、ライオン・・・子殺しは霊長類では30種類くらいで確認されている)。
 哺乳類のメスにはふつう、子に頻繁に乳を与えている限り、子が乳を吸うという刺激によって、発情もしなければ、排卵も抑えられるというメカニズムがある。乳を吸う者がいなくなってしばらくすると、発情と排卵が再開される(参考3)
 群れのリーダーが、群れの乗っ取りによって変わっていくようなタイプの社会を持つ哺乳類では、まず間違いなく子殺しが行われているはず。

人間の授乳と妊娠
 人間社会でも狩猟採集生活をしている部族では、女は3年くらいの間、子に授乳する。頻繁に授乳している限りプロラクチンというホルモン分泌により排卵が抑制されて次の子はできにくくなる。この“頻繁”とは、5回未満と5回以上で分かれるようである(参考2)

ブルース効果
 メスが「今生まれてもどうせオスに殺される運命にあるのなら」と、妊娠中の我が子を流産してしまう性質を持っている種がいる(例:マウス、ゲラダヒヒ)。これを「ブルース効果」という。

近所の人さらいおばちゃん
 自分の乳の出をよくするために、近所の子どもをさらい、食べてしまう小型哺乳類がいる(例:カリフォルニアジリス)。

ラッコ、ミンク、ネコのイタい性交
ラッコ)オスはメスの背後から馬乗りになるが、ペニスの完全な挿入はメスが背を反らしてくれることが必要で、いったんメスが背を反らすと、オスは背後からメスの鼻にかみついて離さない。
ミンク)首筋が標的になり、流血は免れない。
ネコ)ネコのペニスには、根元に向かって棘が生えていて、挿入時には何ともないが、引き抜く際にメスに激しい痛みを与える。
・・・これらの動物では、交尾の刺激により排卵が起こるシステム(交尾排卵)になっている。

昆虫の幼虫の共食い(例:モンシロチョウ、ナナホシテントウ、タガメ)
モンシロチョウ)アブラナ科の葉の裏に産み付けられた卵から孵化した幼虫は、まずは自分の卵の殻を食べて栄養補給し、そして波を食べ始める。もし、別の卵があるとその卵を先ず食べる。ふつう、モンシロチョウは1枚の葉に1個しか卵を産まず、別の卵があるとすればそれは身内(兄弟姉妹)ではないから。

“共食い”する哺乳類(例:チンパンジー、ライオン)
チンパンジー)メスがある集団から別の集団へ移る際、乳飲み子を連れていると子殺しが起きる。そして雑食系(草食&肉食)のチンパンジーは殺した子を食べてしまう(ハヌマンラングールは草食なので食べない)。

 これ以降は、人間社会での話になります。

アヨレオ族の“子殺し”(参考4)
 南米のボリビアとパラグアイの国境付近に住む先住民で、狩猟採集生活と焼き畑農業を営んでおり、不完全な母系制社会。
 女が男と正式に結婚するまでの期間、何人もの男と付き合ったり同棲したりするが、その過程でできた子を高い確率で殺してしまう習慣がある。

どういう場合に子を殺すのか?
1.父親から確実なサポートが得られそうにないとき
2.奇形児や双子が生まれたとき(双子の場合はどちらかを殺す)
3.連続して生まれた兄弟姉妹の年が接近しすぎていて、上の子の生存が危うくなりそうなとき


・・・この判断は出産する女に委ねられており、どう選択しても罰せられることはない。アヨレオ族では生まれたばかりの自分の子を殺したことのない女はいないという。

“子殺し”の論点
「人間関係地域ファイル」(HRAF)がまとめた60の文化人類学的社会についての情報からデイリーとウィルソンが分析したもの。すると、60のうち39の社会で子殺しが行われ、アヨレオ族は決して極端な例ではなく、ごくふつうの社会であると言うことが判明した。

1.赤ん坊が男にとって、本当に自分の子かどうか?
例)不倫での妊娠、別の部族の子、母親の前の夫の子
2.赤ん坊の質はどうか?
例)奇形児、重病
3.現在の環境は、子育てにとって適切か?
例)双生児、未婚の母、早すぎる出産/子が多すぎる、男性の支援が得られない、母親の死、経済的困窮


乳飲み子がいるのに交尾ができるように進化した人間のメス
 人間では、メスが子に乳を与えていても“発情”することができて交尾ができるため、メスが他の男の乳飲み子を連れていても子殺しをする必要がなくなった。
 人間のメスは、哺乳類として画期的な存在である。人間ではハヌマンラングールのような悲劇は起こらない(はず)。

人間の夫婦形態と子殺し/虐待リスク
 人間は元々、狩猟採集生活を送っていた。その頃から一夫一妻制、または一夫一妻に一夫多妻が少し混じった、穏やかな一夫多妻制の結婚の形をとるようになったと考えられている。
 男と女は一緒に住み、協力する。人間は男女が役割分担はあるにせよ、力を合わせて子どもを育てていくのが特徴である。
 さらに国家が造られ、法律が整うと、結婚も法律下に置かれるようになった。
 ただしこの関係は危うい部分も同時に抱えていて、どちらかが死んだり、家庭の外に秘めた関係を持ったりといったことから生活は一気に揺らぎ始めてしまう。だから夫に先立たれたり離婚した若い女が、新しい夫と子連れで再婚するのは自然な流れ。その際、子どもたちがまだ小さくて自立するまでには成長していないということが人間ならではの事情であり、この点で人間は他の動物に比べて子殺しや虐待に繋がりやすいリスクを抱えていると言える。

赤ん坊・子どもから見た母系制社会のメリット
 母系制社会では、争いが少なく穏やかなものとなる傾向がある。
 父系制であると、例えば妻が産んだ子が果たして自分の子かどうかと夫は疑い、それは夫の一族全体の問題ともなるが、母系制ではそんな問題は発生しない。女が産んだ子は、(父が誰であろうと)絶対にその女の子であり、紛れもなく一族のメンバーであるから。
 デイリーとウィルソンの3つの論点で考えると、
1.赤ん坊が男にとって、本当に自分の子かどうか
2.赤ん坊の質がどうか
3.現在の環境は、子どもにとって適切か
の1と3をあらかじめクリアできる仕組みになっていると考えられ、母系制社会は人々が暮らす上で、また子が成長する上で、理想的な面が多い

母系制社会 vs. 父系制社会
 哺乳類の社会では、母とこの結びつきが強いので母系制であることが基本である。にもかかわらず、人間の社会では父系制であることが圧倒的に多い。
 それはなぜなのか?
 母系制社会は「他の部族との争いに弱い」という弱点があるため。
 戦うのはもちろん男達。その男達が母系制社会ではお婿さん連合となり、血縁関係がない。一方父系制社会では、男達に血縁関係があり、結束力に差が出てきてしまう。
 つまり、母系制社会は父系制社会の集団に滅ぼされやすい。

児童虐待という“罪”
 先住民では子殺しが暗黙の了解の内に行われる一方で、現代社会では子殺しは犯罪と捉えられている。この価値の転換はいつ起こったのか?
(1933年)「児童虐待防止法」・・・身売りや欠食(貧しくて十分食べられない)ことが問題
(1947年)「児童福祉法」・・・虐待を発見したら通告する義務、児童相談所による立ち入り調査、保護者の同意を得ずに子どもの身柄を保護することが盛り込まれた。
(1994年)「子どもの権利条約」批准。
(2000年)「児童虐待防止法」が新たに成立(2004年に改正)。初めて「児童虐待」が定義された。ただし、この法律は虐待そのものに対する罰則について決められていない。
★「児童虐待」とは;
 保護者(実の親とは限らない)がその保護すべき児童について行う次の4種類の虐待のこと;身体的虐待/性的虐待/育児放棄/心理的虐待

マーティン・デイリーとマーゴ・ウィルソンによるカナダにおける児童虐待の研究(参考5)
 とくにステップ・ファミリー(継父、又は継母と継子からなる家庭)を対象とし「社会生物学」(E.O.ウィルソン)をテキストにして研究した。
 1974〜1983年のカナダで起きた殺人事件から実の母親が子を殺したケースを解析すると、子が小さいほど高い確率で殺されていた。「見込みのない繁殖行動はなるべく早く中止し、
そのうち放棄せねばならなくなるような仕事にかまけるのを避ける評価メカニズムがあるはず」と推察している。
 母親の年令と生後半年までの子殺し件数の関係を調べると、先住民アヨレオ族とほぼ同じパターンであった。母親が若いほど子殺しが多く歳を取るにつれて減少していく。若いほど繁殖のやり直しがきくので、今の子が育てられそうにないなら諦め、将来の実りある繁殖に期待しようというわけである。
 そして最も虐待のリスクが高いと結論づけられた状況がステップ・ファミリーであった。0〜2歳の子どもが虐待されるリスクはステップ・ファミリーが実の親同士の家庭よりも7倍高いことが判明した。
 オンタリオ州ハミルトンで1983年に行われた調査では、就学前の子どもが虐待されるリスクは、ステップ・ファミリーの方が実の親同士の家庭よりも40倍高かった。
 1976年の米国のデータからは、児童が虐待によって死亡するリスクは、ステップ・ファミリーの方が実の親同士の家庭よりも100倍高いことがわかった。主に誰が手を下しているのかは、ほとんどの場合継父(内縁の夫も含む)だった。そして継父が虐待しているとき、実の母は見て見ぬ振りをするか、間接的に関わることになる。「赤ん坊は新しい関係にとっての足手まとい」になり、母親には「新しい男との今後の繁殖を有利にし、優先したい」気持ちが働くのである。
 米国で児童虐待のリスクが最も高いのはマムズ・ボーイフレンド(内縁の夫)である。「周囲の目」という抑止力が働かないためにリスクが高まる。

虐待リスクの評価:再び「3つの論点」+
以下に示すリスクがいくつも重なると、場合によっては虐待が発生する。

1.赤ん坊が男にとって、本当に自分の子かどうか
ステップ・ファミリー)前述
里親が里子を育てる)里子の中には里親の愛情の度合いや、どこまでひどいことをやっても許してもらえるかを試すために「試し行動」なるものを示し、里親を翻弄する子がいる。たとえば、食事を突然ひっくり返すとか、赤ちゃんのように甘えるなど、行動が退行することもある。そもそも里子は、大抵先ず乳児院や児童養護施設に入り、それから里親の元にやってくる。施設に入所した理由には、元の家庭での虐待を逃れるためであることが多く、平成20年の厚労省の統計では半数以上に上る。そのような経験をしてきた里子が、受け入れ先の親と、すんなりとよい関係を築けるとは限らない。
 さらには、乳児院や児童養護施設でのプロであるはずの所員による虐待も同じ様な理由で発生している。

2.赤ん坊の質がどうか ・・・共通するのは赤ちゃんに何らかの「育てにくさ」があること
低体重児・早産)育てるのに手がかかる、経済的な問題も発生しやすい
・・・人間以外の動物では低体重や早産の子の命はすぐに尽きてしまうため、こうした虐待は起こらない。
障害)親が精神的にも肉体的にも疲れ果てた末に、子を拒否する行動に出る場合もある。
・・・人間以外の動物では障害のある子が生き延びることは難しく、この問題も人間ならでは。
多胎児)現代では不妊治療によって多胎児が増えている(2008年からは体外受精の胚は原則として一つだけ子宮に戻すことになっている)。多胎児はどの子も体重が軽く、それだけでも既に虐待のリスクが高まるが、各々の子の体重に差が大きいと、より体重が軽い子がより虐待されやすくなると考えられる。
 かつては双子が生まれると片方を養子に出すという週間が日本にはあった。

3.現在の環境は、子育てにとって適切か
望まぬ妊娠)直接的なリスク。
貧困
育児不安)母親が周囲からのサポートを得られない。周囲に育児の先輩がいて直接教えてもらえる機会がないと、母親がいくら育児書を読んだり、医師などのアドバイスを受けても、不安は拭えない。
周囲からの孤立)経済的な支援が無い場合も含む。
この年齢が上の兄弟姉妹と接近している)共倒れとなることを避けようとして下の子を虐待するリスクが高まる。
母に新しい男が登場)1人で必死に子育てをしていた女が、新しい男の登場により豹変し、我が子を育児放棄する流れ。
兄弟姉妹が多すぎる)すでに育っている上の方の子の生存を確かなものにするために、下の子の方を虐待し、死に至らしめること(間引き)。

4.現代ならではのリスク
産後うつ)女性の10人に1人が経験するといわれる。出産後、育児で睡眠不足に陥ると自律神経系が乱れ、重症化するとうつ状態になる。産後1〜6ヶ月まで幅がある(マタニティー・ブルーとは異なる)(参考6)。強いうつ症状が出て何もする気力がなくなることから、育児を放棄したり、ささいなことにカッとなって、身体的な虐待を加えることにもなる。ただし、家族などの協力が十分であれば、子どもへの影響をかなり回避することができる。

虐待の連鎖)虐待する親の約3割が、自身もかつて親に虐待されていたことが判明している。
家庭内暴力、DV)主に夫(または内縁の夫)から妻(または内縁の妻)への肉体的・心理的暴力という意味に使われる。この暴力の矛先が妻だけでなく、継子にも向くこと。

・霊長学者・福田史夫氏の警告
「子どもを持った男女は、子どもが小学生以下の場合は決して再婚をすべきではない」
「児童相談所や保育園や小学校、さらには児童福祉施設の人達は『子殺し行動』の一つの根源的背景について学んで欲しい」

虐待・子殺しが発生しにくい理想の母系制社会(参考7)
 中国の四川省と雲南省の境、標高2700mの高地に住むモソ人社会は母系制で結婚という概念が存在しない。「走婚」(ヅォウフン)と呼ばれる彼らの婚姻形態では、夜、男が女の元へ通う(日本の「妻問婚」に似ている)。男は明るくなる前に帰らなければならない。子が生まれても住むことは許されない。こうして走婚の相手は、生涯に平均で7〜8人にのぼる。
 相手を選ぶ際に重視するものは、女は男に地位や財産を求めることはないし、その必要もない。生まれた子どもは、自分と血縁者達が育てるのだから。男も女も人柄やルックスの良さ、才能などを重視する。その結果、モソ人は男女ともにかっこいい人が多い。
 生まれた子の本当の父親が誰なのか、わからないこともある。しかし女とその家系のもの達にとっては、そんなことは問題にならない。この養育をするのは、母親の他に、母方のおば、母方のおじなど。
 母方のおじは自信が走婚をしていて、自分の子がよそにいたとしても一切その実子の養育には関わらない。育てるのは、自分の姉妹の子である甥や姪なのである。彼は父親の代わりとなり、我々の社会における実父とまったく変わらないくらいの役割を果たし、心強い後見人になる。
 子どもは母親の属する家全体で育てるため、子の世話をするのがすべて、間違いなく、子の血縁者であり、虐待のリスク因子が存在しない。
 母系制社会は子の虐待がかなり防がれる社会だが、子を養育する男が、その子の実の父ではない場合がある、という虐待が発生する最大のリスク要因を依然として残している。しかし、モソ人の社会では子の問題さえも完全に解消しているのである。


<参考>
1.「死んだ魚を見ないわけ」
河井 智康著、情報センター出版局、1987年角川ソフィア文庫
2.「究極のクロマグロ完全養殖物語」
熊井英水著、日本経済新聞出版社、2011年
3.「月経のはなし」
武谷雄二著、中央公論社、2012年
4.「人が人を殺すときー進化でその謎を解く」
マーティン・デイリー&マーゴ・ウィルソン著、長谷川眞理子・長谷川寿一訳、新思索社、1999年
5.「シンデレラがいじめられるほんとうの理由」
デイリー&ウィルソン共著、新潮社、2002年
6.産後うつとマタニティー・ブルーの違い
□ 「産後うつ病とマタニティーブルーの違い
混同しやすい「産後うつ」と「マタニティブルー」。症状の違いは?
7.「結婚のない国を歩くー中国西南のモソ人の母系社会」
金龍哲著、大学教育出版、2011年

「スマホ1日5時間以上」で中高生の自殺リスク上昇

2018年01月09日 08時41分08秒 | 育児
 スマホ中毒が健康に及ぼす影響の記事をもう一つ。
 なんと中高生の自殺のリスク上昇、という内容です。

■ 「スマホ1日5時間以上」で中高生の自殺リスク上昇か
提供元:HealthDay News:2018/01/09:ケアネット
 米国でスマートフォン(スマホ)が一気に普及した2012年を境に、米国の中高生で抑うつ症状や自殺念慮の経験者、自殺者が急増したことが、米サンディエゴ州立大学心理学教授のJean Twenge氏らによる研究で明らかになった。スマホやパソコンなどの1日当たりの使用時間が平均で5時間以上の中高生では自殺念慮や自殺企図などのリスクが上昇することも分かったという。同氏らは「中高生でスマホなどの端末の使用時間が増えていることが、自殺者の増加につながっている可能性がある」と警鐘を鳴らしている。詳細は「Clinical Psychological Science」11月14日オンライン版に掲載された。
 Twenge氏らは今回、米国の中学2年生~高校3年生の男女計50万人超を対象に、抑うつ症状や自殺念慮の経験、インターネットでのソーシャルメディアの使用状況を含む生活や行動について尋ねた2件の調査データと、13~18歳の男女の自殺に関する米疾病対策センター(CDC)の統計データを分析した。
 その結果、2010年から2015年までに中高生の自殺率は31%上昇しており、特に女子では65%上昇したことが分かった。また、抑うつ症状を経験したことがある中高生の割合も、女子では2010年の16.7%から2015年には26.4%へと58%上昇していたほか、自殺念慮や自殺企図といった自殺につながりうる経験(自殺関連アウトカムの経験)がある女子中高生の割合も同期間に12%上昇していた。
 さらに、自殺関連アウトカムの経験者の割合は、スマホやパソコンなどの端末を使用する時間が1日当たり1時間未満の中高生では29%だったが、2時間の者では33%、5時間以上の者では48%を占めていた。また、端末の使用時間が1日1時間未満の中高生と比べて5時間以上の中高生では自殺関連アウトカムのリスクが66%上昇することが示された。抑うつ症状の経験者の割合も端末の使用時間が長くなるほど高まることが明らかになった。
 Twenge氏は「今回、2012年を境に13~18歳の中高生、特に女子中高生で抑うつ症状や自殺関連アウトカム、自殺による死亡が急増したことが分かった。これはスマホが普及した時期とちょうど一致する」と説明している。
 また、端末の使用時間の長さによる抑うつ症状や自殺関連アウトカムへの影響は特に女子で強くみられたが、同氏はこの点について「これまでの研究からソーシャルメディアの使用時間が長いと精神面に悪影響があることが分かっているが、男子はソーシャルメディアよりもゲームに費やす時間が長いため、影響が弱まっているのかもしれない」との見方を示している。
 なお、今回の研究では端末の使用時間が1日2時間未満の子どもでは精神的な問題のリスクは上昇しないことが示されたため、Twenge氏は「親は子どもにスマホの使用を1日2時間まで制限し、寝室にはスマホを持ち込ませないといった対策を取るべき」とアドバイスしている。
 今回の報告を受け、専門家は「さほど驚くべきものではない」と口をそろえる。米ミシガン大学のScott Campbell氏は「食べ物やアルコール、セックス、買い物などと同様に、インターネットの使用も過剰になると有害だ」と指摘。一方、米ワシントン大学のAnne Glowinski氏は「インターネットの長時間使用は特に夜間に多くみられるが、それによって睡眠の質が低下し、抑うつ症状や自殺のリスクを高める可能性がある。さらに対面での人との交流や家族と過ごす時間も奪い、精神的な問題を引き起こしうる」と説明し、親は子どもにスマホを与える前に十分話し合い、明確に使い方のルールを決めるべきだと助言している。

就寝時の電子機器の使用、子どもの健康への影響

2018年01月09日 06時25分40秒 | 育児
 「スマホ中毒」の根拠となる論文がまた一つ。
 動かないから太る、光刺激で夜眠れない・・・想定内の影響です。

■ 就寝時の電子機器の使用、子どもの健康への影響は?
提供元:HealthDay News:2018/01/09、ケアネット
 スマートフォン(スマホ)やタブレットなどの電子機器は、今や私たちの生活に欠かせないアイテムとなり、これらを上手に使いこなす子どもも少なくない。しかし、子どもに質の良い睡眠を十分に取らせ、肥満にさせたくなければ、就寝時のこれらの使用は制限すべきだとする新たな研究結果が「Global Pediatric Health」10月27日オンライン版に掲載された。
 保護者を対象に行ったこの調査によると、子どもが就寝時にスマホを使用したりテレビを視聴すると、BMIが増加することが示された。また、テレビの視聴やスマホ、コンピューター、ビデオゲームの使用は、子どもの睡眠時間の短縮や睡眠の質の低下を招くことが分かった。
 論文の筆頭著者である米ペンシルベニア州立大学ハーシー医学部のCaitlyn Fuller氏は「子どもにスマホなどの電子機器を与える際には、親は小児科医に年齢にふさわしい使い方について相談するとよい。もし子どもに十分な睡眠を取らせたいならば、ベッドに入る前にこれらの電源は切り、スマホを枕元に置かせるようなことはあってはならない」と述べている。なお、同氏は、今回の研究では、就寝時の電子機器の使用が子どもの睡眠や肥満に悪影響を与える可能性が示されたに過ぎないとしている。
 Fuller氏らの調査では、小学校5年生までの小児の約4割が自分のスマホを所有しており、それより低い年齢でも多くの子どもが電子玩具やタブレット式の玩具に親しんでいるという。
 今回の研究は、同大学の2つの診療所(うち1カ所は肥満専門クリニック)から登録した8~17歳の子ども234人の保護者を対象としたもの。保護者には、子どもの電子機器(コンピューター、ビデオゲーム、スマホ、テレビ)の使用時間や使用するタイミングのほか、睡眠時間や睡眠の質、朝の疲労感、注意力、日頃の運動量などについて尋ね、就寝時の電子機器の使用とBMI、睡眠、注意力への影響を調べた。
 その結果、就寝時にテレビを視聴したり、スマホを使用する子どもは、そうでない子どもと比べて過体重や肥満になるリスクが2倍以上であることが分かった。また、当然ながら戸外での運動量が多いほど過体重になるリスクは低かった。
 さらに、就寝時にテレビを視聴したり、ビデオゲームを使用する子どもは、そうでない子どもと比べて一晩の睡眠時間が30分短く、スマホやコンピューターを使用する子どもは、使わない子どもと比べて睡眠時間が1時間短かった。なお、コンピューターを使用する子どもは寝付きが悪く、ビデオゲームを使用する子どもはすぐに目が覚めてしまうといったトラブルも抱えていた。
 就寝時の電子機器の使用は睡眠の質にも悪影響を及ぼしていた。就寝時にスマホやビデオゲーム、コンピューターを使用する子どもは朝に疲労を感じやすく、朝食を取らない傾向がみられた。一方で、子どもの電子機器の使用による注意力への影響は認められなかった。
 専門家の一人、米ノーザン・ウェストチェスター医療センターのPeter Richel氏は「スマホやタブレットなどの電子機器は私たちの生活の一部になっており、より幼い頃から身近なものとなっている。最近では、10歳代の子どもや若者がソーシャルメディアやIT機器に費やす時間も著しく増えたことで、戸外で遊んだり読書の楽しさを経験する機会が奪われていることに危機感を抱いている」と述べ、日常生活にITが浸透していくほど子どもの睡眠が妨げられるのは確実で、就寝1時間前には家族全員でこうした電子機器の電源を切るよう勧めている。


<原著論文>
Fuller C, et al. Glob Pediatr Health. 2017 Oct 27;4:2333794X17736972.

韓国におけるオンラインゲーム依存症

2018年01月05日 15時33分25秒 | 育児
 「PC房」とは韓国におけるインターネットカフェのようなもの。
 子どもたちはここに閉じこもりインターネットのオンラインゲームに病的なまでに没頭し、「インターネット依存症」として治療を受ける例も増えているそうです。

 日本も他人事ではありません。

■ ドキュメンタリーWAVE▽子どもたちのリアルを取り戻せ 韓国ネット依存治療最前線
NHK-BS1:2016年10月16日
<番組内容>
 オンラインゲームなどのやり過ぎによる「インターネット依存」の若者が10人に1人といわれる韓国。深刻化する事態に、国をあげて行われるネット依存治療合宿に密着した。
<詳細>
 若者の10人に1人が「インターネット依存」といわれる韓国。オンラインゲームなどのやり過ぎで、体調を崩したり、学校へ通えなくなったりする子どもが急増している。韓国は、オンラインゲームを、アルコールや薬物と同じ深刻な中毒性があるものと認定し、国をあげた対策に乗り出している。子どもたちをインターネットから切り離した治療合宿に密着。IT先進国・韓国で行われている、インターネット依存治療の最前線を追った。


★ 篠原利恵が第33回ATP賞テレビグランプリ2017において優秀新人賞を受賞しました。
 韓国で、大人と子供の戦争が起きています。ゲームをやりたい子供VSゲームをやめさせたい大人。この番組は、無視されがちな側、子供の気持ちを描きたいと企画しました。
 子供たちが見ている世界の中にある、子供たちがゲームに夢中になる理由・・・。
 しかし取材が進むにつれ、大変難しいことだと気づきました。「子供心」よりも、「大人心」の方がわかりやすく、なにより私の取材自体が大人の手続きで進んでいきます。
 かわりに、見えてきたことがあります。それはこの戦争に敵がいないということ。ゲーム依存で苦しむ子供も、その親も、医者も、国も、ゲーム産業の人たちも、誰もが切実です。できるだけ細かく取材していくしかないと思っています。
(篠原利恵)

ネットゲーム依存は「病気」

2018年01月05日 06時15分56秒 | 育児
 前項と同じ分野の記事を朝日新聞から。
 体に悪いとわかっていても、ゲーム販売メーカーは反対するのですねえ。
 タバコの害がわかっていながら、その制限に反対するJTと同じです。

■ ネットゲーム依存は「病気」 WHOが疾病分類に追加へ
(2018年01月04日:朝日新聞デジタル)
 インターネットゲームなどのやり過ぎで日常生活に支障をきたす症状について、世界保健機関(WHO)が2018年、病気の世界的な統一基準である国際疾病分類(ICD)に初めて盛り込む方針であることがわかった。国際サッカー連盟(FIFA)主催の世界大会が開かれたり、五輪への採用が検討されたりするなどネットゲームが広く普及する中、負の側面であるネット依存の実態把握や対策に役立てられそうだ。
 WHO関係者によると、18年5月の総会を経て、6月に公表を予定する最新版のICD―11で、「Gaming disorder」(ゲーム症・障害)を新たに盛り込む。17年末にトルコで開かれた依存症に関する会議で、最終草案を確認した。
 最終草案では、ゲーム症・障害を「持続または反復するゲーム行動」と説明
▽ゲームをする衝動が止められない
▽ゲームを最優先する
▽問題が起きてもゲームを続ける
▽個人や家族、社会、学習、仕事などに重大な問題が生じる
――を具体的な症状としている。診断に必要な症状の継続期間は「最低12カ月」。ただ特に幼少期は進行が早いとして、全ての症状にあてはまり、重症であれば、より短い期間でも依存症とみなす方針だ。
 ゲームを含むネット依存はこれまで統一した定義がなく、国際的な統計もなかった。新しい定義は各国での診断や統計調査に役立てられる。厚生労働省の国際分類情報管理室も「公表から数年後にICD―11を統計調査に使う」としている。
 依存症の専門家によると、ネット依存の人は酒や薬物の依存者のように脳の働きが大きく低下し、感情をうまくコントロールできなくなるとの研究論文が近年、国際的な医学誌に多数報告されている。このためWHOは、ネット依存をギャンブルのように熱中しすぎるとやめられなくなる「嗜癖(しへき)行動」と捉えることにした。そのうち研究結果の多い「ゲーム症・障害」を疾病として分類する。またLINEやツイッターなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)によるネット依存は「その他の嗜癖行動による障害」とする。これまでは、いずれも「その他の習慣および衝動の障害」とされていた。
 ゲームを含むネット依存について、香港大学の研究者は14年、世界の人口の6%(約4億2千万人)以上と推計。日本でも厚労省発表で、成人の約421万人(14年)、中高生の約52万人(13年)にネット依存の疑いがあるとされる。
 ネット依存外来を開く国立病院機構・久里浜医療センター(神奈川県横須賀市)の樋口進院長は、「これまでは病名や定義がなく、治療や研究、実態解明も進まなかった。WHOが新たに定義すれば、対策の面で飛躍的な前進が期待できる」と話す。
 ただネットゲームが盛んな韓国の「ゲーム文化財団」は、WHOの指定について、朝日新聞の取材に「他の中毒と同じように指定するには、根拠が不十分で行きすぎだ。産業発展を阻害する面もある」と反論している。


★《WHOの国際疾病分類(ICD)》
 世界190カ国以上が加盟するWHOが、死亡や疾病のデータを国際的に統一して記録、分析するため、すべての病気とけがを網羅的に分類したもの。医学の進歩や研究結果を踏まえ、改訂されてきた。第1版は1900年に出され、現在は、90年に改訂のICD―10を一部改正したものが使用されている。日本では法律上の疾病や障害の根拠となり、厚生労働省はICDに準拠して統計調査を行う。病院では、カルテに記載された病名がICD別にデータで蓄積されている。


■ ネットゲーム依存症、業界団体が反対声明 WHOに異議
2018/1/5 朝日新聞デジタル
 米国や日本のゲーム機メーカーやソフト会社で作る業界団体「エンターテインメント・ソフトウェア協会」(ESA、本部・米ワシントン)は4日、世界保健機関(WHO)がネットゲームへの過度な依存を病気と指定することに対し、「ビデオゲームに中毒作用はないと客観的に証明されている」として反対する声明を出した。
 ESAは「世界中で20億人以上がゲームを楽しんでいる」と主張。そうしたユーザーを病気とみなせば、「うつ病などの本来の精神疾患がささいなものと位置づけられてしまう」として、WHOに方針の見直しを強く求めた。
 ESAには、任天堂やバンダイナムコエンターテインメント、スクウェア・エニックスといった日本の大手ゲーム関連企業も加盟している。

「スマホ依存症」は「ギャンブル依存症」と同等

2018年01月04日 08時27分54秒 | 育児
 私は“依存症”という言葉を聞くと、職業柄「麻薬依存症」「アルコール依存症」「ギャンブル依存症」などの病名が浮かびます。
 しかし昨今、「スマホ依存症」「ネット依存症」など、病気なのかどうか千疋が難しい単語もよく聞かれるようになりました。
 紹介する記事は、脳画像検査であるMRIの一種であるMRスペクトロスコピー(MRS)で評価し「スマホ依存症はギャンブル依存症に匹敵する病態である」と報告しています。
 これはゆゆしき問題です。
 韓国の論文から;

■ 若者の「スマホ依存症」、脳画像で異常を確認
提供元:HealthDay News:2018/01/04
 スマートフォン(スマホ)から離れられない若者に脳画像検査を実施したところ、脳内の神経伝達物質の活性のバランスに異常が認められたとする研究結果が北米放射線学会(RSNA 2017、11月26日~12月1日、米シカゴ)で発表された。
 この研究は高麗大学(韓国)のHyung Suk Seo氏らが実施したもの。対象は、インターネット依存症またはスマホ依存症と診断された10歳代の男女19人(平均年齢15.5歳)と、年齢および性をマッチさせた依存症のない健康な男女19人(対照群)。依存症患者には、インターネットまたはスマホへの依存症の重症度を測定する標準化された検査を実施した。この検査では主にインターネットやスマホの使用が日常生活や社会生活、生産性、睡眠習慣、感情に与える影響について評価した。
 また、依存症患者のうち12人には9週間にわたって認知行動療法を実施したが、その前にMRIの一種であるMRスペクトロスコピー(MRS)を用いて脳機能を評価した。MRSは体内の代謝物を非侵襲的に測定でき、主に脳腫瘍や脳卒中、気分障害、アルツハイマー病などの患者の脳機能評価に使用されている。
 その結果、インターネットまたはスマホの依存症患者では、対照群と比べてグルタミン酸-グルタミン(Glx)に対するγアミノ酪酸(GABA)の活性レベルの比が高いことが示された。GlxとGABAはいずれも脳内の神経伝達物質だが、Glxは興奮性、GABAは抑制性の物質とされている。同氏らによると、これまでの研究でGABAは視機能や運動調節、不安などさまざまな脳機能の制御に関与することが明らかにされているという。
 また、今回の研究ではクレアチンおよびグルタミン酸に対するGABAの活性レベルの比が、インターネットまたはスマホへの依存レベルや抑うつ、不安と有意に関連することも示された。
 この研究結果を受け、米コーエン小児医療センターのSanjeev Kothare氏は「インターネットあるいはスマホへの依存症はギャンブルやポルノへの依存症に匹敵する病態かもしれない」との見方を示している。また、10歳代の子どもを持つ親に対し、同氏は「もしわが子がスマホ中毒ではないかと心配ならスマホやコンピュータの使用を制限すべきだ」と助言している。
 なお、学会発表された研究は査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。