“子ども”を取り巻く諸問題

育児・親子・家族・発達障害・・・気になる情報を書き留めました(本棚4)。

「叱らない子育て」岸見一郎著

2016年07月10日 06時20分08秒 | 育児
「叱らない子育て」 岸見一郎
副題:アドラーが教える親子の関係が、子どもを勇気づける!だからやる気が育つ!
学研、2015年発行

著者の岸見氏は、「嫌われる勇気」でアドラーブームのきっかけを作った人物です。
肩書きは「日本アドラー心理学会認定カウンセラー」となっています。
NHK教育テレビの「100分de名著」でアドラー心理学が紹介され(人生の意味の心理学)、その中で子育てに関する内容もあったので私も興味を持ちました。
そしてアドラー心理学関連書籍で子育て論を扱ったこの本を購入し読んでみました。

基本は「子どもを叱らない、子どもをほめない」です。
ではどうすればよいかというと、「勇気づける」こと。

前出の応用行動分析では「ほめる」ことが基本ですから、真逆の方針に戸惑ってしまいます(^^;)。

「ほめる」ことも「叱る」ことも、子どもを自分より下に見た立場の行動と説きます。
自分(親)と子どもを対等の立場と捉え直すと、ほめることも叱ることもできなくなり、できることは「勇気づける」ことだけ、という論法です。

あとは、待つだけ。
口を出したくなっても、我慢して待つだけ。

ちょっと混乱する箇所もありました。
「子どもは親に注目されたくて叱られるような問題行動をわざとする」
一方で、「子どもは自分を叱る人を好きになれず、正しいことを言っても聞いてくれない」。

ということは、子どもを叱る時点でもう親は負けている、間違っているということ???
そして叱る代わりにできることは、子どもに言葉で訴えることを教えることと記されています。

う〜ん、それだけで解決できるんだろうか?
スーパーで「お菓子が欲しい」と泣き叫ぶ子どもに対応できるとは思えません。
電車で騒いで白い目でみられるときは「降りるしかない」と記されていますし。

テレビを見ていても感じたのですが、アドラー心理学では、ストイックさが求められます。
「人間関係で悩んだら、まずあなたがよい人になりましょう」というスタンスに、少々窮屈さを覚えます。
言いたいことはわかるのですが、その通りにできるかというと・・・自分が幸せでないと、なかなかよい人を演じることができません。
だから人間関係がギクシャクするのだと思います。
人間は人にしてもらったことしか人にできない、という立ち位置にしないと、万人には受け入れにくい。
「生きているだけで他人に貢献している、感謝されている」と言葉は美しいのですが、それができないのは親世代がそのように育てられてこなかった事実を反映しているだけです。

この本の通りにするためには、事前に親の心のケアをする必要があるのではないか、と感じました。


<メモ> ・・・自分自身のための覚え書き

・叱ることも叩くことも、さらには虐待することも質的には同じで、とだ量的に違うだけです。子どもはどんな仕方であれ力で押さえつけない方法を親に学んで欲しい。

・子どもが親に反抗するのは、親が上に立って、子どもを叱ったり、命令したり、支配したりしようとするから。反抗期というようなものがあるわけではなく、反抗させる親がいるだけ。

・子どもは最初から親に叱られるような問題行動をするわけではない。むしろ、最初はほめられるようなことをする。そのことに気づいてもらえないと、親がイライラするようなことをするようになる。子どもはいつも親に注目されたいと思っているが、親がいつも子どもに注目することはできない。そこで子どもは、たとえ叱られてでも自分に注目して欲しいと思うようになる。

・子どもの問題行動の目的は「注目」されること。親を自分のほうに振り向かせるため。無視されるくらいなら、たとえ叱られても注目されたいと子どもは考える。叱っているにもかかわらず止めないのではなく、叱るからこそやめないというのが本当のところ。
 親が一番困ることを、しかも一番親が困るタイミングでする。親がイライラしたり、本気で腹が立つことをすると、親は子どもを叱る。そうすることで親の注目を引くことに成功するのであり、そのことが子どもの行動の目的である。

・子どもの問題行動に対して、ついカッとなって叱る、子どもは泣く、というよくあるシーンを感情論で片付けてはいけない。双方の行動には目的がある。
親の目的は子どもに親の言うことを聞かせようとすること、子どもの目的は親が子どもを責められなくなること。

・子どもを叱ると、親の顔色をうかがうようになる。叱られて育つ子どもは、叱られるかどうかということだけを考えるようになり、叱られさえしなければ何をしても良いと思うようになるし、やがて自分では自分の行動が適切なのかどうかを判断できなくなることもある。

・子どもは叱られ批判されると消極的になる。消極的な子どもより積極的に行動して失敗する子どもの方が多くを学べる。

・子どもは自分を叱る人を好きになれない。叱ると子どもとの距離が遠くなるので、正しいことを言っても聞いてくれなくなり、子どもを援助することができなくなる。

・子どもの行動を改善するには叱るのではなくどうしたらよいのかを教えなければならない。子どもにして欲しいことを伝えるときも命令するのではなく「〜してくれるとうれしい」というように子どもに断る余地を残す。

・子どもが人に迷惑をかけるようなことをしたときは威圧的な態度ではなく、ただ言葉でやめるように言う。
(例)スーパーでお菓子が欲しくて泣き叫ぶ子ども→ 「言葉で言ってくれると助かるんだけど・・・」
(例)電車の中で子どもが騒いだとき→ 親は子どもと一緒に電車から降りるしかない、電車に騒ぎながら乗る権利はないと言うことを子どもに学ばされる。

・かまってもらいたくて子どもが泣いていても、そのことに注目しなければ子どもは泣き止む。不適切なところに注目しないようにすればよい。

・ほめられて育った子どもは、ほめる人がいなければ自分の判断で進んで適切な行動をすることができなくなる。ほめられて育つと、子どもはほめてもらいたくて、自分の意思ではなく親の意思を優先してしまう。

・子どもと大人は同じではないが、人間としては対等である。子どもを尊敬し、全幅の信頼で接すれば、子どもたちを力尽くで押さえる必要はなく、叱らなくてもいいし、またほめる必要もない。

・人生の課題は対人関係である。あらゆる悩みは対人関係の悩みである。対人関係を避けることなく、何とかしてそこに入っていけるように援助することを「勇気づけ」という。自分に価値があり、自分のことが好きだと思えるときにだけ「課題」に取り組む勇気を持てる。勇気づけのために子どもに「ありがとう」の言葉をかけたい。

・「ありがとう」とか「助かった」という言葉をかけることで子どもが貢献感を持てれば、人との関わりを避けたり、親を困らせるような方法で自分を認めてもらおうとはしなくなる。

・たとえ何をしていなくても生きていることそれ自体がすでに親やまわりの人に貢献しているということを教えたい。決して理想の子どもを頭に描き、その理想から現実の子どもを引き算するのではなく、生きていることをゼロとして、何でもプラスと考えて加算して、子どもたちを見ることができたらすべて解決する。子どもをありのままで受け入れることが子どもを尊敬するということ。

・勉強しなかったり忘れ物をするなど、本人は困るけど親に迷惑をかけるわけではない行動を「中性行動」という。このような行動に対しては子ども本人の意思を尊重し、親が叱る必要はない。子どもが自分でやろうとするまで親は静観していればよい。

・あらゆる対人関係のトラブルは、人の課題に土足で踏み込むこと、あるいは踏み込まれることから起こる。

・親は子どもを自立させることはできない。親にできるのは、子どもが自立するのを援助することだけ。親子が協力して生きるのが最終目標。

・「信用」とは、信じる根拠があるときに信じること。「信頼」は信じる根拠がないときに信じることであり、無条件である。親が子どもを信頼することで子どもは課題に取り組む勇気を持つことができる。親は子どもを信じて見守る勇気を持ちたい。大人に不信感を持っている子どもは、世界全般に対する信頼感を持てずにいる。