“子ども”を取り巻く諸問題

育児・親子・家族・発達障害・・・気になる情報を書き留めました(本棚4)。

子どもの“こころの問題”を精神科は診てくれない

2024年07月26日 16時23分42秒 | 子どもの心の問題
当院は小児科開業医です。
小児科はこどもの病気一般を扱いますが、
外科系(ケガや手術)などは扱えず、
「小児内科」と呼ぶ方が正しいですね。

そして昨今増えてきた“こころの問題を抱える子ども”。
これは内科というより精神科の分野なので、
やはり従来扱ってきませんでした。

では精神科で診療してもらえるのかというと、
どうやらそうでもなさそうです。
精神科や心療内科に中学生が受診すると、
「高校生からです、
 中学生以下は診療していません」
と門前払いに会うことがほとんど。

精神科の中には「児童精神科」「小児精神科」という分野があるようですが、
その専門医の数はとても少ないようです。

しかし「小児科」はこどもの病気の入口として(外科以外)何でも診療していますので、
「精神科」も子どもを診てくれてもいいのでは、と思ってしまう私です。

というわけで、中高生の“こころの問題”を抱えて困っている患者さんが、
全国にたくさん彷徨っているという状況です。

さて、当院の取り組みですが...
年齢別に考えると、以下のようになるでしょうか。

(乳児期)夜なき
(幼児期)睡眠障害、かんしゃく・こだわり、パニック、落ち着きのなさ
(学童期)同上
(思春期)同上、月経前症候群(PMS)

すべてに対応できるわけではなく、
また心理師はいないのでカウンセリングもできませんが、
効果を実感して通院する子どもが最近増えてきました。

そんなタイミングで以下の記事が目に留まりましたので紹介します。
米国では“思春期の抑うつ”を主訴とする患者がプライマリ・ケアと精神科を受診した際、
寛解率に差がなかったという内容です。

日本の現状を考えると、ちょっと想像できないこと。
おそらく医療事情が大きく異なるのでしょう。
それとも米国では、小児科医が精神科の研修も受けている?

■ 思春期の抑うつ、対応は小児科?精神科?〜重症度や寛解率を比較
 思春期の子どものうち20%程度が「抑うつ」を経験するとされる。これは自殺行動にもつながる重要な公衆衛生学的な問題だが、思春期はそもそも精神科へのアクセスに消極的という課題がある。そのためプライマリケア環境で「抑うつ」の評価と治療を行い、必要に応じて精神科の助けを受けることが推奨されている。
 成人では、抑うつを主訴に受診する患者の重症度はプライマリケアと精神科で同程度であり、同一のケアを提供した場合、寛解率に差がないことが報告されている(STAR*D研究)。これはプライマリケアが専門的治療の良い代替になりうることを示唆するが、思春期の抑うつに対し小児科が同様の役割を果たせるかは明らかでない。そこで今回、小児科と精神科で思春期のうつ病治療を比較した米国の研究を紹介したい(J Child Adolesc Psychopharmacol 2024; 34: 80-88)。
 ちなみに、医療インフラは日本や米国では民間を中心に形成されているのに対し、英国では英国保健サービス(NHS)を中心に家庭医(GP)の配置を行う政府管理システムを構築している。また、日本と同じくフリーアクセスを採用していたフランスは、2005年にかかりつけ医(Médecin Traitant)制度を導入し、登録を国民に義務付けることでプライマリケアを強化している。
 国の医療システムがどの程度プライマリケア提供を支援しているかを示す指標(プライマリケアスコア)は、日本は経済協力開発機構(OECD)加盟国平均を下回っており、特に「プライマリケアを提供する医療者の地理的配分がどの程度計画、調整されているか」および「longitudinality(患者登録/患者パネル)が存在するか」の項目で低いことが示されている(Health Serv Res 2003; 38: 831-865)。

▶ 研究のポイント:抑うつの寛解率は同等も、小児科を訪れる患者で軽症傾向
 今回の研究は、うつ病のスクリーニングと測定ベースのケア(measurement-based care;MBC)によるプライマリケアモデルであるVitalSign6プログラム(Pharmaceuticals 2019; 12: 71)の評価プロジェクトの一環として実施された。治療期間、小児科と精神科のいかんにかかわらず、さまざまな主訴で大都市の子ども病院を受診した3,498例に対しPatient Health Questionaire(PHQ)-2(0〜6点)を用いてスクリーニングを行い、2点以上だった患者1,323例(平均年齢14.3±1.9歳)を抽出。PHQ-9(0~27点)を実施し、10点(中等度のうつ)以上の患者のプロファイル、治療内容、経過について小児科(121例)と精神科(495例)を比較した。
 検討の結果、精神科を訪れた患者は小児科を訪れた患者と比べ、抑うつの重症度(15.9±5.0点 vs. 12.1±5.5点)、大うつ病性障害と診断される割合(60.6% vs. 24.7%)、薬物療法が提供される割合(54.8% vs. 6.6%)が多く、精神科医と比べて小児科医は、薬物を使用せずに治療する割合(4.3% vs. 36.3%)、他院に紹介する割合(5.7% vs. 27.7%)が高かった。そして興味深いことに、寛解率では精神科と小児科で有意差を認めなかった(χ2=0.99、P=0.32)。

私の考察①:プライマリケア環境としての小児科は、精神科の良い代替になりうる
 本研究が実施された米国と日本では、患者側の医療へのアクセスの容易さや、経済的な負担が異なり、医療者側としても費やせる時間(と、おそらく提供される医療の質)が異なるため、結果をそのまま当てはめることはできない。とはいえ、重度ではない思春期の抑うつに対し、プライマリケア環境としての小児科が、精神科の良い代替になりうる可能性が示されたことは意義深く、日本における思春期医療の政策的な課題を考える上でも示唆に富む。
 日本における10〜19歳の自殺者数は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延に伴って増加した。成人の自殺者数が大きく増加した日本列島総不況(1998年)、リーマン・ショック(2009年)では、19歳以下の小児・思春期への影響は乏しかったが、COVID-19では成人とともに増えたのである。
 特に女性でその傾向が顕著であり、経済的理由以外では社会的つながりの希薄化などが大きく影響したと推察される。ちなみに10歳代の日本における死因第1位は自殺であり、主要7カ国で唯一である。また、10歳代の自殺死亡率はフランス、英国、ドイツ、イタリアの3〜4倍程度である(厚生労働省「令和5年版自殺対策白書」)。

私の考察②:精神科へのアクセスはハードル高く、支援は不十分
 本研究の土台となるVitalSign6プログラムでは「抑うつ」というある程度定量化が可能な指標を用いてスクリーニングおよび介入がなされているが、小児・思春期はライフステージ(学校の各段階)や、立場(社会との接点)ごとで状況が大きく異なり、認識できるつらさの対象(友人関係・家庭環境・いじめ・学業など)もさまざまであることから、一元的な対策で全体効果を得ることは難しい。
 そのため、子どもが接する社会単位ごとの取り組み(学校での自殺予防教育の導入、スクールカウンセラーの配備など)がなされ、周辺者らが利用可能な危機察知ツールの開発なども用いて、受け止め・つなげる支援体制の構築が広がりを見せている。しかし、つながり先としての精神科へのアクセスは、心理的にもリソース的にもハードルが高く、「生きにくさ」や「しんどさ」を抱えた小児・思春期への支援は十分ではない現状がある。
 一方、小児科臨床医は既に1万8,000人ほどおり、ワクチンや健診を通じて親子に接する機会も確約されている。小児・思春期はこころの葛藤が身体化しやすく、初期には高率で小児科を訪れている。抑うつが重度ではなく、まだ死が強く意識されていないこの前段階で小児科が適切な介入を行い、限られた高リスク患者のみを精神科につなぐ構造的合理性について、本研究の結果は支持するものといえる。

私の考察③:日本における小児科の課題を解消し、良い受け皿として機能させたい
 とはいえ、感染症診療を中心とした薄利多売を求められる日本の小児医療構造下で、この負担を一方的に押しつけることは現実的ではない。おそらく「生きにくさ」や「しんどさ」を抱えた子どもを放っておいてよいと考える小児科医はいない(筆者は小児科医をとても信じているのだ)が、それができない実情があると考えるべきであろう。
 診療にかけられる時間、経営上の理由、技能・知識の不足、認識の問題、医療者自身の安全性など、解決しなければならない課題があるのだと推察している。筆者は現在、厚生労働大臣指定法人・一般社団法人「いのち支える自殺対策推進センター」の支援を受け、課題と介入効果を明らかにするための大規模アンケートの実施に向けて取り組んでおり、政策提言や実装のためのシステム構築に発展させる予定である。
「こころ」とは、広い、冷たい、折れる、盗まれる、騒ぐ、砕くなど、さまざまな表現がしっくりと当てはまるように、正解がないものであるように感じる。今回の研究では、重度ではない思春期の抑うつに限れば、薬物療法の割合が少ない小児科が、精神科と比べ寛解率に差を認めないという結果だった。治す対象としての「精神」ではなく、理解する対象としての「こころ」について、小児科医が果たせる役割があることを示した研究といえるだろう。

子どもの「スマホ依存・ゲーム依存・ネット依存」への対応

2024年07月26日 08時45分42秒 | 子どもの心の問題
近年話題になっていることですが、
小児科医の私には基礎知識しかありません。

主に児童精神科医が担当する分野と思われますが、
その児童精神科医の数が少ないため、
悩んでいても満足のいく医療を受けることができないのが現状です。

心理士の解説を参考に、ポイントをまとめてみました。
一読してみての感想は、
・依存症に陥る子どもは、ほかに悩み事を抱えていることが多い。
・家族だけで抱えず、専門家のサポートを受けることが解決への近道。
に集約されると思いました。

<ポイント>
・「スマホ依存」という単語を耳にする機会が多いが、実は医学用語ではなく定義も定められていない。
・依存症とは、特定の何かに心を奪われ「やめたくてもやめられない」状態になること。スマホ依存とは、スマホから得られるワクワクや快感に没頭するあまり、自分で自分をコントロールできなくなる状態。
・子ども本人が「スマホ依存症である」と自覚しているケースは少なく、本人の意志だけで回復するのは困難。
・治療の中で重視されているのは「子どもへの寄り添い」。なぜ、こんなにスマホにのめり込みたくなったのか、背景にある悩みや問題にスポットをあてる。「学校に居場所がない」「勉強がわからない」「友達とうまく付き合えない」など、孤独でプレッシャーに押しつぶされそうな子どもにとって、スマホでつながる世界は大人が思っている以上に重要。
・病院を嫌がるときは無理強いをしない、本当のこと(受診する)を伝えずに連れていってはいけない。
・子どもが病院に行きにくいようなら、まずは家族だけで診察を受けるのもよい。
・うまく病院受診につなげられない場合は、子どもを受診させる考えをいったん捨てて、家族だけで相談できる場所を探す。信頼できる医師や心理師などの支援者に出会うことが大切。
・次のような機関でもスマホ依存の相談可能:
 ✓ 各都道府県の精神保健福祉センター
 ✓ 市役所や保健所の子育て相談窓口
 ✓ 自治体の教育支援センター
 ✓ 小中学校のスクールカウンセラー
・まずは子どもの気持ちにしっかりと寄り添うことで、スマホ依存の背景にある子どもを本当に苦しめているものを一緒に見つけてあげる。そして、子どもに寄り添い、支えるためにも家族自身の心も大切にする。「苦しい」「助けてほしい」、そんな気持ちを抱いたときには無理や我慢をせず、専門家や相談機関を頼る。
・病院受診はゴールではない。やっとの思いでたどり着いた病院受診が、ゴールではなく治療のスタートだと知ったとき、絶望感に打ちのめされる親は少なくない。スマホ依存は治るのに時間がかかる。「いつになったら治るのか」明るい未来を想像できず、つらさを抱える親子たちの思いを受け止めるのが、病院や学校、自治体、家族会などの機関。
・苦しいときほど、人とつながってください。人とのつながりが、子どものスマホ依存を乗り越えるための力となってくれる。


■ 子どもの「スマホ依存・ゲーム依存・ネット依存」 公認心理師が「やりすぎ」と「依存」の境目を解説
#1 スマホへの依存度を判断するためには?
公認心理師:中井 ようこ
2024.01.16:コクリコ)より一部抜粋(下線は私が引きました);

 ゲームやSNSを簡単に楽しめるスマホ(スマートフォン)は、子どもが夢中になりやすいコミュニケーションツールの一つです。しかし、使い方によっては依存傾向が高まり、子どもの心身に大きな影響を与えることも。・・・1回目では、子どものスマホ使用に悩む保護者に向けて、子どもがスマホ依存症なのかを見極めるポイントを教えていただきます。

<目次>
・スマホ依存の症状とは?
・日常生活に良くない影響が出ていれば「依存」
・将来起こりうる問題
・専門家の手助けがスマホ依存から救う

▶ スマホ依存の症状とは?
 近年、「スマホ依存」について耳にする機会が多くなりましたが、実は医学用語ではなく定義も定められていません。スマホ依存とよばれる症状を考える前に、まずは「依存症」という大きな概念を知っておきましょう。
 依存症とは、特定の何かに心を奪われ「やめたくてもやめられない」状態になることです。特定の行為を繰り返す、より強い刺激を求める、いつも頭から離れないなどの特徴があります。この定義をスマホ依存に置き換えると理解しやすいでしょう。つまり、スマホ依存とは、スマホから得られるワクワクや快感に没頭するあまり、自分で自分をコントロールできなくなる状態といえます。
 では、スマホ依存の症状にはどのようなものがあるのでしょうか。
 ソウル聖母病院のキム・ダイジン教授のグループによって作成され、多くの言語に翻訳されている「スマートフォン依存スケール」では、スマホ依存の症状が10項目が挙げられています。
 それぞれの項目について「全く違う」「違う」「どちらかというと、違う」「どちらかというと、その通り」「その通り」「全くその通り」の6段階で評価し、回答の合計点が31点以上の場合を「スマホ依存症の疑い」としています。

▶ 日常生活に良くない影響が出ていれば「依存」
 スクリーニングテストをすると「うちの子にほとんど当てはまる……」とドキっとした方もいるかもしれません。
 スマホの使い方で気になる様子があったら、まずは子どもと話しあってみましょう。本人に改善する様子が少しでもみられる場合は、しばらく見守っても良いでしょう。
 たとえば、テスト前はスマホを見ないように我慢していたり、時間制限を守ったりするなど、子どもが努力してスマホと距離を置こうとしていたら、見逃さずに認めてあげてください。
 しかし、本人がスマホを手放せずに日常生活に影響が出ているようであれば、依存症である可能性が高まります。
・・・
▶ 専門家の手助けがスマホ依存から救う
 子どもをスマホ依存から救うには、適切なタイミングで病院受診や専門家への相談をすることが大切です。「子どもの様子が今までと違う」と思ったら、それが家族にとって適切なタイミングといえます。
 子ども本人が「スマホ依存症である」と自覚しているケースは少なく、本人の意志だけで回復するのは困難です。そのため、子どもを支える家族がスマホ依存について正しい知識を持ち、受診や相談をする必要があります。
 しかし、スマホ依存を専門的に治療できる病院は全国的にも少ないのが現状です。まずは、近くにある児童精神科か心療内科に問い合わせをするのが良いでしょう。久里浜医療センターが作成したリストを参考にしてください。どうしても相談先がみつからない場合は、かかりつけの小児科や民間のカウンセリング機関に相談する方法もあります。
 いざ受診をしようとなると「病院でどんな治療をするの? 痛いことは嫌だ」と心配する子どもも少なくありません。実際にどんなことをするのか、保護者も子どもも知っておく必要があります。
そこで、一般的な治療の流れをご紹介します。

・外来診療での問診、身体的な検査や心理検査
 ↓
・問診や検査をもとにした依存症の診断・治療方針の決定
 ↓
・精神科医による診察、心理師によるカウンセリング
 ↓
・ 認知行動療法やソーシャル・スキル・トレーニングなどを組み合わせた治療
 ↓
・必要があれば入院治療

 認知行動療法とは、物事に対する考え方のクセに気づき、さまざまな考え方を身につけることでストレスへの対処法を増やす心理療法の一つです。認知行動療法を基盤とし、コミュニケーションの技法を練習するソーシャル・スキル・トレーニングなどを行います。
 著しい日常生活の乱れ、体調不良や家族への暴力などがあるケースでは、入院治療も一つの方法です。スマホやメディアから離れ、運動やレクリエーションなどを通じ、周囲とのコミュニケーションや日々の生活に自信をつけていきます。
 このような治療の中で重視されているのは「子どもへの寄り添い」です。なぜ、こんなにスマホにのめり込みたくなったのか、背景にある悩みや問題にスポットをあてます。「学校に居場所がない」「勉強がわからない」「友達とうまく付き合えない」など、孤独でプレッシャーに押しつぶされそうな子どもにとって、スマホでつながる世界は大人が思っている以上に重要なのです。
 親にはなかなか打ち明けられないことも、専門家に話せるケースもあります。子どもの悩みが明らかになってきたら、子どもの気持ちを理解するようにしてみてください。家庭でも子どもに寄り添いながら回復をサポートしていきましょう。


■ 子どもの「スマホ依存・ゲーム依存・ネット依存」 病院受診の無理強いがNGな理由を公認心理師が解説
#2 病院への受診を子どもが嫌がったら?
公認心理師・中井ようこ
2024.01.17:コクリコ)より一部抜粋(下線は私が引きました);

<目次>
・病院を嫌がるときは無理強いをしないこと
・スマホ以外の子どもの悩みを聞く
・病院以外の相談機関や家族向けの支援を利用しよう

▶ 病院を嫌がるときは無理強いをしないこと
 「スマホ依存」の子どもを、いざ病院に連れていこうとすると、受診を嫌がって抵抗されることは珍しくありません。「スマホを取り上げられるかもしれない」「痛いことをされるかもしれない」など、何をされるか分からない不安があるからです。
 そんなときに、つい家族がしてしまいがちなのが、「本当のことを伝えずに連れていくこと」。
 以前、私のところに寄せられた相談では、「すぐに終わるよ」「行ったら○○を買ってあげる」などと、病院に行く目的をしっかりと話さないまま、子どもを連れて行ってしまったケースがありました。そのお子さんは、おとなしく受診しましたが「長い間待たされた」「知らない人に聞かれるのが嫌だった」など、ネガティブな体験だけが心に残り、その後受診をしなくなり、さらには部屋に引きこもるようになってしまったのです。

▶ スマホ以外の子どもの悩みを聞く
 受診につなげるための子どもへの接し方としては、スマホ以外で子どもが望んでいることは何かを探してみてください。「スマホ以外で?」と思うかもしれませんが、少し視点を変えて声をかけるのがポイントです。
 たとえば、勉強や友達、進路など、子どもが悩みを抱えやすい話題について話し合ってみましょう。
「勉強のことがすごく不安」「教室で気軽に話せる相手がいない」など、子どもが心の奥底で抱えている本当の悩みにフォーカスしてみるのです。
 子どものニーズがだんだんと分かってきたら、悩みに沿った声かけで受診を促します。次のような例を参考に、子どもとコミュニケーションをとってみてはいかがでしょうか。

「病院の相談室やデイケアでは、勉強や進路について話せるみたいだよ」
「同じ趣味の人で集まって話せる場所があるみたいだよ」

 このように、病院は決して子どもを苦しめる場所ではなく、悩みや不安を一緒に解決してくれる所だと伝えることが大切です。
 子どもが病院に行きにくいようなら、まずは家族だけで診察を受けるのもよいでしょう。家族も病院への信頼感を持てて「とても優しい先生だったよ」などと教えてあげられますね。

▶ 病院以外の相談機関や家族向けの支援を利用しよう
 子どもと向きあいながら話し合ってみても、うまく病院受診につなげられない場合もあるかと思います。
 そのようなときは、子どもを受診させる考えをいったん捨てましょう。家族だけで相談できる場所を探し、信頼できる医師や心理師などの支援者に出会うことが大切です。
 子どものスマホ依存を診察する病院の多くは、家族だけでも受診できるシステムが整っています。子どもの様子や家族の悩みについて相談できる場所の一つです。
 子どもの依存症に悩む方のために「家族教室」を開催している病院もあります。スマホ依存に関する知識だけでなく、他の家族の体験談やアドバイスを聞くことができる貴重な場です。
 さらに、次のような機関でもスマホ依存の相談ができます。

・各都道府県の精神保健福祉センター
・市役所や保健所の子育て相談窓口
・自治体の教育支援センター
・小中学校のスクールカウンセラー

 精神保健福祉センターでは、スマホ・ゲーム依存の自助グループや家族会を紹介してくれることも。同じような境遇に悩んでいるメンバーとの出会いは、先の見えない不安を抱える家族にとって大きな心の支えになるはずです。
・・・
 まずは子どもの気持ちにしっかりと寄り添うことで、スマホ依存の背景にある子どもを本当に苦しめているものを一緒に見つけてあげる。そして、子どもに寄り添い、支えるためにも家族自身の心も大切にしなければなりません。「苦しい」「助けてほしい」。そんな気持ちを抱いたときには無理や我慢をせず、専門家や相談機関を頼ってくださいね。


■ 子どもの「スマホ依存・ゲーム依存・ネット依存」 小5息子の依存で自信を失ったママパパの「回復策」
#3 長く続く治療を親子で乗り越えるために

 スマホ依存は治癒までには数年かかることも。大きな試練を親子で乗り越えるためにはどうすればよいのでしょうか?・・・

<目次>
・はじまりはオンラインゲームから
・スマホ依存の症状があらわれ不登校に
・「病院受診はゴールではない」
・「人とのつながり」を通して見つけた解決へのヒント

▶ はじまりはオンラインゲームから
・・・
 寒くて手先が凍える12月の夕方5時ごろ、公園の片隅に子どもたちが集まっていました。それぞれゲーム機を握りしめ、対戦ゲームに熱中しています。
 その中に小学校4年生のA君がいました。前年のクリスマスに買ってもらったゲーム機がマイブーム。放課後は友達とのゲームが習慣となっていました。
 5年生になると、まわりの友達がスマホを持ちはじめました。クラスにLINEグループができ、その中で盛り上がった会話をクラス内で話す子も。オンラインゲームもできると聞き、A君はスマホが欲しくなり両親に頼みました。
 すぐにスマホを買ってもらえたA君は、さっそく友達数人とオンラインゲームをするように。みるみるうちに夢中になっていきました。
 Wi-Fi環境がないとスマホを使うのが不便なため、公園に行くことはもうありません。家にいながら友達とつながることができるスマホ。画期的なアイテムを手に入れて、A君は楽しく放課後を過ごしているように見えました。

▶ スマホ依存の症状があらわれ不登校に
 スマホの使用頻度がどんどん上がっていったA君。次第に今まで見られなかった様子が表れはじめた5年生の2学期。A君の両親は、担任からの紹介でスクールカウンセラーのもとをはじめて訪れました。

スクールカウンセラー・ヨウコ(以下、スクールカウンセラー):担任の先生より、息子さんのことで悩んでいるとお聞きしました。

A君ママ:はい。昼夜逆転していて、朝起きられない状態です。最初は遅刻しながら行っていましたが、夏休みが明けてからはほとんど通えていません。

スクールカウンセラー:それは大変でしたね。原因として何か思い当たることはありますか?

A君ママ:(しばらく言葉に詰まって)……スマホです。5年生になってから買い与えました。朝から晩までスマホを見ています。ゲームをしたり、インスタグラムを見ていたり。

スクールカウンセラー:そうなんですね。スマホから離れる時間はありますか?

A君ママ:いいえ。お風呂場やトイレにも持っていきます。最近では食事の時間に呼んでも来なくなり、外出も嫌がるようになりました。外食に行こうと誘っても「今、友達とゲームしている」と。家族の時間よりもスマホが大事なのかと……。(涙ぐむ)

スクールカウンセラー:それはとてもつらい状況ですね。息子さんとスマホについて話し合いはできそうですか?

A君パパ:話をするのは……、とても難しいです。ついこの前も、息子が食卓の上にスマホを置き、LINEで通話しながらパンを食べていたので「いい加減にしなさい」と𠮟りました。

それから、スマホを取り上げようとすると、息子が激高して私に暴言を吐いてきたんです。スマホを取り返そうと暴力もふるってきて……。

A君ママ:「ご飯をしっかり食べなさい」と言っても、スマホに夢中でちゃんと食べません。夜中もずっと起きているので、朝方に寝落ちしてしまうんです。

「頭が痛い」といつもイライラしていて親や兄弟に暴言を吐きます。兄弟のフォローも必要だし、私たちも精神的につらくて……。親としての自信もありません。(涙が止まらない)

A君パパ:実は、息子がスマホアプリで高額な課金をしていたことが分かりました。妻のクレジットカード番号を入力したようです。正直、とても情けなくなってしまい、息子のことも信じられなくなってきました。

こんなことは担任の先生にも話せないし、どうしたらよいのか分からなくて……。何か方法はあるのでしょうか?

スクールカウンセラー:つらい状況をよく話してくださいましたね。今のお話だと、息子さんは「スマホ依存」の可能性があるかもしれません。スマホ依存は早めに治療が必要ですので、息子さんに合った方法を一緒に考えていきましょう。

▶ 「病院受診はゴールではない」
 最初の相談から数ヵ月後、6年生になったA君の両親は再びカウンセリングに訪れました。
 A君は学校でのカウンセリングを嫌がったため、自治体の教育相談に行くようになり、病院受診をすすめられました。

スクールカウンセラー:その後のA君の様子はいかがですか?

A君ママ:特に大きくは変わっていないのですが、先月初めての病院受診をしました。予約をしてから半年待ちで、その間に心が折れそうでしたが、なんとか受診できてホッとしています。

A君パパ:医師からスマホ依存は治るのに時間がかかると聞きました。病院に行けば治る、状況が変わると思い込んでいたので……。私も妻もかなりショックを受けています。

A君ママ:息子は相変わらず学校には行けないし、自宅に引きこもりの状態です。友達とはスマホでつながっているようで安心していますが……。

息子をこんな状態にしたのもスマホだけど、外とのつながりをつくっているのもスマホなんですよね。頭の中がすごく混乱していて「これからこの子はどうなってしまうんだろう」という不安でいっぱいです。(涙が頰をつたう)

スクールカウンセラー:話してくださってありがとうございます。つらい気持ちはどこかで吐き出さないと、体や心に悪い影響をおよぼしてしまいます。よかったらご両親だけでもこちらに通ってください。何かお力になれるかもしれません。

▶ 「人とのつながり」を通して見つけた解決へのヒント
 A君の両親はその後、1ヵ月に1回のペースでカウンセリングに訪れました。病院の医師にも相談を続けており、A君との関わり方やスマホ依存の知識を学ぶ中で、考え方に変化があったようでした。

A君パパ:息子に聞いてみたんです。「何か悩みがあるのか?」と。そのときは何も返ってきませんでしたが、別の日に、「お父さんも気持ちが沈んでいたとき、現実逃避がしたくてパチンコばかり行っていたな」と話しかけてみたんです。
 すると、息子の表情が少し変わって、久しぶりに他愛もない会話ができました。息子の悩みは今も分かりませんが、きっと何かあるんだろうなと感じています。

スクールカウンセラー:息子さんとのコミュニケーションができてきましたね。パパは何か心境の変化があったのですか?

A君パパ:はい。病院から紹介された「家族会」でヒントをもらいました。スマホ依存や、ゲーム依存の子どもを持つ親の会ですが、同じ境遇の方と話すうちに子どもと、もっとかかわることが大切だと気づいたんです。そこで、息子とつながるにはどうすればよいか、考えるようになりました。

スクールカウンセラー:それはよかったです。ママのほうはどうですか?

A君ママ:息子は病院やデイケアを嫌がりはしませんが、積極的に行こうとはしなくて。医師や心理師からは「焦らずに。見守りながら、できたことを認めましょう」と言われています。
 以前だったら「うまくいかないことばかり。もう逃げ出したい!」という気持ちでいっぱいだったと思います。でも今は、この相談室でも自分の気持ちを話せますし、病院や家族会の人たちも助けてくださる。
 まわりから見たら何も変わっていないのかもしれませんが、もし話せる場所がなかったら、皆さんとつながっていなかったら……、きっと前には進めなかったと思います。

スクールカウンセラー:少しずつ親子関係にも変化があらわれていますね。

A君パパ:そうなんです。今度、息子と一緒に町内のお祭りを手伝うんですよ。息子の友達も参加するから、「それなら行こうかな」と言ってくれて。当日になったらどうなるか分かりませんが。
 でも、こんなふうに息子のことを誰かに話せるようになったのは、すごく大きな進歩です。

スクールカウンセラー:そうですね。本当に頑張っていらっしゃると思います。息子さんが元気になると信じて、少しずつでも前に進んでいきましょう。

 A君のご両親は、現在でもA君に合ったスマホ依存の治療方法を模索し続けています。病院受診をきっかけに、いろいろな人のアドバイスを受けたことで、確実に親子の距離は近くなっていると感じました。
 いつかきっと、A君は両親に本当の悩みを打ち明けてくれるでしょう。A君との心の距離に悩むご両親を、さまざまな人とのつながりと支援で変化が訪れたと気づかされたケースでした。
「病院に行けばスマホ依存が治ると思っていたのに」やっとの思いでたどり着いた病院受診が、ゴールではなく治療のスタートだと知ったとき、絶望感に打ちのめされるママパパは少なくありません
「いつになったら治るのか」明るい未来を想像できず、つらさを抱える親子たち。そんな思いを受け止めるのが、病院や学校、自治体、家族会などの機関です。
 公認心理師として言えるのは、苦しいときほど、人とつながってください、ということ。人とのつながりが、子どものスマホ依存を乗り越えるための力となってくれるでしょう。


日本の性教育で“性行為”を扱えない理由

2024年07月22日 13時13分20秒 | 性教育
私は小児科専門医&性教育認定講師です。
性教育関連の情報をアンテナを張って収集しています。

ある新聞記者のコメントに衝撃を受けました。
「日本の性教育で“歯止め規定”があるのは、
 政治に深く入り込んで宗教団体旧・〇〇教会の影響です」
・・・この団体は故・安倍首相の銃撃事件で話題になったアレです。

検索してみると、以下の記事を見つけました。

<ポイント>
・学習指導要領に「妊娠の経過は取り扱わない」という「はどめ規定」がある。
・性交やセックスという言葉すら使えず、セックスに対する正しい知識を教えられなければ、避妊方法や性暴力、性被害について伝えることもできない。
・2005年には、安倍晋三元自民党幹事長代理(当時)を座長、山谷えり子議員を事務局長とする「過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム」が結成され、全国の教育委員会に対して性教育の実態調査が行われる。その結果、「性交や避妊指導は不必要」として学習指導要領や教科書から消えた。
・自民党の一部の議員の裏には、伝統的家族観を重視する日本会議や神社本庁など宗教右派と言われる存在がある。彼らは性教育に限らず、男女共同参画や選択的夫婦別姓制度、同性婚などは、「日本の伝統的家族観を崩壊させるもの」として、ことごとくジェンダー平等、女性の権利に関わる政策に執拗に反対し続けてきた。
・このジェンダーバッシング、ジェンダーバックラッシュとも言われる動きの中で、旧統一教会がここまで草の根的に執拗に動いていた。
・男女による合同結婚式を重要な儀式と位置付ける旧統一教会は、同性婚に強く反対している。「偏見や差別の裏返しとして、同性愛を安易に美化してはならない。同性愛行為を行うことのリスクを客観的に評価する必要がある」と訴え、「パートナーシップ制度の拡大は、最終的には『夫婦』や『家族』についての日本人の考え方に混乱をもたらし、やがて夫婦を核とした伝統的な家族を破壊する」「パートナーシップ制度は行政による個人の信条・信仰への侵害だ」と主張している。
・『日本会議の正体』の著者である青木理さんは、ジェンダー政策の遅れの背景に宗教右派の存在があることを指摘し続けた。日本のメディアにおいて宗教右派の存在はある種のタブーだった。政治報道を担当する政治部が、支援団体である宗教まで踏み込んでこなかった。

内容を一部抜粋します;

■ 「なぜ女性が妊娠するか」を学校で教えない…日本の性教育を世界最悪にした原因は旧統一教会にあるメディアが宗教右派の存在を報じてこなかった理由
PRESIDENT Online:浜田 敬子 ジャーナリスト)より一部抜粋(下線は私が引きました);
 安倍晋三元首相の銃撃事件をきっかけに、旧統一教会と自民党の関係に注目が集まっている。その関係は長年にわたるものだが、なぜこれまで正面から責任を問われてこなかったのか。・・・

▶ 「世界最悪の性教育」をめぐる闘い
 20年以上にわたり、世界平和統一家庭連合(以下、旧統一教会)と闘ってきた一人の女性医師がいる。広島市で産婦人科医として、10代20代の女性たちの性被害や望まない妊娠の問題に向き合ってきた河野美代子さんだ。河野さんと旧統一教会の闘いの主戦場は、学校における「性教育」だった。
 河野さんは日本の性教育は「世界でも最悪の状態」だという。中学高校で正しい避妊方法や妊娠の知識、自分自身を大切にするという考えの下でのセックスについて教わっていない。男女の体の成長段階や人の受精卵が胎内で成長する過程は学ぶが、受精の前提となる性交については教えていないのだ。学習指導要領に「妊娠の経過は取り扱わない」という「はどめ規定」があるためだ。
 なぜこうした規定が残り、“中途半端な”性教育が続いてきたかは後述するが、河野さんは「性交やセックスという言葉すら使えず、セックスに対する正しい知識を教えられなければ、避妊方法や性暴力、性被害について伝えることもできない」と話す。

▶ 信者からの攻撃、通報、そして裁判へ
 学校現場で「教えることのできない」性の知識を知ってもらおうと、河野さんは広島県内だけでなく、全国各地で講演会を開いてきた。そして「講演会を開くたびに、旧統一教会から執拗しつような妨害を受けてきた」と証言する。
 講演会に紛れ込んだ信者により、その内容が「小学生にピルを飲めと言った」「中学生にセックスをそそのかしている」と歪曲され、攻撃された。県教委などにも通報され、「あなたたちのグループは何をやっているのか」と責められた。教育委員会に講演会の後援を断られれば、現場の教師たちは講演会への参加を躊躇う。
 広島市PTA協議会の会長には、月刊誌に「中学生にセックスをそそのかして家庭を崩壊させ革命を狙っている」とまで書かれた。河野さんは事実無根として、2005年1月に会長を名誉毀損で提訴した。
 この裁判の過程でこの会長は、旧統一教会の関連団体である世界平和女性連合の人たちとともに「10代の性を考える母と医師と教師の会」なるものを作り、喫茶店で会合を開いていたことが判明した(会合には5、6人しか集まらなかった)。

▶ 「日本の伝統的家族観」を守る政治家たち
 2000年代は広島県だけでなく全国で組織的な性教育排除、バッシングが広がっていた。国会では、今旧統一教会との深い関係を指摘されている山谷えり子参院議員が、「過激な性教育が学校に広がっている」と質問した。
 今その質問を見返すと、極めて抑制的に正しい性の知識を伝えている副読本や、知的障害のある子どもたちに体の仕組みを教えるために教師たちが苦心して作った家族人形を「セックス人形」だとしてやり玉に挙げた。
 2005年には、安倍晋三元自民党幹事長代理(当時)を座長、山谷議員を事務局長とする「過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム」が結成され、全国の教育委員会に対して性教育の実態調査が行われる。その結果、山谷氏が問題視したような“過激な”性教育はなかったにもかかわらず、「性交や避妊指導は不必要」として学習指導要領や教科書から消えた。
 こうした活動を展開してきた自民党の一部の議員の裏には、伝統的家族観を重視する日本会議や神社本庁など宗教右派と言われる存在があることは、ジェンダー関連の取材が長い記者たちは気づいていた。私もその一人だ。
 彼らは性教育に限らず、男女共同参画や選択的夫婦別姓制度、同性婚などは、「日本の伝統的家族観を崩壊させるもの」として、ことごとくジェンダー平等、女性の権利に関わる政策に執拗に反対し続けてきた
だが正直、このジェンダーバッシング、ジェンダーバックラッシュとも言われる動きの中で、旧統一教会がここまで草の根的に執拗に動いていたことは、私は恥ずかしながら安倍元首相襲撃事件後、取材をするまで気づいていなかった。先の河野さんはこう話す。
「私は旧統一教会の問題についてはずっと言い続けてきました。ですが、当時はメディアもほとんど聞く耳を持ってくれなかった。PTA連合会会長を提訴した時には記者会見も開きましたが、関心を持ってくれた記者は少なく、小さい記事になっただけでした」

▶ 富山県議らに送り付けられた1冊の冊子
 安倍元首相が凶弾に倒れるという事件が起きて改めて、旧統一教会のさまざまな問題が噴出している。2010年代に入っても強引な勧誘や、財産の収奪のような手法が続いていること、信者の親に育てられた宗教2世がいまだに苦しんでいること……。
 こうした実際の被害者の救済も急がなければならないが、もう一つ解明し忘れてはならないのが、彼らが政治家を通じて、自分達の「価値観」をどこまで政策に反映させてきたかということだ。
 自民党の富山県議で産婦人科医でもある種部恭子さんは、県議会の質問などで県に対して、同性・異性にかかわらずカップルであることを公的に証明する「パートナーシップ制度」の創設を求めてきた。
 県は2021年の議会答弁で「導入の検討」を明言したが、その後2022年5月になって自民党県議らに送り付けられてきたのは、「世界日報LGBTQ問題取材チーム」による『「LGBT」隠された真実 人権」を装う性革命』という冊子だった。世界日報とは統一教会系の新聞である。
 この冊子では、「偏見や差別の裏返しとして、同性愛を安易に美化してはならない。同性愛行為を行うことのリスクを客観的に評価する必要がある」と訴え、「パートナーシップ制度の拡大は、最終的には『夫婦』や『家族』についての日本人の考え方に混乱をもたらし、やがて夫婦を核とした伝統的な家族を破壊する」「パートナーシップ制度は行政による個人の信条・信仰への侵害だ」と主張している。

▶ 旧統一教会の政治的活動は報道されなかった
 この7月には富山を拠点にするチューリップテレビが、2019年と2021年1月に、統一教会の関連団体、国際勝共連合の幹部が富山市議会の自民党議員らに勉強会の講師として招かれていたことを報じた。この時の内容も、同性愛に反対する内容だったという。男女による合同結婚式を重要な儀式と位置付ける旧統一教会は、同性婚に強く反対している。
 性教育だけでなく、パートナーシップ制度の導入についても、旧統一教会は保守系議員への働きかけを続けてきたが、この活動がメディアに出ることは最近までほぼなかった。
 背景にはメディアがこの20年、旧統一教会の動きに注目していなかったこともあるが、「メディア自体が男性中心組織で、特にどの記事を掲載するかを決めるデスク以上に女性が少ないことが関係しているのではないか」と種部さんは指摘する。
 性教育や同性婚、夫婦別姓の問題、ジェンダー平等に関する問題に関心を持つのは比較的女性の記者やディレクターが多い。これまで長くデスク以上の責任者を男性が占めるという構造だったメディアでは、ジェンダー関連のニュースの優先度が下がるという状態が続いてきた。

▶ 約40年間で主要3紙の関連記事はわずか
・・・元朝日新聞記者でジャーナリストの竹信三恵子さんは、1995年の北京女性会議前からジェンダー政策について取材し続けてきた数少ない記者だ。2000年に入ると男女共同参画審議会の専門委員にも就任。竹信さんの30年間は、記者として、宗教右派や保守系議員によるバッシングの影との闘いでもあったという。

・・・

▶ 「ジェンダー問題」から距離を置く男性たちの事情
 「一つは、ジェンダーは自分達にはよく理解できない問題だから介入できないし、したくないという姿勢。もう一つはこの問題を追及すると、自分たちの足元の家族の関係性が揺らぐという懸念があったのだと思います。
 長時間労働や転勤が当たり前だった新聞社の働き方は、夫が稼ぎ、妻が家事育児をするという性別役割分業が前提で成り立っていたので、男女平等という概念を突き詰めると、自分たちの存在が否定されるような気持ちになったのではないでしょうか」
 実際、私自身、週刊誌『AERA』時代、働く女性の記事を書くときでさえ、長年「ジェンダーという言葉は避けて」と釘を刺されてきた。当時私も、男性たちがこの言葉に微妙な忌避感を抱いていることは感じ取っていた。それは声を上げる女性を敬遠する空気と一体だった。

▶ 宗教右派という日本メディアのタブー
 日本のメディアは、例えばアメリカの中絶論争や同性婚は重要な政治的イシューだとして、大きく取り上げてきた。2022年6月には、中絶権は憲法で保証されているという重要判例を覆した米最高裁判決が新聞一面で取り上げられ、背景にキリスト教福音派と言われる宗教的価値観があることも詳しく解説された。
 一方で、日本のジェンダーバッシングの動きや、伝統的家族観を頑なに守ろうとする宗教右派や保守系議員の動きは、一部の記者やジャーナリストが報じてきてはいたが、それが決して大きくメディアで取り上げられることはなかった。
日本会議の正体』の著者である青木理さんは、ジェンダー政策の遅れの背景に宗教右派の存在があることを指摘し続けたジャーナリストの一人だが、日本のメディアにおいて宗教右派の存在はある種のタブーだったと話す。
「キャラバン隊と称して、地方から改憲運動や、伝統的家族観に基づいた政策の実現という草の根活動を展開し、第2次安倍政権に強い影響力を及ぼしてきた日本会議ですら、海外のメディアが書くまで、日本のメディアはほとんど書いてこなかった」

▶ メディアが伝えてこなかった大きなツケ
 確かに2014年から2015年にかけて欧米メディアはこぞって日本会議のことを報じている。青木さんが2016年に出版した『日本会議の正体』によると、
「国粋主義的かつ歴史修正的な目標を掲げ、戦前の古き良き時代のように天皇を敬う」(英ガーディアン紙)、「日本会議〜日本版ティーパーティー〜のような反動的グループが安倍内閣を牛耳り、歴史観を共有している」(米CNNテレビ)など、極めて復古的、国粋主義的な団体の性格だけでなく、「奇妙なことに、この団体は日本のメディアの注目をほとんど集めていない」(ガーディアン紙)とも報じている。
 海外メディアが相次いで報道し、青木さんの著書などが出版されてやっと、朝日、毎日なども「日本会議の研究」などと本格的な報道を始めている。
 それでも、今回の安倍首相襲撃事件が起こるまで、多くの人たちに日本会議や旧統一教会など宗教右派の活動が知られることはなかった。今になって、「メディアはなぜもっと早く知らせてくれなかったのか」という声をよく聞く。
 そこにはこれまで書いてきたようなメディア内部の構造上の問題やジェンダー関連報道の優先度の低さ、また「政治報道を担当する政治部が、支援団体である宗教まで踏み込んでこなかった」(青木さん)など、さまざまな要因が絡んでいたのだと思う。
 青木さんは『日本会議の正体』のプロローグでこう書いている。
「足下で起きている出来事であっても、メディアが伝えようとしなければ、私たちは出来事を認識することすらできない。その出来事が驚愕すべきようなことであったり、きわめて異常なことであったり、あるいは早急な対処が必要なほど深刻な事態であっても、メディアがきちんと伝えてくれなければ、私たちは(中略)出来事自体の発生を認知できず、漫然と事態をやりすごすしかなくなってしまう」
 さまざまな場面で当事者たちは小さな声を上げてきたが、メディアはそれを汲み取り、継続的には伝えてこなかった。そのため「やり過ごされてきた」問題が、今私たちの目の前に吹き出しているのである。

子どものネット依存は脳活動においてギャンブル依存に類似

2024年07月21日 15時21分47秒 | 子どもの心の問題
子どもがスマホ依存、ネット依存になることが社会問題化している今日、
「ネットの使いすぎがギャンブル依存に近い症状になり得る」
という衝撃的な研究結果が報告されました。

<ポイント>
・インターネット中毒になっている若者の脳は、能動的思考に関係する部分に変化を起こしている。
・こうした脳の変化はさらなる依存行動そして知的能力や身体の整合性、メンタルヘルス、発達に関連する変化につながる。
・インターネット中毒は、青年期の生活に悪影響を及ぼしかねないネガティブな行動や発達の変化につながる可能性がある。
・例えば、人間関係や社会活動を維持するのに困難を抱えたり、ネット上での活動について嘘をついたりする。また、食事が不規則になったり睡眠障害に陥ったりする可能性がある。
・英議会の委員会は2024年5月に「16歳未満のスマホ利用を禁止することが、スマホがもたらし得る害を抑える最善の策かもしれない」と警告する報告書を出した。

■ ネットの使いすぎが「10代の脳」に大きく影響、ギャンブル依存に近い症状に 研究結果
Nick Morrison | Contributor
2024.6.9:Forbes Japan)より一部抜粋(下線は私が引きました);
 過剰なインターネットの使用が10代の若者の脳を変化させているとの研究結果が6月4日に発表された。インターネット中毒になっている若者の脳は、能動的思考に関係する部分に変化を起こしていることがスキャンで示されているという。
 英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の研究者らによると、こうした脳の変化はさらなる依存行動そして知的能力や身体の整合性、メンタルヘルス、発達に関連する変化につながることがわかった。
 UCLグレート・オーモンド・ストリート小児保健研究所の修士課程の学生で、この研究の筆頭著者であるマックス・チャンは「思春期は身体や認知機能、性格が大きく変化する重要な発達段階だ」と指摘する。「そのため、この時期の脳は強迫観念によるインターネット使用や、マウスあるいはキーボードを使用したい、メディアを視聴したいという欲求を促すインターネット中毒に対して特に脆弱だ」と説明する。
 研究者らは、インターネット中毒と診断された10〜19歳の237人の脳を機能的磁気共鳴画像法(fMRI)でスキャンして調べた12の研究を分析した。インターネット中毒とは、インターネットを使いたいという衝動を抑えることができず、それが心身の状態や社会生活、勉強、仕事に悪影響を及ぼしている状態と定義される。
 fMRIによる脳スキャンでは、安静時に活性化する脳の部位の活動の増加と減少の両方が見られ、能動的思考に関係する部位である実行制御ネットワークでは、脳の領域間の相互作用を示す機能的結合が全体的に減少していることが示された。
・・・機能的結合の減少によって影響を受けるものには強調運動、短期記憶、衝動抑制、注意力の持続、意思決定、意欲、報酬に対する反応、情報処理などがある。思春期の脳の変化は、インターネット中毒の影響を特に受けやすくすると研究者らはいう。
「研究で、インターネット中毒は、青年期の生活に悪影響を及ぼしかねないネガティブな行動や発達の変化につながる可能性がある」とチャンは指摘する。
例えば、人間関係や社会活動を維持するのに困難を抱えたり、ネット上での活動について嘘をついたりする。また、食事が不規則になったり睡眠障害に陥ったりする可能性がある
・・・英議会の委員会は5月に、16歳未満のスマホ利用を禁止することが、スマホがもたらし得る害を抑える最善の策かもしれないと警告する報告書を出したばかりだ。
 ある調査によると、イングランドとウェールズでは10〜15歳の4分の3以上が週末に3時間以上、5人に1人(22%)が7時間以上、約半数が学校のある日に3時間以上インターネットを使用しているという。米シンクタンクのピュー研究所の2022年の報告書では、米国では10代の若者のほぼ半数がインターネットを「ほぼ常時」使用しているとされた。
 チャンとともに研究をまとめたアイリーン・リーは「インターネットに一定の利点があることは間違いない」としながらも、「だがそれが日常生活に影響を及ぼし始めると問題だ」と指摘している。


「セックスってなに?」と子どもに聞かれたときになんて答えますか?

2024年07月21日 08時52分33秒 | 性教育
多くの親が、
「大きくなればわかるよ」
とスルーしてしまいがちの質問ですね。

私は小児科医ですが、
性教育認定講師(日本思春期学会公認)という資格も持っており、
日々「どのような性教育がベターか」を探求しています。

この疑問に直球で答える記事を見つけましたので紹介します。

<ポイント>
・照れ屋恥ずかしさからごまかすのはNG。
・セックスって何?  → 男の人と女の人で、赤ちゃんができるようにすること。
・質問したことを怒ったりせず、淡々と科学的に説明する。うまく答えられないようなら、あとで絵本やDVDなどを使ってみる。

■ 「セックスってなに?」っと子どもに聞かれたときの模範解答
2016.7.15:AERA with Kids)より一部抜粋(下線は私が引きました);

 産婦人科医の高橋幸子先生は、照れやはずかしさからごまかすのはNG、と言います。
「ごまかされると、性のことは聞いてはいけないことになってしまいます。どーんと構えて、『いつでも聞いていいよ』、という雰囲気をつくっておきたいですね」。
・・・子どもの性の質問に対する模範解答は以下の通りです。

▶ 生理ってどうして女の子だけにあるの?
 → 将来大人になって、赤ちゃんを産めるように準備しているんだよ。
「『赤ちゃんは女性のおなかで育つから、女性に生理があるの』とダイレクトに話していいと思います。『赤ちゃんが育つ子宮は毎月、体が自分でお掃除をする。そのとき、内側の膜が落ちるのが生理なの』としくみを説明するのもわかりやすいですね」(高橋先生)
「『生理のおかげで、◯◯ちゃんも生まれたのよ』と、子どもとの出会いをうれしく思っていることも伝えたいですね」(宍戸先生)

▶ 赤ちゃんはどうやってできるの?
 → 男の人の精子と女の人の卵子が結合してできるの。
「低学年なら『お母さんの体の赤ちゃんのもとと、お父さんの体の赤ちゃんのもとがひとつなってできるの』と話せば納得するでしょう」(高橋先生)
「DVDなので受精のしくみを一緒にみて、『自然はよくできてるね。素晴らしいね』と話すと、子どもも感心するもの。性交について話すことに抵抗があれば、『これだ!』と思う性の本を使って説明すると話しやすいですよ」(宍戸先生)

▶ セックスって何?
 → 男の人と女の人で、赤ちゃんができるようにすることなの。
 照れずにさらっと言うのがコツ。
「学校の授業では性交には触れないので、よくある質問です。『ほかの動物の交尾と同じ。人間は性交といって、英語でセックスというの』と話すとわかりやすいですね」(宍戸先生)
「しくみの説明なら、性交の様子が描かれた絵本を使うのが、いちばん理解しやすいと思います」(高橋先生)

▶ オナニーって何?
 → 自分で自分を気持ちよくする行為だよ。
「『何か変なことばだから言っちゃえ』と、ふざけているようなら、上のことばをさらっと伝えましょう。意外と『ふーん』、とあっけなく納得するものです」(宍戸先生)
「まじめに意味を聞いてきたなら、『悪いことではないよ。でも、家族にもよその人にも内緒の、プライベートのことなの』とあわせて伝えるといいですね」(高橋先生)

・・・照れたり、質問したことを怒ったりせず、淡々と科学的に説明するうまく答えられないようなら、あとで絵本やDVDなどを使ってみる。これらが鉄則のようです。

「思春期の子ども」との“正しい”接し方とは?

2024年07月07日 09時49分09秒 | 思春期
さて、“毒親”に引きつづき、
“思春期”を扱った記事を紹介します。

私は思春期という単語から、
・自分の思春期
・自分の子どもの思春期
の両方を想像してしまいます。

さて、思春期の子どもに対する“正しい”接し方なんて、
存在するのでしょうか?
そんな疑問を持ちながら読んでみました。

…書いてある内容は一般的な子育てと同じでした。
「子どもの存在を受容・傾聴し、
 安心する場所を用意し、
 自由を与える」
というシンプルなスタンスに尽きるようです。

<ポイント>
・思春期は不安定な時期であり、心の内に葛藤を抱え、仲間から認められたいと願い、アイデンティティを形成しようとする年ごろ。
・無条件で頼ることができる周囲の支えが不可欠になる。
・10代の子どもが、いつになく不機嫌に見え、以前より距離を取ろうとし、親と対立することも増えるかもしれない。
・親の影響力が衰えてきているというよりは、ティーンエイジャーの子どもの世界が広がっていると捉えるべきである。
・子どもの変化を心から喜び、受け入れよう。思春期の子どもを、ありのままで受け入れよう。子どもの自主性を尊重しよう。
・助けが必要なときはいつでもそばにいることを伝えつつ、けれども、子どもが自力でさまざまなことを乗り超えていけるような自由を提供しよう。
・何よりも重要なのは、子どもが、助けが必要なときには親に相談できる、と感じられるような環境をつくること。


■「思春期の子ども」との正しい接し方、専門家からのアドバイス
Mark Travers | Contributor 
2024.06.29:Forbes Jpapn)より一部抜粋(下線は私が引きました);

 子どもが10代になったとき、多くの親は、わが子とのつながりが絶たれてしまったように感じて、こんなふうに嘆くことがある。

・「うちの子の心は、親からどんどん離れていっているようだ。親子関係はもう、以前とは違う」
・「子どもの成長があまりにも速く、関係を維持してついていくのに苦労している」
・「考え方などが食い違っていて、いくら努力しても、その溝を埋められない気がする」

 米ミシガン大学ヘルスシステムC.S.モット小児病院が2022年に実施した全米規模の世論調査によると、「思春期のわが子が問題を抱えていると思ったときは声をかける」と答えた親は82%に上る。ところが、「10代のわが子は、問題を抱えたら、親である自分に相談するだろう」と答えた親は4人に1人にとどまった。

 思春期は不安定な時期だ。変化が激しく、自分を発見しようとするプロセスで失敗することも多い。心の内に葛藤を抱え、仲間から認められたいと願い、アイデンティティを形成しようとする年ごろだ。だからこそ、無条件で頼ることができる周囲の支えが不可欠になる。思春期の子どもに安心感と帰属意識を与える上では、親の支えはとりわけ重要な役割を果たす。

 荒れがちな思春期という時期に、子どもとの確かな結びつきを維持するためには、次の点に留意してほしい。
1. 自主性を尊重する
 10代は、人生の新たな側面を見いだし、探っていく時期であるため、親はわが子の心が離れていくような気持ちになるかもしれない。親子の結びつきが絶たれる気がして、不安を覚えることもあるだろう。子どもが新しい人と交流し、友人をつくり、これまでにない体験を積んでいれば、なおのこと不安は募る。
 思春期の芽生えと、中学・高校への進学で、人生は新しい段階へと進んでいく。そうした時期に子どもたちは、仲間からのけ者にされたり、決めつけられたりすることを恐れる。それは、自分が世界中から見られているような気がするからだ。こうした、自分の外見や行動が他者から注目されていると過大評価する傾向を、研究者らは「スポットライト効果」と呼んでいる。
 人付き合いで危機感を覚えると、幼いころから親が注意深く教育してきた信念や価値観が揺らぐことがある。だからといって、親の影響が衰えてきているというわけではない。青年期心理学などを扱う学術誌のJournal of Youth and Adolescenceで発表された研究論文によれば、親の影響力が衰えてきているというよりは、ティーンエイジャーの子どもの世界が広がっているのだ。
 親は、思春期になった子どもに対しても、幼かったころと同じように接しがちだ。だから、子どもが以前と違う態度を見せると、不満を感じることになる。10代の子どもが、いつになく不機嫌に見え、以前より距離を取ろうとし、親と対立することも増えるかもしれない。それまでは問題なかったやり方が、不意に通用しなくなってしまうのだ。
 こうしたとき親は、子どもへの接し方を、次のような方法で現状に適応させることができる。

・親の権威を過度に振りかざさない
 成長に伴う子どもの変化を認めることが肝心だ。決めつけず、子どもの変化を心から喜び、受け入れよう。子どもをつなぎとめようとしすぎると、逆効果になりかねない。反抗するようになったり、コミュニケーションがいっさい取れなくなったりする可能性もある。むやみに威圧したり、「ああしろ、こうしろ」と求めたりするのはやめよう。それよりも、友好的な姿勢で子どもを導き、子どもの自主性を尊重する方がいい。

・受け入れ、順応する
 思春期の子どもを、ありのままで受け入れよう。自分の興味関心を広げ、人間として成長しつつある子どもに、親も順応し、個性を尊重し、大事にしよう。押し付けがましい態度をとらず、目の前にいる子どもを尊重するよう心がけよう。助けが必要なときはいつでもそばにいることを伝えつつ、けれども、子どもが自力でさまざまなことを乗り超えていけるような自由を提供しよう
 自主性を尊重し、自ら決断して過ちから学ぶよう励まそう。必要に応じてアドバイスしてもいいが、親の考えを押しつけることは避けよう。

2. 信頼関係を築く
 ティーンエイジャーは間違いを犯しがちだし、道を踏み外してしまうこともあるかもしれない。何よりも重要なのは、子どもが、助けが必要なときには親に相談できる、と感じられるような環境をつくることだ。そうした信頼関係は、一貫性があってオープンで、親身なコミュニケーションを通じて築かれる。
 では、子どもとの対話の糸口を維持できる方法を紹介しよう。

・好ましい家庭環境を維持する
 家族心理学ジャーナルのJournal of Family Psychologyで2023年に発表されたある研究で明らかになったように、混乱した家庭環境は、家族が健全にコミュニケーションをとる上でふさわしくない。つまり、何かと騒々しく、先が読めず、乱雑で、落ち着いた日常が送れないような家庭環境だ。

・子どもの話に、積極的かつ親身に耳を傾ける
 思春期の子どもが話をしているときは、口をはさんだり、解決策をすぐさま提案したりせず、耳を傾けよう。子どもの感情や体験を受け入れ、肯定し、共感を示そう。思春期の子どもは、何かと誤解されていると感じ、孤立感を抱きがちだ。しかし、親が熱心に話を聞くことで、そうした心の隙間を埋め、共感や肯定を示すことができる。

・対立的ではない姿勢で接する
 子どもが過ちを犯したときは、すぐさま説教をするのではなく、普通の会話の雰囲気を保つようにしよう。イエス・ノーでは答えられない質問をして、話を促すといい。例えば、「宿題は終わった?」と聞くのではなく、「今日、学校でいちばん面白かった授業は何?」といった具合だ。このようにアプローチすると、敵対的にならず、会話に引き込むことができる。

・一緒に何かに取り組み、ともに過ごす時間を増やす
 思春期の子どもは、世代や興味関心の違いから、親とのつながりを感じられないことが多い。スポーツや楽器の演奏、ビデオゲームなど、何でも構わないので、子どもの趣味に心から関心を示そう。そうすれば、子どもの好きなことを親も大切に思っており、尊重していることを示せるし、やり取りがより充実する。

 思春期にある子どもとの関係は、信頼を築き、決めつけずに支えることが基本だ。必要なのは、決めつけられる恐れがなく、親を信頼することができる、と子どもに感じてもらうことだ。
 親がいつもそばにいて、無条件で自分を支えてくれるとわかっていれば、つらいことがあったときに、きっと助言を求めてくるだろう。


…思春期に子どもが不登校になったとき、
子どもの話に口を挟んではいけない、
「フ〜ン、そうなんだ」
とうなづくだけでいい、
そうすると子どもはたくさん話してくれるようになり、
心も軽くなる…

これは起立性調節障害に関するWEBセミナーで聞いた内容です。


毒親は変わらない。

2024年07月07日 07時46分55秒 | 子どもの心の問題
一時期“毒親”という単語が流行りました。
いや、現在進行形かな…

するとみんな、
「自分の親はどうだったのかな?」
とか、
「自分自身は親としてどうなのかな?」
とか、考えがちです。

こんな記事が目に留まりました。
短いけど、示唆に富んでいます。

■ 「毒親」は変わらない 大人になって出てくるトラウマ、どう対処する
2024/6/30:朝日新聞)より一部抜粋(下線は私が引きました);
 東京都内に暮らすきょうこさん(53)は、母から精神的暴力を受けてきた。親の暴言やネグレクトが「毒親」にあたると知ったのは、ほんの数年前だ。 
「生まれてきたくなかった」毒親のトラウマでうつ病に、苦しむ53歳  高校を中退し、21歳で結婚したが、娘には障害があった。義父の介護もかさなり、30歳のとき、うつ病を発症した。夫との間もうまくいかなくなり、33歳で離婚。その2年後に再婚したが、夫は発達障害のグレーゾーンで、会話がかみ合わず孤独だった。 
 再婚から1年たつと、うつ病が悪化し、38歳のときに反復性うつ病と診断された。「もう死にたい」と自分を責め続けた。 
 母との連絡は断っていたが、東日本大震災の後、再びつながってしまった。ある日、母が突然、野菜とともに置き手紙を残していった。手紙にはきょうこさんの悪口が書き連ねてあり、「今日はこのぐらいにしとくわ」の一文で終わっていた。その瞬間、パニックを起こし、過去のつらい思い出がフラッシュバックとしてよみがえるようになった。 
 「母のことはもう、どうでもいいです」
  いま、母とは一切の連絡を取っていない。 
 子が親から受けた虐待のトラウマは、後年になっても当事者を苦しめ続けることがある。精神科医の片田珠美さんは、その背景には親の満たされない承認欲求があると指摘する。 
 子どもを支配しようとする「毒親」は、自身が抱いている不全感を子どもによって「一発逆転」し、解消しようとしている場合が多いという。 
 一方で、親から虐げられた当事者の多くが、過去のつらい記憶を心の奥底にしまい込んでしまう。抑圧された感情は抑え込んでも出てきてしまうため、フラッシュバックの苦しさからうつ病を発症したり、薬物やギャンブル、あるいは買い物や過食・嘔吐(おうと)など、様々なものに依存したりすることもある。 
 ただ、「いくら自分を痛めつけてみても、子どもを支配してきた親が変わることはほとんどない」と片田さんは指摘する。心に抱えるトラウマと向き合うには、自分の中で抑圧してきた負の感情を見つめ、何らかのかたちで「言語化」することが重要だとアドバイスする。 
 また、負の連鎖は自分で断ち切るのだという自覚を持つことも大事だという。その上で、「親を許さなくてもよいのだ」と思うことが重要だと話す。


…私は医師を生業としていますが、
これは親が望んだ職業で、
高校時代の私はいわゆる“文系”に進み、
文化人類学を専攻したいと思っていました。

しかし成績がそこそこよかった私に対する親の期待は大きく、
そういう家系でもないのに「医者になれ!」という強い圧力をかけてきました。

私の両親は戦争を経験し、
自分の夢を戦争によって奪われた世代です。
両親も成績がよかったようですが、
兄弟が多く経済的な事情で大学へ進学することは叶わず、
就職・結婚に落ちつかざるを得なかったと思われます。
その期待を勉強嫌いだった姉の身代わりに、
私が一身に背負うことになりました。

私はそんなプレッシャーの中、
努力して結果を出し続けることで青春時代を生き抜きました。
苦しかったけど、結果が出るとうれしかった。
私はこの現象を“楽苦しい”と呼んでいます。

さて私は、文系に進みたかったけど、
「両親のガッカリする姿を見たくない」
という思いが勝り、
理系へ進み、何とか医学部に滑り込んだのでした。

そんな私の気持ちを知ってか知らずか、
大学受験の発表前に父親から、
「もし大学に落ちたら浪人は許さない、
 蕎麦屋に丁稚奉公に出す」
と言われ、傷つきました。
今考えると、ひどいですよね。
まあ、昭和時代はこんな父親がたくさんいたのです。

医師になったことで、親の期待に応えた、
これで無罪放免、と私はホッとしました。

が、これで終わりではありませんでした。

その後も医師になったらなったで、
「博士号はどうなっているんだ」
とか、さらなる出世を期待されました。

まあ、その期待にも応えてしまいました。

父親が病に倒れた際、
そのタイミングで海外留学の話が舞い込みました。
入退院を繰り返す父親の状態を見て、
私は留学を諦めました。

父親は闘病生活を続け、
両親は経済的に自立できなくなったため、
妻と子どもを連れて実家に入りました。

それ以外の選択もできたのですが、
それ以外の選択をすることを、
私自身が許さなかったのでしょう。

妻は寝たきりになった私の父を介護し、
看取りました。

年月が経ち、
子どもたちは独立し、
現在は年老いた母親と一緒に住んでいます。
ただ、毒親的つぶやきは今でも続いており、
距離を取るようにしています。

以前、
「私の人生は両親に翻弄された」
「私が人生の選択をする度に自分の自由が失われていった」
と母親に話したことがあります。
母親の反応は、
「よくある話よねえ…」
と他人事でした。
ああ、この人に何を言ってもわかってもらえない、
彼女は変わらないんだと実感しました。

私の両親が毒親の定義に当てはまるのかどうか、よくわかりません。
私は両親に感謝、あるいは同情する一方で、
その期待が重くて重くてつらい生活を強いられた一面もあります。

それがときどき、フツフツと湧き上がり、悩まされます。

ただ、私と同世代はみな、同じような経験をしているようです。
以前、プチ同窓会で集まったとき、
「親の期待が大きくてプレッシャーだった」
という話が出ました。
「親を憎んでないが、恨んでる」
という微妙な結論に落ちつきましたが。

時々帰ってくる姉にも同じ話をしたことがあります。
彼女は東京で働いています。
「なるほど、でもその選択をしたのはあなた自身でしょう」
とのコメント。

自分の自由を奪った親と複雑な思いをして一緒に生活している私に、
「当たり前」
「自分が選択したこと」
の言葉しかないことに愕然としました。

そう、私の行動は家族にとって「長男だから当たり前」なのです。
私は自分の親家族に期待することを止め、
距離を置くことにしました。
そうすると、少し心が楽になります。

これは戦争を経験した日本の家族の病理かもしれません。



親からの愛情をたっぷり受けた子の特徴は?

2024年07月07日 07時28分36秒 | 育児
興味深いテーマの記事が目に留まりました。
子どもを観察する際に役立ちそう…
いやいや、自分自身がどうか考えてしまいそう(^^;)。

私なりにまとめると、親の愛情が豊かということは、
・親が子どもの長所も短所も受け止めてくれる。
・だから子どもは安心して自由に行動できる。
ということに尽きるかもしれません。

あるあるなのが、「この子のためを思って…」とかわいがるのですが、
気がつくと親の希望や理想を押しつける“ゆがんだ愛情”になってしまうこと。
こどもは“叱られない行動”を取るよう誘導され、
自由度がない窮屈な生活になってしまいます。

■ 親からの愛情をたっぷり受けた子の特徴7選
 えらせん(作家)
2024/7/5:Yahoo!ニュース)より一部抜粋;

1.目標に向かって努力する
 愛情をたっぷり受けた子って、自己肯定感が高いです。だから「自分にもできる」って心から思えるようになります。例えば「将来はパイロットになりたいな」って目標を持ったら「英語の勉強頑張ろう」と自分から努力し始めます。親から「あなたならできる」って応援されてきたから、自分を信じてチャレンジする勇気があるんです。

2.学校であったことを話す
「今日、学校で何があったの?」って聞かれて、楽しそうに話す子は、家族との信頼関係がしっかりしている証拠。「話したら、ちゃんと聞いてくれる」って信じているから、学校での出来事を自然に話せるんですね。

3.自分のミスを認める
これは大人でも難しいこと。でも、愛情たっぷりに育った子は、ミスを認めることを恐れません。「失敗しても、愛されなくなるわけじゃない」って安心感があるから、素直に「ごめんなさい、自分が悪かった」って言えるんです。

4.わからないと言える
「わからない」と言うのって、実は勇気がいること。でも愛情たっぷりに育った子は、それを恥ずかしがりません。「わからないことがあったら、聞けばいいんだよ」って教えられてきたから、素直に「これ、わからないんだ」って言うことができます。

5.泣いてる友達を励ます
他人の気持ちに寄り添える子って素敵ですよね。自分が励まされた経験があるから、友達が泣いているのを見ると、自然と「大丈夫?」って声をかけられるんです。優しさの連鎖ってことですね。

6.親の仕事が将来の夢
これって、親子関係の良さを表しているんです。親の仕事を身近に感じて、「かっこいいな」って思える環境で育ったんですね。「僕もパパみたいな仕事につきたい」なんて言われたら、嬉しいですよね。

7.ありがとうが自然といえる
「ありがとう」をたくさん言ってもらってきた子は、自分も自然に「ありがとう」が言えます。感謝の気持ちをもって、支えあって生きていくことの必要性を理解しているんですね。

一見、「手のかからないいい子」は、
親の期待に添うよう努力し緊張を強いられています。
自分が否定されることを極端に恐れます。
1と2、それから6、5、7はかろうじて満たすかもしれませんが、
3と4は難しいような気がします。

子どものスクリーンタイムを減らす効果的な方法

2024年07月02日 06時15分16秒 | 育児
社会問題になっているスマホ依存、ゲーム依存…
その解決法はあるのでしょうか?

もともとは利便性を求めて開発・発展してきたものなので、
もはや手放すことはできません。
「使われるな、使いこなせ!」
という意見もありますが、なかなかこれが…。

科学的データで解決法を見いだせないかなあ…
と常々感じていたところに、以下の記事が目に留まりました。

<ポイント>
・子どもをスマホやダブレット、テレビなどのスクリーンベースのデバイスから引き離すことは可能である。
・最も効果的な方法2つ;
(その1)食事中や就寝時にデバイスの使用を禁止する。
(その2)親自身が適切にデバイスを使用する姿を子どもに見せる
・子どもに説教している親自身も、これらのことを実践するよう心がける。
・デバイスの使用を「ご褒美」や「罰」として用いることは、スクリーンタイム減少効果がない。

まあ、「親が手本を見せる」というオチですね。

■ 子どものスクリーンタイム削減に親がすべきこととは?
HealthDay News:2024/06/28:ケアネット)より一部抜粋(下線は私が引きました);

 常にスマートフォン(以下、スマホ)を手にしている子どもに対してフラストレーションを抱えている親にとって心強い研究結果が明らかになった。子どもをスマホやダブレット、テレビなどのスクリーンベースのデバイス(以下、デバイス)から引き離すことは可能なことが、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のグループによる研究で示されたのだ。同研究では、食事中や就寝時にデバイスの使用を禁止すること、親自身が適切にデバイスを使用する姿を子どもに見せることの2つの実践が最も効果的であることが示されたという。・・・
 論文の筆頭著者である、UCSFベニオフ小児病院の小児科医であるJason Nagata氏は、「この研究結果は、親がトゥイーン(8〜12歳の子ども)やティーンに使える具体的な戦略を示しているという点で心強い。その戦略とは、スクリーンタイムに制限を設けること、子どものデバイスの使用状況の把握に努め、寝室にいる間や食事の時間にはデバイスの使用を禁じることだ」と話す。さらに「子どもに説教している親自身も、これらのことを実践するよう心がけるべきだ」と付け加えている。
 Nagata氏らは、米国の思春期の脳の発達に関する研究(ABCD研究)の参加者のうち約1万人の12~13歳の子どものデータを分析した。ABCD研究では、親が「わが子はデバイスを使いながら眠りにつく」などの項目についてどの程度当てはまるのかを、1(全く当てはまらない)から4(強く当てはまる)までの4段階で回答していた。その後、親の評価により子どもの1日のスクリーンタイムをどの程度予測できるのかを調べた。・・・
 その結果、子どもの就寝時のデバイスの使用は、1日当たりのスクリーンタイムの1.60時間の増加と関連することが明らかになった。同様に、食事中のデバイスの使用と、親が子どもと一緒にいるときにもデバイスを使用する「悪い手本」である場合も、スクリーンタイムはそれぞれ1.24時間と0.66時間の増加に関連していた。
 一方で、食卓や寝室でのデバイスの使用を禁止するルールを設けることは、子どもの1日当たりのスクリーンタイムの1.29時間の減少につながっていた。また、食事中や就寝時の子どものデバイスの使用状況を監視することも効果的で、1日当たりのスクリーンタイムは平均で0.83時間減っていた。このほか、効果がない対策があることも分かった。デバイスの使用を「ご褒美」や「罰」として用いている親の子どもでは、1日当たりのスクリーンタイムが平均で0.36時間長かった
 Nagata氏は、「子どものデバイスの使用時間を減らすために親にできることの中で最も重要なのは、寝室でのデバイスの使用を禁止することかもしれない。就寝時のスクリーンタイムによって思春期早期の健康や発達に不可欠な睡眠時間が減ってしまう。親は、子どもの寝室にはデバイスを置かないこと、夜間にはデバイスの電源や通知をオフにすることを検討するのが良いだろう」と話している。