“子ども”を取り巻く諸問題

育児・親子・家族・発達障害・・・気になる情報を書き留めました(本棚4)。

「広汎性発達障害児への応用行動分析」(フリーオペラント法) 佐久間 徹 著

2016年06月26日 06時35分22秒 | 発達障害
広汎性発達障害児への応用行動分析」(フリーオペラント法)佐久間徹著、二瓶社、2013年発行

 きっかけは、NHKの「あさいち」という番組です。
 2016/6/22に「ほめて伸ばす!子どもの発達障害」という内容が放映され、その中で「応用行動分析」(ABA:Applied Behavior Analysis)という手法による自閉症スペクトラム患者への療育が紹介されました。

 その方法は至って単純で「望ましい行動が出たら秒速で褒める」が基本。
 それをひたすら繰り返すことにより行動を獲得させるのです。

 考えてみれば、人間の行動は社会生活をする中で、褒められたり責められたりしながら修正・獲得されていきます。
 それを療育の技法として取り入れたもの。
 おそらく「褒めて誘導する手法」は普遍的であり、健常児の発達補助としても有効と思われます。

 それを扱った本を読みたいな、と本屋さんに行って探してみると・・・ゲスト解説者として呼ばれていた平岩幹男Drの本は見当たらず、この本しかありませんでした。
 とりあえず購入して読み始めました。

 すると、興味深い記述が随所にみられました。
 久しぶりに目から鱗が落ちる本に出会い、一気に読了。

 今まではこの分野の書籍を読んでも「まあ納得できるけど実際にどうしたらいいの?」という疑問が解消しきれないものがほとんどでした。
 この本を読んで、すべてではありませんが疑問の一部が氷解しました。
 発達の基本は「模倣」すること。
 そして「模倣」する行動を引き出すには「逆模倣」、つまり親が子どもの行動をまねることが有効であると説いています。
 「模倣」を楽しいこと・うれしいことと捉えられるようになると、一つ一つの行動を教えなくても、どんどん発達が進むようになる。
 と、驚くような手法が記されています。

 ただし文中にもありますが、専門用語をかみ砕いてわかりやすく説明した一般読者向けとなっていませんので、医療関係者以外にはちょっと敷居が高いかもしれません。

 もう一つのこの本の魅力は、「私は棺桶に入る日が近いので、好きなことが云える」と本音トークで権威筋を批判しているところかな。あらら、そこまで書いて大丈夫? と心配になるほど(^^;)。

 内容のエッセンスを「まとめ」から抜粋します;

・言語発達のためにはまず、人を好きにならなければならない。依存し、依存される関係が基礎になる。行動分析的言い方では、相互強化関係が必須条件である。

・言語発達遅滞という問題の解決のカギは、言語発達のための条件整備と発達妨害要因の排除である。

・喃語の相互模倣からスタートして、有意味語の生成をまつ。発生や発語の強制や誘導は厳禁、あくまでも自発発声、自発発語を待つ。発音や言葉遣いの修正、訂正も厳禁。修正、訂正が一番の言語発達阻害要因になる。赤ちゃん言葉を経由せずに成人の言語レベルに達する人はいない。発達過程で働く自動的行動修正機能の働きを待つべきである。

・発声の相互模倣と行動の相互模倣を同時進行させていると、社会性や身辺自立も付随的に発達が進行する。社会性と呼んでいるものの大半は、相互模倣だからである。

・訓練で一つ一つを積み上げる指導はどうしても発達に歪みを作ってしまい、訓練がきつすぎると強烈な拒否反応に出会う。十分に模倣反応の自発性を高めれば、発達の大半は模倣反応を誘発させるモデルの提示だけで済む。

・子どもの行動に対する逆模倣は行動変容の効率は悪いが、模倣行動の自発性にははるかに有利で、子どもは喜び、無理がなく、失敗事例がゼロになる。

・不適応行動への対処:生活上の困難が深刻な場合には、不適応行動の消滅ではなく、弱化を目指す方が効率的である。反応強度分化強化法が有用である。


 ピンと来ない文言が並んでいますが、本書を一読すると頷けますので、興味のある方はどうぞ。

<メモ> ・・・自分自身のための備忘録

■ おねしょ
□ 具体的解決策その1
①生活全体をよく見回し、ストレスになっていると思われるものをできるだけ排除、低減する。
②入眠時に十分にリラックスする。
③水分の制限は昔からの常套手段だが、水分の不足は生理的に強いストレスになり、おねしょに逆効果である。終診30分前にたっぷり水分を取り、排尿後に寝る。
④朝、布団がぬれていないときには子どもと一緒に大喜びをする。失敗の朝は黙って後始末をする。
①-④で2週間経過観察し、効果が確認できたらそのまま続ける。重症ケースを含めて、これだけで半数は完治する。とくに水分制限の解除がポイントである。改善ない場合は次へ。
□ 具体的解決策その2
 寝具と寝室の雰囲気をガラッと変えてみる。とくに重要な点はアンモニア臭のない状況にすること。
 おねしょの子どもにとって、ベッドの中が排尿促進に働く正の条件刺激になっているため、ふだんとは全く異なる環境で寝てみるのである。1週間で効果がない場合は次へ。
□ 具体的解決策その3
 夜半覚醒を試みる。
 夜、何時頃排尿しているかおよその時間を調べて、それより半時間ほど早いタイミングで覚醒させ、トイレ排尿をさせる。このとき、なかなか目覚めないので抱きかかえたり、両手を引っ張りながらトイレに行くなど、半覚醒排尿をしていることが多いようだが、これでは半覚醒排尿の習慣づけにとどまり、おねしょを卒業できない。必ず、声かけ、身体揺すりだけで起こす。トイレまで自力で歩かせ、はっきり覚醒状態にしてから排尿させる。そして終わったら大いに褒めそやし、抱っこでベッドへ戻る。翌朝、布団が乾いていることを確認させ、一緒に大喜びをしてほしい。
 長期にわたりおねしょを繰り返している子どもは、夜半の覚醒が苦手なことが多いようだが、それは渇きのストレスや不安のストレスに抗して寝ているために、睡眠と覚醒の切り替え困難な状態ができあがっているためである。
 この方法を続けていると、次第に夜半覚醒がスムーズになってくる。1ヶ月で効果が得られない場合は次の最終手段を試みる。
□ 具体的解決策その4
 アラームパンツを使う。
 実は、長年おねしょの子どもを扱ってきて、どうしても成果が上がらない場合には最後の手段としてアラームパンツの使用を予定していたが、私は過去に一度も使ったことがない。