日々雑感

読んだ本やネット記事の感想、頭に浮かんでは消える物事をつらつら綴りました(本棚7)。

ECCOのゴアテックスシューズ「TRACK25」(831714-52600)

2017-10-26 14:45:28 | 時計・鞄・靴
 先日、久しぶりに靴を買いました。
 場所は「佐野プレミアムアウトレット」のECCO店。

 型番は「ECCO TRACK25 831714-52600」で、ゴアテックス仕様の革のシューズです。



 実はこれ、隠れたロングセラー。
 私がこの靴を手にとって眺めていると、店員さんが近寄ってきました。
 「お客さんが履いている靴と同じモデルです」
 と宣う。

 そうなんです。
 私はこのシリーズを履き続けて10年以上経過し、今の靴が二足目。
 最初に購入したのは、おそらく現行モデルの数世代前のバージョンと思われます。
 それをめざとく見つけた店員さんにこの靴のファンだと云うことがばれてしまいました。

 この靴のよいところは・・・

・「足入れ」がよい。紐靴ですが、ひもを解いたり結んだりしなくてもスリッポンのように履けてしまいます。しかしスリッポンのように脱げないという絶妙なバランス。この感覚は他の靴で味わったことがありません。

・ゴアテックスシューズなので足が蒸れません。汗っかきの私は、この靴に慣れてしまうと、他の靴が履けなくなります。

 「41」のサイズはありますか?
 と聞くと、
 「はい、あります、あります」
 と2つ持ってきました。
 理由を聞くと、
 「この靴を買う人は、大抵二足まとめ買いしていくのです。」
 らしい。
 
 そうなんです。
 買い損なうと、次はいつ出会えるのかわからない・・・結局私も二足買いしてしまいました。
 アウトレット店なので、正規の値段の1万円引き+二足買いで二足目はさらに10%引き!
 この靴が掲載されているカタログももらってきました。

 「いや〜いい買い物をした」
 と、とても満足して帰路につきました。
 一足が10年間持つので、少し前に2代目に履き替えたところですから、この先30年は靴を買う必要がありません。
 え・・・私の年齢を考えると、もう他の靴は要らない?

好きだモノ。。。「 腕時計」(by NHK)

2014-06-05 07:13:16 | 時計・鞄・靴
 最近、腕時計をカルチャーとして紹介してくれる番組が増えました(喜)。
 これもその一つ(好きだモノ。。。「腕時計」)。



 ブレゲの名作「マリー・アントワネット」やフランク・ミューラーの3億円もする超複雑時計に始まり、日本人初のアカデミー会員を紹介し、大ヒット作 CASIO G-shock 発案者を取材し、果ては街の時計修理師まで広く扱う盛りだくさんの内容でした。
 満腹です。
 ふむふむと興味深く視聴したポイントを挙げておきます;

並木浩一氏
 著作「腕時計一生もの」は読んでいましたが、本人の映像を初めて見ました。
 ウ~ン、怪しいおじさんですね。
 所有する腕時計は300本!
 番組の要所で蘊蓄を傾けてるご意見番の役割。
 「時計のチッチッチッという音はルビーが金属にあたる音」と説明し、なるほどそうだったのか、と気づいた次第です。

独立時計師集団「アカデミー」初の日本人メンバー「菊野昌宏」(30歳)
 アカデミーの重鎮、フィリップ・デュフォー氏の推薦で会員になった若き時計師。
 機械式時計に日本の味を加味した作風で、世界で高い評価を受けているそうです。
 2012年に作成したトゥールビヨンは「枯山水」と名付けられ、日本庭園の枯山水をイメージした文字盤です。



 2013年に作成したミニッツリピーターは「折鶴」と名付けられ、折鶴の羽を広げる動作が音を出す仕組み。文字盤は刀の鍔に使う木目金。



江戸の「万年時計」
 “からくり儀右衛門”こと田中久重(東芝の創業者)が作成した複雑時計。
 前項の菊野氏はこの万年時計に出会い、触発されて現在の仕事を始めたそうです。彼が特に注目したのは和時計の盤面で、夏と冬では時間感覚が異なる日本の事情に合わせて文字盤の数字の位置が動くようになっています。これを腕時計で再現したいと考えたそうです。

「G-shock」の生みの親、伊部菊雄氏
 「壊れない時計」という漠然とした企画書を提出した彼は、それから苦難の道を歩むことになりました。
 諦めかけたとき、公園で女の子が毬をついている姿を眺めていてふと頭に浮かんだ「点接触での保護」。
 それを実用化し、1986年の米国の検証番組NBC「TODAY」で有名となり世界的にブレイク、現在までに1億個を販売するに至りました。

GPSソーラー時計「ASTRON」by SEIKO
 GPP機能を搭載し、世界のどの国にいてもボタン一つ押せばその国の標準時に切り替わる優れもの。
 グローバル化した現代が生んだ発想です。価格は15万円越え。

新光時計店の松浦敬一氏(69歳)
 広島県にある1858年創業の老舗時計店4代目。先々代が大正時代に仕入れた部品ストックが充実しており、日本全国から修理を希望する時計が集まります。

シチズン エクシード

2014-05-28 06:28:21 | 時計・鞄・靴
 シチズンのエクシード・ラインはソーラー&電波時計をビジネスにも使えるエレガントな薄型時計に広げた功績があります。
 ブレスはチタン製で、軽くて装着していることを忘れてしまいそう。
 この軽さに慣れると、ステンレス・スティールに戻れません(笑)。
 手元の時計をいくつか紹介します:

■ EBG74-2651



お気に入りのモデルです。文字盤のバランスがとてもいい。アラビア数字も上品です。
ゴールドの入ったコンビモデルもあるのですが、シルバーの控えめな雰囲気の方が好きです。
私の時計コレクション中、現在使用頻度最多。
すでに生産は終了しているようですね。

■ EBG74-5072



ピンクゴールドのトッピングに引かれて購入しました。
よいのですが、アラビア数字の品位がEBG74-2651と比較して今ひとつ。

■ AT5000-58E



ひたすら渋く目立たないモデル。けど高級感があります。
自分より偉い人が集まる会合に合いそう(笑)。

■ EBS74-1943

さて、エクシードシリーズの中で光彩を放つ「ジ・エクシード」が存在します。
電波&ソーラー登場前夜の、日本的高級感を極めたひとつの完成形。
手元にあるこの時計は、ソリッド&クール、機械式ではなくクォーツです。
ステンレスの塊が、手になじむ適度な重量感となっています。
質のよいナイフやライターの程よい重みが手に馴染むのと同じですね。
搭載されているメカも「ザ・シチズン」と同じ高性能のもの(年差10秒)です。
これが外国製だったら、日本の定価の数倍はしそう。







オメガの時計

2014-05-26 07:03:29 | 時計・鞄・靴
 手元にあるオメガの時計を一部ご紹介。
 オメガは私にとって「大企業的多様性」あるいは「高級な実用時計」というイメージがあります。
 下記時計の他にも、初代「デ・ビル・プレステージ」シリーズのシンプルな時計をいくつか所有しています。

Omega Speedmaster Professional 3573.50
購入時の宣伝
オメガを代表するロングセラーモデル。
クロノグラフの代名詞と言っても過言ではない、スピードマスタープロフェッショナルです。
数多いスピードマスターシリーズの中でも最もベーシックで人気の高い、手巻・プラスチック風防モデルである「3570.50」と人気の双璧をなす、手巻・サファイヤクリスタル風防・バックスケルトンモデルです。


アポロ計画で宇宙飛行士が装着し月面に着陸した「ムーン・ウォッチ」として有名な時計です。
ラインアップには自動巻も用意されていますが、宇宙空間では重力がないので自動巻は意味ありません。
手巻き、それもムーブメントを眺めることができるスケルトンモデルがマニアの心をくすぐります。








OMEGA Seamaster Jacques Mayol 1996 Limited Edition
購入時の宣伝
オメガを代表するロングセラーモデルであるダイバーズウォッチの名品「シーマスター」。
現在ではプロ仕様の本格派モデルから、ゴージャスなゴールドのラグジュアリーモデルまで多くのラインナップが存在し、人気を博しています。
そのシーマスターをこよなく愛し、常に愛用していたのが、フランスの伝説の素潜りダイバー「ジャック・マイヨール」。
1995年から2003年まで、彼の名を冠したシグネイチャーモデルとして、限定モデルがリリースされました。

こちらは、シーマスター プロ300をベースとして1996年に発売された逸品。
「華美なものより、シンプルを」という彼が好んでいたというボーイズサイズ。
文字盤カラーは、彼が始めてイルカと出会った、佐賀県唐津市の海を連想させるエメラルドグリーン。
ケースサイドにはジャックマイヨールの名と年、ケースバックには限定エディションナンバーが打刻されています。

品番2553.41 ケース径約36mm 世界3000本限定 サファイアガラス 300m防水 クロノメーター 自動巻


ジャックマイヨールの生涯は「グラン・ブルー」という映画になりました。
ダイバーズウォッチはごついものが多いのですが、この時計のフェイスはグリーンで茶目っ気があります。
私はなぜか、子どもの頃からブルーよりグリーンの方が好きなんですよねえ。
ちょっとリラックスした雰囲気がカジュアルな着こなしに合います。









OMEGA Sea-Master Jacques Mayol 2002 Limited Edition
購入時の宣伝
オメガを代表するロングセラーモデルであるダイバーズウォッチの名品「シーマスター」。
こちらは、シーマスター120をベースとして2002年に発売された限定モデル。
初期シーマスターを彷彿とさせる、薄くスタイリッシュなフォルムと、たくさんのイルカの絵がプリントされたブルーのダイアルが特徴。
ケースサイドにはジャックマイヨールの名、ケースバックには限定エディションナンバーが打刻されています。

品番2508.88 ケース径36mm 世界3500本限定 サファイアガラス 120m防水 クロノメーター 自動巻


こちらもジャックマイヨール・モデル。
ダーク・ブルーの文字盤中央でイルカが跳びはねており、マリン感覚満載です。







時計職人「本間直樹」

2014-05-26 06:48:46 | 時計・鞄・靴
 NHK-BS「感涙!よみがえりマイスター」で時計修理を扱っていました。
 番組テーマは「人生をともに歩んだ腕時計」。
 持ち込まれたのは、70代の畳職人のおじさんが30代の時に一念発起して購入したオメガの自動巻時計。
 もう10年止まったままで錆び付いた時計を甦らせることができるか?

 そこで登場したのが本間直樹さん。
 スイスの時計職人養成学校で修行した方で、現在ダーリアという会社に属しています。

 時計修理職人の仕事が映像で紹介されるのは珍しい。
 いやはや、参りました。
 細かすぎる作業(5/100mmの世界)、時計を製造したときの状態に限りなく近く戻してお返ししようという執念/プロ意識に脱帽しました。

 修理対象のオメガの時計の故障原因は、竜頭から水が入ったため起きた巻き芯が錆び。
 丁寧に扱ってきたので、雨が原因ではないかと振り返る畳職人。
 回復させるべくあらゆる手段を駆使するも、脆くなった巻き芯は折れてしまいました。
 
 無いなら作る!

 本間さんは旋盤を用いて(一部は手作業で)、ステンレスの棒から巻き芯を削りだしてしまいました。
 巻き芯を通す穴が摩耗して広がっているので、オリジナルより3/100mm程度太くしたとのこと。
 それをさらに長持ちするように「焼き入れ」「焼戻し」というテクニックも紹介されました。

 機械式時計フリークの私にはたまらない内容でした。
 
 私が時計のOHを依頼する銀座の時計店があります。
 主人は時計職人で、機械式時計、それも懐中時計の修理が専門です(ガンコ親父系)。
 以前雑談の中で「無い部品は作ればいい」「週末は旋盤をいじってるんだよ」と何気なくコメントされたことを思い出しました。
 
 あんな細かい作業をしてるんだ・・・と改めて感心したのでした。

エベル(EBEL)の時計

2013-10-27 11:07:35 | 時計・鞄・靴
 ずいぶん前(1980年代)からエベルの時計が一つ欲しいと思っていました。
 エベルは100年の歴史のあるスイスの時計ブランド。
 一目見てそれとわかる個性的なデザインで、1980年代には世界時計ブレンドのベストテンに食い込む勢いがありました。
 確かプロテニスプレーヤーのアンドレ・アガシが広告契約をしていたこともあったはず。
 その後は傾いて売却され、紆余曲折を経て現在はモバード・コンコルドグループの傘下にあるようです。残念ながらその間に個性的なデザインも失われて何でもありの捉えどころのないブランドに成り下がっていた時期もあったようです。

 先日、ネットオークションでエベルの時計「Ebel 1911 Automatic」が出品されているのが目にとまりました。
 機械式(自動巻)、清潔感あふれるシロ文字盤、老眼に優しいビッグデイト、汗っかきの私向きのステンレスブレス、と私好みの仕様です。何よりもベゼル部分の鋲の使い方が往年のエベルのモデルを踏襲したデザインに惹かれました。定価約40万円也。




 出品者は中目黒ブロードウエイにある老舗のアンティークウォッチ店「ジャックロード」さん。
 説明書きは以下の通り;

 1911年にスイスのラ・ショー・ド・フォンに、ユージン・ブルムとアリス・レヴィの二名によって創設。
 確かな技術力で、本格的な機械式時計を作り続ける名門として知られる一方で、知的なエレガントさを漂わせる美しいデザインが、モデルやミュージシャンといった人々を中心に指示され、常に注目を集めているブランドです。
 こちらは、そんなエベルの魅力が凝縮された代表的なモデル、「1911 オートマティック」です。
 3本の針のみで構成された、大変シンプルなデザインが印象的。ケース、時分針と同様の輝きを持つアラビア数字が、
純白の文字盤上で、バランスよく配置されています。6時位置には、ダブルディスク式の日付表示があり、アクセントとなっています。
 エベル独特の、控えめで上品な雰囲気が魅力です。ビジネス、カジュアル問わずご愛用いただけるモデルではないでしょうか。

 定価40万4250円 品番9125241/10665P ケース径約39mm
 100m防水 サファイアクリスタルガラス 自動巻

 時計本体以外に、専用ウォッチケース、国際保証書、取扱説明書が付属いたします。
ブレスレットサイズは、不足のないフルコマ状態ですので、手首周りの実寸が18cm程度の方でも着用可能な大きさです。
 ユーズド品ですが、僅かな薄い小キズが見られる程度の極上品。目立った深い傷みやガラスキズ、ダイアルの焼けやシミ、針の腐食、ブレスレットのヨレ等はありません。今年の9月に弊社提携の工房にてオーバーホールを行ったばかりですので、日差、平置き計測で+5秒前後と精度も良好です。

 1年保証付。今後のメンテナンスも当店にお任せ下さい。責任を持ってお預かりいたします。
 エベルの定番人気モデルです。どうぞお見逃しなく!



 1980年代に何回か店舗に行き、当時人気だった「デカバラチュー」を購入した記憶があります。
 高価なものはネットオークションでは購入しないことにしている私ですが、ジャックロードさんなら大丈夫かな、と懐かしさも手伝って挨拶代わりに入札しました。その時点では10万円未満であり、定価から考えて10万円超えで落札されるだろうと予想していました。
 ところが入札金額がそこで止まってしまい、私が落札するに至りました。あらら、想定外。

 商品はすぐに届きました。
 部レス調節に関してちょっとトラブルがありましたが、そこは店舗を構えている老舗店、しっかりとfollowしていただき満足度は高し。
 時計自体もシンプルで品がよくフォーマルな席でもOK、気に入りました。

 

時計屋さんで時計談義

2012-01-13 13:24:20 | 時計・鞄・靴
 近隣のブランド時計を扱う専門店へ久しぶりに出かけました。
 目的は「オメガ シーマスター アクアテラ コーアクシャル」。
 「10年間メインテナンスフリー」というキャッチコピーで注目を集める新ムーブメント+150m防水を引っさげ、ロレックスのデイトジャストに真っ向勝負の自信作・・・実物を見て触って ”買い” かどうか判断しよう、と。

 そこの時計師さんと時計談義が弾んでしまいました。
 彼は年齢不詳のジェントルマンで、今までにも少し話をしたことがありましたが、その出で立ちから店長さんだと勘違いしてきました。
 バーゼルフェアやジュネーブサロンにも足を運び、時計マニアの松本零時さんのコレクションも見せてもらったことがあるそうです。

 そんなわけで話題は尽きず、オメガから始まって多岐にわたり、コーヒーのおかわり3杯目を勧められたときに時計を見るとすでに2時間以上経過・・・ちょっと長居しすぎましたが、楽しいひとときを過ごせました。

 話の内容をかいつまんでメモしておきます;

オメガ シーマスター アクアテラ コーアクシャル
 現在のものは新型(第二世代)でムーブメントもコーアクシャル専用に設計された逸品。実は旧型(第一世代)は従来のムーブメントを無理やりコーアクシャルにアレンジしたもので、時計師から見るとちょっと無理があった感が否めない。
 本来コーアクシャルは精度を追求したシステムであり、決してメインテナンスフリーが売りではない。それを謳ったのはメディアであり、オメガは一言も宣伝していない。新しいシステムなので修理が難しい。
 
 私の印象・・・旧型と新型を並べて眺めると、質感の違いがハッキリと感じられる。実物を手に取ると、ケースもブレスもブラッシュアップされて精悍さを増した(値段も上昇)。旧型は丸っこくてボリューミー、悪く云えば締まりがないデザイン。人気が出る前のモーリス・ラクロアに似ている。新型ケースは無駄を省いて造形美を高め、ブレスはロレックスの三連ブレスに近い印象。ケースのポリッシュ/サテン仕上げは処理が難しいタイプで、オメガの得意とする分野である。
 価格を重視すると、旧型に手が伸びそうになるが、並べて比較すると新型の方が ”そそる” 時計と云える。


世界の時計産業の2つの潮流
 時計業界では2つの流れが歴然と存在する。
①「イギリス~ドイツ~アメリカ」ライン。
②「フランス~スイス」ライン。

 イギリスとフランスの時計産業はほぼ同時期に平行して発達した。フランスで宗教改革が勃発した際、知識人であった時計師たちはスイスの山へ逃避し、そこの屋根裏部屋に隠れて時計制作を行うようになったのがスイス時計の由来。
 イギリスの時計技術は地中海を渡り、ドイツに伝わった。その後アメリカもドイツの影響を受けるに至り、日本もこのラインに入る。
 ドイツ時計のムーブメントの特徴は「正確」「頑丈」・・・つまりゲルマン民族の質実剛健さがここでも現れている。有名な「3/4プレート」は堅牢性を追求した結果生まれた。
 代表ブランドとしてのランゲ&ゾーネの文字盤デザインは実用性と幾何学的黄金律で成り立っている。特に「ランゲ1」はビッグデイトの走りであり、時針を中央から外したのはデイト表示を隠さないためである。
 スイスの時計の源流であり伝統は ”ジュネーブ仕様” 。ジュネーブ・シールに代表されるムーブメントであり、色々な約束事がある。代表ブランドはもちろんパテック・フィリップ。

パテック・フィリップの魅力
 世界的に「時計」としての資産価値を認められているのはパテック・フィリップのみ。ロレックスでさえも認められていない。
 どういうことかと云うと、例えば30年前に100万円で販売していたパテックの時計は、30年経過しても為替相場に対応して価格が変わるだけで、基本的な価値は変わらない(むしろ上がることも)。
 パテックの魅力は常に理想を求めて時計づくりをしてきていること。値段を設定してから時計を造ろうなどと云うことはなく、理想を追求したらこの値段になった、という流れ。自社の時計はいくら古くても修理を受け付けるため、昔の工作機械も残されている。
 ムーブメントの美しさはピカイチで、隅々まで磨きがかけられている。しかし、スケルトンでそれを見せびらかすことはない(一時、日本向けモデルでありましたけど)。
 カラトラバの96(クンロク)モデルなど、ヴィンテージ・パテックは30~33mmの小振りな時計。しかし手首に装着すると俄然存在感を増すので不思議である。特に横から見たケースの造形美は他の追随を許さない。



 パテックの社員食堂のシェフはフランス三つ星レストランのシェフが招かれて作っている。実はロレックスでも同じレベルという。

ヴァシュロン・コンスタンタンの残念なところ
 パテック・フィリップ、オーデマ・ピゲとともに雲上ブランドの一角をなすヴァシュロン・コンスタンタン(昔はバセロン・コンスタンチンと呼ばれていました)。
 その歴史を見ると、やりたいことは何でのやり、いろんなこと手を出し過ぎて失敗することも。2003年に発表したグランド・コンプリケーションで「上がり」を経験後、目的を見失ってしまっているようだ。その後はオールド・モデルを復活させたりしているが、リメイクにとどまり新たな魅力が付加されないところが残念。
 ヴァシュロンの自動巻ローターのベアリングは長年使用すると劣化する傾向があり、アンティークの購入を考えるなら手巻きがベター。
 もちろん、このコメントは雲上ブランドと認めた上での辛口批評であり、その辺の普及ブランドとはレベルが違う。

 私はバセロンと呼ばれていた時代からのファンです。実はいくつか所有していますが、いちばんのお気に入りは「ノスタルジー」というモデル。ティアドロップ・ラグに丸っこい印象のケース。1940~50年代の雰囲気を纏っています。


IWC創業者であるフローレンス・ジョーンズにまつわる話。
 ”懐中時計のパテック” と称されるアメリカの時計ブランド「ハワード」。その社長であったF.ジョーンズがスイスに乗り込んで、スイスの安い人件費を使っての大量生産を試みた。目指したのは高級時計ではなく普及モデルだったようだ。営業にかけずり回ってもなかなか相手にしてもらえず、ようやく見つけたスポンサーがモーザー氏(元時計師の富豪で、近年再興され真面目な時計づくりで話題のブランド)。彼のサポートの元、ドイツに近いシャフハウゼンで創業した。半分はドイツからの労働者だった。アメリカ(社長)とスイス(土地)とドイツ(職人)が手を組んで作った会社という意味で、国際時計会社(International watch company, IWC)と命名した。
 しかし、会社経営は上手くゆかず、4年足らずで他人の手に渡り、F.ジョーンズは事実上クビになってしまう。彼は失意の帰国後、消息不明。

カルティエのCPCPライン
 カルティエは時計としてより宝飾品として評価されるブランド。しかし、高級ムーブメントを搭載するCPCPライン (CPCP=Collection Privée Cartier Paris) というものが存在し、こちらは高く評価されていた(現在はなくなってしまったらしい)。

 その昔、私は「タンク・フランセーズ」のコンビモデルを購入したことがあります。しかしブレスの縞模様に馴染めず、手放してしまいました。緩やかなカーブを描くブレスの装着感は絶品だったのですが・・・。今後狙うとしたら、オールド・タンクでしょうか。



時計に使う潤滑油の進化
 潤滑油の質は温度変化への適応能力と紫外線への耐性で評価される。
 現在スイスで主に使われているのは約40年前に作られた油。長らくスタンダードの地位をキープしてきたが能力は十分とは云えない。また、昨今のスケルトンブームで耐紫外線能力の必要性が以前にも増してクローズアップされてきている。 
 近年、シチズンで「AOオイル」という非常に優れた油が開発された。今後普及すると思われる。

「デカ厚時計ブーム」を予測していたフランク・ミューラー
 近年、日本人の手首には余るほどに大きい腕時計が幅をきかせており、当初は新興ブランドが中心であったが様子を見ていた伝統的ブランドも参入した。今では確固たる一分野を形成するに至っている。
 このブームが始まる前に、「これからは大きな時計が流行るよ」というフランク・ミューラーのインタビュー記事を読んだ。理由は書いていなかったが、事実その後ブーム到来。なぜ予測でき七日ずっと不思議に思ってきたが、5年ほど前に謎解きをしたインタビュー記事を目にしてなるほどと思った。キーワードは「G-shock」。機能優先であんなにかさばる時計を若者は喜んで使っている。彼らは大人になってもそんな時計を好むのではないか、と予想したらしい。

 店内のディスプレイケースは基本的にブランド専用で借り受けるそうです。一つのブランドを扱うには、結構な費用がかかるとか(こちらから頭を下げて扱わせてもらうらしい)。
 オーデマ・ピゲとハリー・ウィンストンのケースには時計が無く、撤去中とのこと。
 ちょっと寂しさを感じました。

「百年腕時計」

2012-01-02 07:29:07 | 時計・鞄・靴
 という本を読みました。昔購入後しまい込んで忘れていたものが大掃除で出てきたのです。

 副題は「古い腕時計を買う!」とそそられます。
 予想通り、ロレックスとパテックを中心に扱う内容。
 長い年月を経て、味のある顔になってきた時計達の写真がたくさん掲載されていて眺めるだけで頬が緩んできそう。数十年経って色気をまとうモノは本物の証拠。ワインと同じですね。
 こんな時計に囲まれたら幸せだろうなあ。

 この二つのブランド、古いモデルでも比較的保存状態が良いモノが多く残っています。
 なぜか?
 ロレックスは「オイスターケース」という防水性をいち早く導入したためでしょう。水が入らないことは、長期保存に耐える基本的要素です。
 ではパテックは?
 これは湿度の高い地域用の文字盤開発(「トロピカル」の陶製文字盤)などが一つの要素。また、パテックのムーブメントは磨き上げられているのでホコリがつきにくい、との説明もありました。懐中時計の時代からの伝統ですね。
 まあ、超高級時計で大切に扱われたことが一番の理由でしょう。
 なにせ、円相場が1ドル360円の固定制時代は「パテックと一軒家は同じ値段」でしたから。

 老舗アンティーク・ウォッチ・ショップのオーナー対談ではその魅力についてこんなコメントが目にとまりました。

シェルマン:磯貝氏
・昔は良い意味でも悪い意味でも手作りなので、モノにも作り手の考え方が表れていて、非常に個性があるのですよ。

プライベート・アイズ:遠藤氏
・僕自身が魅力を感じるのは、ロレックスもパテックも1930年代。その頃のガラス風貌はちょっとした衝撃で割れてしまう。

ケアーズ:川瀬氏
・ヴィンテージウォッチの魅力は、やはり何十年も時を経る中で出てきた「味」です。
・「耐久性」という意味合いにおいて、ヴィンテージウォッチというのは1960年代までのロービートまでであると考えます。ハイビート(毎秒10振動)は倍近くテンプが動くわけですからそれだけ機械の負担も大きく、修理の際は直すというよりパーツを全部交換するような修理の仕方になってしまう。


 この3人が近年注目しているのはオールド・ロンジン。最近は普及モデル中心のブランドになっていますが、1950年代までのロンジンは機械が優秀であることで有名でした。そのことが海外オークションでも認知されつつあり、評価額が上昇中とのこと。

 最近の時計雑誌でロンジンが「コラムホイールクロノグラフ」という記念モデルを発売したことを知りました。コラムホイールというのは、昔のクロノグラフの部品の一つで、現在のカム式のムーブメントより上級と評価されているモノです。

 往年のファンは喜んでいることでしょう。
 私にはロンジンのデザインがちょっと・・・。

「ロレックスの秘密」by 出石尚三

2011-11-18 22:13:13 | 時計・鞄・靴
 2002年、講談社発行。

 先日、ロレックスの古い時計を購入しました。
 1960年代のセミ・バブルバック。
 18KYGのケースにエンジンターンド・ベゼル、バーインデックス、ドルフィンハンドのシンプルフェイス。
 さて、相場はいくら位なのかな、とネットで検索してみましたが・・・同じ時計が見つかりません???
 一番近いものを選ぶとすれば、これでしょうか。

 

 購入の経緯から偽物とは思えないし、いろいろ調べていくと、1950年代~60年代の高級時計は、顧客の希望によるオーダーメイド感覚であったらしい。
 つまり、大量生産ではなく、一点ものの可能性もある、ということ。

 う~ん、そう信じようか。

 しかし腑に落ちないので、バブルバックの本を購入して読んでみましたが、セミ・バブルバックの記述はほとんどなし。
 それにしても、バブルバックの文字盤は数限りない種類があるのですね。
 オーダーメイドの話が信憑性を帯びてきました。

 そしてこの本にたどり着きました。
 二部構成となっており、第一部はロレックス社、とくに創業者のハンス・ウィルスドルフ氏について。第二部は代表モデルの解説。

 彼の卓越した先進性、完璧主義が成功をもたらしたことは論を待たないことですが、メディアの取材を生涯一度も受けることがなかった秘密主義もポイントとして取り上げられています。
 彼自身は時計師ではなかったので、客観的に顧客が何を必要としているか見通すことができました。
 これから腕時計の時代が来る、使いやすく高級感のあるアイテムとして評価を得るには、ロレックスの特徴と云われるオイスターケース(防水)・パーペチュアル(自動巻)・クロノメーター(正確)を実現する必要がある、そしてそれを執拗に追求しました。
 技術畑を横目で見ながら、自分のイメージを極限まで高めて実現させるしつこさは才能であり、先日亡くなったアップル社のスティーブ・ジョブズ氏と共通する資質があると感じた次第です。

 第二部の主要モデルの解説はマニアックですね。
 でも、セミ・バブルバックは取り上げられていません。残念。
 やはりバブルバック後の移行期に少数作られたモデルなのでしょうか。

「男はなぜ腕時計にこだわるのか」

2010-01-11 09:38:22 | 時計・鞄・靴
並木浩一著、講談社セオリーブックス(2008年)

私、腕時計が好きです。
いや、懐中時計も集めているので「時計」全般が好きなのかな。
共通しているのは「機械式」。
時間に正確なクォーツではなく、1日30秒以内のずれなら可とされる手巻き・自動巻時計達。

なぜこんなに惹かれるのだろう。
「腕時計は男に許された数少ないファッションアイテム」という意見もあります。
それだけかなあ・・・と、手に取ったこの本の中にピッタリの言葉を見つけました。

それは「少年DNA」。

精密な機械が動いているとゾクゾク魅力を感じる、あの少年の頃の感覚です。
私は「男の子魂」と呼んでいましたが、「少年DNA」の方がスマートですね。
中がどうなっているのか知りたくて、時計を分解して元に戻せず叱られた経験を持つ方も少なからずいらっしゃるのではないかと思われます。

ですからムーブメントがガラスを通して見える「スケルトン」(スケて覗けるのではなく「骨格」という意味の英語です)モデルはさらに魅力的!
拡大鏡を用いて細かい動きを眺めているだけで幸せ感が満ちてきます。

100年以上前の懐中時計もいくつか所有しています。
裏蓋を工具で開けると、100年以上前に作られた機械が今でも時を刻んでいるのです。あぁ~、たまりません。
日本では明治時代、まだ日本が戦争を経験していない頃。

さて、本の内容に戻りますが、私のように腕時計に惹かれる男たちが知りたがる蘊蓄が満載されています。
「おや?」「おお!」と思ったところを引用してみます;

■ クォーツ・ショック
 1969年に日本の「セイコー」がクォーツを開発・発売してからの10年間を、スイス時計界は「暗黒の10年」と呼んでいます。13万人いた時計業界の就業人口が3万人にまで減少しました。

■ ロレックスの上を行くプレミアムブランド「パテック・フリップ」
 ロレックスが高級時計の中でも世界的に換金性がもっとも高いブランドであることは間違いありません。しかし、発売後価値が上がるブランドが一つだけあります。雲上ブランドの最高峰、時計界のロールスロイスと云われるパテック・フリップです。

■ 革ベルト、いや金属ブレス?
 ビジネスシーンの時計と云うことであれば、欧米では革ベルト(ストラップ)の時計をするビジネスマンが主流なのですが、日本では金属ブレスレットの人気が圧倒的のようです。梅雨があり、湿度が高いという気候の関係で、革ベルトがなじまないと云うこともあるのでしょう。

・・・私は汗っかきなので、革ベルトは苦手です。かつ、肌が弱くて革ベルトの金属部分(尾錠と云います)が当たる部分が赤く炎症を起こしてしまいますので必然的に金属ブレス派となってます。

■ なぜ高級時計はスイス製ばかりなのか?
 イギリスは19世紀までは世界の時計産業のリーダー的存在でした。ところが当時、安くて性能的にもそこそこに優秀だったスイスの時計がいくらでも輸入できる地理的関係にあったため、次第に国内の時計産業が衰退してしまいました。ロレックスももともとはイギリスが創業の地なのですが、スイスに拠点を移していきました。イギリスは時計の生産国から、時計の流通センターになってしまったのです。
 アメリカの時計作りも1940年代まではとても盛んでした。「ウォルサム」「エルジン」など、大量生産技術に長け、それでいて高性能の時計を作ったブランドが多く、世界を席巻していたのです。ところが第二次世界大戦の際、時計の生産拠点が相次いで軍需産業に転用されてしまい、このために一気に衰退しました。
 これに対し、スイスは永世中立国だったおかげで戦争中も時計を作り続けることができました。
 こんな歴史的カラクリがあったのです。

■ 時計の素材あれこれ

1.プラチナ:
 クールで深みのある輝きは他のどんな素材にもない奥深さがあります。しかも、素材自体が非常に硬い上にもろいため、加工がしづらい。このことも値段を上げている要素です。

2.ゴールド:
 純金はプラチナに比べると溶けやすくて扱いやすいが傷がつきやすいので、時計として使う場合は混ぜものをしてその弱点を補います。何を混ぜるかで表面の色が決まります;

・イエローゴールド:金+(銀と銅)
・ローズゴールド :金+(銀と銅)であるが、銅を多く混ぜる(ピンクゴールド、レッドゴールドとも呼ばれます)
・ホワイトゴールド:金+パラジウム

3.ステンレス:
 鉄にモリブデンなどを混ぜて作る合金でリーズナブルな素材です。ステンレスの中でも「316L」という素材はモリブデンの配合が通常のものより多いため、光沢があって錆にも強いことから、ステンレスの最高級品と云われています。

■ 機械式時計ブーム
 1980年代末から90年代に入って、アンティーク市場で機械式腕時計が初めて扱われるようになりました。「アンティーク」の正式な定義は「生産されて100年以上経過したもの」ですが、一部のオークショナーが「腕時計に限っては、クォーツが登場した1969年以前に生産されたものはアンティーク」と呼ぶことにしたことをきっかけに、それまでは「中古」としてしか扱われなかった古い時計が評価され、値段がつくようになったのです。

・・・時計雑誌に書いてありましたが、1960年代までに作られた機械式時計のムーブメントに使用されている金属は鍛え方が違うので長持ちするそうです。使い捨てではなく、修理しながら長く使うパートナーのような道具だったのですね。
 日本の伝統的寺院建築に使われている釘でも同じような話を聞いたことがあります。昔の釘は鍛冶屋がトンカン鍛えた鉄なので現在の型に流し込んで作る釘より丈夫で長持ちすると。