日々雑感

読んだ本やネット記事の感想、頭に浮かんでは消える物事をつらつら綴りました(本棚7)。

「NARUTO」ーイタチの真実ー

2009-12-27 07:38:49 | マンガ
毎週木曜日午後7時半からテレビ東京で放映されている、人気漫画をアニメ化した番組です。

いつの時代も日本人は「忍者モノ」が好きですねえ。
古くは「仮面忍者赤影」「サスケ」に始まり、「忍者はっとり君」「ドラゴンボール」などなど。
私は子どもの頃「サスケ」(白土三平作)にはまった一人ですが、生きていく厳しさを垣間見せる内容に、子どもながら何とも云えぬ寂しさ・侘びしさを感じた遠い記憶が残っています。

子どもにつられて「NARUTO」を見始めたのは、もう5年くらい前になるでしょうか。
そのストーリーは大人でも十分に楽しめるレベルに練り上げられていて感心しました。
よくよく考えてみると、時代設定も不確かだし(江戸時代風と思いきや、ラーメン屋が出てきたり)、隠れて行動するイメージの忍者同士が堂々と派手な戦いを演じたり・・・ヘンといえば変です。
「忍者」というキャラを用いた「戦いドラマ(戦国物語?)」という感じでしょうか。
その昔、SF小説の一分野で宇宙を舞台にした戦争物を「スペースオペラ」と呼んだように。

ただ、他の子ども向けマンガ・アニメと異なり、惹きつけられる何かがそこにあります。
それは、「成長物語」と「血のつながり」という要素。
手の付けられないやんちゃ坊主だった主人公のナルトが、苦しい修行で挫折を味わい、仲間とのふれあいの中で友情を育み、戦いの中で勇気と信念を抱くようになって行くのです。
さらに生き抜くための厳しさと、自ら背負う業を知っていく場面では凄みさえ感じさせます。
また、忍者の長である「火影(ほかげ)」を巡って争う場面では血族の繋がりがキーワードとなっています。これは横溝正史の小説に通じるモノがありますね。

そして、2009年12月17(木)に放映された上記テーマは、40歳代後半の私も驚嘆・感動する内容で、書き留めずにはいられなくなりました。

もうひとりの主人公であるサスケの兄イタチは自分の一族を皆殺しにして抜け忍となった憎むべき存在。
両親までも殺した彼を恨んで修行・成長したサスケは遂にイタチを超える日を迎えました。
しかし、兄イタチの命を絶った後で知った真実は・・・

イタチは忍者社会の平和バランスを塾考した上での苦渋の決断として自分の一族を抹殺せざるを得ませんでしたが、最愛の弟だけは手にかけられませんでした(この一文の内容を長い時間をかけて描いています)。
自分を憎むことで厳しい忍びの世界を生き延びるエネルギーを与え、成長したサスケが自分を超えたタイミングで自らの命を捧げ、一族の未来を彼に託したのです。

なんといういうこと!
「巨人の星」以来の心理描写に長けたマンガだと思いました。

※ 海外でも人気が沸騰し、主人公のナルトは「ニューズウィーク日本版」2006年10月18日号の特集「世界が尊敬する日本人100」に選出されたそうです(笑)。

「エンピツ画のすすめ」

2009-12-20 12:35:20 | エッセイ
風間 完 著、朝日新聞社(1987年発行)

もう一つ、鉛筆画の本を読んでみました。
著者は大正生まれの画家で、絵にとどまらず小説の挿絵など多数手がけた方です。
美人画の表情が素敵です。
「あ、この絵!」とたぶん、誰もが一度は目にしているのはないでしょうか。
最近もどこかで見かけたなあ・・・と思って検索したら、TVドラマ「高校教師」で有名になった森田童子のCDジャケット(ベスト盤)でした。
http://www.gogorocket.jp/doji/h/m-cd1.html

前回の永沢まことさんの本は肩の力が抜けていましたが、こちらは大正生まれの頑固親父系ですね。
絵画論にとどまらず、世間一般の文化・文明論までカバーし・・・時にお説教を聞いているような雰囲気になってきます(苦笑)。

■ 「何事もモノにするには時間がかかる」「素人の絵は自由でいい、プロになると厳しい世界」
など、ホントに勧めているの?と疑いたくなるような表現もあります。

■ 「描いたら、人の目にさらすこと」
という、永沢さんと同じことも書いています。
自分の世界だけでは独りよがりになりがちなので、他人の目にさらして批評されることにより進歩・成長するとのこと。

■ 「写真を参考にするのも可」
私は素人ですが、この意見には不賛同です。
前出の永沢さんは、
「モノを描くときは、それを初めて見た宇宙人になったつもりであんぐりと口を開けて見つめることが必要」
と書いています。ウ~ン、こちらの方が頷ける。
紙の上に絵を描くということは、三次元の空間を自分なりの方法で二次元に変換させるということ。
この翻訳作業に皆苦労し、また技術の粋を集中させるのだと思います。
既に三次元→二次元の翻訳が済んでいる写真を模写しても、その人らしさは出てこないのではないでしょうか。

まだ描いてもいないのに生意気なことを書いてしまいました。失礼。


「絵が描きたくてたまらない」

2009-12-13 07:44:44 | エッセイ
永沢まこと著、講談社+α文庫、2006年発行

身を削る仕事をつづけていると、何かを造る仕事に憧れます。
仕事は変えられないけど、日々の生活の中で「何かを造りたい」と思うようになりました。
いろいろ探してみて、手軽に始められるのは「絵」ということに気づきました。
それもシンプルな鉛筆画。
「鉛筆」と「紙」があれば準備OKですからね。

そんなタイミングでこの本に出会いました。
デッサンの教則本はやはりちょっと敷居が高い。
イラストレーター(?)の著者は「もっと自由に、日常生活の延長で絵を描きましょう」と提案しています。

私たちは毎日「字」を書いています。
その特徴は十人十色。
絵画では「俳画」という分野がありますが、これは絵と字で一つの作品になっています。
シャープな絵には切れのある字。
やわらかい絵には丸っこい字。
・・・「字」も作品のうちなんですね。
これを「書画一体」と呼び、東洋的な考え方です。
そう指摘されて、なるほどなあ、と思うことしきり。

さて、永沢さん提唱の「絵が上手くなるための三つの法則」;
その1:何を描くときでも「実物」を見て描くこと 
その2:何を描くときでも「線」でかたちをとること
その3:「色」を塗るときは理性を捨て、心を開くこと

特徴は、「ペンで描くこと」。
つまり、「下書きなし」&「消しゴムで消せない」のです。
そのためには実物をじ~っと穴の開くほど見つめて頭の中にイメージを造り「空描き」し、そして紙に思い切って線を描く!
勇気がいる方法ですが、慣れるとできるようになるそうです。
コツは先入観を捨て「ポカンと口を開けて宇宙人になったつもりでしげしげと眺める」こと。

いわゆる「デッサン」は光と影を面で捉えます。
でも著者は線で捉えることにこだわります。
レオナルド・ダ・ヴィンチは「物体には、線など存在しない」といったそうですが、永沢さんは「しかし、線表現によって二次元上に翻訳することは可能である」と主張しています。

また、ペン書きの利点として
1.太さ細さが表せる
2.スピードが表せる
3.重さが表せる
などを挙げ、実例を示してわかりやすく説明しています。

次に色塗り。
「線」に「色」を施すことによって「線」がより美しく輝き、線と色とが分かちがたく一体化する、というのが線と色とが作り出すもっともよい関係とのこと。
色は実物の正確な再現でなくてもよく、自分がイメージする最高の色をめざしましょう、とも。
ウ~ン、深いですね。

あとはひたすら描いてセンスを磨くこと。
同じテーマで30~50枚を描いてみよう(5~10枚ではダメ)!


私は自然の写真を撮るのが好きです。
「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」でたくさん撮影してそのうち何枚かよいものがあれば満足。
でもヒット率が低いことが悩みです。

ある時、ターシャ・テューダーという絵本画家のスケッチを書店で見つけました。
動物たちの「あっ、この表情!」というかわいらしい瞬間が見事に捉えられているのです。
そうか、自分で見つけて描いて残せばいいのか・・・。

小学生の頃は写生が好きでした。
コンクールに入賞したこともあったような・・・。
この本はペン画&水彩画ですが、私はモノクロの鉛筆のみで描き始めてみようと思いました。