50年ほど昔のお話です。
少年と少女が出会って、
意気投合しました。
多感な思春期を、
仲良く手をつないで歩きました。
二人は楽しい時間を、
たくさんたくさん過ごしました。
交換日記をはじめ、
汲めども尽きぬ話題を語り合いました。
思い込みや誤解ですれ違い、
ケンカをすることもありましたが、
仲直りをするたびにさらに絆が強くなっていきました。
ふたつの魂は共鳴し、
まるで磁石のようにピタリと重なりました。
歩き続けて思春期が終わる頃、
広い平原にたどり着きました。
眼前には、夢と希望と、
不安と危険に満ちた未来が広がっていました。
「これからもゴールに向かって一緒に歩こう」
と少年は遠くを指さしました。
けれどそのゴールは遠すぎて、
少女にはよく見えず、
不安な気持ちが芽生えました。
少年がちょっと手を離した隙に、
少女は突然、走り出しました。
彼女は走るのが速かったので、
少年は彼女を見失ってしまいました。
途方に暮れる少年。
少女はほどなくゴールを見つけ、
そこに飛び込みました。
でもそのゴールは、
少年が指さした遠くのゴールではありませんでした。
少年は遅れて追いついたものの、
少女の姿はすでになく、
いつまでもいつまでも探し続けたのでした。